ヨン様の妹…だと…!?   作:橘 ミコト

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襲来…だと…!?

「泊まりたい!? ウチに、ですか?」

 

 あたし──井上織姫の家に突然訪れたのは、十番隊の副隊長という肩書を持つ松本乱菊さんだった。

 

「今日はたつきちゃんもいますから、いいですけど、なんで……「ナイス即答!」いたたたた!?」

 

 あたしを押し流すかのようにグイグイくる乱菊さんにしどろもどろになりながら、あたしは乱菊さんを自宅へ迎え入れた。

 

 今日の戦闘で援軍として来てくれた死神のみんな。

 それぞれが現世で過ごす場所を探していたみたいで、乱菊さんはあたしの家を頼ってきたようだ。

 

 那由他さんたち、確か“破面(アランカル)”っていう存在が去っていった後の惨状は筆舌に尽くしがたい。

 

 怪我を負ったのはあたしを除けば二人の男の人と戦ったたつきちゃんと茶渡くん、それと黒崎くんくらいで、那由他さんと戦った他の面々は無傷。

 あの人が言っていたように、本当にただ()()()だけなんだろう。

 

 ただ、あたしも先の戦闘で負傷したが、それでも確かな手応えを感じている。

 黒崎くんや、みんなの助けになっている。

 たつきちゃんも内なる虚との折り合いがついたと話していた。

 

『やられっぱなしはムカツクってさ』

 

 なんて言っていたけど、なんとなくたつきちゃんらしくて少し笑ってしまった。

 

 今は回復のために寝ているたつきちゃんだが、あたしの能力とたつきちゃん自身の能力で外傷はほとんど残っていない。

 単純な疲れを取るためと霊力の回復らしいけど、あれだけの大怪我を「寝れば治る」と言う感覚はどうかと思う。

 

()()に拘る未練みたいなものなんてないわよ、別に。使えるもんは使って強くなる。そんで、大切な人を護る。それが出来れば上等ってもんよ』

 

 ……たつきちゃんは、やっぱり凄いな。

 

 那由他さんや黒崎くんとの付き合いが長いだけあるや。

 

 

 それでも、黒崎くんが前を向けたキッカケは──朽木さんだった。

 

 

 朽木さんは優しくて、キレイで。

 そして、強くて。

 黒崎くんを元気にしてくれた。

 

 そんな彼女の事が大好きなのに……。

 

 普段は()()()()()思わないのに、ふと一人になった瞬間になると全然ダメだ。

 

 だからだろうか。

 お風呂に入っている乱菊さんからの扉越しの質問に、あたしは壁を取り払われてしまった。

 

「……あんたさ、なんで今日そんなに元気ないの?」

 

 那由他さんの現状を見て、皆が奮い立っている中で。

 あたしに対してオブラートに包むことなく投げかけられた言葉に、あたしは息が詰まる程の恐怖を覚えた。

 

 

 あたしは──自分の心配を、自分の醜さを隠そうとしていたから。

 

 

「朽木さんって……凄いですよね」

 

 思わず出た言の葉は、あたしの想いを包み隠すことが無かった。

 自らの内に秘めることで、誰も傷つかず、誰をも護れると思っていた。

 

 しかし、今日の光景を見ては、ダメだった。

 

「あんなにずぅっと、元気がなかった黒崎くんを。一瞬で、少しの会話で元気にしちゃうんですもん」

 

 これは、誇れる感情じゃない。

 

 誰に対してではなく、自分に誇れる行動をしようと前を見据える彼に対して。

 世界を愛するように、あたしたちを愛してくれたあの人に対して。

 

 あたしの想いは──酷く醜いモノに思える。

 

 

「黒崎くんが元気になれば良いと思ってた。あたしも那由他さんを取り戻そうって頑張れてた。でも……なのに……あたし、朽木さんに嫉妬してた……!」

 

 

「バカね……」

「乱菊、さん?」

 

 いきなりガラリと開いた浴室の扉。

 洗面所で体育座りをして俯いていたあたしに、彼女は濡れたままの身体で唐突に抱きついてきた。

 

