なんかゲームで久しぶりにここやったら、もうすぐ終わっちゃうのかぁと寂しい気持ちになったのもいい思い出だなぁ…。
リッカが宿王になるのを見届け、これからともに旅を続けるキモチをあらたにもったフィリス一行は、セントシュタイン城をあとにした。 再び、とくにあてもなく旅をするため。
「ナザム村も久しぶりにくるなぁ」
「ちょっと立ち寄ってみる?」
「そうですね、いきましょう」
そんな彼女たちが今回立ち寄ったのは、ナザム村だった。 この村に対しフィリスはある因縁をたたきつけられたが、それはもう昔の話。 村人達が心を入れ替えフィリスに対して行っていた仕打ちを反省したことで、フィリスは彼らを許し、仲間達もフィリスがそう言うのなら、と村の行いを許していた。
「おお、あなたは」
「村長さん」
その村に足を踏み入れると、そこには村長の姿があった。 村長はフィリス達にお久しぶりですと軽く挨拶しつつ、あることを訪ねてきた。
「道中でうちの娘を、見かけませんでしたか」
「娘さん?」
このナザム村の村長には、養子として引き取った甥のティル以外にも、実の一人娘がいたのだ。 村長は、その娘の話をフィリス達にした。
「実は娘のミルチャが、勝手に村の外へ出たまま、中々戻ってこないのです」
「なんだって?」
「おそらく、ティルが里帰りしてしまって退屈してしまったのではないかと思うのですが……いったい、どこへ行ってしまったのやら……少々、心配なのです」
「そうなのか……」
「どうか、お願いします。 あなた方も、ミルチャを探してくださらんか?」
そこで村長は、依頼という形で、娘のミルチャを探してほしいとフィリス達に頼んできた。 それをきいたフィリスは少し考えた後、彼の
「まぁ、その子のことも心配だし……いいよ、引き受けよう!」
「おお、あなたならそうおっしゃってくださると信じておりましたぞ!
ミルチャはそう離れたところへは行っていないはずです、どうかお願いします」
「ああ! まかせてくれ!」
そうして、村長の娘探しをすることになったフィリス達。 まずは村の中を一通り手分けをして探してみたものの、その少女を発見することは出来なかった。
「とりあえず村の中を探してみたけど、いなかったわね」
「村の人に聞いてみても、収穫はありませんでした」
そう、仲間達は互いに捜査結果の報告をしあう。 そんな中、フィリスはミルチャがいそうな場所について考えた。
「……このへんで子どもが遊び場にしそうなところ……あそこ、とかか?」
「なにか、心当たりがあるんですか?」
「ああ」
記憶を巡って、フィリスはこの村で知り合った少年のことを思いだし、その場所のことを仲間達に言う。
「ここが、希望の泉って行われる場所か」
「不思議で……綺麗な場所ね……」
「うん。 実はティルが、よくここにきていたみたいなんだ……。 あいつ、村にいる間……イヤなことがあったりさみしかったりしたらすぐに、ここにくるんだってさ……」
「……そうだったのですか……」
フィリスは仲間とはぐれたあと、この泉の近くにかつてあった廃屋の中で休まされた。 村の中には入れてもらえなかったが、そのかわりにティルがそこにつれていって、そこでフィリスの手当をがんばってくれていたのだ。 今はその廃屋は村人に焼かれすでに存在しないが、あそこでティルに助けられた恩と、この泉の存在をフィリスはしっかりと覚えてる。
「ねぇ、あそこに女の子がいるわ。 もしかしてあの子がミルチャちゃん?」
「どれ……ああ、間違いない!」
そのときクルーヤは、花畑の中に一人の少女がいたことに気付きフィリスに声をかけた。 フィリスはわずかにではあるがミルチャの姿をみたことがあるので、その少女がミルチャであるとすぐに気付いた。
「おーい!」
「あ、こんにちは!」
「貴女が、ミルチャさんですね? ナザム村の」
「そうでーす!」
