でもあの魔獣のお話がここにくるとはね……。
そういえば、ちょうどこれが配信される頃にようやく、私はDQ9をプレイできたような…?
いつだったっけ……とも思いますけど……。
300年前にあった、エルギオスとラテーナの悲恋の秘密を探るため、フィリス達は様々な手がかりを集めていた。 手がかりと言えば、ナザム村のはずれで出会った幽霊の少女の話。 そして、先日ティルから聞いたアルマトラの話。 そして、そのアルマトラがいるとされる塔の話。
「以前のあの子の話を思いだして、ティルの話も頼りにして、いざ村の北の方にきてみれば……」
「まさか、こんな塔がホントにあるなんてな……」
それらの話を照合させ、天の箱船を利用してそこへ向かう。 ナザム村の北側に、確かに塔は存在していた。 その塔の天辺は地上からでは確認できなかったが、天の箱船を利用したらなんとか確認できた。 その非常に高層な塔にこれから、自分達は挑んでいくのだ。
「ってか、なんで今回はサンディも一緒にいるんだ?」
「確かに。 最近ネイルアーティストの仕事がいっぱいあるんだーって言ってたのに」
「久しぶりに数日のオフだし、アタシの好きにしてもいいでしょ」
今回の旅には珍しく、サンディも同行するようだ。 思えばこうして彼女と旅路をともにするのは久し振りな気がする。 まぁ問題はないだろうと思いながらサンディの同行を許可したフィリス達は、意を決して塔の中に入る。
「あれ、だぁれ?」
塔に入ると同時に聞こえてきたその声とともに、壁から一匹のスライムが現れた。
「スライム?」
「わ、人間だぁ! ここにこられる人間がいるなんて、ビックリだよ!」
そりゃあ、こんなところまでこられる人間なんてそうそういないだろう。 そうおもいつつ、人間に興味津々かつ友好的なスライムは、フィリス達にこの塔のことをはなす。
「ここは、アルマの塔。 竜もどきのアルマトラが住む塔さ」
「……アルマトラ……」
「でも、アルマトラのやつ……もうずーっとずっと、300年も塔の上で眠ったきり、目を覚まさないんだ」
「さ、300年」
つくづく、その年数に縁があるものだ。 スライムは、あきれながらアルマトラについて話を続けていく。
「アルマトラったら、魔獣のくせにすごいねぼすけで、お人好しで……。 ずっと昔、アルマトラは天使と仲良くしている女の子を見つけて、心配ばっかりしてさ。 アルマトラの予感は当たって、女の子は事件に巻き込まれたんだ」
「そうなのか」
「そのとき見かねたアルマトラは、女の子を助けて、この塔につれてきたんだよ。 でも………」
「でも?」
おそらく天使と仲良くしていた女の子というのは、ラテーナのことだろう。 あの悲劇の後でここに彼女は連れてこられたのだろうが、その後のはなしをしていたとき、スライムは口ごもってしまった。 なにがあったのだろうかとフィリス達が首を傾げていると、スライムはフィリス達に目線をあわせて、彼女たちにお願い事をしてきた。
「ねぇ。 ぼく、アルマトラが心配なんだ。 あいつのこといい加減、だれかが起こしてあげなきゃいけない。 お願い! ぼくをアルマトラのところまで連れて行ってくれる?」
「ああ、いいよ」
スライムの頼みに、フィリスはすんなりとOKを出した。 まさか人間が魔物の願いを聞いてくれるとは思っていなかったらしい、スライムは驚く。
「ほ、ほんと!?」
「まぁあたしらも、そのアルマトラってやつに会いに行かなきゃならないからな。 乗りかかった船だということで、どんと、あたしらに任せてくれよ」
「ありがとう!」
フィリスの言葉を聞いたスライムは嬉しそうに笑って、フィリスの肩に乗ってきた。
「よーし、行こう! アルマトラの元へ!」
「おーっ!」
そうしてスライムを連れて、塔をのぼっていく一同。 内部はだいぶ荒れ果てており、迷宮のようになっている上、随所に魔物が潜伏していた。
「はぁ!」
「イオナズン!」
「ドルモーアッ!」
「せぁ!」
スライムが自分でアルマトラをおこしにいけなかった理由に、なんだか納得してしまう。 ここにいる魔物達は強敵ばかりで、スライムではとても太刀打ちできないだろう。 おまけにここにいる魔物は皆、人間に対し強い敵意を向けており襲いかかってくる。 そんな魔物達に、人間に対し友好的なスライムが入ってきたら、袋叩きにされることは間違いない。
「ここはすでに、魔物の巣窟となっているのですね」
「うん……アルマトラが起きていた頃は、みんなアルマトラが怖くて立ち入れなかったんだ。 ホントはもっと、やさしい魔物がいっぱいいたんだけど……」
