仲間達がそれぞれで次の旅をさがす話です。
そうして、フィリスたちの健闘によりセントシュタイン消滅の危機は去り、ルディアノ王国の再建が約束された後。 フィリスは老学者イロホンから、例の本を見せてもらった。
「これが、真実……か……」
「そうなるのう……」
そこに記されていた真実。 それは先程もフィオーネ姫が語ったとおりのことだった。 ルディアノ王国が滅んだ原因は、大昔のセントシュタイン王国にあること、魔神の存在。 改めてそれを確認したフィリスたちは、それぞれで思ったことを口に出す。
「この国王は、確かに国を守ろうという意志はあった。 しかし、その方法を誤ってしまった……」
「他人を犠牲にして生きるだけでなく、そのことを隠蔽して後世に伝えようとしなかった……それが、罪なんだろうな」
「それに、ルディアノ王国のことはともかく、メリア姫とレオコーンが引き離される原因が、あの魔神だった……。 もし、また魔神が姫様の願いを叶えようと動いたとして、そのあとで真相を知ったら…姫様はもっとショックだったでしょうね」
「ああ。 そもそも姫様が魔神の力を利用してセントシュタインを滅ぼしてでもルディアノを蘇えらせようとしていたのも、その2人のためだったことだしな」
そもそもフィオーネ姫が今回の凶行に及んだ理由。 それこそがルディアノの姫と騎士の悲恋。 その悲恋の元凶があの魔神と知ったとき、フィオーネ姫の心は強く傷ついた。 自分の国を滅ぼそうとするだけでなく、さらに悲劇を生み出そうとしていたかもしれなかったからだ。
「なにはともあれ、魔神もいなくなってセントシュタインも守れて、ルディアノの復活は約束された……これで解決、でいいよな?」
「そうね」
「ああ」
「そうですね………さて、僕もいかねばなりませんね……」
フィリスの言葉に仲間達が同意した後、セルフィスはそうつぶやいた。
「セルフィス、どこにいくんだ?」
「教会です。 実はフィオーネ姫様にお願いをされていて……先の件で懺悔をさせてほしいとおっしゃったので、聞いてきます」
「そっか、まぁお前なら姫さんを慰められるだろうな。 いってこいよ」
「はい、いってまいります」
そうして教会に向かったセルフィスを、仲間達は見送った。
「にしても、みんな解決して許してるのに今も懺悔したいだなんて、姫様はまじめだな」
「あの方は元々、正義感が強くて優しいお方だもの。 しっかりと向き合いたいのだと思うわ」
「……やっぱ、罪ってのは自分で認めないと償いようがないよな………」
「……イアン……」
そしてセルフィスは町の教会を訪れた。 そこにはすでにフィオーネ姫の姿があり、彼を待っていたかのように声をかけてきた。
「セルフィスさん、お待ちしていました」
「お待たせしました……フィオーネ姫様。 では、はじめましょうか」
「はい」
そうしてセルフィスの前でフィオーネ姫はひざを折り頭を下げ、己の懺悔したいことを語る。
「……神よ、私は王族としての責務を忘れ己の感情のままに、己の国を滅ぼそうしていたことを懺悔します………。 真実を見つめているようであり、真実から目を背けていた……まことにみるべきものや考えなければならないことから、目をそらしていた……」
ぎゅ、とフィオーネ姫は祈るようにくんだ手を握る力を強めた。 かすかに、全身と声をふるわせながら。
「私は、ただ……悲劇を自分勝手な理由で利用していただけにすぎなかったのです……。 神よ、私はどうすればよいのでしょう……どのようにすれば、この罪は償えますか。 あなたの答えを、お聞きしたいです………」
そういい、フィオーネ姫は目尻から涙を一筋ながした。 彼女は本当にあの事件のことを後悔し、罪の重さを感じそれに押しつぶされそうなのだろう。 どう償うか決めたとして、自分でそれをやっていくと決めてもなお、それは彼女を苦しめる。 それを感じるのはすべて、彼女の元の性格の影響だろう。
「フィオーネ姫様……」
そんなフィオーネ姫の姿を見て、セルフィスは心から彼女を救いたいと思った。 だから、彼女にある話をする。
「僕は、旅の途中で……姉を失いました」
「……え……?」
「姉はいつも、僕の味方で……僕を何度も助けてくれた………なのに、僕は肝心なところで助けられなかったのです。 そのせいで、僕は姉を失ってしまったのです。 その苦しみは僕だけでなく、義理の兄も抱えています……」
セルフィスはかつて自分の故郷でおきたこと、町を救うと同時に大事な人を失ったことを語った。
「僕はいまも、姉上を救えなかったことを罪とおもい、抱えているのです……。 そして今、その償いのために僕は……希望をくれたあの方達と旅を続け、旅先で出会う人々を救う旅を続けています」
続けてセルフィスはもう一人、贖罪のために旅をしている仲間のことを語る。
「僕の仲間であるイアンさんも、ある取り返しのつかないような罪を犯してしまい……今もそれを抱えていらっしゃいます。 いつも明るく振る舞われていますが、それでも、己の罪を記憶から消したりはしません」
「そんなことが……貴方達も、抱えているものがあったなんて………」
「ええ………そして、僕達はフィリスさんとともに、彼女の正義、そして自分の正義を信じて……一人でも多くの人を救うために自分の力を使い、戦っているのです。 あの方の力となることが、僕達にのとっての…贖罪となるし、できる……そう、信じています」
そう自分の考えを語った後、セルフィスはフィオーネ姫と視線をあわせ、彼女に微笑みかけながら話しかける。
「フィオーネ姫様」
「はい」
