ドラゴンクエスト9 AngelsTale2   作:彩波風衣

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今回は宝石のお使い編です。
何度も言うけど、またストーリークエストがやりたいよ。
DQ9のメインストーリーも好きだけどね。


31「竜の涙をもとめて」

 

 ナザム村の依頼を二日続けてこなしたフィリス達は今、サンマロウの町を訪れていた。 それは、村で受けた3つ目の依頼を果たすためである。

 

「あれ、フィリスさんだ!」

「ティル!」

 

 その町で彼女達が会いに行ったのは、顔見知りの少年・ティルだった。 無邪気に再会を喜ぶティルに、フィリス達は彼に用があると伝える。

 

「実はさ、あんた宛に手紙を預かってたんだよ」

「ぼくに?」

「ああ。 ミルチャからだ」

 

 実はフィリスは、ナザム村を旅立つ前にミルチャから手紙を預かっていたのだ。 あの泉にいっても友達がいなくて残念がっていたミルチャは、せめてティルには早く帰ってきてほしい、とおもい彼への手紙をフィリスにたくしたのである。 手紙を受け取ったティルはありがとうといいつつ、ミルチャのことを思い出した。

 

「ミルチャかぁ……寂しい思いをさせちゃったかな? でも……安全だとわからないと、町をでてナザム村までいけないんだよなぁ……」

「安全確認か……」

「うん、町の中までは入ってこられないとはいえ、このあたりに凶暴な魔物がでたこととか、またでるかもしれないんだもん。 急なことだったし、ぼくも一度魔物につれさらわれたし……」

「そうだったな」

 

 最近、魔物は強いものが現れるようになったという。 現にフィリス達もこの町がその被害にあったところをみたし、ティルがそれに巻き込まれたときも彼を救出したのだ。 その原因はおそらく、例の宝石にあるとは思うのだが。

 

「でもでも、大丈夫だよ! 前にセルフィスさんがやったお清めのおかげで、この町は絶対に安全だもん!」

「それならば、僕もお清めをした甲斐がありました」

 

 今は、少なくともこの町の中は安全だ。 清めの力が弱くなったことで町に魔物がせめいる事態に発展したが、今はセルフィスが手を貸したお清めのおかげで、同じ事例は起きていない。 そんな近状報告をしていたティルは、ふとある話を思い出した。

 

「そうだ、フィリスさん」

「どうしたんだ?」

「実はね、町長さんが腕の立つ旅人を捜しているっていうんだ! なんでも、お願いしたいことがあるって言ってるよ」

「お、依頼主か」

「きっと、フィリスさんだったら町長さんのお願いを叶えられるかもしれないね」

 

 ほかにやることもない。 そんなときにこの情報は実にお得だ。 フィリス達は、その町長のお願いというのを聞いてみることにした。

 

「よし、次の依頼として受け取ろうぜ!」

「ああ」

「どうせこのあと、暇だものね」

「やってみましょう」

 

 仲間達も、フィリスのその提案を受けいれ、一同は町長の家へと向かう。 ティルに見送られながら。

 

「がんばれ!」

「ああ、がんばるぜ!」

 

 

 

 サンマロウの町長はかつて、男性がつとめていたのだが、最近その妻が力を付けて、彼女が新しい町長となったらしい。 つまり今、サンマロウは新しい町長の元でさらに発展しようとしている、ということのようだ。

 

「竜の涙、ですか?」

 

 フィリス達は町長に会い、自分の願望を叶えてくれる冒険者になろうとしていることを伝えた。 すると町長は上機嫌になり、自分が探しているのは竜の涙という代物だと伝えた。

 

「実はこないだ、竜のなみだを探しているという、ラテーナと名乗る旅の娘がたずねてきましてね……」

「!?」

「竜のなみだなど存じてませんので、そう伝えると去っていきましたが……って、あら? どうなさったの?」

「……いえ、なんでもありません。 お話を続けてください」

 

 思わず、ラテーナという名前に反応してしまったが、急いで話を本筋に戻す。 自分とその名前の関係を、知られてはいけないからだ。 町長は、かまわず話を続けた。

 

「それでね、その竜のなみだのことが私も後からその品のことが気になってしまって……きっと、さぞ美しい宝石の名前に違いありませんわ!」

「は、はぁ」

「そこで、私は旅の者をあつめ、お願いしたいの。 グビアナにいるという宝石商の元へいって、竜のなみだを買ってきてほしい……とね!」

「えぇ!?」

 

