あと、色々と設定があるせいです。
真意が明らかになるのは、まだ先ですが…。
カルバド大草原はいま、深い霧に覆われていた。 その現象は滅多に現れないものであり、集落に集う人々は白い景色に不安を覚えていた。
「…とまれっ!」
「ヒィィィンッ!」
集落にすまう遊牧民をまとめる族長・ナムジンは馬を利用して草原を駆けながら、集落の周辺をパトロールしていた。 その最中で彼は自分たちに近づくなにかの気配に気付き、手綱を引いて動きを止める。 ナムジンが止まったところでその気配の正体も顔を近づけて鳴き声をあげた。
「グギギッ」
「なんだ、ポギーか……お前も不安を覚えたのかい?」
「グギッ」
それは、彼になついている善良な魔物…マンドリルのポギーだった。 普段は彼の母親の墓が存在している洞窟を住処にしており、そこにナムジンがたびだび顔を出している交流の形を取っているのだ。 そんなポギーがなぜここまで足を運んできたのか、その理由に気付いているナムジンはそっと、ポギーをなでる。
「シャルマナは、あの洞窟にいるんだな?」
「グギッ」
「このような深い霧、私が生まれてからは一度もなかったからな……ヤハーン湿地からくるものなのだろうか………。 とはいえ、滅多にないとはいえ、霧は霧だ。 不安がる必要はない……すぐにやむさ」
「グギィ」
「それよりも、お前はシャルマナのそばにいてやれ。 あいつは小さく弱い。 強き友であるお前がそばにいなければ安心できないだろう……今も、洞窟の中でふるえているかもしれない」
そういってナムジンがポギーに、洞窟に帰るよう勧める。 心配そうに見つめてくるポギーにたいし、私は大丈夫だと答えながら。 だが、そのとき、どこからか自分達以外の存在の気配がした。 すぐに気配のした方をみるとそこには、なにかのシルエットが浮かび上がっていた。
「何者だっ! 姿を現せ!」
そう叫び、護身用として持ってた弓矢を構えるナムジン。 ぎりっ、と弓がしなり矢がひかれる。 だが、黒い影は動かず、そのまま薄くなっていった。 ポギーが前に出てみると、そこにはなにもなかった。
「霧が、なにかの影に見えただけ……か………?」
ポギーの行動によりそこに誰もいないのを確認したナムジンは、弓矢をかまえるのをやめた。 そこに、ある違和感を抱きながら。
「まるであの影は……翼を持った人間のようだったな……」
ガナンとベクセリアの関係を解き明かし、その因縁にも終止符を打った。 それ以降4人は町の人々の依頼を聞いては、それを達成させていく。
「もうほかにやることもないし、しょうがない……か」
「どうした?」
「うん……今もうやることがないからさ」
これといって大きな事件もないから、手応えというのを感じない。 まぁそれは平和である証拠だし、その平和を自分たちの退屈しのぎのために崩す必要もないだろう。 フィリスはそれを承知していながらも、最近感じていたことを正直にイアン達に打ち明けると、彼らもフィリスと同調した。
「そういえば、地図もあのガンベクセン王の霊からSキラーマシンの居場所を記したものをもらって、それっきりでしたね」
「そーだろ?」
あれからもう、1~2週間は経過しただろうか。 地図がみつかるどころか、それに関する情報も噂もない。 ある意味、八方ふさがりのよう状況である。 次の新しい地図を探そうにも、手がかりがない。 そこでイアンはふと、あることを思いつきフィリスに提案する。
「なぁ、一回アギロの旦那と相談でもしてみねぇか」
「アギロさんと?」
「ああ……そもそも、最初にオレ達に宝の地図に潜む奴の情報を提供してきたのって、旦那だろ。 旦那だったら、なにかわかるかもしれねぇぜ」
「……なるほど……!」
イアンの提案に全員が納得し、フィリスは早速アギロホイッスルを使って天の箱船に向かった。 突然乗り込んできた4人にアギロは驚いたものの、フィリス達の話に耳を傾けた。
