アルマトラとの戦いを、おとどけします。
ガナン帝国城にて、300年前の真相をしったフィリス達は、竜のなみだをアルマの塔に持ち帰ってきた。
「スライム!」
「あっ! みんな!」
「おまたせ、てがかりっぽいものを見つけてきたよ」
塔のてっぺん、そこにある大きな巣の中で眠るアルマトラ。 そこに一緒にいたスライムに、フィリスは声をかける。 そしてアルマトラの前にたち、ガナン帝国城の地下にあった、竜のなみだを差し出す。
「竜のなみだが……!」
すると、竜のなみだがほのかに光をはなつ。 その光は徐々におおきくなっていき、宝石は光の粒となりアルマトラに注がれる。
「……ウウ……」
「アルマトラ?」
光がやんだ瞬間、そこに眠っていたアルマトラはうなり声をあげ、徐々に動き出す。 先ほどまではなにをやっても効果がなかったので、大きな変化のように見える。 さらに、アルマトラはその鋭い双眼を開いた。
「目を開けたわ」
「みたいだな」
「これで、よいのでしょうか?」
「多分、いいんじゃねーの?」
アルマトラを起こすという目的は、これで果たされた。 誰もがそう思った、そのときだった。
「……人間が……なぜ、ここにいる?」
「は、はい?」
アルマトラは、言葉を発した。 だが、その声は重々しい。 その目もより鋭くなっており、フィリス達のことを見つめていると言うよりも、にらみつけていると言った方が正解だ。 なんだか、イヤな予感がする。 そして、そのイヤな予感を的中させるかのように、アルマトラは口を開いた。
「……長い夢を見た……私は、あの娘の命を奪った人間を、許しはせぬ……」
「え、ちょいヤバイんじゃないの?」
「失せろ! 人間は嫌いだ!」
アルマトラは怒りに身を任せて、フィリス達に牙をむく。 スライムが制止をかけようとしたが、その声もアルマトラには届かない。
「アルマトラ、だめだ、その人は……!」
「人間は、嫌いだぁぁぁ!!」」
アルマトラがそう叫ぶと、突風が起こった。 アルマトラの咆哮によるものだろう。
「うわぁーっ!?」
その圧にフィリス達は吹っ飛ばされ、巣からたたき落とされた。 それにより、全員にダメージが行き渡る。
「あいたたたた……」
「ぐぅ……なんって咆哮だよ……オレらをふきとばすなんて、タダモンじゃねーぞあの魔獣!」
「おまちを……ベホマラーッ!」
すぐにセルフィスは全員にベホマラーをかけて、皆の傷をいやす。 そこに、アルマトラがつっこんできた。 その攻撃はギリギリのところで回避したが、アルマトラの敵意が消え去ることはない。
「こいつは一度、シメねぇとダメみてぇだなおい!!」
イアンの言葉に、3人は迷わず頷いて武器を手に取る。 本来は戦うべきではないかもしれないが、話し合いで済むような相手ではなかったのだ。 ここは全力で戦い、勝利する必要がある。
「サンディはそのスライムをおねがい!」
「わかった!」
「あうっ」
スライムに戦いの飛び火がこないように守るため、スライムのことをサンディにたくす。 これで周りを気にせず、存分に戦える。
「やっぞ!」
「おう!」
フィリスのかけ声に、仲間達は応じた。
戦うことを決めた4人に対し、アルマトラはその鋭い爪で引き裂きにかかる。
「グァアァァァッ!!」
「おっと!」
それをイアンは回避し、アルマトラに対し氷結らんげきを繰り出す。 それに耐えたアルマトラは突進してイアンを吹っ飛ばし、再び爪で切り裂こうとする。 それを、クルーヤのマヒャドが阻止する。
「おらぁ!」
そこに、フィリスがきりかかった。 その一撃はアルマトラの身体に切り傷をつけ、そこにさらに攻撃を加えようとするが、そのときアルマトラはこごえるふぶきをフィリスに吹きかける。
「うぐっ……!」
「ドルモーアッ!」