その先のことは、だいたいの憶測がつく。 このスライムの心をえぐるまねはしたくないので、フィリス達はこの塔のことをそれ以上追求するのをやめた。
「外観からわかっていたけど……随分高いわねこの塔」
「ああ、オレらもだいぶあがってきているつもりだけど、全然終わりが見えないぜ」
「おまけに、シャレにならないくらい魔物がはびこってるし。 こりゃ、ラクに上までいけないってカンジ」
と、各々はラクに進めないことに対しての話をする。 アルマの塔の難しさをその身に感じているのだ。 油断していたら魔物が飛び出してきて、容赦なく彼らに襲いかかってくる。
「ギギギギッ」
「おっと!」
少しでも気を抜けばこのように、塔に棲みついた魔物におそわれる。 今もキラーマシンが剣を振り回しながらフィリスに襲いかかってきたが、フィリスはそれを盾で受け止めはじき返し、それで怯んだところに剣を突き刺して倒した。 そうして機能を停止しただのテツクズになったキラーマシンをみて、フィリスは油断大敵だなと呟きつつ剣を鞘に戻した。
「あの階段から、風が吹いていますね」
「お、ということは最上階か?」
目の前に見えた階段をのぼっていくと、開けた場所にでた。 風が吹いていて、空も地上からみるよりずっと近い。 それに、上に続く道はほかにないことから、ここが塔の最上階で間違いないようだ。
「やぁ、やっと頂上だね! ありがとう! つれてきてくれて!」
「いいんだけどさ、そのアルマトラってのはどこにいるんだ?」
「あそこ」
「あそこ?」
そういってスライムは、真上をみた。 そこには巨大な鳥の巣のようなものがあり、スライムはぴょんぴょんと飛びながらその巣にとびのる。 フィリスもすぐに、その後を追いかける。
「これが……アルマトラ……」
そこにいたのは、一匹の魔獣だった。 山吹色の肌に赤いたてがみ、長い耳と尾をもち、その背には大きな翼が生えている。 体毛は、青みがかっていた。 なんとも不思議な姿をしているその魔獣こそが、アルマトラだというのだ。 スライムの言っていたとおり、眠りについているのか少しも動かない。
「アルマトラ! アルマトラ!! おきろ! おきろったら!!」
スライムは必死になってアルマトラを大きな声で呼ぶが、アルマトラは少しも動かない。 フィリス達も起こそうとするが同じく無反応。
「ダメか」
「そんな起こし方、ふるいっつーの!」
どこからともなく取り出したフライパンとおたまでガンガンならしても、4人とサンディとスライムには効果抜群だったがアルマトラには効果がなかった。
「ねぇ……どうして……?」
そう、目を覚まさないアルマトラに対しスライムは寂しげに、つぶやいた。 そして、ぽつぽつとスライムはフィリスたちに向かって言う。
「ダメみたい……ごめんね。 せっかくつれてきてくれたのに………」
「……スライム……」
「……アルマトラはね、ねむりにつくまえに、ガナン帝国城に行ったんだ。 助けた女の子……ラテーナをつれて……」
スライムは当時のことを思い出しながら、フィリス達にアルマトラが眠る前の出来事を語る。
「戻ってきたとき、アルマトラはひとりだった。 様子も、なんだか違っていた……」
「……」
「ねぇ、もうひとつお願い! アルマトラの目をさまさせて!」
そしてスライムは、フィリスにもう一つの頼みごとをする。 それは、アルマトラの眠りについてしまった
「300年前になにかがあったんだ。 ガナン帝国城にいけば、アルマトラを助ける方法がわかるかもしれない……おねがい……」
スライムは、フィリス達に必死にお願いをしていた。 この塔を上っていくだけでも苦労させたのに、さらにアルマトラまで助けてほしいというのは、都合がよすぎるかもしれない。 スライムがこの願いを言ったのは、正直言ってダメ元だ。
「よし、みんな! ガナン帝国へいくぞ!」
「えっ?」
断られても仕方ないと思っていた。 だが、フィリスは笑って仲間達にそう言ったのだ。 仲間達も、力強く頷いた。
「そうね、ここまできたのに、肝心のアルマトラが寝たままなのって中途半端でイヤよね! 解決させてスッキリしましょ!」
「僕たちはアルマトラのことはよくわかりません。 ですが、眠り続けるのは、きっとよくないことなのでしょう。 300年前のことの真相も、このままわからないままなのも、納得できません」
「たとえ魔物であっても、お前はいいやつだからな。 お前のアルマトラにたいする想いもしっかり受け取った。 だから、かなえさせてくれよ」