「……へぇ、地図がどこにあるのかがわからず、息詰まってる、ねぇ……」
「なにか、この事態を打破する手がかりをお持ちでないですか?」
「ああ、それならあるぜ」
「マジですか!」
アギロはそばにあった箱から一枚の地図を取り出すと、それをフィリス達に見せた。 それは紛れもなく、今まで発見してきた例の地図だった。
「実は奥の荷物倉庫に、あったんだ……一枚だけな。 とりあえず、今てがかりがないんだったら、これを頼りに行ってみたらどうだ?」
「ありがとう、アギロさん!」
フィリス達はその地図を受け取ると、この世界の地図を広げて同じ場所を探しだす。 するとやがて、ある場所と合致した。
「あ、カルバドの集落の南の位置だ!」
「ああ、同じ地形だな」
「カルバドだな……よっしゃ、せっかくだ! このままオレが連れて行ってやるぜ!」
「よろしく、アギロさん!」
そうして4人は天の箱船にのり、カルバド大草原に向かった。 やがてそのポイントについたアギロが彼らにそれを告げると、フィリス達はアギロに礼を言いつつ降りようとした。
「って、なにこの深い霧!?」
だが、そこで外に出ようとしていた4人は草原が深い霧に包まれていることに驚く。 これでは視界が白一色だ。
「そういやこの近くに霧がたまってる湿地があったような……」
「だからって草原全体が白くなるほどに染まることって、あるのかよ!?」
いくら近くに湿地があり霧が発生しようとも、この草原はとてつもなく広いのだ。 そこまで濃いものを、広範囲に広げるチカラはない。 この現状に対しアギロは最初戸惑っていたが、やがてある説に気付き冷静につぶやく。
「こいつは、地図の魔物の影響かもしれないな」
「えぇ!?」
「そんな、影響を及ぼすことって、あるんですか!?」
「そういうこともあるみたいだぜ。 実際に目の当たりにするのは、オレも初めてだ……」
「………このまま、こんなに濃い霧に包まれていたら……集落の人も大変だろうな」
「ああ」
フィリスはこの草原に住む人々の姿を思い出し、今彼らは暮らしにくくなっているはずだと考えた。 そんなフィリスにアギロは、地図を攻略することで救われるという話をする。
「だが安心しな、この現象も洞窟の魔物を倒せば消えるってことだ」
「そうか……だったら迷いはないな! いくよ、みんな!」
フィリスのかけ声に対しイアンとセルフィスとクルーヤはうなずき、4人は宝の地図の洞窟に向かった。
「あっつぅい……」
無事に宝の地図の洞窟は発見できた。 だが、それだけでは終わらなかった。 洞窟の中に入るととんでもない熱気が、4人に襲いかかる。 洞窟の中に溶岩が流れているし、高温で湿気も多い。 仲間達は汗だくになりながら、道中の魔物と戦っていた。
「この前攻略したのって、氷の洞窟だったよな……」
「温度差がとんでもないことになってますよね………」
「これは、砂漠よりきっついわね……」
「そりゃ、砂漠はまだ屋外で空気があるし風もふくからな……それに、夜は涼しいし……ここは洞窟の中だから全然だぜ。 なぁフィリス……」
そう、イアンが声をかけてみるが、フィリスは黙ったままだ。 フィリス、ともう一回声をかけてみると、フィリスはボツリと呟いた。
「あちぃ……」
「……お前、結構まいってるみたいだな……」
「ああ……こりゃまいるぜ……このままじゃあたし、最悪全部脱ぐぞ……」
「「「それはダメ!!!」」」
「じょ、ジョーダンだってばさ……! んなことするわけないだろ……真にうけんなよ……」
冗談のつもりで言った言葉に対し全員で詰め寄って止めてきたので、フィリスは苦笑しつつそう返した。 この洞窟は早々に攻略をしないとマズイかもと、全員で気を引き締めつつ洞窟の奥へ進む。 そうして最奥部らしき場所にたどり着き、そこにここまで遭遇したのとは違う魔物がたたずんでいることに気付く。
