ヨン様の妹…だと…!?   作:橘 ミコト

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証明…だと…!?

 

 那由他様から新たに『No.6(セスタ)』の階級を任じられたボク──ルピ・アンテノールは今、藍染様の命により現世へと向かっていた。

 

 ”6”の数字が刻まれた腰部右前側をそっと撫でる。

 この数字はグリムジョーのやつが失敗をして剥奪されたものであり、ボクが実力でもって奪えた訳ではない。しかし、那由他様から頂いたのは確かな事である。

 だからこそ、今回の現世行きは渡りに舟だった。

 ここでNo.6に相応しい実力を見せつけて周囲のやつにボクの実力を認めさせてやる。

 

 那由他様の一声によって抜擢されたボクの立場は他の十刃からすると面白くないらしい。

 ま、那由他様に期待されてるって事だもんねえ。嫉妬とかダッサ。マジで笑えるんだけど。

 ただ、そんなボクを軽んじている雰囲気は感じる。那由他様のお陰で分不相応な階級を賜った、そんな嘲笑うような目線を。

 表立っては那由他様の決定に異を唱えるような馬鹿なやつがいないだけで、中にはボクが那由他様のご機嫌を取ったのではと邪推するやつすらいた。ほんっとバカ。那由他様がそんな事で懐柔される訳ないじゃん。

 しかし、そもそもそんな風に思われている事に苛立ちが募る。

 ここで。この現世行きで死神どもをまとめて倒してボクの実力を証明してみせる。

 このままナメられっぱなしは、ボクのプライドが許さない。

 

「随分と張り切ってんな、ルピよぉ」

「まーねェ。同じ破面とは言え、ナメられるのはムカつくしさ」

「そりゃ違いねぇ」

 

 現世へと向かいながら話しかけてきたヤミーは、何がおかしいのかニヤニヤと下卑た笑みを浮かべている。脳筋バカの相手をしても仕方ないからスルーするけど、流石にちょっとイラッとはする。

 そもそもメンツが謎だ。選んだのはウルキオラらしいけど、何でこのメンバーにしたのだろうか。実は何も考えてないとかだったらバカにしてやれるんだけど、何を考えてるか分かんない無表情野郎だから、からかっても面白くはなさそう。

 

「オレは暴れられればそれでいいんだがよぉ。死神どもはどこにいんだ?」

「ボクが知るわけないじゃん。現世の座標をピンポイントで指定は出来ても、そこに死神がいるかどうかは別問題なんだからさァ」

「死神どもの目の前に出れたら探す手間が省けて楽なんだがよ」

「それにはボクもどーかん」

 

 適当に話を合わせながら同じように現世へと向かっているご同輩を眺める。

 隣のヤミーに新しく破面化したワンダーワイス、そして()6番さんのグリムジョー。

 元とは言え十刃の実力を持っているのが3人もいる。そんなに死神って強いのかねぇ。甚だ疑問だけど。

 ま、ボクは実力を示せればそれでいいし、死神がどうなろうが知ったこっちゃないんだけどね。

 

「あ、そろそろ出るみたいだよー」

 

 遂に現世へと至る黒腔(ガルガンタ)の出口が見えてきたので、一応周りを促すように声を掛ける。

 

 あのワンダーワイスって子、ほっといたら勝手にどっか行きそうなんだよね。

 藍染様の命だから、流石に死神どもの前までは連れてかなきゃなんないし。ヤミーやグリムジョーが面倒を見てあげるような性格だとは思えない。

 ほんと、何でボクがこんな事やんなきゃいけないんだか……。なんだか貧乏くじを引いた気分だった。

 

 なんてため息を吐きそうな気持ちを仕切り直し、空間を割るようにバキンと音をたて現世への穴を開ける。

 さてさて、それじゃボクのための生贄はどこかなーっと。ついつい初めて来た現世を物珍しく眺めていると、なんとすぐ下に霊圧を感じた。

 ウッソ! ヤミーと適当に話していた内容が現実になるとは思ってなかったよ。言ってみるもんだね、ラッキー! 

