この展開はすごいな…。
でも、サンディも根がいい子であることがわかるだけ、いい話ですね。
そして今回は、ちょっとしたゲストを出します。
「フィリスも無事に天の箱船の運転士になれたし、アギロさんとサンディも仲直りできたし、今日の依頼も快調ね!」
「ああ!」
フィリスが無事に天の箱船の運転士としてアギロに認められ、その証として運転免許ももらった。 それだけでなく、サンディも何かを決心したようであり、フィリス達に負けないように自らの試練を乗り越えるといった。 そんな出来事を経験した4人は、今日地上で様々な依頼を次々に解決させていった。
「じゃここからは、天の箱船で移動しよっか」
「そうね」
次の依頼を探すため、場所を移そうと天の箱船を呼ぶ。 そうして天の箱船に乗り込み、いざ運転しようとした、その時だった。
「うわぁぁぁぁん!!」
「ほぎゃあ!!」
乗り込んだ瞬間、なにかが猛スピードでフィリスにつっこんできた。 それにびっくりしたフィリスは後ろに転んでしまった。
「な、なんだよ!?」
「ヒック、ヒックッ……」
「って、サンディ!? そんなに泣いて、どしちゃったの!?」
あわてて上体を起こし、自分につっこんできたものの正体を確かめるフィリス。 するとそれは、涙で顔全体をぬらしたサンディであり、なぜ彼女がこんなになるほどに泣いているのか、この状況についていけないフィリスは戸惑いつつサンディに涙の理由を問いかける。
「どうしよ、どうしよー!! フィリス、たすけてー!!」
「だから、なにがあったんだよ!?」
「…………アタシ……アタシ……」
サンディはいいにくそうにしながらも、自分の身になにが起きたのかを打ち明ける。 それは、衝撃的な内容。
「……人を、殺しちゃった………」
「……え……」
「……うそ……」
「……まさか……」
「……そんな……」
サンディの衝撃的な告白に、4人は目を丸くした。 サンディが人の命を奪うコトなどありえないが、なにがあったのだろうか。 サンディは今も泣きながらうろたえている。
「ど、どうしよう、どうしよ!? アタシそんなつもりなかったの! でも、あの子……!」
「お、落ち着けサンディ……」
「フィリス、フィリス! おねがい、アタシをたすけてぇ! サンディ容疑者は、イヤァァー!」
サンディは今は、冷静さを欠いている状態だ。 サンディを落ち着かせるには、彼女の無実を晴らすことを約束するしかない。 フィリスは、サンディを助けることを約束した。
「わ、わかったわかった! あんたの容疑を晴らしてあげるから……落ち着いてくれ!」
「フィリスぅ……」
「なにがあったかは知らないけど、サンディはあたしの大事な仲間だもんな! だから、必ず助けるぜ!」
そうフィリスはサンディに笑いかけ、それにイアン達も、協力すると告げた。 それをきいたサンディは何度も頷きながら、お礼を言う。
「ぐす、ぐすっ……フィリス……あり、がとう………ヒック……ぜったい、アタシを、たすけてね! ゼッタイだからねっ!」
「ああ、もちろんだ!」
「それで、なにがあったの?」
クルーヤが事情を尋ねてみると、サンディは頭を抱えながら今日自分がなにをしたのか…もとい、どこにいっていたのかを証言し始める。
「アタシ、悪気はなかったの……! ただ用事があってカラコタ橋に立ち寄っただけなんだよ……! なのになんで死んじゃうの!? どうしてアタシがこんな目にあうのぉぉ……!?」
「……うん! カラコタ橋、だな!」
「だったら、カラコタ橋に行ってみようぜ!」
ややヒステリックになりかけているサンディを横目に、てがかりを求めてカラコタ橋へ向かう一同だった。
カラコタ橋に到着したフィリス達は、サンディの案内の元、彼女が殺しかけている人物を探す。
「たぶん、この宿屋のあたりにすんでる……」
「ここだな」
とりあえず、サンディのいうとおり宿屋に入る。 するとそこには、ベッドに横たわっている少女とその母親らしき女性…そして、予想外の人物が一人。
「デュリオ!?」
「お前達は……!」
それは、このカラコタ橋を根城にしている盗賊団の首領・デュリオだった。 ここにいる理由に心当たりがないフィリスは、彼がなぜここにいるのかをたずねる。
