『那由他はきっと護廷を誘導しようとしている』
ボクは現世に来る前に聞きはった藍染隊長の言葉を思い出す。
『朽木ルキアを現世に派遣させたのは那由他の今後の動向を監視する目的が強かったのだが……。朽木ルキアの魂魄に崩玉を忍ばせ、英雄に試練を与えようとしている。そして、その仲間集めも怠っていない。つまり、早々に何か動いてくるだろう』
『ボクには難しい事はよう分かりませんわ』
『何、簡単な事さギン。何かこちらがアクションを起こせば良い。そうすれば那由他が良いように扱ってくれるだろう』
この信頼感の高さ。
いやぁ、那由他ちゃんは相変わらずどこまで考えてはるんやろか。
気味が悪くて仕方あらへんわ。
『那由他は己の力、”霊王の目”を使いこなしている。それは今までの出来事が全て彼女の思惑通りに進んでいる事から明らかだ』
『思惑通り?』
『そうさ、要。彼女は英雄を用意すると同時に、その存在に比肩しうる力を持つ者を見出した。中でも──有沢たつき。彼女は要観察だね』
『現状ただの人間ですが……。それよりは明らかな力の発現が認められた茶渡泰虎や井上織姫の方が重要な戦力になるかと』
『それは彼女の考えの表面しか読み取れていないよ、要。有沢たつきの真価はその霊圧探知能力にある。黒崎一護のライバル的ポジションについている事と言い、那由他は彼女こそ黒崎一護の成長に必要な人材だと考えているだろうね』
目の前で吹き荒れとった那由他ちゃんの霊圧が段々と落ち着きはる。
砕蜂ちゃんや狛村隊長は白目剥いて倒れそうになっとるし、朽木隊長は落ち着かない感じやな。
日番谷隊長はポカンとした顔で固まったままや。
こら皆情報を処理しきれとらんな。
まあ、何でルキアちゃんがそないな勘違いしとるかボクにはよう分からへんけど……何や面白そうやし黙っとこ。
『そして、那由他はこう考えているはずさ。英雄の試練の一つに朽木ルキアを使い、黒崎一護を瀞霊廷へ送る。そして、朽木ルキアを救い出した瞬間に、次は那由他自身が彼の大義名分となって僕を打倒するように誘導。僕の壁として前に立ってくれる事だろう。黒崎一護の仲間の中では井上織姫を連れ去るのも良いだろう。そこは那由他の後で良いがね。彼女たちの力を狙ったと護廷に誤解させるには十分だ』
『……つまり、那由他様は藍染様が護廷を離れる際にワザと藍染様に戦いを挑み、負ける事で英雄の更なる進化を促す、と?』
東仙隊長の理解が早すぎてボクが焦ってまったけど、ここではルキアちゃんを持ち帰ればええんやろ?
まさかルキアちゃんがこないな勘違いをしとるとは思っとらんかったけど。
せやけど、那由他ちゃんがその勘違いに乗るような言動をとっとるゆう事は……ここは勘違いさせたままの方がええゆう事やろか?
今ここで那由他ちゃんや藍染隊長の邪魔をするんは得策やない。
まだ早い。
せやったら、ここは大人しくボクも動揺しといた方がええんやろな。
「どういう、事だ」
お、朽木隊長が一番はよ復活しはった。
意外やな。こん人まだ那由他ちゃんの事を忘れられてない思っとったんやけど。
「何故、兄が黒崎一護を庇う」
あ、アカンわ。
まだ頭が現実に追いついとらん。
ここは一応、フォローしといた方がええんかなぁ。
「まさか現世でお子さん作っとるとは思いませんでしたわ、那由他隊長……ああ、今は那由他さん、なんて呼びはる方がええんかな?」
「那由他姉様にお子がいる訳がないだろう!?」
「那由他隊長のお子を傷つける訳がないだろう!?」
……もうこの二人、頭ん中がアカンわ。
砕蜂ちゃんも狛村隊長も自分の仕事を忘れてはる。
この人心掌握術は藍染隊長そっくりですわ。
いや、頭ん中でどんだけ色々な事考えとるか分からん思考能力も桁外れなんやけどな。
「何や、そない驚く事ですか? そら二十年も人間として暮らしとったら子供の一人や二人くらい」
「三人いますが」
「 」
あ、砕蜂ちゃんが倒れてもうた。
ああ、そうゆう事ですか?