そう、クルーヤとセルフィスとイアンが自分の意見を言葉にしていき、全員はガナン帝国へ向かうことを決める。 仲間達の言葉を聞いたフィリスは大丈夫だぜ、とスライムに笑っていった。
「……あり、がと……」
スライムは、ボロボロと泣きながらフィリス達にお礼を言った。
「泣くんじゃないの、このパーティは世界中のみんなが呆れかえるほどの、お人好しのあつまりなだけなんだから」
と、スライムに語りかけるサンディの姿もあった。
そうして4人は、アルマトラの秘密を探すために、またガナン帝国城を訪れた。
「いつきても、息苦しい場所だぜ」
そう、フィリスは率直にこの城に対する感想を口にした。 このガナン帝国城も平気で歩き回れるようになったが、それでもこの国と自分の因縁は簡単に断ち切れるものではないのだ。 ここは薄暗く、いまもなお重い空気が包んでいて、誰もないからなおさらそう強く感じるのだろう。
「うわぁ!?」
「ゆ、ユーレイ!?」
そんな因縁をその身に感じながら城の中を探索していると、彼らの目の前に幽霊が現れた。 不意打ちで現れたので皆は驚いたが、その幽霊はこちらのリアクションなど無視して、ポツポツとつぶやく。
「栄えあるガナン帝国が滅びを迎えたあの日……青い服の娘が、つばさを持つ男を助けるため、魔獣の背に乗り、この城へやってきたのだ」
「……え……」
「私がみたのは夢か幻か……あの日の娘によく似た者が、今また、閉ざされし牢獄へ………」
そう呟いた後、幽霊は消えていった。 フィリス達は突然幽霊が現れたことにたいしての戸惑いを残しつつも、幽霊のつぶやきの内容に注目する。
「閉ざされし牢獄って……」
「ああ、天使達と……エルギオスが閉じこめられてた場所だ」
閉ざされし牢獄は、ガナン帝国城の地下に広がる巨大な牢獄だ。 そこに囚われていたのは、かつてのフィリスの同族達だった。 そこに、なにがあるのだろうか。 フィリス達はその閉ざされし牢獄に続く階段に進んでいく。
「わ、またでた」
その階段への扉の前に、また幽霊が現れた。 今度は身なりのいい男性の幽霊だ。 おそらく大臣だろう。 大臣の幽霊は、先程の幽霊と同じように、語り出す。
「300年前……私たちは、ここへ来た娘のために、あの牢獄の扉を開いてやったのだ。 娘のため、つばさをもつ男のため……ここにいた皆が協力した……。 結果、私たちは命を落としたが、悔いはなかった。 この手で行えた、最後の人としての行為だったのだから……」
そう語る大臣の幽霊は、ガナン帝国の行いに対しずっと、罪悪感をつのらせていたのだろう。 復活した後に魔物になってしまったことや、かつてのガナン帝国の行い…もう自分達は人間ではないと感じていたのだろうか。
「だが……今の娘は……?」
そう、大臣の幽霊は過去を悔いつつも、先程自分が目撃したもののことを気にしていた。 そして大臣の幽霊は姿を見せなくなり、フィリス達は疑問を残しつつも、その娘が向かったという閉ざされし牢獄への道を進んでいった。
「ここからが、閉ざされし牢獄ですね」
そういい扉を開け、地下への階段を降りていく。 そうしてまずついたのは、かつて天使達がとらえられていた牢獄であり、そこには兵士の幽霊がいた。 兵士は、自分がみたものが信じられないと呟いていた。
「この兵士の幽霊さんも、ラテーナさんをみたのね」
「よし、さらに進もうぜ」
そう幽霊の言葉を聞いて、フィリス達は手がかりを追って奥へと進む。 少し先にあった小部屋にいた、学者の幽霊も、ラテーナらしき娘の手がかりと、300年前の事件のことをはなした。
「300年前、魔獣とやってきた娘は兵士の手によって、この先で命を落としました。 すると娘をあわれんだ魔獣アルマトラが……竜もどきが、一粒の涙を落としたのです」
「……そうか、ラテーナさんはここで死んでしまったのか……」
「アルマトラの娘を哀れむ心が奇跡を起こしたのか、その涙は竜の涙と変わりました。 そして、その竜の涙がつばさを持つ男の魔力を、ひととき解き放ったのです」
「竜の涙は、実在したのですね」
「しかし、男の心はすでに深い憎悪にむしばまれておりました。 男は解き放たれたその力で、城の人々を焼き滅ぼし……この地を、無人の荒野に変えたのです」
そうして、学者の幽霊は300年前の真相を彼らに伝えたのだった。 この学者の幽霊の話だけで、ずっと疑問だったことが次々に解消されていった。