 町長の依頼というのは、宝石を手に入れてこいと言うものだった。 だが、それを買ってこいという内容に対し、フィリス達は焦る。 なぜなら、自分たちには達成が難しいものだと思ったからだ。

 

「ほ、宝石なんてバカにたけぇだろ!? いくらなんでも買う資金がオレたちにはねぇぜ!」

「おっほっほ……心配には及びませんわ!」

 

 特にイアンが、この依頼の難しさを口に出すが、その不安要素はすでに予想済みだといわんばかりに町長は笑みを浮かべつつ、4人の前にある宝石を取り出した。 その宝石というのは、巨大なダイヤモンドだった。

 

「で、でか!」

「おまけにすっごい輝いてるわ!」

「きっとこのキングダイヤモンドなら、その宝石の対価にふさわしいに違いないわ! だから、その宝石はこの宝石と交換で入手することにしてくれれば、大丈夫なはずですわ!」

 

 金持ちの考えていることがわからない、と4人は思った。

 

「ふ、太っ腹だ……」

「で、どうかしら?」

「……まぁ、話を聞いちゃった以上受けないわけには行かない。 というわけで、引き受けます」

「まぁ、ありがとう! あなた達はやさしい方ね。 気をつけて行ってらっしゃい!」

「は、はい! じゃあいって参ります!」

 

 とりあえず、フィリス達は町長の依頼を引き受けることを決め、一度邸宅をあとにした。

 

「……竜のなみだって、本当に宝石なのかしら……」

「僕も宝石には詳しくないのですが、そのようなものは聞いたことがないですからね……」

 

 そこをでたクルーヤとセルフィスが、その竜の涙というものにたいしての疑問を口にする。 実在するのかどうか、それは本当に宝石なのか。 何故、ラテーナと名乗るものはそれを探し求めているのか。

 

「実在しないものを、わざわざ探そうとはしないよな」

「ああ……けど」

 

 そこでイアンは、フィリスに言う。

 

「竜の涙って宝石を追えばもしかしたら、みんなが目撃したという、そのラテーナさんに会えるかもしれねぇ。 だから、今は依頼を果たすことにしようぜ」

「そうだな。 何事も動かなきゃわかんねーよな!」

 

 イアンの言葉に動かされ、フィリスはグビアナの出身であるクルーヤに、その宝石商のことをたずねる。

 

「というわけで、クルーヤ。 宝石商がどこにいるかわかるか?」

「え、ええ。 宝石店の場所なら知ってるわ。 きっと、宝石商はそこにいると思うわ」

「よし、んじゃルーラをつかってさっくりと行ってきちゃおうか! まってろい、竜の涙よ!」

 

 そう言ってフィリスはルーラを使って、仲間達とともにグビアナ城へ向かったのだった。

 

 

 

 ルーラでたどり着いたグビアナは相変わらず、砂に覆われていて気温が高い。 初めてきたときと比べて、女王の働きのおかげで国全体が発展しており、国民は豊かに生活ができているらしい。

 

「確かグビアナの宝石店はあっちだったわ」

「オーケー、いこうぜ」

 

 クルーヤが指し示す方向にフィリスは歩いていこうとした、その時だった。

 

「わ」

「きゃ」

 

 フィリスは前方から歩いてきた女性と、ぶつかってしまった。 2人は同時に驚いた声を上げる。

 

「ご、ごめんなさい! 私急いでて……」

「いや、こっちそこそごめん……!?」

 

 相手が謝ってきたのでフィリスも迷わず謝り返す。 だがその相手の女性の顔を見たフィリスは目を丸くして言葉を失う。

 

「あなたも旅の人? 私、竜のなみだを探しているの。 だけど……とうとう、見つからなかった……」

「えと、あの」

「もう、アルマトラと行かなくちゃ。 手遅れになってしまう前に……」

 

 そう言い残し、女性は立ち去っていってしまった。 彼女とぶつかったフィリスだけでなく、背後にいた仲間達もその女性の姿に呆然としていた。 ようやくセルフィスが口を開くまでは、沈黙していた。

 