「一護はまだ一人で立てないガキだから、今のあの子にはあんたも朽木も必要なの」

 

 押し倒されるように上からかけられた声の優しさは、まるで母のようであり姉のようであり。

 どこか、那由他さんを彷彿とさせた。

 

「妬いて何が悪いの。あんたはそうして、自分の悪いところをちゃんと受け止めようとしてるじゃない」

 

 だからだろうか。

 恐る恐る見上げた先にあった乱菊さんの瞳から、目が離せなかった。

 

「知ってる? 逃げ回って相手にぶつけた方がどんなに楽か。逃げずに受け止めようとしてるだけ──あんたは充分カッコイイのよ、織姫」

 

 勝手に涙が浮かんでくる。

 強くなろうって、そう思っていたのに。

 自分の弱さに嫌気が差して、惨めな気分だったのに。

 

 それを、カッコイイと言ってもらえるなんて、考えてもいなかった。

 

「よーしよしよし! 泣け、このヤロウ! あたしのムネでどーんと受け止めてやらぁ!」

 

 幼子のように抱きつくあたしを、乱菊さんは温かく包んでくれた。

 

 黒崎くんだけじゃない。

 乱菊さんも、朽木さんも。

 たつきちゃん、茶渡くん、石田くん。

 

 他にも多くの人へ、あたしは胸を張れる存在でいたい。

 

 だから、彼女の言葉に決して甘えてはいけない。

 でも、無視してもいけない。

 

 あたしの強さを確かな形として表してくれた、彼女の期待に応えたい! 

 

「あーあ、良いところは取られちゃったか」

「たつきちゃん……?」

「ごめんね、たつき!」

「そんな笑顔で謝られても苦笑しか出ませんって。それに、織姫が元気になれたなら良いんです」

「懐の広い女ねー」

「良い女でしょ?」

「違いないわ。苦労しそうだけど」

 

 カラカラと笑う二人に、あたしはポカンとした顔しかできない。

 

 今日、あんな事があったばかりなのに。

 ウジウジとしていた自分が急に恥ずかしくなる。

 

 二人は別に悲しんだり悩んだりしていないわけではない。

 

 それでも前を向ける、とっても強い人たちなんだ。

 

 

 ──そんな人たちと、あたしは肩を並べたい。

 

 

 胸に軽く手を当てる。

 そして、強く拳を握った。

 

 

 そんな時だった。

 

 

 

 

 

 ()()()と同じ、強い霊圧を感じ取ったのは。

 

 

 

 

 

 

 ▲▽▲

 

 

 

 黒崎家。

 

 そこでは俺──黒崎一心と一護、そして朽木ルキアちゃんが対面していた。

 

「……良い顔になって戻ってきた息子にハグしようとしたら、ボクを射殺しそうな後輩がいるんだけどぉ」

 

 軽口叩かなきゃポンポン痛くなっちゃうわ。

 

「ルキア。前から気になってたんだけどよぉ」

「なんだ」

「お前、どうして親父に対してえらい敵意持ってんだ?」

「それは一心殿が一番理解しているはずだ」

 

 あのぉ……、申し訳ないが分かってないです、ハイ。

 

「いや、今は良い。母を奪われた家族に追い打ちをかけるような事など流石にしない」

「はぁ?」

 

 これには一護も困惑顔である。

 しかし、俺はピンと来たね! 

 

「……もしかしてだけど、ルキアちゃん」

「なんだ」

 

 

 

「俺と那由他さんが夫婦だと思ってる……?」

 

 

 

「ん?」

「はぁ!?」

 

 ルキアちゃんは片眉をピクリと上げ、一護は驚愕に顔を歪ませた。

 あぁ、そ~ゆうことねー。

 

「いやいや、んな訳あるかよ」

 

 一護に鼻で笑われる父の悲しさよ。

 

「いや、一護が母だと言って──」

「だ・か・ら! 母親()()()()モンだって言っただろ!? そもそも黒崎を名乗ってねぇだろうが!?」

「なん……だと……!?」

 

「母さん! 聞いてくれ母さん! 俺は母さん一筋だーーー!!」

 

「……ほれ、()()を見ろ」

「なる、ほど」

 

 どこか納得がいかないような顔をしていたルキアちゃんだが、眉間の険は取れた。

 首の皮一枚は繋がったようである。

 

 そもそも、俺なんかが那由他さんと夫婦なんて烏滸がましい。

 

「……そら、女性として魅力的である事に違いはないが」

 

「「あ?」」

 

 二人揃ってドスの利いた声を出すのはやめてくれませんか!? 

