フィリスとイアンとセルフィスとクルーヤの冒険、また見送ってくださいね!
それは、一人の天使の物語でした。
天使はとーっても高い高い空にある、小さな世界に住んでいました。
天使たちは人には見えないけど、人のために働いていました。
人の「ありがとう」の気持ちのために、人のために働いていました。
その一人の天使も、例外じゃないです。
そしていつしか。
その一人の天使は、世界のために戦うことになったのです。
天使から人間になって、世界を救うために戦ったのです。
天使であることをすてて、人間にならないと、世界のために戦うなんてできなかったから。
だから、その天使は人間になったのです。
世界のために。
もう、その天使は人間で、天使はみんないなくなっちゃったから。
だーれも、天使のことを知りません。
だから、この戦いや運命があったことなど、誰も知りません。
さて、それから……どれほどの月日が経ったのでしょうか?
昔話………あるいは、伝説になっているかもしれません。
でもね、実は。
まだ、半年しか経っていないって知ったら………
あなたはどうするの?
賑やかで安定して発展を続ける平和な国、セントシュタイン城。 そこにはひときわ大きな宿屋が存在しており、そこには各地からいろんな人が訪れるという。
「………さて、とーちゃくっ! ここがセントシュタイン城で一番の宿屋ですよっ!」
水色の髪をひとつに束ねた少女が、老夫婦を呼ぶ。 老夫婦は、目的の場所に到着できたことに安心しているようだった。
「ふぅ………ようやくたどりつきましたねぇ………無事にここまでこられたのも、この人達が守ってくれたからね」
「ありがとうのう………」
そういって、老夫婦は宿屋に入っていった。 その後ろ姿を見送った少女は、満足げに笑っていた。
「護衛は完了…………っと。 今回も任務完了といったところだな、フィリス!」
「ああ」
「おじいさんとおばあさんを無事に送り届けることができて、よかったわね」
「そうですね」
水色の髪に赤い瞳の少女、その名前はフィリス。 剣術の腕は天下一品。 男勝りで気は強いが、同時に強い正義感と他者を思いやる勇気と優しさを持っている。
金髪に青い瞳の男性の名前はイアン。 己を鍛えることと、その力で仲間を守り抜くことを信条としている武道家である。 その竹を割ったような兄貴肌で、このパーティを支えている。
桃色の髪に紫の瞳の少女はクルーヤ。 その魔道の才能は並大抵のものではなく、魔力を自在に操るのを得意とする。 また、明るく人なつっこい性格から多くのものに好かれる。
緑色の髪に茶色の瞳の青年はセルフィス。 礼儀正しく、信心深く慈愛に満ちた少年であり、その真剣かつまじめな姿勢から、賢者として認められている。
「じゃあ私達もこのまま、この宿屋に入っちゃいましょ」
「そうだな……ここにくるのも久しぶりだし、リッカ達に顔を合わせておくのも悪くねぇだろ」
この4人はある目的の元にあつまり、この世界を旅してきたのだ。 そして、今も旅の傭兵や何でも屋という名義で旅を続けながら、依頼を聞いては困っている人達を助けているのである。
今日の依頼は先ほども言ったとおり、ベクセリアの町から老夫婦を無事にこの町まで護衛することなのである。
「この宿屋も、以前にもまして賑やかになっているみたいですしね」
「元気にしてるかしらっ」
そう言って4人はその宿屋に入っていく。 その宿屋の受付には、赤いバンダナを頭に巻いた、フィリスと年の近そうな少女が挨拶をしてくる。
「はい、いらっしゃいませ………あ、フィリス!」
「よ、ひさしぶり~!」
「あらフィリス、久しぶりね」
そして、隣にいた青い髪の女性もフィリスに声をかけてきた。
二人の顔を見たフィリス達は、笑顔を浮かべて彼女達に声をかける。
「久しぶりだね、リッカにルイーダさん」
バンダナの少女はリッカ、このセントシュタインの宿屋の若女将にしてフィリスの親友である少女だ。 まだ年若いものの、非常に働き者であり、彼女の営業しているこの宿屋は細部まで気配りが行き届いており、非常に評判がいい。
