ドラゴンクエスト9 AngelsTale2   作:彩波風衣

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ガナン&ベクセリア編、これでおわり。
DQ9でも人気の高いあのキャラが、まさかの再登場!


15「王よ、眠れ」

 王の霊を追いかけて、フィリス達は今は誰もいない廃墟であるガナン帝国城を訪れた。

 

「ここにくるのも……あれ以来、か……」

「そうですね……」

 

 あれ、というのはガナン帝国の軍勢との最終決戦のことである。 女神セレシアから世界を脅かす邪悪なものがいるガナンを討て、と神託を受けたフィリス達はこの城に乗り込み、暗黒皇帝ガナサダイを倒した。 だが、邪悪な力の正体はその皇帝ではなく、地下深くに幽閉されていたがために憎悪に飲まれ闇に堕ちた天使だったのだ。 フィリス達は天界へおもむきその天使を討ったことで、世界に平和が戻ったのである。

 

「!」

 

 その激しい戦い以来となる城に、足を踏み入れようとしていたそのときだった。 城門の前に、見覚えのある姿があり、フィリス達は警戒をして叫ぶ。

 

「お前は、ギュメイ将軍!」

『また会ったな……』

 

 それはガナンに仕える将軍の一人、ギュメイ将軍だった。 大昔の戦いで命を落とし魔物としてよみがえった彼は、生前と同じように自らが忠誠を誓ったガナサダイのために戦っていた。 卑劣な手段を好まず正々堂々と強きものと戦うことだけを望む、誇り高き武人だった。 そのことあって、帝国最強とよばれるほどに。

 

「…………」

『警戒をするな、このとおり今の我はただの霊魂……すでに死者だ。 お前達にはなにもできぬ』

 

 それをきき、フィリスは腰の剣を握る力を緩める。 彼は元々筋の通ったものであると、戦いを通して知っていたからだ。 フィリスは、なぜこうして姿を見せたのかを、彼に直接問いかける。

 

「じゃあ、あんたは今……なぜここにいるんだ?」

『ククク……まずは、少々……我の話に付き合ってくれ』

「話だって?」

『なに、ガナンの昔話よ』

 

 ギュメイ将軍は目を細め、かつて自分が人間だった頃のことを思い出しつつ、フィリス達に語り始めた。

 

『ある日、世界征服の野望を実現させようとしたガナサダイ様は……我らに心の内をあかしてくださった。 国王がこの世にいる限り、自分はガナンの頂点には立てぬ。 あの方を消さなければ……とな……』

「なんて野心家だよ」

『父を殺すなど、これ以上の不義があろうかと我は反対した……だが、止められなかった……』

 

 だから、許してしまった。 主君の不義を。 ギュメイ将軍はそれがでにかったことが主君への不忠ではないかと思っているようだ。 彼は、引き続きフィリス達に話を続ける。

 

『父を殺し、ガナンの頂点にたったガナサダイ様は、自分より強いものを現れるのを恐れた。 だからこそ、エルギオスのパワーを利用し、強大なる魔帝国を建国した。 皇帝となり、逆らうものを始末したのだ』

「っけ。 壮大な野望を持っていた割に、自分より上のもんがいないかビビるなんて……ただの小心者じゃん。 国を率いるモンの器じゃねーな」

『…………』

 

 ガナサダイの考えに対しイアンは厳しくそうコメントをした。 それにたいしてギュメイ将軍はなにも言い返すことができなかった、そのときだった。

 

「ガァァナァァサァァダァァイィィィィィ!!!」

「うげぇ!?」

「隠れてもムダだ、出てくるのだ!!」

 

 突如として城全体に響きわたる怒号。 それにたいしフィリス達は驚く。 声があまりにも大きく、城全体が揺れたほどだったから、なおさらビックリだろう。

 

「な、なんだよ今の!?」

『ガナサダイ様はもういない……。 ガナン帝国の野望の野望はとうに潰えたのだ。 我も現世に未練などない』

「皇帝を殺した、あたしらにも……か?」

『……お前達がそのカタキであろうとも、既にでた結果であり、繰り返すわけにもいかぬ。ゆえに、 お前達のことも憎んでいない』

「話がわかるな」

『だが、気がかりはあの方の存在よ。 あの方は悲しき運命の中で散った……。 あの方の心は……いまだに休まらない』

 

 ギュメイ将軍がそう口にすると、再び城全体に怒号が響きわたる。

 

