まぁ内容としては、普通に話をするだけですね…。
それは、ルディアノへ帰ろう団の存在を知ってから、一週間後のことだった。 しばらくはほかの依頼を聞いて達成していたフィリスに、団のリーダー的存在である魔法使いの女性・マリッサが彼女に依頼を出すために声をかけてきたのだ。
「第一回ルディアノ会合?」
「ああ、そうさ」
リッカの宿屋の内部にある、ルイーダの酒場で菓子や茶を口にしながらフィリス達は、マリッサの依頼にたいし耳を傾けていた。
「急なことにはなったけど、ルディアノへ帰ろう団の、初会合をやることになったんだ。 んで、フィオーネ姫にもその話をしてみたところ、どうしてもルディアノ城跡でやりたいって言うんで……そこでやることにしたんだよ」
「わざわざ跡地で?」
「なぜ?」
「さぁ……そこまではわからなかったな」
どうやら今回の会合の場所を決めたのは、フィオーネ姫のようだ。 というかいつの間に姫とそんな話をしたのだ。 相手は仮にも一国の姫君のはずなのに。 そんな疑問を抱えながらも、フィリスはルディアノで会合を行うのは危険がないかを心配して問いかける。
「道中は魔物がいっぱいでるんだけど、大丈夫なのか?」
「ああ。 一応、オレ達も戦いは慣れているし」
「あのメイドも、実は元バトルマスターというのが判明したからね」
「え、えぇ~……」
さらにまさか、メイドの正体が判明した。 人は見かけによらないと思いながらも話に引き続き耳を傾けつつ、今回の依頼内容に気付いたイアンがそのことを口にする。
「その会合に参加しつつ、護衛も行う……これが、今回のオレ達の依頼内容ってワケか」
「そういうこと! じゃ、一応会合の予定としては明日だから……よろしくな!」
そう言ってマリッサとリューマは立ち去っていった。 依頼を受けるか受けないかを聞かずに立ち去っていってしまった2人にたいし、フィリス達は呆然としていた。
「………断るか受けるか、いいそびれちゃったわね」
「これは、彼らの依頼を引き受けるのが、義理というものなのでしょうか」
「まぁ……この前みたいな厄介な魔物はいないだろ、たぶん」
「平気平気! 出てきたところで、あたしらがぶっとばしゃいいだけだ! というわけで、依頼を受けちゃおうぜ!」
「そう、ですね」
結果として、依頼を受けることを選択をしたフィリス。 依頼の内容としては、まずは明日、ルディアノへむかえばいいことを確認した4人は、それに備えて準備を整えることにしたのであった。
「そういえば、先程第一回とおっしゃってましたね。 ということは、何回も行う予定でしょうか」
「確かに……そこに注目するなら、割と気長に続ける気満々よね……」
ルディアノ会合にたいし、セルフィスとクルーヤはそう言葉を交わしたのであった。
そうして翌日、ルディアノ城跡に現地集合という話だったのでフィリス達も、そこに向かった。
「みんな来るかしら?」
「きっとくるさ」
もしや自分達が、一番最初にこの城についたのだろうか。 そう話をしながら廊下を歩いていく途中にある階段の近くで、メイドの姿を発見した。 そのメイドには、フィリス達も心当たりがある。
「こんにちは」
「あ、あなたは……」
それは、ルディアノへ帰ろう団に勧誘したセントシュタイン城のメイドだった。 彼女はその団に入る条件として、フルムーンアックスという武器を要求していたのである。 その時はなぜ彼女がそれを欲しがっていたのかは理解できず謎のままだったが、マリッサから聞いた彼女の素性を聞いた今なら納得できるかもしれない。
「もしかして、他のメンバーはもう城にいたりするのか?」
「ええ、リューマさんとマリッサさんは、会合の会場である玉座の間にいます」
あの2人も無事に、この城にたどり着くことができたようだ。 それを知りフィリス達は安堵する。 そこでふと、ある人物のことが気になり彼女に問いかけてみる。
「そういえば……あんたは、フィオーネ姫様を護衛しながら、ここまできたんだよな?」
「ええ、途中で魔物が襲いかかったりもしましたが………このフルムーンアックスで一掃して、姫様をお守りしてきました!」
「へ、へぇ~~………」
なんと頼もしいメイドだろうか。 彼女が一緒ならフィオーネ姫の無事は保証されたも同然だろう。 だが、彼女と一緒にいるはずの姫の姿は見あたらない。
「ということは、姫様もこの城にきているんだよな?」
「はい」
「んで、その姫様はどこにいっちゃったんだ?」
「それが……」
メイドは自分の背後にある、下へ降りる階段を見つめた。 フィリス達は、その階段の先にある部屋を知っている。