――ここで隊長格の戦力を削って強制的に尸魂界へと撤退させる。
ホンマのボクらん仕事はルキアちゃんを囮にした浦原喜助の捕捉と処分。
それが分かってんやろな。
なら、表向きの理由であるルキアちゃんをさっさと連れ帰れば、黒崎一護が尸魂界へ向かう理由もできはるし、何より浦原喜助を動かす事も出来る。
なんやかんや浦原喜助が動くんならボクらは結局損せえへんし、護廷としても黒崎一護を迎え撃つこれでもかゆう大義名分ができはる。
例え那由他ちゃんの息子(笑)ゆうても、浦原喜助が裏で関わってんなら護廷が動かんはずがあらへん。
更に言えば、ここで志波──ああ、今は黒崎一心ゆうんか──の名前を出せば護廷の反感を買えるやん。
藍染隊長が「殺す」ゆうてはるんは那由他ちゃん知らんはずなんやけど……完璧なフォローやな。
これで藍染隊長が手を下さんでも黒崎一心を処分できる下地が出来上がっとる。
しかも、これで父親まで失えば黒崎一護は精神的にかなり追い詰められるやろな。
そこでトドメの、ルキアちゃんを救えた思ったら今度は那由他ちゃんが藍染隊長に連れ去られる、と。
那由他ちゃんは英雄を信じてはるみたいやし、その負荷が藍染隊長の壁になる成長に必要なんやろ。
で、藍染隊長は自らを高める恰好の踏み台を手に入れる、と。
うわ~、この兄妹えげつない事考えてはるわ……。
ここまで予想して出てきたっちゅう事やん?
そら藍染隊長も『那由他に任せて良い』なんて言いますわ。
ん?
せやったら、藍染隊長と仲悪いフリしとるボクは那由他ちゃんとも仲悪い方がええんやろか?
那由他ちゃんと会うんは20年ぶりくらいなんやけど……どういう感じで会話すればええん?
こら難易度高いですわぁ~。
まあ、とりあえず那由他ちゃんに丸投げしときましょ。
「そないな霊圧振りまいても、殺気は込められてへんから大してこわないですよ?」
「これは……」
何や言い澱んでもうた。
マズイ質問だったやろか。
「威嚇、か」
「それです」
朽木隊長の反応に速攻で食いつきはった。
ああ、そこは察しておいてほしかったんやな。
いや、せやからボクにそないな期待されても困るんですけど……。
アカン、お腹痛くなってきはった……。
「……我らの標的は兄も気付いていよう」
「ルキア、のはずです」
「表向きは」
那由他ちゃんの顔が渋くなった気がしはる。
あの様子ならまだ浦原喜助は黒崎一護に隠したいゆう事やろか。
流石にボクらの目的に気付いていない、なんて事はありえへんやろ。
「那由他姉様……お、おおおお、おっ、相手は、は……?」
「何のでしょう」
「黒崎一護の父君はどなたなのか、ワシも聞きたく思いますぞ」
「一心殿です」
はい、黒崎一心の処刑が決まりましたわ。
これで藍染隊長もご満悦やろ。
「……殺す。二撃もいらん。一撃で殺す。確殺だ。卍解でもって確殺だ」
砕蜂ちゃんの瞳から光が消えてもうた。
まあ、前からの入れ込みようは知っとったけど、那由他ちゃんの誘導はえらい凄いなぁ。
じゃあ、ボクはあと何すればええんやろ。
ああ、黒崎一護でも焚きつけとけばええんやろか?