 

「オウ? い~い場所に出られたじゃねえか」

 

 探査回路(ペスキス)が大したことないヤミーでも流石にこれは気付くか。まあ、目の前だしね。腐っても十刃だし。

 死神どもが何をしていたかなんて興味ないけど、いきなり現れたボクたちに驚いてるみたい。ぷぷっ、ほんと滑稽。

 

「中々霊圧の高そうなのがチョロついてやがる。手始めにあの辺からいっとくか」

 

 とか思ってたら隣のヤミー(バカ)がトンチンカンな事を言ってるし。マジで言ってるんだ……。

 

「何言ってんの、アレ死神だよ。アレが6番さんが言ってた”尸魂界からの援軍”なんじゃないの?」

 

「ね?」と少し後に控えているグリムジョーに顔を向け、ニヤけそうになる顔を抑えず、あえて小馬鹿にしたように話しかけた。

 

「ア・ごめーん。()6番さん、だっけ」

 

 那由他様から現世行きを許されたにも関わらず失敗を犯したお前とは違うんだよ。バーカ。

 内心の嘲りを隠さずにグリムジョーに言葉を投げかけたが、やつはこちらの存在などいないようにあらぬ方向を向いたたまま黙っていた。

 

 ちぇっ、面白くないの。

 

「……あの中にはいねえよ。俺が殺したいヤローはな」

「あ! おい待てグリムジョー!!」

 

 ボクの言葉に対して、こちらを見向きもせず舌打ちだけを残し、グリムジョーはどこかへと飛んでいってしまった。

 その感情を察する事が出来るからこそ、ボクは彼をとことん弄ってやろうと思っているんだけどね。

 

 ただ他の面子、特にヤミーなんかは慌ててグリムジョーを止めようとするけど、それで止まるようなやつじゃないのは分かってるはずだ。口だけで手が出てないんだから。まあ、藍染様の命だしね。こっちに飛び火したら堪ったもんじゃないのは分かるけど。

 

「あんの野郎!」

「ほっときなよ、所詮十刃落ちさ。何も出来やしないよ」

「ちっ、俺が殺してえやつもあん中にはいねえんだがよ……」

ヤミー(キミ)が殺したいのってウデ斬られたやつ? ボコボコにされたやつ? それとも虚閃弾き返したやつ?」

「全部だよ」

 

 高ぶってるのがよく分かる。嗜虐心の灯った目を爛々と輝かせ歯をむき出しにして獣のように笑っているし。もはやどっかに行ったグリムジョーの事なんか頭からスッポ抜けてるんだろうな。

 ほんと、単純で羨ましいくらいだよ。

 

 さて、と。

 

 ボクもボクで那由他様にいいとこ見せなきゃいけないんだし、張り切って死神をボコらなきゃねー。

 あの中だと誰がいいかな? あのちびっ子あたりが一番強そうか。

 

「おい! 行くぜ新入り! いつまでボヤッとしてんだ!!」

 

 相変わらず一人でフラフラとしているワンダーワイスにヤミーが声をかける。

 しかし、聞こえているのか聞こえていないのか、それすら分からない。

 ……ほんと困るんだけど、こいつの扱い。藍染様と那由他様が『ワンダーワイスには特別な役割を持たせている』って言ってなければ、もう既にほっといてるんだけどなぁ……。

 

「ちっ、また変なのが入りやがったモンだぜ……。那由他様に頼まれてなきゃ、こんなやつのお守りなんて死んでもお断りなんだがよ」

 

 ヤミーと全く同じ事を考えていて少しショックなんだけど……。ま、まあ、誰でも思うことだよね、うん。

 若干口の端を引き攣らせ内心地味に傷ついていると、あの中では一番強そうな霊圧を持つガキがこちらへと突っ込んできた。真正面から真っ直ぐに突っ込んでくる様はいっそ清々しい。もしかしてバカにされてる? 