「どうして、ここに?」
「この人に頼まれたんだよ、このおじょーちゃんを救ってくれってな」
「盗賊団の首領であれば、この子を助けるお薬を知ってるんじゃないかと思って……」
「うぅん……」
ベッドに横たわる少女は、苦しそうな声を漏らした。 顔色もよくないことからひどく衰弱しているのが伝わってくる。 そのとき、サンディがあらわれて、安堵したような声を上げた。
「生きてた! よかったぁ……この子、まだ生きてたよっ!」
「え、この子なのですか?」
この少女こそが、サンディが殺してしまったと思いこんでいた人物らしい。 セルフィスは失礼しますとだけ告げて、少女の顔をのぞき込みながらその容態を確かめる。
「これは……」
「どうしたの?」
「……非常に衰弱していますね……この子は病に冒されていると先ほどおっしゃってましたが、弱気になってしまっていることが原因で、病を進行させてしまっているようです。 この状態から回復するには、非常に強力な薬が必要かと思われます。 それで病を取り払えば、おのずとこの子も病の恐怖から解放され、元気になるでしょう」
セルフィスの解説をきいたデュリオは、顎に手を当てて考え込む。
「実のところオレも薬には詳しくねぇし、そんなものがあるあんて聞いたことがねぇ。 これから情報を集めて探し出すのもアリかもしれねぇが……それで果たして、間に合うかどうかだな」
「そんな……」
デュリオが動いても、薬が手に入るのが先か、少女が死ぬのが先か。 もう賭のような状況のようだ。
「ねぇ、フィリス……ちょっと手伝ってほしいんだけど……」
「ん?」
「この子がこうなっちゃったのは、アタシの責任であることには変わらないから……アタシが助けなくちゃいけないの。 そのためにも、アタシが知ってる中でも最強の、チョーすっごい薬が必要なんだ……」
もしや、最終決戦に使われたあの薬のことだろうか。 サンディ曰く、その薬はどんな病気も治せるし衰弱状態からも回復できるものだそうだ。 彼女はそれを、作れるらしい。
「だけど、それには材料が必要なの。 だから、集めるのに協力してっ!」
「……わかった、やるよ」
フィリスはサンディにたいし頷きながらそう告げると、その話にこっそり耳を傾けていたイアンたちと目を合わせて頷き、自分たちがその少女を助けると申し出た。
「なぁ……その子を助ける役目、あたしらに託してくれないか?」
それをきいた母親とデュリオは驚き、デュリオは彼女たちに問いかける。
「なんだ、なにか方法があるのか?」
「ああ。 あたしの知り合いに、最高の特効薬を作れる人がいるんだ。 その人のところに材料を持って行けば、すぐに作れるよ!」
「マジか……」
「どうか、お願いします……! この子を助けてください!」
「まかせてください!」
母親は藁にもすがる思いで、フィリスたちにその薬のことを懇願する。 それにたいしフィリスたちは堂々と答え、すぐにでも薬を持ってくると告げて立ち去っていった。
「………あいつら、ナニモンだ……?」
そんなフィリスたちを、デュリオはいぶかしげな目で睨みながら、そうつぶやいたのだった。
サンディが作れるという、どんな病気でも治してどんな疲弊からも回復できるという、チョースッゴイくすり。 その材料はエルフの飲み薬、特やくそう、超ばんのうぐすり…そして、世界樹の若葉と言うものらしい。
「この先の島にある、世界樹があるから……そこに若葉が落ちているみたいね」
ほかの3つは元々持っていたのでなんとなかったが、世界樹の若葉というアイテムは聞いたこともなければ手元にもない。 だがそこでサンディは、この世界で手にはいるものであると教えてくれた。 それを聞いた4人は、船を動かし世界樹のある島へと向かう。
「これが……世界、樹?」
「青白く光ってる……不思議ね……」
そして、その島にたどりついた。 そこはずっと雨が降っている不思議な島であり、その中央には青白く光る大樹が生えている。 今までも女神の力が宿った大樹を見かけたことはあったが、それとは少し違う気がした。