他にはルキアちゃんをさっさと持って帰るくらいやし?
「ち、違ぇ!?」
と、思っとったら黒崎一護が何や声を上げた。
「
『なん……だと……!?』
あ、固まっとった人たちが一斉に息を吹き返しよった。
いや、これマズイんとちゃう?
那由他ちゃんの計画的にアカンとちゃう?
う~ん、黙らせた方がええんやろか?
「君は黙っとき」
ボクは瞬歩で彼の背後へ移動、意識刈り取るくらいの強さに調節した手刀を振る。
「一護は殺させませんよ」
何で那由他ちゃんが邪魔するん……!?
振ろう思た手首をがっしり掴まれてんけど。
その速度なんなんやろ。ボク、これでも現役護廷の隊長ですやん? 何で現役退いて20年も経っとる人の動きに追いつけないん?
こん人、現世で人間やっとったんやろ?
ボクのこれまでの努力とか軽く超えてくる才能に理不尽しか覚えませんわ。
あれ?
そもそも、何かボク間違った事したんかな?
那由他ちゃん助けるつもりやってんけど。
分からんわぁ~……。
まあつまり、アホみたいな勘違いは直してええゆう事ですか。
もっと誰にでも分かりやすく誘導してくれはりませんかね。
帰った後で藍染隊長に霊圧あてられるのだけは勘弁したいんですわ。
「貴様、市丸! 那由他姉様になんて事をする!!」
砕蜂ちゃんもかぁ~。
もうボク黙っときますわ……。
泣いてもええんちゃうかな。
「産みの親が違おうと、この子は私の息子です」
「だから違っ!? いつまで俺の事をガキ扱いすんだよ!?」
そら護られとる内はガキ扱いやろ。
何言っとるん、この子。
『那由他は黒崎一護の精神の拠り所となっている。彼女にとっては自身が傷つく事も計算の内だろう。そして、その絶望こそが英雄の進化に必要な過程であると見据えている。その点はよく覚えていてくれたまえよ、ギン』
ああ、藍染隊長がなんやそないな事を言ってはったなぁ。
う~ん?
とりあえず那由他ちゃんを少し斬ったらえんやろか。
ああ、そうすればボクが護廷から睨まれて藍染隊長が自由に動けるんやな。
憎まれ役か~。
まあ、ええんやけど。今更やし。
「では、那由他姉様が好意を抱いている人物はいらっしゃるのですか!?」
砕蜂ちゃん、まだその話続けるん?
「私の好きな人はいますよ」
『なん……だと……!?』
この下り、何回続けるん?
流石にもう飽きてきたんやけど。同じボケは二回までですやろ。
「ワシの知っている方でしょうか!?」
「ええ」
「私の知っている奴ですか!?」
「はい」
「……私の知っている者か?」
「もちろん」
「お、俺は……?」
「そうですね」
何で皆一斉に聞いてはるん?
もうややわぁ、ボクまで聞かなあかんやないですか。
なんや、適当にお茶らけとればええやろ。
「ボクの事が好きなんですか~?」
「好きですよ」
『……は?』
あ、これアカン。
地雷踏んだわ。
「い、いいいいいいいい市丸ゥゥゥゥゥゥ!!??」
「市丸隊長は兄君と仲が悪くて有名ですぞ、那由他隊長!?」
「おま、馬鹿!? それをここで言うか!?」
「……」
「に、兄様!? お気を確かに……!」
え、もしかして那由他ちゃんの抹殺対象にはボクも含まれとるんですかね?
ボクが藍染隊長とか那由他ちゃんの隙を伺ってはるんバレバレ?
牽制? 嫌がらせ? 考えなし……な訳ないやろなぁ。
まあ、これでボクの行動に対する注目度が抜群になったんやけど、なんやろ。
納得できへんわぁ……。
▼△▼
早くルキア連れ帰ってくれないかな~……?