「貴女の贖罪は、未遂とはいえ己の犯そうとした罪を認め、受け止め、忘れないようにすること……。 そして、国王様と誓い合い、己で決めたように……この国と力を合わせて、ルディアノ王国を蘇らせること……。 それらを行うことで、果たされるでしょう」
その言葉にフィオーネ姫は耳を傾け続け、そしてセルフィスは自分の聖職者としての仕事をもうひとつ、口に出す。
「準備が整ったら、僕をおよびください……その地に魔物が足を踏み入れぬよう、清めましょう。 そのためにも、あの団の方々、そして貴女達の努力が必要なのですから。 負けず、自分と自分の国を信じて、復興に努めてください。 僕も、それが叶うことを信じて、修行を続けます」
「……はい……!」
フィオーネ姫は、セルフィスの言葉を受け取り、うなずいた。 そのフィオーネ姫の表情をみて、セルフィスはほほえむ。
そうしてフィオーネ姫が城に帰るのを見届け、自身も教会をでて、セルフィスが宿屋に戻ってきたのは、夕方だった。
「ただいま、戻りました」
「お、帰ってきたか」
宿屋に入ってリッカにフィリス達のことをきき、彼らが部屋で休んでいることを聞いたセルフィスは、部屋の場所を聞きそちらへ向かった。 するとその部屋のにはリッカのいっていたとおり、フィリス達の姿があって、セルフィスを待っていた。
「どうだ、姫さんは?」
「自分の抱えているものを打ち明け、僕も自分にできる限りの助言をしました。 きっと、大丈夫でしょう」
「そっか、お前がそういうなら大丈夫だな」
とりあえずフィオーネ姫の懺悔は無事終わり、彼女へ今後のアドバイスを送ることで、その心は救われたことだろう。 安堵したフィリス達は、自分達がセルフィスを待っている間になにをしていたのかを、セルフィスに打ち明ける。
「実はあたし達、さっきまでルディアノへ帰ろう団のメンバーと話をしていたんだよ」
「あの方々と、ですか」
「ええ。 それで、フィオーネ姫様を中心に、これから国がこの活動に力を貸してくれることを思い切って言ってみたら……マリッサさん達、大喜びだったわ」
「元々悪意があったわけでもないし、これからはこっそりとじゃなく本格的に活動ができる……って言ってたな。 あと、やる気がでた……とも」
「そうですか……それなら、ルディアノの再建もさほど遠くない未来、なのかもしれませんね。 これならば姫様のお心は救われるでしょう」
それに、祖国を滅ぼされたメリア姫とレオコーンの魂も救われるだろう。 生まれ変わって祖国に帰ることができ、今度こそ結ばれるように願い事をするのも、いいかもしれない。
「あの人達、魔物と戦っても割と戦えて強そうだから……問題はなさそうね。 特にあのメイドさん」
「……やっぱあのメイドさんに目を向けがちだよな」
「ええ…だって、ねぇ……?」
ルディアノへ帰ろう団は各地を冒険しているだけあって、魔物との戦いもなれているし戦闘力も高いだろう。 きっとこれからも、ルディアノを復興させるために、あそこにはびこる魔物達と最前線で戦うことで、国の信頼を得て進んでいくだろう。
「ま、いずれにせよだ。 あたしらはルディアノへ帰ろう団の味方だ。 今後も協力を惜しまないでいようぜ」
「そうね」
「だな」
「はい」
この国のため、そしてルディアノのために自分達ができることを、全力でやる。 それが、よりよい未来というものを作り現実にするために、もっとも効果的なものだろう。 その行動にでることにたいし、4人はいっさいの躊躇いを見せないし、ためらうつもりもない。
そうしてセントシュタインとルディアノは今後も、大丈夫だろうと話がまとまった。 そのときクルーヤはふと、ある事を思い出す。
「そうだ、まだセルフィスにはなしていないことがあったわね」
「え、なんですか?」
自分が場を離れている間に、まだなにかあったのだろうか。 セルフィスが首を傾げると、クルーヤは彼にある話を持ちかけてきた。
「ねぇ、セルフィス。 久しぶりにベクセリアにでも行ってみない?」
「えっ?」
それを聞き、セルフィスはキョトンとする。 それもそのはず、自分が席を外している間にしていた話の内容が、自分の故郷に関する話をしていたのだから。
「実はさっき、ロクサーヌさんから頼まれたんだよ。 ベクセリアにいるとある家族のところまで、ある装備の一式を届けてほしい……って」
「その配達人の仕事を引き受けようって、計画を立てていたんだ」
「あたしらは、受けるつもりでいたんだけど……せっかくセルフィスの故郷にいくんだ。 あんたの意見も聞かなきゃと思って返事待ちにしてもらってるんだよ」
町の名前をきいたセルフィスは、静かに目を細めた。
「ベクセリア、ですか」
「ね、依頼もあるし……いこ? 久しぶりの故郷でしょう?」
さらにクルーヤに言われて、セルフィスは話を聞き入れることにした。
「そうですね。 僕も気になりますし……今あの町が、どうなっているのかが……」
「噂だと、その町は今、考古学者のおかげで学問の町へと進化しつつあるみたいだぜ。 その考古学者の顔も、依頼ついでに拝もうぜ」
「はは、その方がよいかもしれませんね」
その考古学者が誰なのかをわかっているセルフィスは、クスリと笑ってそういった。 フィリスはふと、窓の外を見て空がすっかり暗くなり星が顔を出していることに気付き、その夜空を見た。
「……明日からまた、あたしもがんばらなきゃな。 ノンストップで……突き進まなきゃ」
その星の光をみて、フィリスはこれからもこうして人助けの旅を続ける決意を新たにしたのだった。
次回はベクセリアのストーリークエストをお届けします。
これで、ひそかにはっていたセルフィスの、ちょっとした伏線回収っぽいこともしていきたいとおもいます。