そして、青い髪の女性がルイーダ。 この宿屋にある酒場を切り盛りしては多くの冒険者から情報を集めたりアドバイスを送るのが仕事である。 今フィリスのパーティが完成し共に歩めるのも、才能を見抜く能力に長けた彼女の手腕によるものである。
「ここのところ顔を見せたり手紙も届かないから、なにをしているのか……って気になっていたところよ」
「わりぃなルイーダさん、オレ達まだ旅を続けてるもんで……手紙とかそういうの忘れがちなんスよ」
「………とはいえ、噂は届いているわよ」
噂? とフィリス達が首を傾げると、ルイーダはクスクスと笑いながらその噂の内容を説明する。
「最近、世界を旅する4人組が色んな人から依頼を受けて、多くの人々を助けている………って噂よ。 私、その話を聞いたとき……貴女達のことだってすぐにピンときたわ」
「………カンがするどいことで」
「だってそういうことができる人達って、貴女達ぐらいなものでしょう? それに加えて腕もたつっていうんだから、なおさらよ。 あのパーティ編成をオススメした時からかなりの時間が経過したとは思っていたけど……ここまで成長するとは、さすがの私も想定外だったわ」
その話を持ち込まれ、4人はこのパーティ編成になったときのことを思い出した。 ずっと一緒にいたから忘れていたが、このパーティ編成になったことは成り行きであったことや、あれから随分な時間が流れていたことを、改めて実感する。
「………そっか、もうそこまでの時間が流れたんだっけ?」
特にフィリスには思うところがあったようだ、そう返事をした。 そしてすぐにリッカに話を向けてこの宿屋に泊まりたいと頼む。
「そうだ、リッカ。 あたし達もこの宿屋に泊まりたいなって思うんだけど……部屋ってあいてる?」
「あ、うん! ちょうど4人用の部屋があるけどそこでいい?」
「おう、頼むぜ!」
そうして4人は宿屋にチェックインをすませた後、リッカが用意してくれた部屋に集合して休息をとることにした。
「次はどこにいきましょうか?」
「そうだなぁ………久しぶりにウォルロ村までいくのも、いいんじゃないか? あそこも最近どうなったか気になるしさ」
そのとき4人で話し合うことはといえば、この旅の次の目的地のことである。 特にこれとって目標はないが、自由に世界を渡り歩くことをただ楽しむのが、今の彼らの旅のスタイルである。
「まぁ、どこにいこうとも……リッカはいつも通りに、あたしを迎え入れてくれる………ホントにありがたいことだよ」
「だな……ありがたいぜ」
そして、フィリスはベッドに寝ころびつつ、ふとあることを思い出す。 あのときのルイーダの言葉が、急に思い出を振り返りたくなる…ある種のキッカケであったかのように。
「にしても」
「ん?」
「あたしが人間になってから、もう半年しか経ってないなんて………ウソみたいだ…………つい最近のように感じるよ」
実はフィリスは、見た目は10代の少女のように見えるが、実は人間ではない。 その正体は、この世界を人知れず守り助けてきた神に誓い存在………翼と輪を持つ守り人の一族………天使なのだ。 だが、今の彼女はそのどちらもない。 ある事件に巻き込まれて天使の翼と輪っかを無くし、以降は人間の姿で旅をしていたのだ。 その最中に出会い運命をともにすることになったのが、今の仲間達だ。
「…………しかし、天使界と天使……この世界から消えてなくなっただけじゃなく、誰もその存在を覚えていないなんて……驚いたぜ……」
「イアンッ!」
「………っと、わりぃ………流石のオレも無神経だったぜ…………」
「気にするなよ、事実なんだってあたしもわかってるしさ」
そして、多くの運命が絡まっていく中。 フィリスはこの世界を滅ぼそうとする巨悪と戦うことになった。 しかし、そのためにはフィリスは天使としての自分を切り離し、人間にならねばならなかった。 その選択に対し、フィリスは巨悪と戦うことを選んだ。 彼らの協力もあって、フィリスはその巨悪を打ち破ることができた。 ただ、その代償として自分は天使ではなくなり、彼女の仲間である天使も故郷である天使界も、すべて夜空に輝く星となったのである。