何故か隊長たちがわちゃわちゃし始めているから逃げても別に良いんだが、それだと俺がルキアを見捨てたみたいに見えちゃうじゃん。
現時点で苺からあんまり疑いの眼差しは受けたくないんだけどなぁ。
市丸だけじゃなくて皆好きだよ?
BLEACHに出てくるキャラは基本的にみんな好きだし。
特に好きなキャラが苺とルキアってだけで。
ただ、調子乗って苺の母親気取ってみたけど、本人から全力で否定されて結構悲しいんじゃ。
霊圧ブッパしたのは、なんて言うか、ほら、ルキアが苺の事を俺のご子息なんて言うからさ。
ちょっとテンション上がっちゃった。てへぺろっ☆
周囲の整に影響与えたらマズイからすぐに控えたけど。
白哉のフォローが光るね。俺的にポイント高いよっ!
昔馴染みだし始解の訓練にも付き合っていたからか、市丸くんよりかは好きかもしれん。
まあ、君には緋真さんという永遠の恋人がいるから俺なんかいらんだろうが。
あと、そいぽんもワンちゃんも可愛いよね~。
なんかじゃれてくる近所の子って感じ。
冬獅郎きゅんには桃ちゃんがいるんだから、俺は出しゃばりません。
ただ、現状のカオス具合がよく分からん。
「散れ”千本――」
「兄さまぁぁぁ!!??」
一護もショック受けてるし、ルキアは何か向こうでキョドってるし。
というか白哉のキャラ崩壊が酷い。
限定霊印受けてても霊圧が抑制されるだけで始解も卍解も出来るからね。
でも被害者(?)であるはずのルキアが必死に兄の始解を止めている姿は何というか、シュール。
市丸くんは無言でお腹さすってるし。
なんなん?
まあ、一応苺のフォローでもしとく?
「私が一番愛しているのは一護ですよ」
「それ母親としてだろぉ!?」
いや、結婚するなら苺がいいレベルなんじゃが……。
別に本気でしようと思っている訳でもないけれど。
苺の相手として可能性があるのはルキアか織姫ちゃんかね。
個人的にはルキアを推したいが、織姫ちゃんの恋が叶って欲しいとも思っている。
悩ましいですな~。
俺が邪魔する訳ないやん?
脳内妄想で十分なんだ、俺は。
男としての意識もあるし、ぶっちゃけパートナーとしての憧れはあるが、流石に致したいとまでは思っていない。
いや、だって、ねえ?
男らしさに萌えは感じるけどさ、恋の感情が燃え上がる事はありえないよ、流石に。
やっぱ200年も生きてるからか、頑張ろうとする子を愛しく思っちゃうんだよねぇ。
家族を護りたい一護。
信愛に憧れるルキア。
恋と友情に揺れる織姫ちゃん。
過去から今を見つけたチャド。
自身の在り方を自問する雨竜くん。
あと、力を使う
みんな尊いし愛しい。
大好きだし、可愛いし、愛してるし、キュンキュンしてしまう。
つまり、男女の恋愛は俺にはまだ分かってないという事だ。
そんな奴が結婚とか恋人なんて本気で考えている訳ないやん。
あくまで理想とか憧れだよ。
死神時代も好かれてはいただろうけどアプローチとかされた事ないし。
やっぱり美女でもこの愛想の無さが駄目なんだろうな。
ヨン様からは「那由他はそのままで良いんだ。むしろ僕から離れてはいけないよ?」なんて忠告ももらったし……。
やっぱり男としての意識が強いと男友達くらいの感覚でしか想われていないのだろう。
そいぽんは憧れが強いしね。
俺の人間関係構築術が下手くそすぎて、今でも十分恵まれているのだ。
高望みはいかん。苺とルキアの輝きを近くで見れるだけで満足です。
なんて考えながら、この場はどうやったらまとまるのだろうと一応悩んでいた時だった。
「何やっとんねん、逃げるで」
あら、平子さん。平子さんじゃないですか!
