本編には関わりませんし短い内容ですが、未読の方はぜひご覧ください。
「考えてみな。那由他さんが虚と通常の意識の切り替えが出来るなら、って」
隊長の顔に戻った親父の言葉に俺──黒崎一護は気持ちを切り替え耳を傾ける。
「那由他さんが虚になった姿ってのは、皆が見ているはずだ」
忘れもしねぇ。
たつきやチャド、井上が倒れ、その中心で愉しそうに笑っていた奴だ。
あんなのは、絶対に那由姉じゃねぇ!!
「じゃぁ、一護が見たって言う“那由他”さんは?」
「間違いなく那由姉だった」
だから混乱してるし、皆が認めたくないって現実逃避みたいなジャレ合いをしてたんだ。
そんなモンは親父も分かっているはず。
……分かってるよな?
「その、『こいつ本当に大丈夫か?』みたいな目は止めてくれない!?」
俺以外も似たような目つきだったらしい。
そらぁ、
疑問点はもちろんある。
ただ、その数が多すぎて頭の中が整理できてねえ。
だから、こうやって話をまとめようとしてくれている姿勢にはすげえ感謝している。
親父じゃなければ。
「もうちょっと俺の事を信頼してくれても良いんじゃないの?」
「那由姉との関係を洗いざらい吐いてくれたらな」
「それは、ちょっと……」
なんでか知らねぇが、親父は那由姉の過去を俺に伝える事を渋る。
しかし、全てを語ってくれた訳じゃねえ。
特に、那由姉と藍染が絡んだ過去については殆ど語ってくれなかった。
当時の事を思い出すと、確か那由姉が事あるごとに口を挟んで情報を伝えないようにしていた。
何を知っても俺の那由姉に対する想いは変わらない。
でも、那由姉の知られたくない秘密みたいなモンだったのかもしれない。
そう思って、当時は聞けずじまいだった。
過去は過去として置いておくとして、現状で那由姉の救出に繋がる情報を出し渋るってのはどういう事だよ!?
「いや、あの、非常に言いにくいと言いますか、これは護廷の人たちがいると余計に言いづらいと言いますか」
「とっとと吐け」
「さっさと吐け」
俺とルキアがほぼハモった。
「乱菊ぅ~!!」
「はやくしてよ」
「冬獅郎!!!」
「うるせぇバカ」
「十一番隊の!」
「御託はいいわ」
「美しくないね」
「織姫ちゃんは」
「えっと、はい」
味方はいないようだな、親父ぃ!
てか、なんで井上は俺の部屋にいるんだ……?
ほかの面子は……あぁ。チャドは治療で浦原さんとこだし、石田はなんか知らねぇけど特訓してるらしいな。恋次も浦原さんとこで世話になってるみたいだし。
全部親父経由で浦原さんの情報だけど。
この場の面子は井上が応急処置してくれたからな。やっぱ強ぇよ、井上は。
俺は皆を守らなきゃいけねぇのに、いつも守ってもらってばかりだ。クソ。
……って、あれ? たつきは?
まぁ、細けぇ事はいいけどよ。
「はい、僕のイジりは後でやってもらうとして」
親父が場を仕切り直すようにパンと手を打つ。
「え、本当にイジって良いんですか?」
「そりゃ愉しそうだ」
「十番隊の人は空気読んでー」
凄いワチャワチャとしていたが、今のやり取りを終えた後。乱菊も冬獅郎も真面目な顔をしている。
この辺りは流石親父、と言わざるを得ないだろう。
母ちゃんがいた頃は、その役目は母ちゃんだったんだけどな……。
「俺が那由他さんの意識について疑問に思ったのは何点かある。一つずつ挙げてくぞ」
親父の発言に俺も気持ちを入れ替えるため軽く頭を振る。
そうだ。今は那由姉の問題だ。
「まず一つ。那由他さんが虚を引き上げさせたタイミングだ」
親父が人差し指を上げて真剣な表情をしながら言う。
俺はすかさず疑問を投げかけた。
「どういう事だ?」
「だって、もし那由他さんが完全に虚側なら、あのタイミングで引き上げる理由はないだろ?」
「……確かにそうだ。俺たちは限定霊印を解除出来たが、それまでに受けたダメージがデカすぎる」
冬獅郎が苦い顔で井上に治療してもらった体を見る。
「あの後に
あの冬獅郎が弱音のような事を吐く事に驚く。
若い故にいつも負けん気が強くて、それを黙らせるほどの実力を持っていたはずだ。
「勘違いすんな、黒崎一護」
唐突に名前を呼ばれ目を見開く。
「俺は──現、十番隊の隊長だ」
まるで、親父を褒められたかのような幼い優越感が芽生える。
……クソ、なんか負けた気分だ。
そんな俺を眺めてる親父には照れ隠しに似た怒りを覚える。
いや、八つ当たりだし流石に何かをしたりはしないが。
「で、2つ目は?」
十一番隊の一角が声を上げる。