 その標的はどうやらヤミーのようで、ヤミーは腰に佩いていた斬魄刀を軽く抜き、当たり前のように受け止めていた。

 

「十番隊隊長、日番谷冬獅郎だ!」

「奇遇じゃねえか、俺も10だぜ。破面No.10(アランカル・ディエス)、ヤミーだ」

「! 十刃か……!」

 

 えー、なんか流れでボクの獲物取られちゃったんだけど……。

 お行儀よく名乗る死神もそうだが、それに応えるヤミーも戦闘を楽しんでいる。

 死神さんたちは、どうやらボクらがここに現れたのは予想外といった様子で焦っているし、こっちに突っ込んできた隊長さんは状況判断が早いって意味では優秀なんだろう。

 とはいえ、ヤミーは明らかに自分が負ける事なんて想像もしていない。

 まあ、それはそうだから咎める必要もないんだけど。

 

 けど、ボクはどうしよっかなぁ。しょうがないから他の死神で我慢するかぁ。こいつら倒してもあんまり箔は付かなそうなんだよなぁ。霊圧大した事ないし。

 

「君も……十刃か?」

 

 そんな中、隊長さんに続く形でこちらへと接近してきた妙に派手な格好の男死神がボクに声をかけてきた。

 十刃かどうかの確認してどうすんだろ。なんか意味ある、それ? 

 まあ特に困る質問でもないし、身の程ってものを知ってもらうためにもアピールはしとかないとね。

 

「そーだよ、名前はルピ。階級は『No.6(セスタ)』」

「ならば、那由他さんについても多少は知ってるって訳だね」

「……ん?」

「先ほどそちらの大男が那由他さんの名を出していたはずだ。知っていることを教えてもらうよ」

「……ふーん」

 

 は? 

 

 こいつら、ボクが目の前にいるってのに、なんでガン無視して那由他様の話してるわけ? 

 そら那由他様は圧倒的な力を持ってて藍染様に次ぐ権力者ではあるけど……。

 

 

 今、お前の前にいるのはボクなんだよ?

 

 

 ちょっと、これは──本気でイラッとした。

 

「ヤミー、そっちの子もボクにゆずってよ!」

「あ!? なんでんな事しなきゃなんねえんだよ!」

「こいつらウダウダめんどいんだよ。開口一番に那由他さんって……、ボクのことバカにしてるわけ?」

 

 ヤミーがウンザリしたような顔をしているけど知ったことか。

 ここでボクの実力を破面たち(ほかのやつら)だけじゃなくて死神どもにも見せつける。

 

 

「みんなでおいでよ。ボクが解放してまとめて相手してあげるからさ。──全力でぶっ潰してあげる」

 

 

 左脇下に佩いている斬魄刀をスラリと抜き放つ。

 と同時に隊長、えっと、なんだっけ、そう、確か日番谷というガキが突っ込んできた。こいつさっきもヤミーに突っ込んでたけど愚直すぎない? よくそれで隊長やってられるね。

 ま、ボクの刀剣解放──『帰刃(レスレクシオン)』を危険と見做(みな)して止めようとするのは正しいんだけどさ。

 

「卍解! 大紅蓮氷輪丸!!」

 

 それでも遅すぎるんだけどね。

 

 

「"(くび)れ”──『蔦嬢(トレパドーラ)』」

 

 

 解放により霊圧が暴風のように吹き荒れ、辺りを煙が覆う。

 自らの能力が解放された全能感に酔いしれそうになるが、これは一応お仕事だ。しっかりと働かないとね。

 ストレッチのように()()()()()()()()()()()を軽く撫で、ニヤリと口元に嘲笑を浮かべる。

 

 さあ、那由他様より頂いた番号に恥じぬ働きを、今こそしようじゃないか! 

 

 まずは肩慣らしの代わりに一発死神を殴ってみよっか。

 煙で塞がれた視界を盾に隊長さんへ目掛け、()()()()()()にて点を突く槍のように攻撃を繰り出す。

 

 お、ちゃんと防げてる、すごいすごい。

 チビの隊長さんは危うげではあるものの、しっかりとボクの一撃を防いでいた。流石に舐めすぎたかな? 

 でも正直、止められるとは思わなかったな、ちょっとショックだよ。意外とやるもんだね、隊長クラスってのは。ちゃんとボクの中での危険度を修正しといてあげる。

 でも、一発防いだからって調子に乗っちゃったりしないでよ? ボクが侮られてるみたいで気分が悪いしさ。

 

「どうした、こんなもんか? 解放状態のてめえの攻撃ってのは」

 

 ほら、いわんこっちゃない。

 なんで一撃防いだくらいで挑発できると思ってんだろーね。

 ア・ごめーん。それすらも分からない差だったか! 