え、このタイミングで出てきて良いの?
「その話術には寒気すら覚えるけど、今は良いわ」
なんで?
俺ってば結構考えなしに喋ってるからどうにかしなきゃなと思ってるんだけど。
まあ、考えてるだけで全く現実に活かせてない点でお察しだよね。
「な、誰だ貴様は!?」
「むぅ、新手か!?」
そいぽんとわんちゃんが反応してる。
この二人は特に俺の事を気にしてくれてるからな~。
ちょっと曇らせたくなっちゃう要素多いんで心惹かれる部分はあるんだけど……。
いやいや、俺は苺とルキアの活躍を見たいのだ!
浮気ダメゼッタイ。
「帰って報告しとき、
「市丸の事かぁあぁあ!」
「え、砕蜂隊長? ボク、別にそないな事考えとらん……」
「てめぇは別に処分されねぇよ。袋叩きにされるだけだ」
「えぇぇ……日番谷隊長、それ八つ当たりちゃいますん?」
「那由他隊長の伴侶として相応しいか、帰ってからワシがじっくりと判断させてもらおう」
「狛村隊長は那由他さんのお父さんか何かなん……? そもそもボクの意見……」
「「貴様! 那由他隊長/姉様が相手で不満があると申すか!!」」
「……」
「兄様、兄様あぁぁぁぁ!?」
「誰かボクに優しくしてもバチ当たらんよ……?」
もう阿鼻叫喚すぎて訳ワカメ。
てか、ルキア? さっきまでの悲壮感どこいったん?
実は君、結構余裕でしょ?
どうしよっかな。
何か苺も意気消沈してるしさ。平子さんは引きつった顔してるしさ。
あ、浦原さんの霊圧だ。
みんな気付かないもんなんだね。
でもここで言ったら余計混乱しそうだし、余計な事は言わんとこ。
「行くで」
言葉少なに平子さんに促される。
傷を負い過ぎて碌に動けない苺と雨竜くんをそれぞれ両肩に担いだ。
「ぜってぇもっと強くなってやる……俺に対する見方を変えてやるんだ……」
「……奇遇だね。僕も同じ想いを抱いたところだ」
その決意をこの流れで得られたの?
まあ、結果オーライだからヨシ!
頑張ってルキアを救ってくれ!
「あ、那由他姉様!?」
「また会いましょう、砕蜂」
「はい! お待ちしております!!」
え、俺が瀞霊廷に侵入する事バレてるん?
それってダイジョビ?
「市丸隊長はワシが性根を叩きなおしておきます!」
「ちっ……。俺は別に……」
「……」
「にいさまぁぁぁぁ……」
「ボク、ほんま来なければ良かったわ……」
こうして(?)ルキアは尸魂界へと帰っていった。
なんか思ってたんと全然違うんじゃが……?
原作どこいったし。
ん~、とりあえずルキアを助けに尸魂界へ行く苺たちの修行をしてあげようか。
見た感じ何故か護廷の人達が思ったより
だって恋次は苺に勝てないやろと思ってたのに良い勝負するんやもん。
俺の実力は普通の隊長格は超えてるはずだし。それでもあの五人が一斉にかかってきたら結構やばそうだった。
まあ、相手は限定霊印あるし俺が卍解すれば負けんだろうけどさ。始解レベルじゃちょっとキツそう。
苺大丈夫か……?
原作より強いから心配してなかったんだけど、今日を見る感じ白哉に勝てる苺の未来が見えないんじゃが。
これは浦原さんメニューに加えて俺も強化に役立ってあげた方が良さそうだ。
流石に「ルキアを救えませんでした!」は避けたい。
ただし、あんまりフォローしすぎても苺の輝きが減るから、尸魂界では京楽さんとか山じいとか強い人たちを俺が引き付ける感じに動けば良いだろうか。
山じい動いたら詰むなぁ……。
流石に卍解してもキッツイ。虚化を加えたら勝てるとは思うんだけど……。ぶっちゃけ勝率60%くらい?