「あの部屋は……」
「あの部屋で少し調べ物をしたいとおっしゃって、入っていったままなのです……」
「………」
フィオーネ姫が単身であの部屋に、一体何の用事だろうか。 疑問符が頭に浮かんでいる中、リューマが自分達の存在に気づいて、そろそろはじめたいから集合してくれと呼びかけてきた。
「……なんなら、あたしらが代わりに姫様を呼んでくるよ」
「そうですね、あなた達になら……姫様のことをお任せできそうです。 では………申し訳ありませんが、姫様をおよびください」
「任せてください」
そうフィリス達がメイドから姫のことを託されたそのころ、部屋に一人いたフィオーネ姫は、その部屋の隅から隅までなにかを調べていた。 それはまるで、重箱の隅を楊枝でほじくるかのように。
「………なにも見つからないですわね………セントシュタインになかったのなら………きっと、城のどこかにあると思ったのに…………」
そう呟きながら捜し物を続けるフィオーネ姫だったが、背後に熱気を感じて振り返る。
「きゃあ!?」
「グギョォォォ………」
それは、ルディアノに突如出没した魔物・エビルフレイムだった。 エビルフレイムは、体中から激しい熱を放ち、ギョロリと3個の目玉を動かしながらフィオーネ姫を見つめている。 そのおぞましい姿にフィオーネ姫は、恐怖を覚えた。
「な、なんですの………!?」
「姫様!」
その場に、悲鳴を聞いたフィリス達が駆けつけた。 駆けつけたフィリス達に、フィオーネ姫は助けを求める。
「あ、あなた方は……! ど、どうか、助けてくださいまし!」
「まかせてくださいまし!」
「なにそれ!?」
フィオーネ姫にすぐにそう返事をすると、4人はそこにいたエビルフレイムをにらみつける。
「ギュオオオンッ!」
「……やれやれ………まだいたとはな!」
「さっさとやっちゃおう!」
そう声を掛け合い、まずはセルフィスがドルモーアを放ちエビルフレイムに最初のダメージを与える。 続けてクルーヤがフィリスとイアンにバイキルトをかけ、イアンは己の力を高めフィリスはアイスフォースを使い自分達の攻撃を相手の弱点属性に変えていく。
「氷結らんげき!」
「はやぶさ斬り!」
そして、クルーヤのマヒャドが相手の動きを制限させた直後にフィリスとイアンの同時攻撃がヒットし、エビルフレイムは消滅した。
「よし、今回も勝てたな!」
「ああ!」
魔物が消え去り、フィオーネ姫も安心したようであり、フィリス達に礼を告げた。
「ふぅ……危なかったですわ。 皆様、ありがとうございました」
「ああ……でもまさか、まだあんなヤツがいたなんて……油断ならねぇぜ」
「これは………本格的に、魔物除けをする必要がありますね……まだ、準備が整いませんが………」
本来人が住む町や家、そして国などには、聖職者の手でその場を清める必要がある。 セルフィス自身もその方法も知っているし心得も持ってはいるのだが、いくつもの準備が必要であるためすぐには実行できないらしい。
「………にしても姫様、どうしてこんなところに?」
「…………こ、このお部屋を……偶然見つけたので………気になってしまって。 ごめんなさい。 私、勝手なことをしてしまいましたね………」
そうフィオーネ姫が話をしていると、その奥に何かを発見したらしい、目を丸くしたフィオーネ姫は迷わずそちらへ向かった。
「あっ! ごめんなさい、フィリス様!」
フィオーネ姫が向かった先、そこには白いドレスを身にまとった彼女と瓜二つの姿をした女性が立っていた。 その姿は、フィリス達もみたことがある。
「あの人は……」
「ああ………この間の………」
そうコソコソと話をするフィリス達をよそに、フィオーネ姫はその女性と対話をしていた。
「…………私にはわかります………あなたが、どなたなのか……」
「………………」
「お聞きしたいことがあります。 あなたがセントシュタインに嫁いだとき………国王より賜った指輪がどうなったか、ご存じありませんか………?」
フィオーネ姫がそう問いかけると、女性は自分の手に不思議な指輪をはめているのを見せた。 それこそが自分の探している指輪だと気付いたフィオーネ姫は、少し目を細めた。
「ああ………あなたが持っていたのですね。 その指輪、どうか私に譲ってはいただけませんか………?」
そして、真剣な面もちとなり、彼女にある事実を告げる。
「隠さずに言います。 あなたのレオコーン様は、先に天国へと召されていきました」
「……………!」
「あなたも、いつまでも……現世に留まっていてはいけません………。 あなたのためにも………レオコーン様のためにも………。 ですが、現世のものを持っていては、天には昇れないでしょう」