 

「違う! 違うぞ!? 俺はただ憧れてるだけで、別に今も好きとか、そういう訳じゃ!」

 

「今、()……?」

 

 これが墓穴を掘るって事か! 

 

 一護が心底嫌そうに頬を引きつらせている。

 そんなに嫌がらなくても……。

 

 待て。

 

 もしかして、だが……。

 

「一護、お前、もしかしてだけど……。那由他さんの事を──」

 

 

 

 

「それ以上言ったらブッ飛ばす」

 

 

 

 

「ア、ハイ」

 

 小さい頃から自分にたっぷりの愛情を注いでくれる美人なお姉さんだもんなぁ。

 まぁ、そりゃそうなるか。

 

 うーん、織姫ちゃんよ、頑張れ。お義父さんは応援しているぞ! 

 

「分かるぞ、一護!」

 

 ここでルキアちゃんが腕を組みながら大きく頷いて同意を示してきた。

 ……え、同意? 

 

「那由他殿は見習うべき存在として素晴らしい方だ! 貴様が憧れるのも分かる!」

 

 うんうんと首を上下に振った後、ドヤ顔でサムズアップ。 

 どうやら恋愛感情ではなく親愛感情として受け取ったようだ。

 

 この子、こんな愉快な子だったっけ? 

 

「え? あ、おう」

 

 これには一護も照れくさいのか。

 頬を人差し指でポリポリと掻きながら顔を明後日の方向へと逸していた。

 

 うーん。

 我が息子ながら青春しとるな。

 

 

 俺も、一護も、ルキアちゃんも。

 

 あえて、現状の那由他さんについては触れなかった。

 

 それは、決して現実逃避ではなく、自らの力と敵戦力の力量差を痛感し、なお那由他さんの奪還を諦めていないからだ。

 

 一護は浦原さん、仮面の軍勢(ヴァイザード)の面々との修行で虚化を会得するために努力を続けている。

 今後はもっと厳しい内容の修行になるだろう。

 

 ルキアちゃんは尸魂界にて死神の力を取り戻した。

 見た感じ席官でもおかしくない霊圧も持っている。

 

 浦原さんから貰った義魂丸によって、俺も既に死神の力を取り戻している。

 

 それは一護も、もちろんルキアちゃんも目の前の俺から感じているのだろう。

 これでも元隊長なんだ。

 そばにいれば察するくらい出来るだろう。

 

 しかし、それについて二人が触れる事は無かった。

 

 俺も、一護も、ルキアちゃんも。

 前を向き、これからの戦いに向かう覚悟が出来ている。

 

 

 ──那由他さんと刃を交える覚悟を。

 

 

 ならば、ここで言葉にしなくても良い。

 

 今は、この世界にいる日常ってやつを噛み締めている。

 それが那由他さんが最も大切にしているものだと確信しているから。

 

 ただ、

 

「……」

 

 不安な心を必死に押し殺し扉の隙間から隠れるように、こちらを伺い覗いている夏梨がいた。

 

 こいつはもう、死神ってモンを認識している。

 母さんと俺の力の一端を継いじまったんだろう。

 父親として複雑だよなぁ。他の才能だったら両手を上げて喜べたんだけどよぉ。

 

『親父、あたしにも霊圧ってやつはあんのか? 親父の……一兄を助けるだけの力とか、才能ってやつがあるのか?』

 