そこに、仲間達にスクルトをかけおえたセルフィスが攻撃に加勢してきた。 そのドルモーアが思った以上にアルマトラにダメージを与えたらしい、受けたアルマトラは苦しそうな声を上げた。 この闇属性の攻撃が弱点なのか、と気付いたセルフィスは、今度はドルマドンを放とうとする。
「うわぁ!」
「セルフィス!」
だが、そんなときセルフィスの行動に気付いたアルマトラが、セルフィスに飛びかかってきた。 その攻撃を受けたセルフィスは地面にその身体をたたきつけられ、かみつこうとしているアルマトラの顔を盾で必死に押し返していた。 そこにイアンが突っ込んでいきアルマトラにキックをかまそうとしていたが、アルマトラの皮膚は硬く、尾を振り回してイアンを吹っ飛ばしてしまった。
「イオナズンッ!」
そこでクルーヤは、イオナズンを放ってアルマトラを驚かし、その爆発によりアルマトラの身体はセルフィスからどいた。 自分の攻撃を妨げられたことにたいし怒ったアルマトラはクルーヤに攻撃をしようとしたが、クルーヤはそれにたいし正面からメラゾーマを撃つことで対抗、それでもクルーヤに突っ込んできたので体勢を立て直したイアンがアルマトラを受け止め、つかんで投げ飛ばした。
「うおぉぉぉ!」
「ウガァァァ!」
それにより地面にたたきつけられたアルマトラだが、追撃で突っ込んできたイアンの腕にかみついて、そこから振り払ってたたきつける。 そこにフィリスがはやぶさきりを繰り出し、アルマトラの翼に傷を付けて空を飛べなくし、彼女がアルマトラの身体から離れると同時にセルフィスがドルマドンをうち込んだ。
「ガァァァーーーーーッ!」
「やはり……闇の力に弱いのですね……!」
そのダメージに苦しんでいる間に、セルフィスはベホマでイアンの身体についた傷をいやす。 それにより動けるようになったイアンは、再びアルマトラにつっこみ、フィリスに攻撃を仕掛けようとしていたアルマトラの尾をつかんでとめる。
「うぉご!?」
「あの人アルマトラをとめちゃった!?」
「まぁ、全身が筋肉で出来てるのがイアンって男だからネ」
「おい聞こえてるぞそこぉ!!」
そう、観戦していたスライムとサンディにつっこみを入れつつ、振り払おうとしているアルマトラを必死になって押さえつけるイアン。 そこでイアンは大きな声でフィリスの名前を呼び、それに応えるためフィリスは、剣の刀身を稲妻で包み込む。
「せぁあ! ギガ・スラーッシュ!」
「グァァァァッ!」
フィリスの全力のギガスラッシュを受けて、アルマトラは崩れおちた。 力を入れる必要がなくなったイアンは、つかんでいた尾を離しフィリス達と合流する。
「無事に技が決まったな!」
「おもっきりやったけど、平気だよな?」
「でも、あれくらいやらないとわたし達も危なかったし……」
「これで、アルマトラも落ち着くといいのですが……」
そう仲間達は集合し、そこに倒れたアルマトラを見ていた。 そして、すぐにアルマトラは起きあがる。
「ウ、ウゥゥウ……おの……れ……!?」
アルマトラは起きあがってからもフィリス達と戦おうとが、次の瞬間にフィリスが手に持っている剣を視界に入れ、驚く。
「その、剣は……」
「……大切な人から託された、あたしの誇りそのものだ」
剣に気付いたアルマトラにたいしフィリスがそう答えると、アルマトラは確認をとるように彼女に問いかける。
「フィリス?」
「!?」
「……お前……フィリス、か………?」
突如、名乗ってもいないはずのフィリスの名前を口にしたアルマトラに、全員が驚く。
「えぇ、なんでアンタがフィリスを知ってるの!?」
「フィリス、あなたホントはアルマトラと知り合いなんじゃ……」
「ねーよ」
「……よね」