”残火の太刀”の火力を俺の斬魄刀の能力で
いや、あれって”火”に効くのか?
あ、それなら
あっちなら炎熱系最強の”流刃若火”が相手でも火力負けしなさそう。
あれだよ、”火”のエースに”マグマ”の赤犬が勝った感じのやつ。試してみないと何とも言えんけどさ。
いずれにしろ、山じいに勝てるとは思ってないんよ。
経験とかその他諸々で圧倒的に俺が劣ってるんだからさ、勝てる訳ないやん?
どっちにしろ、最終的に俺はヨン様に殺されるか実験動物にされるんだろ?
殺されそうになったら素直にやられた方が苺が頑張れるだろうしなぁ。
今のお兄様がどれだけ強いかは知らんが、ラスボスに勝てるとまでは思ってないし。
ぶっちゃけ、俺って虚相手にしかまともに戦った事ないから、どのくらい死神相手に戦えるか分かってないんよねぇ……。
SS編の最終場面、マジでどうすっかな……。
ノリと勢いで誤魔化すしかないか!
▼△▼
「とりあえず、護廷の矛先をアタシや一心サンから市丸サンに向けた話術は見事ッス! あの発言量での誘導は流石です!! 助かりました!!! ……えげつなさが半端なかったッスけどね」
那由他サンを絶対に敵にはしたくないです。
今回でその想いが強まりましたね、ホント。
しかし、これで那由他サンが市丸サン、ひいては藍染サンや東仙サンの動きに牽制をかけたのは伝わりました。
市丸サンの行動は著しく制限されるでしょうね。
その分、藍染サンと東仙サンはフリーになりますが、アタシの今後の計画を実行する点で考えてみれば、なるほど。藍染サンにはある程度動いてもらわないと困りますし、絶妙な一手と言えるでしょう。
恐ろしい事です。
これも”目”で見通したのでしょうかね。
いえ、彼女に見えているのは恐らく未来の一場面や分岐する箇所のみ。
具体的な場のやり取りは把握できていないはずです。
この考えは那由他サンの行動が積極的なものでなく、あくまで見守るスタンスである事に起因します。
彼らの行動を指示するのではなく誘導。
これは彼らの本来の行いが未来に進む一番のカギだからでしょう。
つまり、彼女はシチュエーションを用意するだけ。
その後の展開を予知していても一言一句を把握しておらず、だからこそ自身の存在がイレギュラーとなる事を避けています。
そして何よりも、彼女の困惑や葛藤が時々読み取れるのが大きいです。
黒崎サンの修行に有沢サンや井上サンが加わる事も止めたそうでしたし。
今は傷ついた黒崎サンの治療と、今後の方針について語った後日です。
『ルキアを助けにいく』
その決意をした黒崎サンに同調したのは五人。
茶渡泰虎。
井上織姫。
石田雨竜。
有沢たつき。
そして、藍染那由他。
フォローとしてアタシや夜一サンが付きます。
現世を手薄にする訳にもいかないので、今回は仮面の皆さんには残ってもらいましょう。
そもそも、死神同士のいざこざは興味ないでしょうし。
彼らの目的は藍染惣右介の打倒。
それのみです。
お留守番で決定ですね。
という訳で、早速黒崎サンの修行パートになった訳ですが……。
「終わりですか」
「まだまだぁぁぁ!!」
「甘い」
「ぐぅっ!?」
那由他サンが予想以上にスパルタっすねぇ……。
那由他サンの愛情が親愛である事を再認識させられ結構ショックを受けていた黒崎サンと、何か井上サンも少しショックを受けていたのは……。逆に石田サンなんかの安堵したような反応も、ムフフ。
いやぁ、青春は甘酸っぱいですねぇ!