「……………」
レオコーンの名前を聞いて悲しげな顔をしていた女性は、やがてフィオーネ姫の顔を見て、意を決したように頷くとその指輪を手からはずし、フィオーネ姫にそっと手渡した。 その指輪を手にしたフィオーネ姫は、彼女に告げる。
「ありがとう、メリア姫………。 あなたの故郷………ルディアノは……私が必ず、よみがえらせます。 ですから、安心して………あなたもレオコーン様の元へ…………。 そして、今度こそ…………愛する人とともに、幸せになって…………」
「………………」
そうフィオーネ姫が言うと、女性……メリア姫はほほえみを浮かべてうなずき、光となって消えた。 その様子をフィオーネ姫と、フィリス達は見届けていた。
「………やっと………見つけた………」
「姫様………」
フィオーネ姫は指輪を確かに握りしめると、フィリス達の方を向いた。
「………すみません、フィリス様。 いままでのは……ただの独り言ですわ」
「どうかしたんですか?」
「…………なんでも、なんでもないのです。 さぁ、これ以上みなさまを待たせるわけにはいきませんわ。 玉座の間へいきましょう」
「は、はい」
とりあえず会合を行うために、フィオーネ姫はその部屋を出ていった。 フィリス達もそれについて行く形で、彼女に続いて部屋を出ていく。
「…………きっと、オレ達には……彼女は見えていないって思っているんだろうな…………」
「………ああ………」
フィオーネ姫は、自分達が幽霊が見えることはしらない。 あのメリア姫の幽霊が自分達だけでなく彼女にも見えたのは、今回は偶然のようなものである。 だからだろう。 フィオーネ姫は、自分とメリア姫の幽霊とのやりとりを、彼女達がずっとみていたことは知らない。
そうしてその場にマリッサ、リューマ、メイド、そして特別会員のフィオーネ姫。 そして、護衛役としてフィリス達が集まった。 これにより、ルディアノへ帰ろう団の初めての会合を行われようとしていた。
「さて、全員そろったところだし………会合を始めようかね!」
「はい、お願いします」
そして、マリッサのかけ声からこの会合は開始した。 まずは団が結成された目的から。
「まず、我が団の目的は、このルディアノを国として蘇らせること………なんだけど、いきなりそれはムリってもんさ」
「まぁ……はじめは、このルディアノ城をキレイにして、人が住めるようにするってことから始めようぜ」
やはりまずは、このルディアノ城跡を住まいとしている魔物達をここから追い出さねばならないようだ。 奴らは今はせいすいのおかげで自分達には近づけてはいないものの、それがきれたら魔物達は容赦なく自分達に牙をむくだろう。
「お掃除なら私に任せてください! ここから魔物を全部追い出すには、時間がかかりそうですけどね!」
「え、掃除ってそっち?」
自信満々に魔物を退治すると言ってのけたメイドにたいし、フィリスは思わずツッコミを入れる。 彼女はメイドとなった今も戦士の本能が残っているじゃないかと思わせられる。 その一方でリューマも、魔物を倒して追い出すことにたいし頷いていた。
「も、もちろん……オレもやるぜ!」
「当然、アタシもやるさ。 んで、場合によっちゃ……あんたらにも手伝ってもらうよ」
そう言ってマリッサは、フィリス達に目を向けた。
「まぁ、任せておけよ」
「僕は聖職のものです。 もし準備が整い落ち着いてきたら、この地に魔物が入らぬよう、清めようと思います」
「そうだねぇ、あんたなら最高のお清めができそうだ」
ちょうど地を清める知恵と能力を持った聖職者がいる、そのことがマリッサには心強く感じた。 セルフィスの力があればルディアノから魔物を追い出せたときに、近づけさせないほどの清めができるはずだと確信したのだ。
「ルディアノへ帰ろう団は、今日から……未来のためにがんばっていくよ!」
「おーっ!」
そう仲間達にかけ声をしたマリッサは、フィオーネ姫の方を向いた。 この会合のシメの言葉を頼むために。
「では、フィオーネ姫。 最後にビシっと会合をしめておくれでないかい?」
「え、姫様が締めるの?」
「そりゃあそうさ、今回もっとも大きな協力者だものな!」
そうマリッサは言うが、当のフィオーネ姫は顔をうつむかせ黙っていた。
「…………」
「姫様?」
「あ、ごめんなさい……」
さっきから様子がヘンだ。 そう思ったイアンが彼女を心配して声をかける。
「マリッサが、姫様にしめて欲しい……っていってやしたが、大丈夫ですか?」
「はい、是非やらせてください!」