「姿を見せなければガナンを! いや!! 世界中を滅ぼしてでも! 貴様をいぶりだしてくれるわ!!」

「ちょ、そいつはやめろーっ!!」

 

 もしまた世界を滅ぼそうものなら、せっかく守った苦労が水の泡だ。 というか、つい最近も世界を滅ぼしかねない存在と戦い倒し、世界を守ったのだが。 そんなフィリス達に、ギュメイ将軍は彼女達にある依頼を出してくる。

 

『フィリスよ……我はお前達に託したい……あの名を奪われし王を……永遠に眠らせてやってはくれないか』

「え、あたしらに?」

『我や皇帝陛下を越えた、お前達にならば…我もたくせる』

 

 そう真剣な表情で頼んでくるギュメイ将軍、その目を見たフィリスは少し考える動作をとったが、やがて口角をあげて頷く。

 

「……そうだな! このままだと今度はあの王様が、世界を滅ぼしそうだ。 ガナサダイがもういないことも、この世にとどまったままじゃダメだってことも、教えてやんなきゃならない……だから、あんたの頼み、聞き入れてやるよ!」

 

 フィリスが迷いなくそういうと、ギュメイ将軍も目を伏せつつ口元に笑みを浮かべた。

 

『ふふふ……やってくれるか。 流石は、我を倒したものだな』

「あったりまえだ!」

『気をつけるがよい……あの方はガナサダイ様より強いぞ……』

「ああ」

 

 そうしてギュメイ将軍の願いを聞き入れたフィリス達は、城内に足を踏み入れた。

 

「みんな、覚悟はいいな?」

「乗りかかった船だしな、とことんつきあうぞ」

「ここまできた以上、引き下がれません」

「最後まできっちりやらないと、モヤモヤしてて気持ち悪いもんね!」

 

 

 

 そうして暗い城の中を突き進む4人。 特に地形は変化しておらずだいたいの地形は覚えているので迷わないが、あのときと違うのは、魔物と一匹も遭遇しないところだろう。

 

「王様がいそうなポイントといえば、やはり玉座の間でしょうか」

「道は覚えているよな!」

「ああ」

 

 王がいるのは玉座の間。 そう推理した4人は玉座の間へ向かう。 そうして玉座の間にたどり着いた4人は、扉に手をかけようとした…そのときだった。 そこから、激しい怒号が聞こえてきたのは。

 

「どこにいるのだガナサダイ! 姿を見せなければ、ガナン領は消滅すると思え!!」

「ここだな」

「ここね」

「ここだね」

「ここですね」

 

 その怒号を聞いて、フィリス達はここに間違いなくあの王がいると確信した。 そして扉を開けると玉座の間には、ガナサダイにそっくりな大男が叫んでいた。 顔は、怒り狂っていてさながら鬼…あるいは般若のようだ。

 

「ひょえー……」

「間近でみるとすごい迫力……」

「ありゃあ、怒りで我を忘れてるネ……」

 

 そう感想を口にしつつ、4人はあの王を倒すために前にでる。 そうして自分の前に現れた4人に、王が気付き声をかけてきた。

 

「うん? なんだ、キサマは?」

「こいつさらにオレ達を忘れてるよ」

 

 自分達を発見した第一声にたいし、イアンは不満を顔に出す。 一応自分達は、この王が記憶を取り戻す手助けをした恩人のはずなのに、と。 フィリスもイアンと同じことを思いつつも、剣を抜いて切っ先を王に向け、自分達の目的を告げる。

 

「あたしらは……あんたを止めるため、あんたを倒しにきた者だ!」

「名のなき王よ……あなたはすでに亡き者なのです。 このままこの世にとどまっていてはいけません……どうか怒りをしずめ、天へとお還りください! できぬのであれば、僕達があなたを屠ります!」

 

 フィリスに続いて、セルフィスが王を説得する。 それを聞いた王は、大笑いをした。

 

「フハハハハッ!!」

「なにが可笑しい!」

「ゴミが余に刃向かうとはな……おもしろい……よかろう、相手をしてやる!」

「ゴミって……!」

「余は手加減はできんからな! すぐに死んでも恨むでないぞ! 少しは余を楽しませてくれ!」

「そのせりふ、そっくりそのままお返ししてやるよ」

 

 王の言葉にそう返すと、フィリスは自らにバイキルトをかけはやぶさ斬りを繰り出す。 その攻撃は王の杖と打ち合う結果になったが、直後に力をためていたイアンがすべりこんで、せいけんづきを食らわせる。 うぐ、とうなり声をあげながら王はなにか呪文を唱えると、杖の先端についている玉をうかせて、それでセルフィスとイアンを攻撃する。