「今の、ラテーナさん……ですよ、ね……?」

「嘘とか見間違いじゃない限りはな」

「で、でも……だとしたらなんで、私達のこと……とくに、フィリスのことを知らないの……?」

「まるで初対面みたいだったな」

「…………」

 

 それぞれで、先ほどのラテーナにたいする感想を口にする中、フィリスだけが黙っていた。 フィリス、とイアンが声をかけるまで黙っていた。

 

「……あ」

「どうした、大丈夫か?」

「……いや、だいじょうぶ。 ただちょいと、面食らっちまっただけだ」

「ほんと?」

「ああ。 さ、気持ちを切り替えて宝石をかいに行こうぜ」

 

 そう笑顔で仲間達に言うフィリスに、イアン達はあえてなにも言わずについて行った。 そうして4人は宝石店に入っていった。

 

「なんだんだあの女は! 人の顔にドロを塗りやがって!」

「!?」

 

 店内には様々な宝石が売られており、どこをみても煌びやかに光っていたが、店主は不機嫌だったのか大声で机をたたいていた。 見に覚えがないにも関わらず…否、ないからこそだろう。 フィリス達は店主の怒声に驚く。

 

「ど、どうしたんですか?」

「おっと……コホン。 これは失敬」

 

 フィリス達の存在に気づいたらしい、店主は咳払いをして冷静さを取り戻し、フィリスに接客する。

 

「もしや、お客さんですか?」

「ああ。 あたしら、竜のなみだという宝石を買いにきたんだけど……」

「おお! そうですかそうですか、確かにこのお店にありますとも!」

 

 そう言って店主はいそいそと箱を取り出すと、それを机の上に置き箱のふたを開ける。

 

「これこそ、ドラゴンのなみだです!」

「わぁ……!」

 

 箱の中に納められていたのは、深い青色の宝石だった。 透き通った青色は静かな光を放っており、それがこの宝石の美しさを引き立てている。

 

「……キレイ……こんなキレイな宝石、初めてかも……」

「おお、この宝石の価値がわかりますか!」

「確かに、こんなもんみたことねーや」

 

 一同がその宝石に見入っていると、店主はこの宝石の価値がわかってくれる人がいることが嬉しい反面、あることにたいする怒りをよみがえらせる。

 

「ところが、こいつを偽物呼ばわりする不届き者がでたんですよ!」

「ニセモノ?」

「さっきここを訪れた旅の女が、ドラゴンのなみだをみて……こんなのは竜のなみだじゃない……って言ったんだ! こいつは間違いなくドラゴンの涙って宝石ですよ!神に誓っていえます!」

 

 その旅の女というのは、おそらくあのラテーナのことだろう。 やはりあのラテーナは幽霊などではなく、実体として存在しているということだ。 あの様子からして、ラテーナは竜の涙に求めているのは、宝石としての価値ではないと予想できる。

 

「しかし、いくら価値がわかっていようとも……こいつは相応の対価を払ってもらわねば、売れません」

「これはどうだ?」

 

 商談の話にもどり、店主のその言葉を聞いたフィリスはまってましたといわんばかりに、サンマロウ町長から預かったあのキングダイヤモンドを取り出して彼に見せた。 その宝石をみた店主は目を大きく見開かせる。

 

「こ、これは……キングダイヤモンド!! 何故、旅の方がこのような高級な品を!!」

「なに、オレ達はその宝石をほしがってる人から、おつかいを頼まれたってだけでさ。 いかがなもんかい?」

「こ、これならばドラゴンのなみだと交換でよいでしょう! 交渉成立です!」

 

 あっさり!? と驚くフィリス達。 その言葉通り商談は成立し、店主はキングダイヤモンドを、フィリスはドラゴンのなみだをそれぞれ手に入れた。

 

「改めてみてみてください、この輝きを! たいそうな名前だけあってすばらしく、美しい宝石でしょう!」

「ええ、そうですね」

「涙を流すのは人間だけでしょう? 竜のなみだなんてものはつまり存在しない……。 だから、このドラゴンのなみだって名は、この世のものとは思えないほどに美しいと。 そういう意味で名付けられたそうです」

「そうなのか! えっと、ありがとう!」

 

 ドラゴンのなみだに対してそう解説をする店主に対し、フィリスは短く礼の言葉とともに、この宝石を欲している人のところへ向かうと言って、店を出ていった。 そして、グビアナ城にきたときと同じようにルーラでサンマロウへ引き返す。