「あれ、あの魔物……ほかのとは少し違うわね」
「ああ……おそらく、洞窟のボスといったところだな」
「あのものを討てば、外の霧も消えるでしょうか」
「どうだろうな」
そう話をしつつ、4人はその魔物の前にでる。 その魔物は巨大な赤いスライムにまたがった、小さな兵士のようなもの。 両手には巨大な剣を一本ずつ持っており、スライムにも兵士にも髭がはえている。
「我こそは、スライムジェネラル…」
「スライムジェネラル?」
「ここは忘れ去られた地……封印された兵士たちの墓場……だが、心に戦いの炎がある限り、戦いは終わることはない………」
そう呟いた後、スライムジェネラルは両手の剣を大きく振り回し、戦闘態勢にはいった。
「そうとも! 貴様の命を糧とし、この封印を打ち破って、再び世界を戦場に変えてやる!」
「そうは、させるかよっ!」
向かってくるのなら、と4人は一斉に武器を構え戦闘態勢にはいった。 まずはクルーヤがイアンにバイキルトを、セルフィスが仲間達にスクルトをかけ、イアンはバイキルト状態で敵につっこみ棍による一撃を食らわせる。
「スキアリ!」
「甘いっ!」
直後にフィリスがはやぶさ斬りを繰り出したが、それはスライムジェネラルのガードにより阻まれ、さらに反撃の一撃を受ける。 直後、クルーヤが今度はメラゾーマを唱えて炎の玉でスライムジェネラルを焼いた。
「どうよっ!」
「小癪な…イオナズンッ!!」
「きゃああ!」
だが直後にスライムジェネラルはイオナズンを唱え、4人に同時に攻撃を仕掛けてきた。 すぐにセルフィスが全員を回復させるためにベホマラーを唱えようとしたが、つっこんできたスライムジェネラルの一撃を受けてしまう。
「うぐっ!」
「セルフィス!」
「よくもやってくれたわね……!」
そこでクルーヤが攻撃魔法で反撃にでる。 その手に冷気をまとい、マヒャドを放ちスライムジェネラルを攻撃した。 その一撃を受けたスライムジェネラルはクルーヤに剣での攻撃を食らわせようとしてきたが、それをイアンが阻む。
「どこみてんだよっ!」
「うがぁぁ!」
直後、フィリスがスライムジェネラルの背後に回って、大きくその体を切り裂いた。 そのダメージにより体勢を崩したところで、フィリスはある人物に声をかける。
「いまだ!」
「うけなさい……ドルモーアッ!!」
フィリスが声をかけた相手は、セルフィスだった。 彼は闇の攻撃魔法を放ち、スライムジェネラルを攻撃した。 その一撃は、とどめの一撃だった。
「ウゴォォオォオオォ……!」
そうして魔物は敗れ去り、消滅して後には宝箱が一つ、残されていた。
「あー…ようやく熱さから解放されたぜ…!」
「お前も全裸にならずに済んだな」
「……もうっ、冗談を引きずるなよな!」
魔物が残していった宝箱には手袋が一つ入っていた。 これは上質な宝だ間違いないと感じたフィリス達はそれを持ち帰り、洞窟の外に出た。 やはりというべきか、洞窟の中と外では全然違ったので、草原の空気は非常に涼しいものだった。
「みて、霧が晴れてるわ!」
「ホントだ!」
「やはりあの魔物こそが、霧の発生源だったようですね……」
草原を覆っていたあの濃い霧は跡形もなく消えていた。 あの広く風が行き渡る草原が帰ってきている。
「にしても、熱い上にばとったから疲れたぜ……どっかで休もう」
「そういえば集落が近かったはずですし、そちらへいきましょう」
「さんせーっ!」
フィリス達はカルバドの集落へ向かい、その宿屋で休むことにした。 集落にはいったところで遊牧民がフィリス達の存在に気付き、声を上げた。
「おお、フィリスでねぇか!」
「ひっさしぶりー」
「オレらもいるぜー」
「族長様ー! フィリス達がきましたー!」
「えっ?」