声をかけて確認をしてみると、元気な声とともに少女は自分がミルチャであると認めた。 探している人物を無事に発見したことで安心しつつも、フィリスは村長のことをはなす。
「村長さん……お父さんが心配して探してたよ」
「え、そうなの?」
自分の父親が自分を捜していると聞いたミルチャは、少し顔をうつむかせるが、やがて首を横に振る。
「でもでも、まだかえりたくないよう! だって、おともだちができたんだもん!」
「おともだち?」
「ほら、あの子!」
そういってミルチャは別の花畑を指さす。 そのとき、自分のことを言われていると気付いたもう一人の少女が駆けつけて、フィリス達とミルチャとの間に割ってはいってきた。
「だめだよ、ミルチャをつれてっちゃだめ!」
「えっ」
「だってあたしたちまだ、あそんでるとちゅうなのよ! こんなにたのしいの、ひさしぶりなの!」
そう少女はムッとした顔で言う。 友達がいたのかと普通なら考えるものだが、フィリス達はこの少女に対し違和感を抱いた。
「おいフィリス、この子」
「ああ」
イアンがこっそりとフィリスに耳打ちをし、それにたいしフィリスはうなずく。 そして少し距離を置いて、セルフィスとクルーヤも話に関わってくる。 彼らがそうしたのは、あの少女の正体に気付いているからだ。
「あの子は紛れもなく幽霊ですが、なにかの力が働いて、普通に誰にでも見えてしまっているようですね……」
「しかも、ミルチャちゃんも、あの子が幽霊だって気付いてないわ」
そう、ミルチャが一緒に遊んでいたあの少女は、幽霊だった。 どういうわけかあの少女は普通の人間であるはずのミルチャにも見えるくらい、違和感がない。 この違和感に気づけるのは、今まで多くの幽霊をみてきたこの4人ぐらいなものだろう。
「あの子からは悪しき気配は感じません。 単純にミルチャちゃんと遊びたいだけだというのが伝わります……危害は加えない点では安心してよいでしょう」
「……となると、しゃーねぇか……こうなったらあの2人、遊び終わらないと帰る気ないぜ。 徹底的につきあうしかねーぞ」
「そうだね」
セルフィスはあの幽霊から邪悪なものがないと言い、イアンはあの2人が満足するように遊び相手になった方がいいと提案し、フィリスは同意する。 早速クルーヤが2人に声をかけていく。
「2人は今、なにをして遊んでるの?」
「えへへ、あのね。 いまははなたばをつくってるんだぁ!」
「へぇ、花束ですか。 こういうお花がほしいというのはありますか?」
女の子らしい遊びだ、と一同は思いつつ、花束が完成すれば満足するだろうとおもい必要な花がないかを問いかけてみる。 すると、2人は大きな花がほしいと言ってきたので、4人はそれをさがす。
「そういえば、あそこにゆめみの花さいていますね」
「うん、あのお花を使えば立派で綺麗な花束ができそうね」
そうして彼らが見つけたのは、少し高いところに咲いている大きな、ゆめみの花だった。 2人はそれを見上げて、あの花がほしかったのだと言い出した。
「そうなの!」
「あたしたちじゃとどかないの、おにーちゃんたちならとどく?」
「ああ、大丈夫だぜ」
確かに背の高いイアンなら楽に届くかもしれないが、この小さな2人の少女にはムリだろう。 イアンは軽く腕を伸ばしてその花を摘み、少女達にあげた。
「ありがとー!」
「あとね、この花とこの花をあわせて……あまつゆのいとでむすべば、かんせいだよ!」
「こうね」
少女達の言うとおり、クルーヤは花をまとめてあまつゆのいとで縛って、花束を完成させた。 その動きは非常に鮮やかで、2人の少女は目を輝かせる。
「わぁ、おねーちゃんじょーずー!」
「うわぁい、できたできた!」
「ふふっ、とっても綺麗な花束ができたわね!」
まずはひとつ、花束を完成させる。 そしてクルーヤはうまくまとめる方法を2人に教え、またひとつ花束が完成した。
「すっごくきれーなものができたね! たのしーなー!」
「そうだな……つーか、なんか暗いな?」
「え? あっ」