 

「竜のなみだは、実在しない……か……」

 

 と、フィリスはポツリと呟いた。

 

 

 

 そうして、サンマロウに帰ってきてすぐに町長の邸宅へ向かい、宝石商から無事にドラゴンのなみだを手に入れることができたことを、フィリス達は報告。 同時に、ドラゴンのなみだを町長に差し出す。

 

「まぁ! なんと美しい宝石なのかしら! 私、気に入りましたわ! このような宝石をもてるなんて、私夢のようですわ……! こんなことなら、もっと早く町長になるべきだったわね!」

 

 町長はドラゴンのなみだを相当気に入ったらしい。 その宝石を手に持ちかかげ、うれしそうに笑っていた。

 

「私の望みを叶えてくれてありがとう、これは報酬よ。 遠慮なく受け取ってくださいな」

「あ、ありがとうございます」

 

 そういって町長はフィリス達に報酬として、大金をよこしてくれた。 これは、旅の資金に回せそうだ。 これだけあれば、またしばらく旅ができる。

 

「あ、フィリスさん!」

「ティル」

 

 そして、目的は果たされたので町長の邸宅をあとにしたフィリス達。 邸宅を出たところで、フィリス達はティルと合流する。 ティルはあのあと、フィリス達がなにをしていたのか気になっていたらしい。 町長からの依頼をうけ、無事に果たしたことを伝えることにする。

 

「竜のなみだかぁ……ふしぎなものがあるんだね」

「そうだな」

「でも、その宝石を見つけてくるなんて、やっぱすごいや! 世界を旅しているっていうの、伊達じゃないんだね」

 

 フィリスのその話を聞いて、ティルはますますフィリスにあこがれたようだ。 目をきらきらさせながら出たティルのその尊敬の言葉に対し、フィリスはにかっと笑って見せた。 そこでティルはふと、あることを思いだし、フィリス達にその話をする。

 

「そうだ、そうだ! あのねあのね、フィリスさん! この話知ってる!?」

「話?」

 

 ティルは頷くと、ナザム村にいたころに聞いた話を、フィリス達にもした。

 

「ナザム村より北のほうにある、高い塔のうえには、竜によく似たアルマトラって生き物が眠ってるんだって!」

「アルマトラ?」

「うん! おじさんがそう教えてくれたんだ! 大昔からいるって言われてるけど、誰もそこに行かないから、ホントかどうか確かめる方法がないんだって。 でも、世界を旅してるフィリスさんなら、いけるかもしれないよ!」

「へぇ、そうなのか」

「興味があったら、いってみて!」

 

 じゃあね、と言ってティルはフィリス達と別れた。 フィリス達も彼に手を振り返すと、宿屋に帰り今日の出来事について振り返る。

 

「結局あのラテーナさんは、何者なんだ?」

 

 今日の依頼は、単純な話で言えばおつかいのようなものだった。 だが、その最中にフィリス達にとって、見過ごすわけには行かない出来事があった。 それが、ラテーナのことである。 仲間達も先ほどのラテーナと、かつて出会った幽霊のラテーナと照らし合わせてみるが、今日自分たちが遭遇した出来事の答えは見つからない。 今日のラテーナと、幽霊のラテーナはどうみても同一人物であることは変わらないから、尚更困惑してしまうのだ。

 

「なぁ、フィリス」

「なんだよ、イアン?」

 

 そんなとき、イアンが何かを思ったらしい。 フィリスに、ある話を持ちかけてきた。

 

「あの幽霊の子がはなしてたことと、ティルの言葉……なんとなく一致しねぇか」

「……」

 

 ガナン帝国兵に傷つけられたラテーナを連れて行った魔獣、今日遭遇したラテーナの言葉、竜の語り部の歌、ナザムの北に住むアルマトラという生物、そして竜の涙。

 それらの情報がフィリスの中に重なっていき、やがてあることを決心し頷く。

 

「真実を確かめるためにも、いくっきゃないね。 その塔に」

 

 フィリスの言葉に対し、イアンもセルフィスもクルーヤも頷いた。

 




やっぱりさみしさを覚えたので、またティルを出しちゃいました。
フィリスとティルは姉弟のようなものですしね。
次回はついに、今回の竜もどき編の真相に迫るお話となってます。
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