一応フィリス自身も、天使時代の記憶を漁ってはみるが、やはりアルマトラのことは存在はおろか名前ですら、記憶にないどころかまったく知らない。 ではなぜ、逆にアルマトラはフィリスのことを知っているのだろうか。 疑問を募らせる一同に、アルマトラは引き続き話をした。
「お前のことは知っている。 ずっと夢の中からみていた……」
「夢?」
「なぜ……私は、お前を……すまない。 私は我を失っていたようだ」
フィリスの存在に気付いたとたんに、おとなしくなって謝罪をしてきたアルマトラ。 思ったよりもあっさりと解決したので拍子抜けだ、と呆然する4人に、アルマトラは長年眠っている間のことを話して説明をした。
「とても長い夢を、見ていた。 300年もの間……人間の娘が竜のなみだを探して長い旅を続け……ついにはガナン帝国で、命を落とすまでの夢だ。 いつしか娘は、私の夢の中から外の世へと踏み越えて……そうだ、お前にも会ったな、フィリスよ」
「そうか。 あたしが出会った、あのラテーナさんは……」
「旅の中で出会った幽霊のラテーナさんとは、同一人物ではあるものの別の存在だったのですね」
竜の語り部やサンマロウの町長、グビアナの宝石商、そして自分達。 今まで遭遇していたラテーナは、肉眼で見えるある種の幻影だったのだ。 当時の記憶のままだったから、フィリス達のことも知らないことにも納得がいく。 あの彼女のすべての言動は、300年前の本人の行動そのものだったのだ。 夢の中の存在が現実にあらわれるなんて不思議なことがあるのか、と思いもしたが、その夢を見たのがアルマトラなる魔獣であるのなら、納得がいく。
「あの時、ラテーナとつばさの男を助けられなかったことは、長きにわたって私を苦しめた。 だが、あの星ふぶきの夜。 立ち上る星々を見て知ったのだ。 二人はようやく、救われたのだと……」
アルマトラは、あの時のことを語る。 その話を聞いて、思えばあれからだいぶ時間が経過していたのだと感じた。 アルマトラは、フィリスと後ろにいるイアン達を見て、夢に彼らがうつっていたことも伝える。
「そして、それがフィリス……さらに、そこにいる人間達によるものだということも、私にはわかっている」
「ああ……そうだな」
あのときアルマトラが目の前にいるのがフィリスだと気付いたとたんに攻撃をやめたのも、フィリスがラテーナとエルギオスを救ったことを知っていたからだ。 そして、正気に戻ったことに気付いたスライムが、アルマトラのそばに寄ってきた。 スライムを守る必要がなくなったサンディも、フィリスの肩に乗る。
「このスライムは、私の古くからの友人なのだ。 お前を連れてきた彼にも、感謝をせねばなるまい」
「そうだよっ」
「その子が教えてくれなかったら、アタシ達もここまでこられなかったし、アルマトラもグースカピーと寝たままだったもんね」
「サンディ、何語しゃべってんの?」
そう、スライムに関する話もした。
「というか、スライムって300年いきるの?」
「しらね」
そうしてアルマトラと和解を果たしたところでセルフィスは、アルマトラを含めたその場にいたもの達全員にベホマラーをかけ、全員の傷をいやす。 そして、自分の身体の傷がなくなったことを確認したアルマトラは、フィリスを見つめる。
「我が目を覚まさせ、あの二人を救ってくれた……心ばかりの礼をしよう。 フィリスよ。 りゅうせいの剣を、ここに見せるがいい」
「これ?」
アルマトラに言われて、フィリスは鞘ごと剣をぬいて彼の前にそれを差し出した。 そしてアルマトラに剣を抜けと言われたので、フィリスは従い鞘から剣を抜いた。
「……」
すると、アルマトラの身体からわずかに光があふれ出し、その光が剣を包み込む。 さらに、光の中から銀色のオーブが現れ宙に浮かんだ。