そこで、空が暗くなっていることに気付いた一同。 おもえば依頼を聞いたのは昼過ぎ、ここまで探しにきて花束作りに協力しはじめてからそれなりの時間が経っているので、日はすっかり傾いている。
「もうすっかりおそくなっちゃったんだ……かえらなくちゃ。 ごめんね」
「平気だよ、このくらい」
「帰りも、僕達が一緒だから大丈夫ですよ」
ミルチャは、もう帰らないといけないことを自覚したようだ。 ここまでふりまわしたことにたいし謝罪の言葉を口にすると、一同はそれを許した。
「ばいばい、またあそぼうねー!」
「うん、ばいばい」
ミルチャが幽霊の少女に対しそういと、幽霊の少女は寂しそうにしながらも手を振り替えした。 そして、立ち去っていくミルチャ達をみて、幽霊の少女は寂しそうに呟いた。
「あーあ……いっちゃったぁ。 さみしくなるなぁ」
「………」
「あ、そうだ! あたし、はなたばをおそなえしたいんだ! おねえちゃん、きてくれる?」
「え、あたし?」
指名をされて戸惑うが、お供えということは何か意味があるはずだと悟る。
「フィリス、いくぞ!」
「ああ、あたしもすぐに追いかけるから、心配するな!」
だからフィリスはミルチャのことをイアン達にまかせ、自分は少女とともにある場所へ向かった。
そうして、フィリスは幽霊の少女につきあった。 この少女は普通にものにふれられるようだ。 自分の創った花束を一生懸命に抱え、ある洞窟の中に入った。
「この洞窟は……」
「よいしょ」
その洞窟の中の様子に、フィリスは見覚えがあった。 そんなフィリスをよそに、少女は花束をそこにおく。
「ねぇ、おそなえって、こんなふうでいいのかな?」
「うん、いいんじゃないか? でも……なんであんたは、その花束をお供えしたかったんだ?」
この場所にわざわざ、自分がつくった花束をお供えしたいというのは、よっぽどな理由があるのだろう。 そう思ったフィリスは、単刀直入に彼女の行動の理由を尋ねる。 すると、少女は眉を下げ顔をうつむかせながら、理由を語る。
「……あのね。 ずーっとずっとむかし……あたし、ここでみてたの。 へいたいさんに、てんしさまがつかまって……それで、おじいちゃんとおねえちゃんがきりつけられて………」
「…………ッ!!」
「でも、あたし……ゆうれいだったから、なんにもできなかった……」
少女の話に心当たりのあるフィリスは、その身を震わせた。 彼女が語っているのは紛れもなく、この村とそして、天使界の悲劇のことだ。 ここが、その悲劇の現場なのだとフィリスは周囲をみる。 そんなとき、少女はある情報を口にする。
「でもね、へいたいさんがいなくなったあとで、へんてこなまじゅうがここにはいってきたの」
「へんてこな魔獣?」
そんな話は初耳だ、と戸惑うフィリスに少女は話を続ける。 それは、そのへんてこな魔獣と女性の行方についての情報。
「それで、おねえちゃんをさらって、きたのそらへとんでいったのよ」
「……え……」
北になにかあるのだろうか。 その魔獣がなにか、大きな関わりを持っているのだろうか。 フィリスの中に次々に疑問が浮かぶ。 そんなフィリスにたいし、少女は満面の笑顔を向けてお礼の言葉を口にした。
「……ありがとう、おねえちゃん。 きょうはいろんなことができて、うれしかった! それに、おともだちもできた!」
「……そうか……」
「それでね、あしたも……たくさん、たくさん………」
そう、明日もいっぱい遊ぶんだと楽しそうに笑っていた少女だったが、その体からは淡い光が漏れていた。
「その光は……!」
「あ、あれ?」
その光がなにを示すのか、フィリスはよく知っている。 かつて教わったからだ。 さまよえる魂の未練をはらし、成仏させることもまた天使の使命だと。 そして、幽霊の体からぽろぽろと光がこぼれるのは、その未練がなくなり天に召されるあかしだ。
「おかしいな……だって、あしたもたくさん……あれ、あれ?」