軽く挨拶を返すと、ほかの遊牧民が族長を呼ぶ。 彼は人々となにかを話し合っていたらしい、声をかけられ振り返り、4人の存在に気付くと、近づいてきた。
「あなた達は……! 久し振りだな!」
「久しぶりだね、ナムジンさん」
ナムジンにそう答えつつ、4人は旅の途中なのだが疲れたので休ませてもらうために立ち寄ったのだと告げる。 それを聞いたナムジンはもちろん歓迎をすると言い、今日起きていた異変の話をする。
「………そうでしたか……やはり、あの濃霧にあなた達も悩んでいたのですね……」
「ああ。 いつ魔物や部外者が攻めてくるかわからないから、私や皆で交代で、見張りを行っていたんだ」
「族長自ら?」
「当然だ、私は皆を守らねばならないからな。 一人だけ安全な場所に匿われるわけにはいかない……見回っている間、集落の皆のことは父上に任せていたのだ。 まぁその霧も先程晴れたから、もう心配はなさそうだがな」
そう草原が濃霧に包まれていたときのことを語りつつも、ナムジンはこのタイミングで4人が現れたことに疑問を抱いた。
「にしても……あなた達はよく、あの濃霧を越えられたな」
「「「「!!!!」」」」
「それとも……霧が晴れたからここまでくることが、できたのか?」
ナムジンに言われ、4人はどう答えればいいかわからず言葉を失う。 そんな4人の反応に対しナムジンは自分は失言をしたのだと気付いて、首を横に振る。
「……すまない、あなた達を疑っているのではないのだ。 ただ、あまりにも偶然で………関係があったのではと……。 もしかしたら、霧が晴れたのはあなた達の働きではないかと、そう思いたかった……その確信がほしかったんだ」
「……あんたがあたしらを、信頼してくれている。 それが事実ならいいよ」
「……」
自分達があの霧に関係があった、それはあながち間違いではない。 もちろん、ナムジンは自分達を濃霧の原因と言うより、この草原から濃霧を払ったのだと思っているのも事実であると受け入れられる。 だが、詳しい話をするのは難しいことだ。 これ以上なにもはなすことができない4人にたいし、ナムジンは話を切り替えることにした。
「そうだ、一つおもしろい話があるんだ」
「おもしろい話だって?」
「……先も言ったとおり、この草原が霧で包まれていたとき、私は馬に乗って見回りをしていて……その最中で不思議なものをみたんだよ」
「不思議なもの?」
濃霧の中、馬を駆り見回りをしていたときに見かけたなぞの影。 そのみたままの姿をナムジンは口に出す。
「……人影だ。 それもただの人影ではない……まるで、その背中に大きなもの……たとえるなら、翼のようなものを持った……」
「……っ!」
「まぁ、その姿を私もハッキリとみた訳じゃないから、事実とはいいがた……」
どうせ自分の気のせいだろうとナムジンは言いたかったが、フィリスの様子がおかしかったのに気付く。
「フィリス?」
「ッ!」
「どうした、なにかあったのかい?」
「ま、まさか! 霧が濃いから見間違えたんだよ! 背中に羽の生えた人間なんている訳ないもの!」
「そうか……そうだな。 魔物ではないかと警戒はしていたが、あるはずないか」
「そうそう!」
フィリスは必死になってごまかし、それにたいしナムジンは納得をしていた。 そして、彼にはこれ以上なにもいわず、おやすみとだけ告げ、宿屋に帰っていった。
「あ、フィリスッ!! ……ああもう、しゃーねーなぁ!」
「え、彼女はいったい……?」
「すみません族長様、僕達もここで失礼させていただきます!」
「ではまた明日っ!」
仲間達も、フィリスの後を追いかけるようにして、宿屋へ一直線に走り去っていった。 そんな彼ら…とくにフィリスのその姿を、ナムジンはみていた。
「……フィリス……」
次回もストクエとは別の話です。
でもなつかしキャラは出す予定です。