こういった見た目だけでも冷静に振る舞える奴はスゲエと思うわ。石田とかな。
「2つ目は正にさっき言った“タイミングを指示できた”事だ。これは、藍染が那由他さんに対して一定の裁量権を与えているって事の証明だろ?」
「それはそうだが、それが那由他さんの意識とどう繋がるんだ?」
一角は話がややこしくなってきたからか、今ひとつ理解出来ていないようだ。
まぁ、俺も不安なとこはあるが。
「虚は藍染に従っている。これは尸魂界から逃げる時に
親父の言に静かに首を縦に振る。
つまり、那由姉は破面に対して優位な立場って訳だ。
あそこでグリムジョーが引いた、命令を受け入れたって事がその説明を補強している。
「これは、藍染が那由他さんの意識を完全に
「それは憶測が過ぎないか?」
弓親がすぐさま声を上げる。
俺には理解するだけでも一杯なんで助かる。
「那由他元七番隊隊長は以前から虚を身に宿していた。その影響を考えて、単純に藍染が……あえてこの表現で言うが、
「……ある」
「なら!」
「しかし! 藍染が双極の丘から動く際に言った言葉は、“中途半端に死神だから那由他もこうなってしまったのだろう”、だ」
これには皆が肩をビクリと震わせ慄いた。
奴の姿を思い出した事もあるが、先程の言葉通りに受け取るのならば現状の那由姉は中途半端だ。
「護廷を裏切った男が、その際の盤上を支配する男が、こんな言葉で齟齬を起こすとは思えない」
確かにそうだ。
何度目ともなる『確かに』という、自身の感覚に対して
俺は那由姉を助けたいってイキがってた、ガキの頃と変わらないままなのかよ……!!
「じゃぁ、なんで那由他さんが元の性格でこっちに来たかって話なんだがよ」
まるで親父じゃねぇみたいだ。
スラスラと現状の分析と推測を重ねて意見を述べている。ウッソだろ。
「これは那由他さんにおける虚と死神の認識・境界線とも言えるものが薄れているんじゃないか?」
「って事は!?」
「那由他さんの”虚化”は、まだ止まってないって事!?」
嘘だろ……?
那由姉が、どんだけの人を現世で救ってきたと思ってんだよ。
那由姉が、どれだけ俺たちを愛してくれたと思ってんだよ。
那由姉に、どれほどの心配を俺たちがかけたと思ってんだよ。
そんな那由姉を救う術があるのなら。
こんな自分を変える術があるのなら。
乗り越える、デカイ壁があるのなら。
俺は挑むよ。
忘れたくない笑顔を守るために。
忘れてほしくない人のために。
忘れないほどの存在のために。
失いたくない、この想いと共に。
そのためには、俺は一刻も早く元五番隊隊長である真子のところで、虚化を習得しなければならない。
たつきと共に励んだ。それは嘘ではない。
しかし、俺はまだどこか甘えていたんだろう。
朝には柚子の朝飯を食い、夜には夏梨の文句を聞きに家へ帰った。
これは甘えだったんだ。
懐かしい匂いのする、家を恋しがっていたんだ。
ガキだ。
たつきは? どうだった?
今回の騒動でも変わらず、鍛錬していた。
那由姉が来たにも関わらず。
あの霊圧は那由姉だった。それでも、踏みとどまった。
自分の成すべき事をガムシャラにしていた。
いや、すげえわ。
これはライバルとして負けてらんねぇな!!
井上は那由姉に教えて貰った実践的な能力の運用を。
チャドは浦原さんとこで知り合った恋次と協力しあって特訓。
石田は親父さんと秘密の訓練らしい。
そんで俺は──
「一護。手、抜いたら承知しないから」
「お、おう」
なんか随分と殺気だってるたつきと師匠に向き合っている。
△▽△
──最後に。
「なぁ、あれだけの考えを出せるってのは、やっぱ隊長として凄ぇのか?」
「あたしも隊長のあんな姿見たことないけど、流石としかね。シロちゃんもでしょ?」
「日番谷隊長だ……。まぁ、そうだな」
「あー、あれね。浦原さんの意見の丸パクリだよ」
「「「え?? 弓親さん、なんて??」」」
「僕もちょっと疑問だったから恋次に聞いてみたら連絡が来てね。一心元隊長殿は随分と愉快な人のようだ」
親父への尊敬は灰燼と帰した。
気分転換に絵を描いてみよう!
とか思ってドハマリした結果が下です。
【挿絵表示】
単行本表紙絵風を目指してみました。個人的なポイントはサイドテールに結ぶリボンがオレンジなとこ。
ただ、ド初心者なので色々変でも許してクレメンス…。影とかハイライトとか、難しすぎんよ…。
イラストレーターって本当に凄いんだな、尊敬(今更
…え?こんな絵を描く暇あったら続き書け?
その通りなんだよなぁ(白目