 だったら、最初からきちんと伝えてあげなきゃね。

 

「ハハッ! よく防げたね! でもざーんねん。一発防げただけじゃ意味ないんだなぁ」

 

 霊圧によってボクの周囲に渦巻いていた煙を吹き飛ばし、死神どもにボクは姿を現した。

 

「なん……だと……」

 

 蔦嬢(トレパドーラ)は蔦のようにしなり意のままに動かせる触腕が8本、ボクの背中より現れる。

 つまり、先程の一撃を同時に8発できる訳。単純計算で8倍。

 さーて、驚いてる顔を見るのも楽しく面白いけど、お仕置きをしなくちゃ。

 

「じゃーね、ちっちゃな隊長さん──"蝕檻(ハウラ・テンタクーロ)

 

「!?」

 

 隊長さんを囲むように四方八方からの八撃を繰り出す。

 成す術なく攻撃を食らった隊長さんはおしまい、早速一人片付いた。

 

 と、思いきや、だ。

 

 伝わる感触で分かる。まだ仕留めていない。

 しぶといな、全く。

 

「おいおい、俺らを忘れてもらっちゃ困るぜ?」

「ほんと。隊長ばっかり構うなんてお姉さん寂しいわ」

「あまりナメないでもらいたいな」

 

 攻撃を防ぎきっただけでなく煽ってくるハゲ頭の男死神、やたら衣服を着崩した女死神に派手な男死神。

 どいつもこいつも……!? 

 

 ──『この状況で軽口叩くとか、実力差分かってんの?』

 

 イライラをなんとか抑えつけ、そう言おうとしたときだった。

 無視できない強さの霊圧が急激に接近してくるのを察知し、急ぎ防御態勢を取る。

 ガギンと重い一撃を背後から受け、蔦嬢(トレパドーラ)が鈍い音をたてた。

 

「ぐっ……!?」

「おやおや、防がれちゃいましたか。正直止められるとは思って無かったッス。ざーんねん」

「こ、っの!?」

 

 体にかかる負荷を無理やり押し返し弾く形で強襲してきたやつを吹き飛ばす。

 

 襲撃者は、まるでさっきボクが考えていたような事を口にする胡散臭い下駄帽子の男。

 見た目は他のやつらとは違うが、手に持つ刀からこいつも死神なのだろう。

 

 何よりこいつの霊圧、そこの隊長さんと同格かそれ以上だ。

 

 ツーッと頬へ冷や汗が流れる。

 いや、ボクは那由他様より認められた破面だ。

 No.6(セスタ)を賜りし強者だ。

 こいつらなんて、ボク一人いれば十分だ! 

 

「……誰だよ、キミ」

「あ、こりゃどーも。ご挨拶が遅れちゃいまして。──浦原喜助、しがない駄菓子屋の店主やってます、よろしければ以後お見知りおきを……と言いたいところですが、遊ぶつもりもないんでさっさと〆させてもらうッスよ」

 

 下駄帽子の死神が斬魄刀を構えると同時に、

 

「俺らも忘れてもらっちゃ困るんだよ! 卍解! ──覇龍鬼灯丸(はりゅうほおずきまる)!!」

「ふん縛ってでも那由他さんの情報を吐いてもらうわよ! 卍解! ──灰燼之猫爪(かいじんのびょうそう)!!」

「僕も遅れるわけにはいかないな、美しくない。”咲け”──『藤孔雀』!」

 

 

 これで死神が五人、その内の三人が卍解、か。

 ……ふふ、ふふふふ。

 

「アハハハハハハ!」

 

「……なんだ、敵わないからって諦めたか?」

「あー、おっかし。久々にこんな大声で笑っちゃったよ……」

 

 あまりにも、あまりにも。

 

 あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも、あまりにも!! 

 

 

 

「ボクをバカにしすぎだよ。糞虫どもが」

 

 

 

 瞬間、爆発的に上がったボクの霊圧を感じたからか、死神どもは慌ててボクから距離を取った。

 

「いいよ、そこまでボクをコケにするなら相手してあげる。もう遊びはおしまい」

 

 もう、実力を証明するだとか、手柄を上げるだとか、そんな事はどうでもいい。

 目の前のこいつらを、完膚なきまでに叩きのめす。

 

 

「泣いて謝っても許してあげないから──覚悟するといいよ」

 

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