少女はその光がなにをしめしているのか、理解できていないようだ。 そのまま少女を包む光はまぶしくなり、やがて強い光を放つと少女は消えた。 それをみて、フィリスは悟る。
「……きっと、ラテーナさんとそのおやじさんを弔えなかったのが、あのこの未練だったんだな……」
そして、その未練を天使だった自分がはらしたことで、あの子は成仏することになった。 天使でなくなったあとでそのつとめを果たすという、なんともいえない皮肉に対し苦笑しつつ、フィリスはその洞窟を後にした。
「……あの子がはなしてたのは……やっぱり、ラテーナさんとエルギオスのことだ……でも、魔獣って……?」
「フィリス!」
そう、少女の話を思い返していると、声とともにイアンがその姿を現した。 ミルチャを護衛する形で先に村に帰っていたはずのイアンがここにいることにフィリスは驚く。
「イアン! なんであんたがいるんだ!?」
「なにいってんだ、お前が一緒に帰らないからだろ!」
そうイアンは返しつつ、なにがあったのかを尋ねる。 フィリスは頭をかきつつ、簡単に事情を説明する。
「……あの子は、もういないよ」
「え」
「この場所に未練があって、それをはらしたみたいだ……成仏していった」
「……そうか……」
フィリスの説明に対し、イアンはそう短く返したのだった。
「フィリス殿、うちのミルチャを見つけ、呼び戻してくれたそうで」
「あ、ああ……まぁな」
「なんのことはない。 北の泉で遊んでいたのですな。 随分と心配してしまいましたよ。 見つけてくださり、ありがとうございました。 お礼といっては何ですが、これを受け取ってください」
そういって村長がフィリス達にくれたのは、貴重なクスリと言われる、世界樹のしずく人数分だった。 こんないいものをもらっていいのかと戸惑うフィリス達に、村長は全然かまわないと言った。
「またあのことあそびたいな!」
と、ミルチャは今日仲良くなった少女のことをはなすが、それを聞いたフィリスの顔は暗かった。 そして、村の宿屋で4人は休むことにし、フィリスは仲間達に幽霊の少女が成仏いたことや、彼女から聞いた話をそのまま伝えた。
「そっか……そんなことがあったのね」
「ああ」
「ミルチャちゃん……また遊びたいとおっしゃってました。 あの子がもういないと知ったら、きっとショックでしょうね……どうしたらよいのでしょう……」
「……それは、わかんねぇな……」
真実を伝えることと伝えないこと、果たしてどちらが残酷なのだろうか。
そんな選択に4人は迷いつつ、幽霊の少女が昔みたという天使と兵士、そして魔獣の話になる。
「おねえちゃんというのは、ラテーナさんで間違いないと思う。 だけど、ラテーナさんを連れて行って魔獣のことがわからねぇ」
へいたいがガナンの帝国兵、つれさられたてんしがエルギオス、きられたおじいさんとおねえさんが当時の村長とラテーナ。 この村と天使界の悲劇を知る一同は、幽霊の少女の証言とそれを照らし合わせていく。
「あの2人の話って、ただの悲恋ってだけじゃないみたいね」
「ああ……あの2人の話には、まだまだ隠されたことがあるみたいだ」
そう言った後、フィリスはこの話を聞いたとき胸の内に芽生えた、ある目的について打ち明ける。
「あたし、どうしてもこの話が気になるんだ。 だから、真実を追ってみたい。 そこで、だ!」
「?」
「ここからの旅の目的は、それを解き明かすことにしてみないか?」
それをきいたイアンとセルフィスとクルーヤは、顔を見合わせた後でうなずき、フィリスの提案を受け入れた。
「もちろん、いいぜ」
「異論はありません」
「全然OKよ」
仲間達の返答を聞いたフィリスは、笑顔でうなずいた。 そして、天使と人間の悲恋に隠されたもうひとつの物語の真実を追い求めることを、心に誓った。
「それをあかせばエルギオスと、そしてラテーナさんの……弔いになるかもしれない」
次回は竜の伝承について触れる話です。
これで様々な話がつながるといいなぁ。