ドラゴンクエスト9 AngelsTale2   作:彩波風衣

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この長編はあと少し続きます。
このままラストまで更新したい気もすれば、まだ終わってほしくない気持にもなります。



35「地図をめぐって」

 

 

 そうして、グビアナの反乱を止めた一同は再び旅をした。 宝石のかけらを入手できた上に、ユリシス女王から宝の地図ももらえたからだ。

 

「宝石も、だいぶ完成に近づいてきたわね」

「ああ」

 

 フィリスの手の中にあるマゼンタカラーの宝石は、最初に見つけたときよりも大きくなっている。 地道ながらもカケラを集めていった結果のものだろう。

 

「あ」

「どうしたの?」

 

 宝石を太陽の光にかざしつつみていたフィリスは、ふっと声を上げた。 そして、思ったことをそのまま言葉に出す。

 

「そういえば、この宝石……女神の祈りって名前だったなって思い出しただけだ」

「忘れてたんですか!?」

「つーかなんでこのタイミングでおもいだした!?」

 

 唐突に宝石の名前を口に出したフィリスに対し、セルフィスとイアンがツッコミを入れた。 そんなことは気にせず、フィリスは女神の祈りという宝石のことを語る。

 

「……あの天使……ラヴィエルさんが言ってたよな。 この宝石には……特別な者の願いを叶える宝石だって」

 

 ラヴィエルは確かにそう言っていた。 女神の祈りという名前が付けられたこの宝石には、願いを叶えるという奇跡の力を秘めていると。 これが完成したとき、願いが叶うという伝承があることを。

 

「願いが叶う宝石なら、誰だってほしがるのは当然だと思うけど……魔物がねらうのは少し異常だわ。 魔物達がかなえたい願いってなんなのかしら」

「魔物達も、ひとつの軍勢と言うよりバラバラの目的で動いてて、それぞれで女神の祈りをねらっているということなのでしょう」

 

 これまでに女神の祈りを狙う魔物は多くいて、フィリス達はそれを相手に戦ってきた。 魔物はこれを手に入れてなにをするつもりかは、いっさいわからない。 だがそれは、あの天使にも同じことがいえる。

 

「……第一、オレ達がこれを完成させた後、ラヴィエルさんはそれでなにを願うつもりなんだ?」

「わかんない。 だけど」

 

 フィリスはラヴィエルとあったときのことを思い出す。 彼女にはなぜか、懐かしいものを感じたことも。 その懐かしさから、フィリスはラヴィエルから疑わしいものはないだろうと感じたのだ。

 

「たぶん、悪いことには使わないと思う。 あたしはあの人を信じるぜ」

「……そっか、ならいいか」

「いいのか?」

「ああ」

 

 すんなりと自分の意見を聞き入れたイアンに、フィリスはきょとんとする。 ラヴィエルが悪人ではないという直感をただ伝えただけなのに、あっさり信じてくれたことが意外なのだ。

 

「あたしの言葉、すぐに信じるんだな」

「なにを今更」

「……ああ、確かに今更だな」

 

 フィリスの旅は人間離れしているし現実味がまるでないものだ。 そんな彼女にここまで、イアンもセルフィスもクルーヤもついてきている。 だから、フィリスがなにをしようと、なにを決めていようと、なにを言おうとも、信じられる。 それに疑問を抱くのは、本当に今更な話だ。

 

「ねぇ、今は依頼とか特にないでしょ? だったら女王様からもらった宝の地図の洞窟を攻略してみない? そこに、なにかすっごいものがあるかもしれないわ」

「それは賛成だ」

 

 そして、今回はクルーヤがそう提案をしてきたことで、宝の地図の攻略を挑むことにしたのであった。

 

「完成したとき、なにが起こるんだろうなぁ」

 

 と、女神の祈りに対するつぶやきをしたあと、フィリスはそれを荷物袋に収納した。

 

 

 

 そうして女神の祈りに対する疑問を整理したフィリス達は、グビアナを救ったお礼として受け取った宝の地図の攻略に挑むことにした。

 

「今回は水が多く流れているわね」

「常々思ってるけど、どういう仕掛けなんだろうなこういう地図って……」

「それ以上考えると、世界の理を乱す可能性があります。 なので、ふれない方が得策だと思いますよ」

「……かもな……」

 