 夏梨からこんな事を言われて。俺は何て応えるのが正解だったんだろうな。

 あの強気で斜に構えた夏梨が、俺にこんなドストレートな言葉を投げかけてきたんだ。

 でも、いつもの馬鹿やって誤魔化そうとしたさ。

 

『……! バカ親父』

 

 いつもの罵倒でも呆れでもなく、泣くの我慢するように顔を歪めた娘の姿に、俺はどうすりゃ良かったんだろうな。

 

 

 ──なぁ、母さん。那由他さん。俺はやっぱり父親としては上等なモンじゃねぇな。

 

 

 眼の前でギャーギャーと那由他さんに関して盛り上がっている一護とルキアちゃんを視界に収めつつ、俺は夏梨の方へと顔を向ける。

 俺と目が合いビクリと肩を揺らした夏梨は、逃げるように二階へと上がっていった。

 

 でもよ。

 

 

 

 ──妹を護るのが兄貴なら、家族を護るのが父親ってもんだろ? 

 

 

 

 だから、俺は。

 

 那由他さん(家族)を護るために、この力を奮うんだ。

 一護(家族)を護るために、この力を振るうんだ。

 夏梨と遊子(家族)を護るために、この力を(ふる)うんだ。

 

 真咲(家族)を護るために、この力を。

 

 待ってろよ、藍染惣右介……! 

 

 

 

「では、何故に一心殿は護廷を離れたのですか?」

 

 

 

「へ?」

「それは俺も気になるな」

「あのぉ、それは、えっと……」

 

 二人の話をキチンと聞いていなかった俺はルキアちゃんからの質問に面食らってしまった。

 息子の前で母さんとの出会いや那由他さんとの再会エピソードを語るってマジ? 

 

 気恥ずかしくも俺の愛あふれるトークを聞いた二人は、最後には胃もたれしたような顔をしていた。

 

 

 そんな時だった。

 

 

 

 

 ()()()と同じ、強い霊圧を感じ取ったのは。

 

 

 

 

 

 ▲▽▲

 

 

 

 俺──阿散井(あばらい)恋次(れんじ)は浦原商店の前に居座っていた。

 

 護廷より援軍として駆けつけた俺たちだったが、あの破面たち以前に那由他さんに太刀打ちが出来なかった。

 瀞霊廷へルキアを救いに来た時、隊長格6人を相手に対等以上の力を見せつけたあの人だ。

 虚化した事で更なる実力を付けていても不思議じゃねぇ。

 

 それでも、俺たちは藍染の討伐を、那由他さんの奪還を諦める訳にはいかねぇんだ。

 

 だから、俺も力をつけなきゃならない。

 そのために必要なのは、一護を短期間で隊長格に匹敵する実力まで育て上げた浦原喜助の手を借りるのが最も効率的だ。

 

 今までの感情に蓋をしてでも、俺は強くなりたい。ならなきゃなんねえ。

 

 そもそもが藍染の陰謀で汚名を被っていた浦原喜助だ。

 今でも恨むのはお門違いってもんだろう。

 

 ただ、浦原喜助が『崩玉』なんてもんを作ったから始まった今でもあると、俺は自分の心に巣食う想いを消せずにいた。

 

 分かってはいる。

 

 那由他さんを助けるために尽くした結果だと。

 そして、同時にそれを利用した藍染の野郎の気持ちも、少しは理解出来てしまう自分に気が滅入りそうになる。

 

 頭を振る。

 

 違う。他人の犠牲の上に成り立つ自身を、あの人はきっと許せないだろう。

 何よりも、誰よりもこの世界を愛していたあの人は、きっと微かな笑みをたたえながら、自らを傷つけるように去っていくだろう。

 

 そんな事、俺が、俺らが許すはずがないって事もわかった上で、それでも那由他さんは──。

 

 目を瞑る。

 

 腕を組んで電柱により掛かる形で胡座(あぐら)をかき座る俺は、とにかく、浦原喜助の助力を勝ち取るつもりでいた。

 

「……店長~。まだいるぜ、アイツ」

 

 店の方から子供の声がする。

 どうして浦原喜助のところにいるかは分からないが、霊圧を感じ取れるところから訳アリなんだろう。

 