 

「ぐぁ!」

「うぐっ……!」

 

 セルフィスは盾で攻撃を防ぐがその一撃が重く、歯を食いしばる。 一方丸腰のイアンはその玉をもろにうけた影響で吹っ飛ぶ。 さらに王は今度は、マヒャドの呪文で一同を同時に攻撃してきた。

 

「このぉ! メラゾーマッ!」

 

 反撃でクルーヤは、メラゾーマを唱えてそれを王にぶつける。 そのメラゾーマによる炎は一瞬で、王の体を包み込んだ。

 

 

「ぐぅぅ……!」

「はぁぁーっ!」

 

 炎の中にいる王に対し、フィリスは剣を強く振りかざした。 それにより王の腕は大きく切り裂かれ、王はそのダメージに苦しみながらもしんくうはを放ちフィリスだけでなく周囲の仲間まで吹っ飛ばす。

 

「まだまだっ!」

 

 フィリスは床にたたきつけられながらもすぐに立ち上がり、はやぶさ斬りで攻撃する。 再び玉が飛んできたが、それはイアンが蹴り技ではじき返し、そのまま氷結らんげきを繰り出して王を追いつめる。

 

「メラゾーマ!」

「ドルモーアッ!」

 

 そのとき王はメラゾーマで攻撃を仕掛けてきたが、それをセルフィスの闇魔法が防ぐ。 王は引き続きマヒャドを唱えさらにしんくうはを放って4人全員に大ダメージを与えたが、すぐにセルフィスが全員のキズをいやす。

 

「同じ呪文でお返しよ……マヒャド!」

 

 クルーヤはマヒャドを放ち、王の動きを妨げる。 そしてフィリスとイアンが武器による一撃をそれぞれ食らわせ、己の魔力をためていたセルフィスに声をかける。

 

「セルフィス!」

「はい!」

 

 その呼びかけに対しセルフィスは頷くと、その手にたまっていた魔力を、王に向かって解き放つ。

 

「名のなき王よ……眠りなさい! イオナズンッ!」

「ぐぁぁぁーーーっ!!」

 

 その爆裂呪文は、王の体を包み込むと激しく爆発を起こし、その爆発がやんだ頃には、王は地に伏せていた。

 

「まさか、ガナサダイの時のようにバケモンに進化したりしねーよな?」

「ないことを祈りたいわね……」

「気を抜いちゃ、だめだよ!」

 

 ガナサダイは一度倒れた後、骸骨のような姿になってよみがえり再び自分達に牙をむいてきた。 まさか、この王も同じではないか。 そう4人はかつての戦いを思い出し油断せず警戒をして、王をみていた。 王は、戦いのキズに苦しみつつも立ち上がり、言葉を発する。

 

「ヌォォォ……余は国王……余は、ガナンの国王なのだ……」

「……?」

「父として、ガナサダイの……野望を……息子の野望を止めねば……世界は、この世界は……!」

 

 そう口にしながら、王は目を見開かせた。 それは、自分の記憶を取り戻したからだ。

 

「………そうだ……思い出したぞ…………余はガナサダイの父……余の名前は、ガンベクセン……」

「ガンベクセン国王……か……」

「ガナサダイよ……出てくるのだ……いったいどこにいる……なぜ……なぜ、父に姿を見せぬのだ……」

 

 ガンベクセン王は、自らの名前を思い出し、再びガナサダイを探す。 そんな王に、セルフィスは歩み寄る。

 

「セルフィス?」

「ガンベクセン王よ」

「む……?」

 

 セルフィスは、ガンベクセン王と向かい合いつつ、彼に現実を突きつける。

 

「あなたの息子であるガナサダイは、もうこの世にはいません」

「なに?」

「かの者は暗黒皇帝の名の下、帝国を築き世界を脅かしました……ですが、野望を叶えぬまま……散ったのです。 今は、フィリスさん……そして我々の手により、永遠の眠りにつきました」

 

 セルフィスの口から、ガナサダイの野望は潰え彼自身も亡くなっていることを知ったガンベクセン王は、一瞬で冷静さを取り戻した。

 

「そうか……キサマ達が……止めたのか……ふふふ……そうだったか……それならば、もうよいわ」

「いいのか」

「キサマらは余を正気に戻し、余は名を取り戻した……ふふふふ……見事であったぞ」

 

