俺──志波一心は打ちひしがれていた。
「な、なぁ、一心? 那由他さんをお茶に誘っただけでも凄いぞ……?」
「そうそう。その結果、たとえ玉砕してもな」
「おい!?」
「うおおおおおおお~~~~~~ん!!!」
「面倒になると思った……」
「いや、これは那由他さんと二人きりで茶屋に行ったやつが受けるべき報いだ」
「私情が入りすぎだろぉ」
麦酒を片手に飲んだくれている俺だが、そうでもないとやってられん!
こいつら二人は告白する場を整える事すら逃げた弱者だ! そうだ!
「あの日の俺、志波一心は確かに浮かれていた!」
「せやな」
「思わず慰める側の同僚が標準語すら忘れる一心の姿で酒が進むわぁ」
「だまらっしゃい!?」
ここには、学院の頃から仲の良い……悪友か?
まあ、今日という日──那由他さんにお祈りをされた日に付き合ってくれる気の良い奴らだ。
三人で行きつけの居酒屋へと繰り出したのはまだ日が落ちきっていない頃。
事の顛末を興味津々に聞いていた内の一人は、だんだんと面倒そうな顔になっていたがとやかく言うまい。
「俺はよぉ、那由他さんとお出かけできるって思ってからは、そりゃぁもうルンルンだったわけよ」
「ルンルンとか、現世の言葉でも学んできたのか? 俺は知らんけど、お前知ってる?」
「いや、知らんが話しの本題はそこじゃねぇ」
茶化してくる剽軽なやつ。小言は多いが面倒見の良いやつ。
どちらも俺にとって得難い友人だ。
だから、こんな愚痴にも付き合ってくれる。
「俺はなぁ──」
「おーっす! 一心いるぅ? 那由他さんに玉砕した会があるって聞いてきたんだけど!」
「お前らなぁぁぁぁ!!??」
俺をからかうのが9割だろうが、俺を心配してが1割くらいはあると信じてるぞ!?
いや、分かってるよ!
俺が那由他さんと
でもさぁ、なんか、こう、あるじゃん!?
「一心、お前は大きな失態を犯したんだ」
いま来た一人目が俺の肩に手を回しながら、いきなり語りだした。
しかし、俺の失態だと?
それは気になる、話しを続けてくれ。
「那由他さんには常に総隊長みたいな人が付いてる。鬼道とか霊圧とか、チャチなもんじゃぁねぇ。俺は大きなモノを味わったぜ」
「それ、大きなものよりも小さい君が那由他さんに付いて回ってたから気付けただけでは……?」
「あと、鬼道も霊圧も随分とデカイ要素だからな」
「コマケェことはいいんだよ……」
「大きなモノって、お前、もしかして」
「ばっか!? 俺は那由他サンを尊敬してますから!? そんな、そんなそんな胸になんて視線が行くわけ」
「アホは見つかったようだな」
「あっ……」
こいつらと話してると楽になる。
俺はこうやって、バカみたいな話しをしてくれる友に救われている。
そして、そんな奴らと一緒に戦っている。
じゃあ、那由他さんには
そこは少し疑問だった。
「おら! 一心の失恋祝いだ! 飲もうぜ!」
「大概失礼だな、お前ら!?」
そうやって笑って暮らしている。
笑って暮らせている。
そういった世界を作るのが、死神の仕事だと思っている。
だから、俺は那由他さんにフラれても笑うだろう。
強がりじゃないんだからね!?