「今のが、300年前にガナン帝国が滅んだ原因だな」
「そして、竜の涙の正体と」
「ラテーナさんの、最期……か……」
ここでラテーナが命を落としたということは、もう少しでエルギオスに届きそうだったということ。 もしガナンの兵士が彼女に手を下してなければ、おそらくラテーナはエルギオスを救えたかもしれない。 たとえ憎しみに飲まれていたとしても、少しの可能性があったかもしれない。
「どれほど、無念だったのでしょう……」
「……」
「もう少しで、あのエルギオスが捕まっていた場所よ」
「つまりは、最深部だな」
とりあえず、ここまできたからにはさらに奥へ行くしかない。 そうおもい一同はエルギオスが囚われていた牢獄まで進むことを決め、そこへ続く道の入り口に入った。
「!?」
瞬間、フィリス達は強い光に包まれた。
光の中、この場所で一人の女性が横たわっていた。 その細い身体からは血がとめとどなく流れていて、止まる気配がない。 女性らしい清楚なワンピースも羽織っていたフードつきマントも、その血の色に染まっている。
「アルマトラ……そこにいるの………?」
そんな中、女性は…ラテーナは、ぼんやりとした意識の中で、側にいた魔獣の名前を口にする。 必死に手のばして、乱れている呼吸のなかで、魔獣に語りかける。
「ごめんなさい……あなたも、ケガを、したでしょう……?」
ラテーナが魔獣…アルマトラにまず告げたのは、謝罪の言葉だった。 彼女は自分が今にも死にそうになっていることより、アルマトラを巻き込んでおきながら目的を果たせなかったことを悔いているのだ。 大事な人を救えなかったことを、悔いているのだ。
「竜のなみだを、私が見つけ出せていたら……エルギオスの力を、すぐにでも……解き放つことができたのに……」
もう、自分の命の灯火は消えかかっている。 そんな意識のなか、ラテーナは大事な人への誓いをたてた。 決してやぶったりはしない、誓いを。
「待ってて……エルギオス。 私は……私は、死んでもあなたを………助け出す。 たどりついてみせる……。 たとえ、どんなにはなれても……何十年……何百年……かかっても……エルギオス……。 ………」
最期に、彼の名前と彼への想いを口にした。 だが、想いのほうは唇は動いていたものの、声とはなっていなかった。 事切れたラテーナに対し、アルマトラは首を横に振り語りかける。
「つまらぬことを言うな。 人は死んだらそれまでだ、娘。 さぁ立て。 背に乗せてやる」
そうアルマトラはいうが、ラテーナは動かない。
「どうした? 娘。 立て……目を開けろ」
アルマトラの言葉にラテーナは返事をしない。 目を開けない。
「いったい何のためにここまで来た。 なんのために……なんの………。 ここで死んで、どうする……目をあけろ……ラテーナ………」
そうラテーナに訴えかけるアルマトラの目から、ポタポタと涙がこぼれた。 やがてその涙は強い光を放ち、地面に落ちた。 その瞬間、その場は強い光に包まれる。
「今のは!?」
そして、光がやんだ瞬間。 その場にいたのはラテーナでもアルマトラでもなく、フィリス達だった。 あのラテーナとアルマトラのいる景色は、フィリス達がみていた幻覚だったのだろう。
「マボロシ、てヤツかな」
「……」
サンディもいま自分が目撃したものにたいしての感想を口にし、クルーヤとセルフィスは、ガレキの側になにかが落ちていることに気付いた。
「これ、なにか光ってるわ」
「おそらくそれが、竜のなみだ……なのでしょう」
「そう……これが、ラテーナさんが探し求めていた、竜のなみだなのね……。 確かに、不思議な力を感じるわ」
不思議な色と光を宿した、雫形の宝石。 不思議な力を持っているその宝石、それをアルマトラが落としたものだというのなら、その宝石がアルマトラの目を覚ます手がかりなのだろう。
「……」
そんな中、フィリスはずっと黙っていた。 それに気付いたイアンはフィリスに声をかける。
「……いけるか、フィリス」
「誰にいってるんだ、それ?」
イアンの言葉に対し、フィリスはそう返事をした。
「あたしは、やるべきこと……そして、自分がやりたいことを最後まで徹底的にやるだけだ。 さぁ、その竜のなみだをもって、アルマトラのところへいこうぜ」
そう、深紅の瞳で仲間達を見つめて、このまま目的を果たすことを推奨したのだった。
エルギオスとラテーナに対し、フィリスもまだ思うところがあるようです。
そして、アルマトラにも。
次回はいよいよ、アルマトラに本当の意味で対面します。