 元鬼道衆総帥である握菱(つかびし)鉄裁(てっさい)もいるんだ。

 ……思っていたのと違う浦原喜助の実像に当初は困惑もしたが。

 って、思考がループしちまってる。

 いい加減切り替えろよ、俺。

 

 

 

「あのぉ~、阿散井恋次サン?」

 

 

 

 と思っていたら、遂に観念したのか。

 浦原喜助が店から出てきて俺へと声をかけてきた。

 

「ウチにどのようなご要件ですかねぇ? アタシたちは別に護廷の方々へ用は無いんすけど……」

「俺にあるからここにいんだよ」

「まぁ、それはそうでしょうけど」

 

 俺は胡座から正座へと姿勢を正す。

 

「へ?」

 

 俺の態度の変化に奴は驚いた声を漏らすも、俺は無視して伝えた。

 

 

「俺を、鍛えてくれ。頼む……!」

 

 

 土下座する勢いで下げた頭の上から先程よりも強い困惑の気配が伺える。

 まぁ、当然だわな。

 

「一護は強い。アイツ自身の才能もあるだろうが、それだけであそこまで強くなれるとも思えねぇ。それを育てた人がいるはずだ。それは、アンタだろ。浦原喜助」

 

 視線を地面に向けたまま、俺は眼の前の人物に想いを吐露した。

 ただ、強くなり大切なモンを護れるようになるために。

 

「……」

 

 それを黙ったまま聞く浦原喜助の思考は読めない。

 そういう奴だろうとは分かっていても緊張はする。

 

「アタシだけの力とは口が裂けても言えないですけど……。阿散井サンの気持ちは分かりました」

 

 俺はその言葉にガバリと頭を上げる。

 

「そもそも、阿散井サンは()()()使()()()()()()()? どうして副隊長から隊長にならなかったんすか?」

「決まってんだろ」

 

 一つ息を吸い、

 

 

 

 

「俺がまだ、()()()()()()()()()()()じゃないからだ」

 

 

 

 

 ニヤリと口元を歪めた浦原喜助に対して、俺も不敵な笑みを返してやる。

 

「良いッスね。……分かりました」

 

 眼の前の胡散臭い天才は扇子で口元を隠し言う。

 

 

「貴方の特訓、承りました♪ ──そのためにも」

 

 

 そんな時だった。

 

 

「貴方の今の実力を、アタシに示して下さい」

 

 

 一転して鋭い目となった浦原喜助の目を見返す。

 

 

 

 ()()()と同じ、強い霊圧を感じ取ったのだ。

 

 

 

 

 ▲▽▲

 

 

 

 

 俺──グリムジョー・ジャガージャックは現世へと来ていた。

 

『その目で、見てきなさい』

 

 ウルキオラとヤミーが無様にも戻ってきた時点で、俺は死神共を始末してやろうと考えていた。

 それを見透かす、あの深い藍色の瞳に、俺は畏怖を覚えてしまった。

 

 クソがっ!? 

 

 他人に対して畏れを抱くだと? この俺が? 

 

 フザけるな! 

 

 誰に(はばか)る事なく、俺たちは現世へと来れた。

 それもアイツが許可を出したからだ。

 

 藍染(ボス)に真っ向から意見を言えるのはアイツくらいだろう。

 いや、意見じゃねぇな。ある意味で独断の指示だ。

 それを藍染は許容している。

 

 クソが。

 

 圧倒的な力。

 心酔させるカリスマ。

 包み込む慈悲。

 

 そして、断罪する覚悟。

 

 奴の優しさは、俺らに対する想いは本物だ。

 だからこそ気に入らない。

 ノイトラも同じようなモンを考えてるだろう。

 

 逆にハリベルやネリエル、ゾマリにアーロニーロは崇拝に近い。

 ザエルアポロは別の意味で信仰していて気色悪いが。

 

 スタークやバラガンらは態度にこそあまり表していないが、アイツを尊重している。

 あの十刃のトップ2を張る殺戮者たちが、だ。

 

