衝撃のオチにどう始末をつけようか…考えた末にこうなりました。
彼らならこうします、うん。
世界滅亡の危機にあったものの、それをねらっていた魔物を打ち倒し、世界をまた救ったフィリス達。 その直後、サンディが実家に帰ろうとしていたので、その後を追いかけていったのであった。
「……あれ、ここって……」
「とても、神聖な空気の漂う場所ですね……」
だがそこからとばされた場所は、神の国だった。 その場所を知っているフィリスは一瞬きょとんとしてしまったが、初めてここをちゃんと訪れたセルフィス達に簡潔にここは神の国の神殿だと伝える。
「そうだったのですね……こうして美しい姿をちゃんと見るのは、なにげに初めてな気がします」
「あー……それはいいんだけどよ……」
「なんで私達、ここにいるのかしら……」
たしか自分達は、サンディの後を追いかけてサンディの実家へ行こうとしていたはずだ。 なのになぜ、神の国にたどりついてしまったのだろう。 4人が疑問を抱いていると、奥からサンディの声が聞こえてきた。
「………きいてきいて、おねーちゃん!」
「おねえちゃん!?」
姉がいたのか、と一同は思いながらも声のした方へ向かう。 するとそこには、サンディのほかにもう一人、女性の姿があった。
「アタシ、とうとう……ネ………に、ネイルアーティスト検定に合格したの!!!」
「はぁ???」
「まぁ……おめでとう、サンディ。 あなたの長年の夢でしたものね」
「あれって……まさか……」
そう嬉しそうにはなすサンディに微笑みかけている、サンディの姉と思われる女性に、一同は目を点にした。 先ほどの報告の内容も含めて、唖然とする。 なぜならば、サンディが姉と呼ぶ相手は輝く金色の髪に透けるような白い肌、透き通った青い瞳の美しい女性…女神・セレシアだったのだ。
「天の箱船でバイトしたり、色々寄り道したケド………とうとうアタシやったよっ!!」
そう嬉しそうに語っていたサンディは、背後にいつの間にかフィリス達がいたことに気配で気づき、振り返って驚く。
「って、フィリス!? それにみんなも! いつから聞いてたの!?」
「ち、ちーっす……」
「…………」
自分の話を聞かれていたのだ、と気付いたサンディは、彼女達に近づいてすべてをはなすことにする。
「あのね……フィリス……」
「お、おう」
「いつかあんたに言い掛けて、最後までいえなかったこと……アタシの秘密を、今度こそ教えてあげる」
そして、サンディはずっと言うのを躊躇っていた言葉の内容を、そのままフィリス達に告げる。
「アタシね……ずっと……ネイルアーティストになりたかったの! 子どもの頃からの夢だったの!」
「……………………」
「バイトが楽しくてずっと夢にチャレンジしなかったんだけど……テンチョーにも怒られたし……。 それに、あんたのがんばってるトコ見て、アタシも本気を出さなきゃーって。 そう思ってがんばったんだ!」
そう嬉しそうに語るサンディだったが、フィリス達は唖然としていて言葉を失っている状態だった。 フィリス達からすれば、自分達の考察と目の前で起きていることのつじつまが合わず、頭の中での整理が追いつかないといったところだ。 だが、サンディはそんな4人の心情などしるよしもなく、4人が自分の夢が叶ったことを祝ってくれないことに対する不満を顔に出す。
「……なによう! お祝いのセリフくらい言えないの!? せっかくアタシ合格したのに!!」
「……いや、あの……」
「フィリスの、ハクジョーもの!!」
サンディはフィリスにたいしそう吐き捨てると、泣きながらとび去ってしまった。 飛び込んだ先は天の箱船のあの部屋につながる旅の扉だったので、おそらく天の箱船に向かっていったのだろう。
「行っちゃったね」
「行っちまったな」
「行ってしまいましたね」
「………」
飛び去っていったサンディにたいし、4人はポカンと立ち尽くしてしまった。 どうしよう、とフィリスが首を傾げたそのとき。
「……フィリス………」
「セレシア様」
セレシアが、フィリス達に声をかけてきた。 女神の前なので4人はあわてて姿勢を正し、そして向かい合う。
「……まさか、もう天使でなく人間となった貴女が、再びここを訪れるなんて………思いもしませんでした」
「正直、あたしも思ってませんでした……もう、サンディやアギロさん、そして貴女とは生涯2度と、会うことはないだろうと思ってましたから。 なのに、偶然拾った女神の果実で、彼らや貴女とあい、そして再びここにも来ることができた。 こんなことってあるんだ……と」
「……これもきっと、貴女の運命……ということなのでしょう……」
フィリスの話を聞いたセレシアは、彼女の天使としての力が一部だけ戻ってきたことにたいし、彼女にはまだなにか大きな運命があるのだと言って、その偶然を受け入れた。 そして、話はサンディのことに向かっていく。
「サンディのこと、ごめんなさいね……フィリス。 けれど、サンディは誰よりも、あなたに祝福してほしかったのですよ」