 宝の地図の仕組みは気にするだけ時間の無駄なのだろうと、各々は自己完結させて先へ進む。 道中は今までの例に漏れず、魔物が数多く生息していて、フィリス達の姿を見かけるなりすぐに襲いかかってくる。

 

「イオナズン!」

 

 自分達の前に出てきたのは、巨大な女型の魔物・うみうしひめ。 数多く出てきた上でに攻撃力も高くタフなその魔物は、フィリス達の行く手を阻んでくる。 相手の攻撃を防ぎつつ、クルーヤは全体に攻撃が行き渡る攻撃魔法を唱えてはなっていく。

 

「セルフィス、決めてくれ!」

「はい! イオグランデ!」

 

 そして、セルフィスがその上位魔法を放ったことでうみうしひめの群は消滅し、彼らの前に再び道が現れる。 次の間者の群が現れないうちに、そして魔物達が気付かないうちにと、フィリス達は気配を消しつつ先へ進んだ。

 

「魔物くらいはあたしらの敵じゃないとはいえ、連続でかかってくると厄介だしめんどくさいもんな」

 

 と、フィリスは魔物におそわれることについてそう語った。 そんなとき、彼女のそんな気持ちに反しているかのように魔物が再び現れて攻撃を仕掛けてきたが、それもやはりというべきだろう。 フィリス達はあっさりと蹴散らして見せた。

 

「たあいねぇな」

 

 倒れた魔物相手にイアンはそう言って、手の埃をはらうかのようにパンパンとたたいた。 彼にとって今の敵は、暇つぶしにも値しなかったかのようだ。

 

「今までと同じなら、この洞窟の最奥部にこの洞窟のボスと言うべき魔物がいるはずだ。 そいつなら、あんたを満足させる大敵になれるんじゃないか?」

「おう、そうだな。 はやく会いたいぜ」

 

 フィリスの言葉をきいたイアンは、この洞窟の最奥にいるであろう敵に対し期待をして胸を高鳴らせた。 そんなイアンの姿を見たセルフィスとクルーヤは、密かに会話をする。

 

「なんか最近のイアン、気が高ぶってるわね」

「クルーヤさんも、そうおもいますか?」

「ええ、だって火をみるより明らかだもの。 グビアナでの戦いが、彼の闘争心に火をつけちゃったのかしら?」

 

 彼の闘争心が高ぶった原因らしい原因は、あのグビアナ反乱軍との戦いだろうと、2人は思った。 とりあえず、この洞窟の奥にいるボスを討てば、イアンも落ち着くだろうと推測し、最奥部へ続く階段を降りていく。

 

「この先にいるんだな? 早く戦おうぜ」

「ホント、やる気満々だな」

 

 そう会話をしつつ、この洞窟のボスが何者なのかをその目で確認をする。 だが、その目でその姿を拝む前に自分達に影がさしていたので、まずはそちらに向いた。 一同はその不自然に大きな影にたいし疑問を浮かべつつ、ゆっくり顔を上げてその影の正体をみる。

 

「うぉぉぉーん」

 

 そこには、だいだい色の筋肉質な肌に、その手に混紡を持っている、一つ目の巨人が立っていた。 その姿を見た4人は、同時に同じ感想を口に出す。

 

「でっっか!?」

「うぉぉーん!」

 

 4人がそのサイズにたいし驚いていると、巨人は泣き声のような声を上げていた。

 

「アトラス、いうこときかないやつは、ゆるさないぞー! きらいだぞー!!」

「しかも、なんか言ってることがガキだし!!」

 

 どうやらこの巨人はアトラスという名前らしい、巨体に似合わずかなり幼稚な口調と言葉を口に出している。 その体のサイズもあって声は大きく、洞窟内に響きわたっている。

 

「アトラスのいうとおりにならないやつ、こうしてやるー!」

「うぉぉぉ!!?」

 

 そう言ってアトラスが地面をたたくと、その洞窟内が大きく揺れた。 さらに、地面が盛り上がりそれにより4人は吹っ飛ばされてしまう。

 

「「「うわぁぁ!!」」」

「きゃあ!」

 

 先手で大ダメージを受けたフィリス達だったが、すぐに体制を立て直し、アトラスを倒す体制に入る。

 

「おいおいおい! いきなりやってくれたなぁ!」

「本気でシメるぞ、てめぇ!!」

 