 それでも、俺は気に入らない。

 

 ノイトラは自身の望みを正確に理解されているのが気持ち悪くも憧れている要因だろう。

 

 だが、俺は違う。

 

 俺は中級大虚(アジューカス)である時に、俺についてきていた、俺を王の器と信じていた奴らを喰った。

 

『俺はこれ以上強くなれない。だからグリムジョー、俺を喰って、お前は王となれ』

 

 そう言葉を残し、数多の最下級大虚(ギリアン)を喰った。

 

 今、俺の従属官(フラシオン)として残っているのは数人だけだ。

 

 

 ──ディ・ロイ。

 弱いくせに威張るのが好きなやつ。

 それでも、俺を王と信じて、俺と共に歩くために破面となった奴。

 小物だと周囲から馬鹿にされても、俺の従属官である事に、ある種の誇りを持っている。

 

 ──シャウロン・クーファン。

 自身の力を冷静に見れる、俺らの中じゃ珍しいタイプの奴。

 だからこそ、俺もこいつを頼りに出来る。俺と対等とも言える存在。

 

 ──エドラド・リオネス。

 脳筋なバカだが、その分言葉に嘘がない。

 力こそが自身を貫くもんだと信じる姿は嫌いじゃねぇ。

 

 ──イールフォルト・グランツ。

 ナルシストで他人を見下すが、それはこいつに限った話でもない。

 それに見合う努力を人知れずしているのは、こいつの美学ってやつなんだろう。

 そんな泥臭いところを含めての自信は、ある意味こいつらしい。

 

 ──ナキーム・グリンディーナ。

 最下級大虚の時から、自身の醜さを気にしていた。

 だからこそ、誰にもバカにされない力を貪欲に追い求めた奴だ。

 

 

 今はこれしか居ない、俺の同朋たち。

 

 那由他(アイツ)に拾われてからは奴の能力によって力の割譲が行われ、俺は最大級大虚(ヴァストローデ)に、他の奴らも中級大虚(アジューカス)となってから破面化した。

 

 ハッキリ言おう。

 

 

 

 ──俺たちは強い。

 

 

 

 初期に破面化した奴を除き、俺たち十刃と従属官に元最下級大虚(ギリアン)はいない

 

 それを成したのが那由他(アイツ)てのが業腹だが……。力こそが全ての(オレら)だ。

 なら、使えるもんはすべて使って。

 

 のし上がってやる。

 

 いつか、那由他(アイツ)すら喰らって。

 

 

 俺は、王と成る。

 

 

 そんなアイツが言ったんだ。

『その目で見てこい』ってな。

 あぁ、見てやろうじゃねぇか。

 

 てめぇの目が何を見たのか! 

 俺の目で、しっかり見届けてやるよ! 

 

 

「全員、捕捉は完了したか?」

「無論」

 

 俺の質問にシャウロンが返す。

 

 ウルキオラからの報告で、現世にいる死神を始めとした霊力持ちは既に割れている。

 こっちから仕掛けるのに造作もない。

 

 名前なんて知らねぇが、別に関係ねぇ。

 

「いくぜ」

 

 俺の背後で獰猛な笑みを浮かべる奴らがいる。

 

 俺は、こいつらの王だ。

 

 

 

「一匹たりとも、逃がすんじゃねぇぞ!!」

 

 

 

 今まで押し留めていた霊圧を爆発させ、俺らは侵軍を開始した。

 

 

『従属官が生きて帰れるとは思わない事です』

 

 

 うるせぇ! 

 

 見せてやるよ、俺らの実力を、俺らの覚悟を。

 

 

 那由他(テメェ)は黙って眺めてな!! 

 

 




ゆーぼ様より支援絵を頂きました!
人生で初めて頂戴したのでテンションが爆上がりしております。都市伝説じゃなかったんだ……。
『第34話:破面…だと…!?』における那由他の死覇破面の姿です。

【挿絵表示】

本当にありがとうございます!
これからも皆様に楽しんでいただけるような話を目指して更新をして参ります!
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