「あ、オーブ!」
宙に浮かんだオーブは、フィリスの持っていたりゅうせいの剣と重なり合い、光の粒子を放つ。 その粒子がりゅうせいの剣を包み込み、閃光を放つと、そこにはより美しい剣があった。
「この光景、たしか神の国でセレシア様が……!」
その光景に見覚えのあるセルフィスが、そう口にした。 確かあの時女神セレシアは、フィリスのほしくずの剣をりゅうせいの剣に強化してくれた。 ということは、今りゅうせいの剣も強化されたのだろう。
「それこそ、すいせいの剣だ」
「彗星の、剣……!」
やはり、強化されたのだ。 より美しくより鋭さを増したその剣をフィリスは見つめ、軽くふった後で鞘に戻す。
「……託されていった剣が、どんどん強くなるのは……あたしにとってもも嬉しいことだな」
そう言って、フィリスはその顔に笑みを浮かべていった。 そんなフィリスに対し、アルマトラは自分の正体を打ち明ける。
「私もかつては、創造神グランゼニスにより生み出されたのだ……人間を滅ぼすために………」
「なっ!?」
「だが、あの二人の姿を見ているうちに私は絆されたのだ……いつの間にか、私の存在理由も……なんのために生み出されたのかも、忘れていった。 思い出したときには、そのようなものはどうでもよくなっていたのだ」
だからこそ、エルギオスもラテーナも救えなかったことを、ずっとずっと後悔していたのだろう。 自分の心を変えていった存在。 見守っていた時間は長くなかっただろうが、時間の問題ではない。 心の変化にどれほど影響を与えるものだったかどうか、である。 アルマトラにとって、エルギオスとラテーナの関係は、それほどの影響を与えるものだったに違いない。
「星達がふぶいたあの日、私はようやく解放される思いだった。 救えなかった存在が、救われたのだから……」
「………そっか。 じゃあ、あたし達が命がけで戦った意味もちゃんとあったんだな」
ここで改めて、自分達がずっと戦い旅を続けていた意味を実感できた。 アルマトラの言葉にたいし、フィリスも、他の仲間達も実感がわいてきたのか、その顔に笑みを浮かべる。 そしてアルマトラは、目を細めてフィリス達に告げる。
「私はお前を見守っている。 この高き塔の上で、いつまでも……な……」
「ありがとう、アルマトラ」
そういってフィリスは、すいせいの剣を抱きしめつつアルマトラと額をあわせた。 もう彼は憎しみや悲しみに囚われず、誰を傷つけたりはしないだろうと、確信を得たのだ。 アルマトラも、彼女達は純粋に信頼できると感じたのだ。
「一件落着ですね」
「ああ」
そんなフィリスとアルマトラを見ていたセルフィスはそうつぶやき、イアンも同意した。 クルーヤも、微笑みつつアルマトラに対する印象を口にする。
「アルマトラって、不思議な姿をしていてちょっと怖いけど……ホントはとっても優しい魔物なのね」
「人も魔物も、見た目によらないってことか」
クルーヤの言葉に対し、サンディも同意した。 その横でスライムがやれやれと言いながら、アルマトラを見てつぶやく。
「なーにが見守るだよ! 助けてもらってえらそーに! ねぇ!」
「あれ、人にアルマトラを起こしてって必死になって助けを求めていたのは、どこのダレだったっけ?」
「あうっ」
サンディにつっこまれ、スライムは一瞬怯んだものの、皆のほうをむいて自分からもちゃんとお礼の言葉を伝える。
「でも、ありがとう。 アルマトラを助けてくれて……。 ぼく、よく知らないけどさ。 きっとラテーナって人も喜んでるよ」
「きっと、そうですね」
そう語り合いつつ、一同は空を見上げたのだった。
フィリスの剣を最大レベルまであがったことだし、まだこの長編は終わりません。
これからもフィリスの旅を見届けてください。