 

 

「大いなる守りを……スクルト!」

「力を与えよ、バイキルト!」

 

 セルフィスは相手がパワータイプであると見抜き、防御力をあげる補助魔法を仲間たちに重ねてかける。 クルーヤも、まずは先頭に立っているイアンとフィリスに対し攻撃力を増加する補助魔法をかけてから、自分も攻撃にでられるようにと、己の魔力を高めるために集中する。

 

「氷結らんげき!」

「はやぶさ斬り!」

 

 その強化を受けた2人がそれぞれ技を繰り出し、アトラスに特攻をしかける。 その一撃を受けたアトラスはまた、うぉぉんと泣き叫ぶような声を上げつつフィリスに向かって棍棒を振り回してくる。

 

「いちいち泣き叫ぶんじゃねぇようっとおしい!!」

 

 その一撃を盾で受け止めつつ、フィリスはアトラスにたいし怒鳴りつける。 自分の体に攻撃が当たることはなかったがやはりアトラスの攻撃力は高く、フィリスはかなり後方まで吹っ飛ばされた。 そこに、クルーヤのメガガイアーが放たれてアトラスを炎の中に閉じこめ、セルフィスはアトラスの中心に向かって矢を放つ。

 

「いまだ!」

 

 そこにイアンがつっこんでいき、アトラスの喉元に強烈な拳を入れてきた。 それにたいしアトラスは苦しそうな声を上げ、イアンは追い打ちでさらに棍でつくが、直後にアトラスは棍棒でイアンの体を地面にたたきつける。

 

「ぐぁぁ!」

「イアン!」

 

 その一撃はイアンに効いたが、イアンは地面にたたきつけられてもなお立ち上がってみせる。

 

「く、そぉぉっ! なめんじゃねーよっ!!」

 

 立ち会ったイアンはそこからアトラスにつっこんでいき、再び氷結らんげきを繰り出した。 その連続攻撃にひるんだところで、フィリスはミラクルソードを繰り出して切り裂き、クルーヤもマヒャデドスを繰り出した。 その連続攻撃を受けたアトラスは倒れ、土埃がその場に舞い上がる。

 

「やったか!?」

「うぉぉぉーん!!!」

 

 あの連続攻撃に倒れたか、と誰もが思ったそのとき、アトラスは再びあの声を上げながら立ち上がり、棍棒を高く掲げた。

 

「いやぁ!?」

「くっ!」

「まだかよ、クソッ!」

 

 アトラスは次の一撃で、自分達を倒すつもりなのだと悟ったイアン達は身構えた、そのときだった。

 

「ドルマッ!」

 

 突然聞こえた攻撃魔法の名前。 それが飛んできてアトラスの目に命中し、それがとどめの一撃だったようでアトラスは再び倒れ、そして消滅した。 突然のことにイアンもクルーヤもフィリスも驚き、その魔法を使える人物を一斉にみた。

 

「セルフィス?」

「みなさん、ご無事ですね……」

 

 その魔法を放った本人は、仲間たちが無事であることを知り安心したのか、ほほえんでいた。 フィリス達は一斉にセルフィスに駆け寄って、彼のあの行動の真相を問いかける。

 

「なんであそこで、ドルマを放ったの?」

「僕もなぜかはわかりません……ですが、脳内にドルマを使うべきだという判断が浮かんできたのです」

「……どういうこと……?」

 

 ドルマは闇の属性をもっており、その属性の攻撃魔法の中では初級…つまり、一番弱いものなのだ。 彼の判断に対し疑問は残るが、この地図の攻略は今ボスであるアトラスを倒したことで果たされた。

 

「まぁ無事に倒せたんだし、結果オーライといこうぜ」

「奥に宝箱もあるし、もらっちゃいましょ」

 

 奥にはしっかりと宝箱が置かれていた。 この宝箱の中に、これからの旅に関するものがはいっているかもしれない。 そんな期待を抱きつつ、今回はとどめを刺したセルフィスに開けさせる。 少し照れながらもセルフィスは宝箱をあけて中身を確認した。

 

「どう、セルフィス?」

「また、地図ですね」

「「「地図かぁーい!!」」」

 

 宝箱から出てきたものにたいし、そうそろってツッコミを入れたのだった。

 

 

 

「ふぅ……とりあえず宝の地図、ひとつクリアだな」

 