「は、はぁ……にしても、事実ですか? あなたとサンディの、関係って………」
フィリスのその問いに対して、セレシアはにっこりと笑って返しながら、昔話をはじめた。
「………かつて、太古の昔。 創造神グランゼニス……我が父は、私を創り、それから人間界や天使界……動物や人間や天使達を創りました。 ……私にとって、人間も天使もみな、弟であり妹のようなものです……」
「そ、そうなんですか」
なんか否定もしてないが、肯定もしていない気がする。 だがこれ以上気にすると話がややこしくなるだけだと思ったので、とりあえずサンディとセレシアは実の姉妹である…と認めることにする。
「フィリス」
「は、はい」
「これは、サンディの願いを叶える手伝いをしてくれたお礼です……」
そう言ってセレシアが手をかざすと、フィリスの腰に装備されていたほしくずの剣が光を放つ。 それに気付いたフィリスは鞘から剣を抜くと、刀身は光り輝いており、ヒビも徐々に消えていく。
「剣が輝きを……」
「増した……!」
「傷もなおってる……!」
仲間達も、その様子を見てそう感想を口にした。 そして、バッグから以前入手したシルバーオーブが出てきたと思うとそれも光を放っており、ほしくずの剣に宿った。 そして光がやんだとき、そこにはほしくずの剣とは少し違う色合いや輝き、装飾の剣が存在していた。
「ほしくずの、剣が………」
「それは流星の剣です」
「流星の剣……」
「その剣は、オーブの力により、さらに美しくさらに力を増していく特別なもの……このほかにも同じような武器が、この世界には存在しているのです」
セレシアの話を聞いたフィリスは、まじまじとその剣を見つめ、つぶやいた。
「そんなすげぇ武器だったのか、これ……」
かつてエルギオスからイザヤールにたくされ、そしてイザヤールは自分に授けるつもりでずっと封印していた。 その間剣はラフェットに預けられ、彼女を経由してフィリスにたくされたのだ。 剣はイザヤール亡き後に受け取ったので、今となっては形見である。 そうして天使から天使へと受け継がれていた剣が、そんな特別なものだったとは思わなかった。
「フィリス」
「はい」
「私の妹、サンディのこと……どうぞ、よろしくおねがいしますね」
セレシアのその言葉に対し、フィリスは力強くうなずいて返す。 次の瞬間、フィリス達の意識は一瞬とばされた。
そして、気がついたとき4人は天の箱船に帰ってきていた。
「ここは……」
「天の箱船、だな」
「じゃあ私達、帰ってきたのね」
「そのようですね……女神様の力によるものなのでしょう」
自分達がさきほどまで神の国にいて、天の箱船に帰ってきたことを確認したフィリス達は、車両を進んでいき、その先にサンディの姿があったので声をかけてみる。
「サンディ!」
「……フィリス……」
サンディはどうやら拗ねているようであり、頬を膨らませていた。 そしてフィリスにつっこんでいき、彼女に不満をぶちまけてくる。
「一言くらいお祝い言ってくれたっていいじゃない! フィリスってつめたすぎ!」
「いや、あたしも色々あったんだよ!」
「なによ、そのいろいろって!」
そこでフィリス達は、自分達が今まで気にしていたことや考察などをすべて、サンディに疑問をぶつけていくことにした。
「あんたが、その……女神セレシア様の妹なのは、ホントなのか?」
「なにいってんの、そんなのホントに決まってるじゃん!」
あくまでもサンディは自分とセレシアが姉妹であると、ハッキリ肯定するつもりのようだ。 自分達の関係が信じられないといった様子のフィリス達に対し、サンディはさらに怒る。
「なによその不満そうな顔。 妹じゃなかったらなんだっていうの?」
「い、いやカラコタ橋で……話があったでしょ……? 若く死んだ女は妖精になって生まれ変わるって話。 だから、私達も……あなたもそうなんじゃないかって、思ってたんだけど……」
「はぁ? なんで? アタシいきてんじゃん」
その説をサンディはハッキリと否定し、まだ言いたいことがある4人をにらみつつ、話を続けさせる。
「なによ、まだあるの? 怒んないから言ってごらん」
「………じゃあ、言わせていただきますが……あなたは、サンドネラ、ではないのですか……?」
「なにそれ、新しいスイーツの名前?」
その名前に彼女は聞き覚えがないようだ、別の言葉として解釈されてしまった。 その返事に対し一同は口を開けながらも、サンドネラとはなんなのかについて説明をする。 それをサンディは自分とはまるで関係がないかのように、適当にきく。
「………ふーん、女の人の名前なんだ。 つーか、サンディとかってよびかた、よくあるからねー。 同じ名前の子、いっぱいいるし」
「そうかもだけど……」
どうやら、自分達がサンディがサンドネラの生まれ変わりではないかと不安を覚えていたのは、とりこし苦労だったようだ。 次から次へと自分達の考察が的外れになってきていることにたいし呆然とするフィリス達にたいし、サンディは呆れたようにため息をついた。