石田サンは黒崎サンに触発されたのか、茶渡サンと訓練してますし。
黒崎サンと井上サンだけでなくこの二人の面倒も那由他サンが見ているのは流石ッスかねぇ。
ただ、アタシとしては井上サンは攻撃に向いていないと思っているのですが、
「織姫さん、拒絶する対象を明確に」
「っ……! はい!」
随分と戦闘向きな訓練をするんですね。
なんででしょう。
……黒崎サンだけでは足りない?
黒崎サンは自らの斬魄刀の名前を知る事に既に成功しています。
常時解放型の斬魄刀なんて初めて見ました。
黒崎サンと井上サンのコンビネーションを重視しているように見えるのは……井上サンの能力によるものですか。
恐らく、彼女の能力は『事象の拒絶』。
”傷ついた”という事象を拒絶する事で回復し、”物体の結合”を拒絶する事で対象を切り裂く。
いやぁ、随分とチートじみた能力な事です。
その可能性を広げたいのでしょう。
そして、藍染サンに届くためには現状の実力では圧倒的に足りない。
その事実が彼女のスパルタ訓練に反映されているのでしょうね。
今までは修行に難色を示していた彼女がここにきてやる気を見せている点も、彼女の知っている未来から少しずつズレてきているからだと予測できます。
――つまり、英雄である黒崎サンのみならず仲間の皆さんの強化が必至。
『私を始解させてみなさい』
それがこの修行における合格点。
無茶言いますよね……。
『出来たら、私の実力を少し見せましょう』
お願いですから熱が入り過ぎて本気出さないで下さいね、那由他サン?
ここ、一応お店の地下なんで……。
そもそも、
――貴方が本気を出したら、空座町が地図上から消えますよ……?
▼△▼
「彼方を駆けよ──”天輪”」
俺は那由姉の強さに愕然としていた。
それは隣にいる井上もそうなのだろう。
いつも優しく、俺たちを包み込んでくれるような愛情を与えてくれる人。
そして、俺たちを陰に日向に護ってくれる人。
ただ、俺はもう、この人に護られるだけの存在でいたくなかった。
俺は──この人のガキじゃねぇ!
そう思って励んだ修行の最後。
俺は那由姉の力の片鱗を垣間見た。
「とりあえずは合格ですが」
那由姉がいつものように感情の起伏の少ない声で話す。
しかし、この人から伝わる霊圧だけで俺と井上は地に膝をついていた。
なんつう、圧力だよ……!?
「あなたの持つ”月牙天衝”を、もっと強くなさい」
「どう、やって……!」
「貴方の”月牙天衝”は体内の霊力を斬撃として具象化し飛ばすものですね」
那由姉は斬魄刀を構えたまま、俺の模倣となるべき技を繰り出した。
「光牙墜衝」
瞬間、光の奔流が俺と井上を飲み込んだ。
見ただけで分かる。
むせ返るほど濃密な霊圧。
喰らった時には「あ、死んだ」と感じるに十分なものだった。
しかし、光が消え去った後の俺たちには傷一つついていない。
どういう、ことだ……?
「今は光のみを飛ばしただけです」
「え?」
「光に当たって痛みを感じた事がありますか」
「いや、ない、けど」
あれには霊圧が宿っていた。
にも関わらず、ダメージがない?
「今の貴方の”月牙天衝”はただ霊圧を相手にぶつけているだけに過ぎません」
那由姉は口下手だからか、俺が理解できるまでに随分と時間がかかったが、どうやら霊圧コントロールによって技の威力は桁違いに上がるらしい。
那由姉は光を操る。
その攻撃は、言ってしまえばただ眩しいだけだ。
しかし、それで魂魄にダメージを与えるには
そしてさっき俺が受けた技には霊圧が籠っていたが、俺と井上に当たる瞬間に霊圧を俺たちの魂魄に同調させたのだ。
意味が分かんねぇ……。
そんな事が出来るのか?