「おお、ノリノリだ!」
フィオーネ姫はキリっとした表情で顔を上げると、ルディアノへ帰ろう団全員を見つめて、まるで演説でもするかのように言葉を告げる。
「皆さんと同じく、この私もかつて、ルディアノの血を………それも、この国の姫であった……メリア姫の血を引いています。 その血を誇りに思い、私達は生きていくべきなのです」
「………?」
「あらゆる手を使って、ルディアノを必ずや蘇らせましょう! ルディアノを新たな、私達の故郷とするために………!」
そのフィオーネ姫の言葉に違和感のようなものを抱いたが、そこに首を突っ込んだら話をややこしくするだけだと思い、今はなにも言わないでおいた。
フィオーネ姫の言葉を聞いたあと、最初に口を開いたのはリューマだった。
「………なんつーか、驚いたぜ。 姫さんもルディアノの血を引いているなんて………知らなかったからな」
「……そうでしょうね…………私も、最近まで知らなかったのです。 ルディアノのことも、私の祖先が……その国の王女だったことも………」
「……………」
その事実はきっと、あの黒騎士騒動がなければ永遠にわからないままだっただろう。 実は世界を脅かしていたものの一つである、あの騒動によって明るみにでた真実が存在していたとは、なんと皮肉だろうか。 騒動のすべての真相を知るフィリスとイアンとセルフィスとクルーヤは、なにも言えなくなった。
「まぁ、いいんじゃないか!」
そんな空気を、明るい調子でマリッサが断ち切った。
「姫だとかそんなのは関係ないよ! 同じ志を持っている以上……アタシらは仲間さ!」
「おお、マリッサ言うなぁ!」
そうハッキリ言い切ることは、ときに重要だろう。 今この瞬間が、ときに重要な瞬間である。
「よーし、以上で会合はおわり! せいすいが切れる前に、魔物に見つかったらやっかいだから……素早く撤退するよ!」
「次の会合の予定は、順次決めていくとしよう!」
「というわけで、解散ですね!」
そう声を掛け合い、この日の会合はここまでとし、各々は帰っていくことになった。
「姫様、帰りも引き続き私が護衛をします」
「ええ、お願いしますね。 ではみなさま、ごきげんよう」
そしてフィオーネ姫も、例のメイドを護衛につけながら、セントシュタイン城へ帰って行った。 あのメイドがいればまず間違いなく大丈夫だろう、と苦笑しつつフィリス達も、ルディアノを後にしたのであった。
「エビルフレイムの出現は予想外だったけど、会合自体は無事に終わったな」
「まずは一安心ですね」
「そうね………でも…………」
「ん?」
帰り道でそう会話をしながら歩いていたが、クルーヤが少し引っかかることがあったようであり、それを彼らに打ち明けた。
「なんだか、さっきのフィオーネ姫様……怖くなかった?」
「ああ……やっぱそう思うよな……」
「あの会話の後から、急に空気が変わった気がするよな………」
クルーヤは、フィオーネ姫の変化に気づきそれに畏怖の念を抱いていたようだ。 それは、仲間達も薄々感じていたことである。 そして、彼女のよう素顔かしくなったタイミングもわかる。
「………何事もなければ……よいのですが………」
ぽつぽつと、セルフィスも不安を口にする。 このルディアノとセントシュタインを行き来する……ルディアノへ帰ろう団の活動は、このままでは終わらない予感がしたようだ。
「やはり……いやな予感がします………」
「セルフィス………」
「これからなにが起こるかわかりません、警戒は続けておきましょう」
「ああ」
そうフィリス達が決断をし、セントシュタインに帰ってきたその夜のこと。
「…………」
フィオーネ姫は、自室で一人。 指輪と例の本を交互に見て、ためいきをついていた。
「……………やはり、この指輪は……………。 この本に書かれていることは、真実…………だったのですね……………」
その本の内容も、指輪の意味も、あのメリア姫の幽霊が今になって現れたことも。 そのすべての真相を知っているのは、今はフィオーネ姫だけだ。 本と指輪を見つめ、フィオーネ姫は頭を抱え、その目尻からはわずかに涙を流していた。
「…………ああ………なんと、いうことでしょう………真実とは、どれほどに……残酷で、知らないことが、おろか………なのでしょう…………。 後少し………後少し………手がかりをつかめれば、証拠があれば………私は、私は……………あの国を、救える」
夜空は、まだまだ暗くなっていく。
次回がいよいよ、このストーリークエストが牙をむく…そんな展開です。
ぶっちゃけ魔物よりあの人が怖いです。
そんな話になります。