「……はぁ。 なにをあんたが悩んでいるのか、よくわかんないけど……。 アタシは、セレシアおねーちゃんの妹・サンディ! これ以上疑う気なら、もうクチきいてあげないからね!」
「え、ちょ! そいつは困るぜ! わかったよ、もう解決してすっきりした!」
サンディと関係を絶たれるのは、フィリスとしても困るものがあるようだ。 あわててサンディの謎について、これ以上追求することや彼女の証言や先ほどまでの出来事を真実として受け止めることを約束する。
「そうだ、これあげるね」
そうして機嫌をなおしたサンディは、思い出したようにあるものをフィリス達に差し出した。 それは、布にくるまれた長いなにかだった。
「なにこれ?」
「あのきもくて怖いヤツ、倒してくれてありがと。 そのお礼だよ!」
どうやら、あのフォロボシータを倒して世界滅亡をくい止めたことに対する謝礼の品のようだ。 とりあえず布をとってみると、そこには不思議な装飾の施された、棒のようなものだった。
「たしか、しゅらのこん……て名前の武器だったかな」
「棍……?」
「たぶんこれも、この剣と同じ……特別な武器なんだろうな」
そう言ってフィリスは自分の流星の剣を見つめつつ、その棍を見る。 セレシアの話を思い出しているのだろう。 棍の扱いならイアンが得意なので彼に渡してみると、イアンは軽くそれをふるう。
「うん、しっくりくる!」
「じゃあそれは、イアンが持っていた方がいいわね」
「そうですね」
そうして、その棍はイアンが今後使うことになった。 無事に事件が解決したことや自分のことでスッキリしたことで、サンディも気持ちが切り替わったようであり、明るい調子で声を上げる。
「それと、アイツを倒してくれたから、さっきまでの失礼な質問は許してあげる! というわけで、おつかれー!」
「はーい!」
そうして、サンディの秘密が明かされた後。 謎の脱力感におそわれたフィリス達は、天の箱船の中でゆっくり休息をとることになったのであった。
「はぁ……なんかどっと疲れた」
「だな」
その果てに彼女たちがたどり着いたのは、エラフィタ村だった。 この天の箱船には偶然にもその村の近くを通っていたので、そこの宿屋で一泊しようと思ったのだ。
「今日は内容が濃かったもんな」
「ああ……世界を滅ぼそうとしているヤツをぶっ飛ばしたり、サンディの秘密を知っちゃったり……」
「僕達はてっきり、彼女がかの悪女サンドネラと同一人物だと思いこんでしまっていましたから……いろいろミスリードをさせられていた、ということなのでしょう」
そう、フィリス達は最近立て続けに起きていた出来事や、サンディ自体がそもそも正体がわからなかったということで、サンディはガナン王妃の生まれ変わりではないかと疑っていたのだ。 自分達にとって憎むべき相手だったガナン帝国とサンディにつながりがあったらどうしようかと、一同は不安を抱えていた。
「けどまぁ、私達の仮説がドンピシャリにならなくて、よかったんじゃない? 私としては、当たってたら……そっちの方がイヤよ。 サンディってちょっと変わったところがあるけど、いい子だもの……。 なのに、そんなサンディが昔はとんでもなく悪い人だったのかもなんて、考えてた自分達のほうが恐ろしくなっちゃうわ」
その不安を覚えていたからだろう、クルーヤはこの結果に対しそう感想を口にした。 それを聞いたイアンとフィリスはうなずく。
「それもそうだな。 いくら前世とはいえ、実はサンディはワルモノでしたーってオチは、あたしもさすがにイヤだぜ」
「よく考えてみれば、いっくら生まれ変わりだとしても同じ名前なわけがねぇし……オレ達も無駄に考えすぎていた……ってことか」
「場合によっては、僕達……サンディさんに手をかけねばならなくなっていたかもしれませんしね。 実は無関係だったという結果が、よい時もあるのでしょう」
そうセルフィスも意見を語り、フィリス達はうなずく。 いずれにせよ、自分達はもう一度、世界の滅亡をくい止めることができたのだ。 今はそれで満足であろう。
「……ふぁ……」
まだ眠るには少し早いが、かといって遅すぎる時間ではない。 そんな時間に宿を取り安心して休めたことで気が抜けたのだろう、フィリスはあくびをした。
「とりあえず、あたし眠いからねるわ………」
「そうですね……しっかり夕食も食べましたし、ほかにやることはありません。 ここは、寝てしまうのが一番なのでしょう」
「おー。 んで、明日は早起きして出発しちゃおうぜ」
「さんせいっ」
そう話し合って、4人はそれぞれのベッドに入り眠りについていった。 今日の出来事を胸に、明日のことを考えて。
「……今日はいろいろあって疲れたとはいえ……今までよりずっと、ねむ……たい……な………」
ふと、フィリスはまどろみのなかでそう思いながら、眠ったのであった。
こうして、とある一人の妖精の少女に関わる話は、完結したのである。
あの剣はこの物語を通して、特別な存在により強化される…という設定にしてみました。
また次のストーリークエストには、話数を挟みます。