「ですが、僕は……」
「セルフィスも、気にするなって。 あたしはここにいる仲間達だけでも…………あたしをわかってくれれば十分だ」
それだけではない、この世界の人々の記憶から天使が存在していたことに関する記憶や伝承が、すべてなくなっていたのである。 旅の中で各地にある天使像からも天使の名前は消えていた。 まるで最初からなにもなかったかのように。 人々はその像が存在する理由もまったく覚えていなかった。
「まぁ問題はないさ、元々守護天使って……信じる人と信じない人ってのはまちまちだし………あたしはまだ、どこで落ち着けばいいのか……わからないだけだしな………」
「………フィリス………」
それゆえ、今天使と呼べるような存在は、ここにいるフィリスだけである。 彼女とともに道を歩んできたイアン達はふつうにフィリスが天使であることを知っており、かつ記憶は残っている。 だがそれで運命が変わることはないし、誰も天使のことを思い出すことや興味を示すこともないだろう。 自分達がそれを語ったところで、ただの作り話でしかないと思われるのがオチだ。
「………なーんてな。 あたしは旅は好きだから、ずっと旅をしてたってかまわねーし!」
「……そっか」
「ほらほら、あんたらもヘンに暗い顔するなよ! どうあろうとも、みんなはあたしと一緒にきてくれるんだろ? だったら明るく前向きになっていこうぜ!」
「……そうですね、暗い顔は悪運を引きつけます。 だったら貴女のご意志にあわせて明るくならねばなりません」
「あはは、ホントセルフィスって真面目だなぁ!」
そんなフィリスのために、イアンもセルフィスもクルーヤも、彼女と旅をし続けるという道を選んでくれたのである。 彼女がこのパーティのリーダーであることで、3人はそれぞれで彼女のためにできることをする、従うことを決めている。 だから今も、フィリスが明るくいこうと声をかけたことで明るさを取り戻したのだ。
「ねぇ、フィリス……リッカだけど、今大丈夫?」
「ん? リッカ?」
そんなとき、この部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。 ノックした相手は、リッカである。
「どうしたの?」
相手がリッカだったので、フィリス達は迷い無く扉を開けてリッカと向かい合う。 そのときリッカはその手に、少しだけしわくちゃな手紙を持っていた。
「さっきね………この手紙を、ツォの浜にいるトトって男の子に届けたいっていう人が泊まりにきたの。 私が届けてあげたいところだけど、ツォの浜がどこにあるのかわからないし、ここを離れるわけにもいかないんだ」
「へぇ」
「でも、世界を旅してきたフィリスだったらその場所がわかるかもしれない。 だからこのお手紙を…ツォの浜にいるトトって男の子に渡してほしいの。 いいかな?」
「なんだ、そういうことなのか」
リッカがなぜこの時間に自分達を尋ねてきたのか、その理由に納得したフィリスは笑ってうなずく。
「いいぜ、この依頼……あたし達が引き受けるよ。 ちょうどツォの浜も、トトって男の子も知っているしな!」
「ありがとう! じゃあお願いね! そのためにも今夜はゆっくり……おやすみなさい!」
「ああ、おやすみ!」
リッカもフィリスが依頼を受けてくれることに安心したらしい、笑顔を浮かべて彼女に手紙を託し、立ち去っていった。
「次の依頼、きたな」
「ああ。 ま、退屈しなくていいけどな」
「それなら、明日に備えてもう寝ちゃいましょ!」
そう4人は次の目的地をツォの浜に決めて、明かりを消しそれぞれのベッドで眠りについた。
「ツォの浜か……懐かしいな」
「オリガちゃんは元気にしてるかしら……」
「会えたらいいですね」
「…………そういや、ツォの浜に流れ星が落ちた……って噂があるのを聞いたな……」
「ふーん?」
「………お前あまり感心しめしてねーな……」
イアンが酒場で聞いたという噂話をフィリスは適当に聞き流しながら、眠りについた。 明日また、自分たちに届いた依頼を果たすために。
次回は最初のストーリークエストです!
配信クエストがまたやりたい、最初から。