「天使界にあったのとは違うな……」
そこでフィリスは、かつて天使界にあった世界樹のことを思いだしそれについて口に出した、次の瞬間。
『………………もうひとりのわたしに、世界樹の若葉をとってこいと頼まれたのですね……』
「な……!? なんだ、この声……!?」
『確かに、カラコタ橋のあの少女は、まだわたし達の仲間になるべきではないようです………いいでしょう、世界樹の若葉を持って行きなさい……』
突然フィリスの脳内に声が聞こえてきたと思いきや、世界樹の葉ががさがさと揺れ、そこから光がひとつ舞い落ちてフィリスの手の中に収まった。 彼女の手の中で一枚の葉っぱに変わった。
「これが、世界樹の若葉……」
『…………フィリス……サンディを……。 もうひとりのわたしのことを、頼みましたよ…………』
それをきいてフィリスは驚き、どういうことなのかと問いかける。
「待ってくれ、あんたは、いったい……!」
だが、その声に世界樹は答えなかった。 そのため、世界樹の正体やサンディとの関係も、フィリスは知ることができなかった。 そんな、呆然とするフィリスにたいし、さらに追い打ちがかかる。
「フィリス? どうしたの?」
「さっきから、どこにむかってしゃべっているんですか?」
「……え……」
仲間達には、フィリスがずっと独り言を言っているように見えたようだ。 天使界の世界樹の加護を受けているはずの彼らにも聞こえていない、あの声。 こんな現象は久しぶりで、フィリスはさらに戸惑ってしまう。
「みんなには……聞こえなかったのか……あの声は、あたしにしか聞こえなかったのか……」
「…………フィリス…………」
自分にしか聞こえないあの世界樹らしきものの声、それはなんなのか……フィリスは疑問を募らせる。 そんなフィリスの様子を見たイアンは、彼女の頭に手をおいて、彼女にいますべきことだけを伝える。
「フィリス、気になることがあるのはわかる……けど、今は」
「…………わかってる、今は……あの女の子を助けることが最優先だ。 さ、サンディのところに戻って、薬を作ってもらうぞ」
様々な疑問はあるし、話さなければならないし耳を傾けなければならない。 彼らは真剣に相談しあう必要があるが、今は優先するべきコトがあるので、そちらに意識を向けた。 迷ったりしている間に、少女の命はすこしずつ削られているのだから。
「うん! 超ばんのう薬、特やくそう、エルフののみぐすり……そして、世界樹の若葉! 全部揃ったね!」
天の箱船に戻ってきたとき、サンディは材料がすべて揃ったことを確認し、サンディは早速調合した。 そしてすぐさまその薬は完成した。 一見ただ混ぜているだけにみえたが、しっかりと完成したらしい。
「でっきたー! サンディ特製の、チョースッゴイ薬だよっ!」
「やったな!」
「さぁ、これを早くあの子のところに持って行ってあげて!」
「うん!」
フィリス達はその薬をもって、急いでカラコタ橋へ向かった。
「お前達!」
「デュリオ! おまたせ!」
カラコタ橋に戻ってきたフィリス達は、デュリオと簡単に言葉を交わし、薬を持ってきたと語る。 そして、すぐに病気の少女のところへ向かうと、少女は最初に見たときよりずっと弱っていた。
「はぁ……はぁ……めが、かすんで、きた………」
「ああ……どうか、どうか……この子の命を……お救いください……!」
そう必死に懇願する母に対し頷くと、フィリスは少女に薬を差し出した。
「なぁに、このクスリ……?」
「これで大丈夫だよ! さ、がんばって飲んで!」
「うん……」
少女は少しためらったが、これでなんとかなるのだろうかと、その薬に口を付け一気に飲む。 薬と言えば苦い印象なのだが、この薬は違うのだろうか。 少女は普通に飲み干した。 薬のビンが、からっぽになるくらいに。
「!」
「どうだ?」
すると、みるみるうちに少女の血色はよくなっていき、起きあがって動いて見せた。 彼女は今、満面の笑顔を浮かべている。
「お母さん! あたし、治った! ほら、起きても平気なの! とんでもはねても、ぜんぜん元気だよっ!!」
「……ああ……たすかったのね……よかった……よかった……! キセキ、だわ!」