「鬼道を相殺する技術の応用です」
「そんな異次元レベルの調整が出来るのに何で時々霊圧を馬鹿みたいに上げるんッスか? いや、目的は分かってるんですけど、心臓に悪いッス」
「……」
浦原さんに指摘された時の那由姉の顔が気まずそうだったのは何でだろうか?
那由姉は俺たちだけじゃなく、チャドやたつき、石田の特訓にまで付き合っているそうだ。
ここまで面倒みられて、しかも尸魂界にも付いて来るらしい。
どうやら、那由姉は元々死神だったみたいだ。
何かの事情で尸魂界を追われる事になったようだが、その詳細を語ってはくれなかった。
『私がお兄様に捨てられただけです』
こっそりと教えてくれたのはこの一言だけ。
那由姉に兄貴がいたなんて驚いたが、それ以上にこの人を捨てたというのが信じられなかった。
以前、井上の兄貴相手に言った言葉を思い出す。
妹を傷つける兄貴なんて、俺は死んでも許さねぇ。
──那由姉は、俺が護る。
この人を捨てたとかいう兄貴、『藍染惣右介』にはぜってぇ一発ぶちかましてやる!
そんで、俺がもう護られるだけのガキじゃない――”男”だって事を思い知らせてやる。
俺はルキア救出と同時に胸に抱いた決意を新たにし、尸魂界へと一歩を踏み出した。
▼△▼
「あの、
ギンの言葉に私は満面の笑みで答える。
「前からの計画で伝えていただろう?」
「せやけど、ボクもう随分と皆から目の仇にされてるんとちゃいます?」
朽木ルキアの処刑に合わせて、必ず那由他は私の前に壁を用意してくれる。
そのためには、私がある程度自由に動ける場を用意する必要があった。
だからこそ、以前からギンには私と仲が悪い印象を周囲に与えるように動いてもらい、いざ動くタイミングになった際には私を
「だからこそ適任なんじゃないか。那由他には感謝しないとね」
「はは……、そうですねー」
ギンは引きつった笑みを残してこの場から去っていった。
私の計画をフォローしながらギンに対して動くべきタイミングが今ではない事も伝える那由他の一言。
ここまで私の予測を読み切った上でベストな動きを見せる那由他に私は笑みを深める他ない。
「那由他様は、市丸ギンを切り捨てるつもりでしょうか」
「違うね」
「では?」
要は去っていったギンの方向へ顔を向けながら私へ問うてくる。
「簡単な事さ」
笑みが深まってしまう。
那由他が本気でギンの事を好いているとは思えない。
ならば、彼女が用意したいのは、
「兄である僕と想い人であるギン、両方から同時に裏切られるシチュエーションを設定・演出したいのだろうね」
「なるほど」
要が一度頷き、自身の見解を述べてくる。
「つまり、護廷と黒崎一派に精神的試練を与えつつ、未だ我らの側に付いている事を悟らせないための悲劇を演出する、という事ですね」
「その通りさ」
彼女の謡う未来に心が躍る。
さあ、早く来るといい、黒崎一護。
君はその時に大切な人を再び無くす。
私という悪を明確にする。
立ち向かうべき大義名分を得る。
さすがの浦原喜助と言えど、完璧に現世に馴染み周囲へ愛情を振りまく那由他を疑い切れてはいないだろう。
「素晴らしいよ、那由他」
ここまでの擬態。私であっても騙されそうになる。
未だその心は私のために動いてくれている事を知らなければ、私とて焦っていたことだろう。
黒崎一心に関しては王鍵創成の時でも問題はない。
まずは朽木ルキアから崩玉を取り出す方が先だ。
ここからだ。
ここから、私と那由他の歩む道が築かれる。
那由他が育てた英雄が私の前に立つ光景を幻視しながら、私は悦に浸った笑みを零し続けていた。
次回からSS編に入りまーす
一話長い? こんなもん
-
今まで通りで
-
短くて良いからもっと更新
-
遅くなっても良いからもっと長く