 そういいながら、フィリス達はその洞窟をでた。 そして、宝の地図は用済みと言うことで畳むと、背後にあった自分達の攻略した洞窟は一瞬で消滅した。

 

「地図をしまうと洞窟も消えたわ」

「この地図は特別なものなのでしょう。 まるで、地図と洞窟が同一のもののようです」

「じゃあ、もっかい開くと?」

 

 そういいながらフィリスはもう一度宝の洞窟の地図を開いてみる。 すると、さっきと同じ場所に洞窟がでた。 それにたいしなるほど、とだけいって再び地図を畳んで洞窟を消す。

 

「これなら好きなときに、あの洞窟でいつでも修行ができそうだな。 オレは嬉しいぜ」

「それで喜ぶの、貴方くらいのものだと思うわ」

 

 修行好きのイアンがそういうので、クルーヤは軽くツッコミを入れる。 若干、フィリスもイアンと同じ気持ちだったものの、あえて黙っていた。

 

「じゃあ次は、さっき手に入れた新しい地図の攻略にでも挑んでみる?」

「そうだな……」

 

 次の目的について話し合おうとしたとき。 4人に影がさした。 顔を上げてみるとそこにはいつの間にそこにいたのだろう、白く大きな翼を持った銀髪の天使の女性…ラヴィエルの姿があった。

 

「ラヴィエルさん?」

「また会えたな……フィリス……そして、人間たちよ」

 

 ラヴィエルは彼女達にそう声をかけてくる。 なにしにきた、とイアンが問いかけてみると、ラヴィエルは彼女達に確認をしにきたのだと答える。

 

「女神の祈りは徐々に完成に近づいているようだな」

「ああ、まぁな」

 

 彼女が確認したいのは、女神の祈りの完成度のようだ。 ラヴィエル曰く、宝石の完成はかなり近いようだ。 これはそう遠くない未来のことかもしれない、とつぶやくラヴィエルにたいし、フィリスは彼女と最初に出会ったときから抱いていた気持ちをそのまま打ち明ける。

 

「なぁ、ラヴィエルさん」

「なんだ」

「唐突にこんなこと聞くのはヘンだけどさ……あたしとあなた、どこかで会ったこと……ないか?」

 

 フィリスのその問いに対し、ラヴィエルは一瞬だけ目を見開いたがすぐに目を伏せて、首を横に振った。

 

「……いや、私と君はあの時が初対面だ」

「……そうか……」

 

 それをきき、フィリスは残念そうな顔をした。 自分が感じていた違和感のようなものは、気のせいだったのかと。 そんな彼女の表情をみたラヴィエルは、なにを思ったか口を開こうとした。

 

「……君は……ッ!?」

「どうしたんだ?」

 

 だがそのとき、ラヴィエルは何かの気配を感じ取り目つきを鋭くさせ遠くを見た。 突然の豹変にフィリスは驚きつつも、なにかあったのかと問いかける。 するとラヴィエルは自分の睨みつけている方向に向かって手を伸ばし、そこから流れる気配を探りながら淡々と語る。

 

「強い力の気配を、今は感じる……山脈に囲まれたところに存在する、かつて魔物により滅ぼされた村より、気配を感じる」

「魔物に滅ぼされていて、山に囲まれた村っていうと……」

「カズチャ村か!?」

 

 思い当たる場所を口に出すと、ラヴィエルは引き続き気配を探りつつ語り続けた。

 

「そして、大いなる草原の空は、深い闇のように暗い……このままでは、草原は業火に包まれるだろう」

「……!」

 

 ラヴィエルの言葉を聞き、フィリスの顔に焦りがでてきた。 その顔にたいしラヴィエルは、あの地にすむ人々と彼女達は親交があるのだと気付き、彼女に告げる。

 

「すぐに急ぐといい!」

「は、はい!」

 

 それだけを伝えると、ラヴィエルは天高く飛び去っていってしまった。 残された4人は、すぐにでもカルバド大草原へ向かうことを決める。

 

「カルバドの人々の安否が心配ですね……!」

「いそごう!」

 

 そう声を掛け合い、フィリスはルーラの魔法をつかった。

 

「今起こっている災厄をはらってくれ……頼む、フィリス……!」

 




次回はカルバド編。
私としては思い切った内容にしてますので、お楽しみに~。
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