母親は少女に抱きつき、涙を流しながら娘の回復を喜んだ。 一応セルフィスにみてもらうと、彼女は気持ちも回復していて病の気配がないと診断された。 それで無事に少女を救えたとフィリス達は喜ぶ横で、デュリオが目を丸くしていた。
「マジで回復させちまった……おまえ、あの薬どうやって………」
「へへっ」
デュリオのその言葉に対しては、フィリスはただ笑った。 一方、母娘は自分たちを救ってくれたフィリス達に感謝の言葉をつげる。
「あなた方のくださった、あの薬が効いたのですね……旅の方、ありがとうございます……!」
「ありがとー!」
「こちらこそ、間に合って何よりでした」
「もう少しでこの子は、妖精になってしまうところでした……」
「いやいや……って、え?」
そのとき、母親からでた言葉に対し、4人はきょとんとした。 妖精になってしまうとはどういう意味だ、と理解が追いつかないのだ。
「どういうこと?」
「ああ、お前等しらねーのか。 このカラコタ橋に何百年も昔から伝わる話だよ。 若くして死んだ娘は、妖精になるっていう話だ」
「……」
「ほんとだよ、あたし見たもん! 病気で寝てるとき、ようせいさんがむかえにきたの! ピンクの羽をはやして、ちょっと色黒で、お花のかみかざりをつけた、かわいいようせいさんをみたもん!」
確実にサンディのことじゃん。
フィリス達は一斉にそう思ったが、口には出さなかった。
そのとき母親は、少女の病とその侵攻の原因について語る。
「この子の病気は元々、大したことはなかったんですが……妖精を見てしまったことで、生きる気力を失っていって……」
「まぁ、事実かどうかはおいといて……偶然にも妖精を見ちまったこの子は、自分にお迎えがきたとおもいこんで元気をなくし、体調を悪くしちまった……ということだな。 無事に助かってよかったぜ」
「そ、そうだな! これでマジの死者がでなかったのが一番だぜ!」
とりあえず、少女を死の淵まで追いやったのは、この子の気の持ちようの問題であり、サンディが殺したわけではないのだ。 つまり、サンディは自分が少女を死に追いやったと、思いこんでいただけなのだ。
すべての真相を知った4人は苦笑いするが、そんな彼らを訝しげににらみつけつつ、デュリオは彼女達に問いかける。
「にしても……オレですら知らない情報を持ってたり、ほいほいとすごいものをよこしたり………。 お前等、何者だ?」
「「「「…………」」」」
そのデュリオにたいし、4人は黙りこんでしまうが、フィリスが口を開いた。
「ただの、旅人だよ。 それ以上の情報は、ここではいらないだろ?」
「……そうかよ………」
そうさっぱりした態度で返され、デュリオはこれ以上たずねても無駄だと思い、そこで話は切り上げられた。 母娘からは改めてフィリス達に礼を言ったところで、フィリス達はカラコタ橋をあとにした。
「やはり、目ざといですね……彼は……」
「デュリオに気付かれなかったのは幸いだけど、なんかとんでもない話を聞いちゃったわね」
「ああ」
「でも、サンディはあくまでも……妖精であることは否定してるんだよなぁ」
「あれで妖精じゃないなら、あいつって何者なんだよ?」
「……わかんない」
ますます謎は深まったが、フィリスが聞いた声のことを、まずは確かめねばと思い、イアンはそのことを問いかける。
「そうだ、お前から謎の声の話を聞かなきゃな」
「ああ……話すよ」
そうしてフィリスは仲間達に、世界樹からの声のことを話した。 フィリスの言葉を疑う気はないが、世界樹の正体、そしてサンディとの関係がわからないいま、どうすることもできないのだった。
「こっちも、地道に情報集めてみようか」
「ええ」
「はい」
「うん」
謎は残ったが、とりあえずこうして、サンディの容疑は無事にはれたのであった。
今思えば、この伝承はなんだったのか…そしてあの樹はなんと解釈すればいいのか。
私は話の整理が得意ではないので、うまくまとめるのには時間かかりそうです。
そして結果として、私の都合のいい解釈をうんじゃいます。
それはさておき、次回も一つの謎を追求する話をお届けします。