 そして、ようやくフィリス達のことを思い出したらしい。 今回自分を止めたことや記憶を取り戻す手助けをした礼…ガナサダイを止めたことも含めて礼を言った。 それにたいし4人が笑みを浮かべると、ガンベクセン王は天を仰ぐ。

 

「息子よ……余は、お前の心をわかってやれなかった……できるなら、もう一度お前と……」

 

 最期に望むのは、父としての後悔と息子に対する謝罪、そして自分と息子の贖罪だった。 国としても親子としてもやり直したいと望みながら、光となって昇天していった。

 

「……いっちゃったな」

「ああ」

 

 もう座るものは誰もいないその玉座の間。 そこでセルフィスは胸に手をそえて、かたる。

 

「祈りましょう。 かの王が転生し……次の世界には、ともに力を合わせていく父子として歩めることを……」

 

 セルフィスはそう目を伏せて祈り、それにほかの3人も共感しおなじことをしたのだった。

 

 

 

 そうしてガンベクセン王を止め、天に召されていくのを見届けた4人はこのことを、依頼主であるギュメイ将軍に伝えるために彼の元に帰ってきた。

 

『あの方が……逝ったか……』

「ああ」

 

 ガンベクセン王が既に旅だったことをフィリス達からきいたギュメイ将軍は、冷静にそう語りながらもその目からはわずかに涙を流していた。

 

「あっ……」

『ふっ……いかんな……我としたことが、涙を……』

 

 ギュメイ将軍は、かつての主君の姿を思い出し、その日々が戻らないことも自分の後悔も取り返しがつかず簡単には許されないことを思い返しながら、つぶやく。

 

『……あの方は、孤独な王だった……誰からも理解されず、我らもわかってやれなかった……』

「……」

『ふふふ……三将軍の我が、こんなことをお前にいうとはな……我にも、情がうつったようだ……』

「別にいいんじゃないのか?」

『む?』

 

 立場で己を戒めようとするギュメイ将軍に対し、フィリスはそう返した。

 

「あたしらにとって、あんたらは敵だ……あたしにしてみれば、皇帝なんかは特に、あたしの大事な人のカタキだ。 だから今も、簡単にゃ許しはしねぇ」

『……』

「けど、あんたしか知らないこと……あんたにしか理解できないこと、あったんじゃないかって思う。 わかってやれなかったと思うこともあるし、今更取り返しもつかないかもしれない……でも、それに気付いてやれないと、理解できないと……忠義も同情も、なんの意味もねーよ」

 

 だから、とフィリスはギュメイ将軍をみて、告げた。

 

「あんたのその涙も思いも……なにひとつ無駄なものじゃないし、そこに立場や肩書きは関係ない。 むしろ、あんた自身がくさってない証拠……立派な誇りだと、思うよ」

 

 そう笑顔で語るフィリスに対しギュメイ将軍は目を伏せ、そして口元に笑みを浮かべた。

 

『そう声をかけてくれるとは……我が敗北したのも、納得がいく…お前は、まことに強いものだな』

「あたしは、思ったことをそのまま口に出しただけさ」

『お前達には世話をかけた。 これは礼の証だ』

 

 そういってギュメイ将軍はフィリス達に、報酬として赤い宝石を手渡した。 その宝石に、4人は見覚えがある。

 

「あ、宝石!」

『なにか、我々も知らぬような、未知の力を感じる宝石だ……お前達ならば、その真実を突き止められるだろう……』

 

 その赤い宝石についてそう説明すると、その体からポロポロと光の粒子をこぼしはじめた。 それは、未練がはれ成仏するあかし。

 

『これでもう、悔いはなくなった……』

「ギュメイ将軍……」

『我も、生まれ変わることが許されるのであれば……もう一度、あの方々とともにあり……そして、お前達と武勇の腕を、競いたいものだな……』

 

 そう、転生を願う声を聞いたフィリスは、彼の言葉にたいし頷いて言葉を返す。

 

「……もし、あんた達が生まれ変わるのを許されないことというんだったら、かわりにあたしが許すよ!」

『……フッ……さらばだ……フィリス………』

 

 そうして、ギュメイ将軍は昇天した。 消える直前、その将軍は人間の姿をしていた気がしたが、既にここにないので、確認はできなかった。

 

「……これで、すべてが……終わったのでしょうか……」

 

 セルフィスは、暗い空を見つめてそう、つぶやいた。

 




次もちょっとした閑話休題をいれます。
セルフィスが中心になると思います。
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