是非、見守っててください。
というわけでまずは、前回の続きから。
カルバドを手に入れようとしていた魔物を退けたフィリス達は、その翌日には旅立とうとしていた。
「もう、大丈夫?」
「ああ」
旅立つ前、フィリス達は自分達が旅立った後のことを考え、ナムジンに確認をとった。 魔物の攻撃を受けとらわれていた彼はまだ包帯まみれではあったが、顔色もよく自分の足でたち、フィリス達と向かい合って話ができるようだった。
「私のけがが完治するのはまだ時間はかかるが……もうこの草原に脅威はない。 あとは我々の力だけで、乗り越えてみせるさ」
「そうか……けど、無理はしないでくれよ。 みんな、あなたを頼りにしているんだ。 途中で無理してくたばったら、その思いを無碍にしてしまうからな」
「はは……気をつけるよ」
フィリスの言葉に対し、ナムジンは苦笑して答えると、ふとあるものを思い出す。
「そうだ、フィリス」
「なに?」
「君が旅立つ前に、君にこれを渡しておきたいと思ったんだ。 受け取ってほしい」
そういってナムジンが彼女に手渡したのは、白い大きな羽がついた、髪をまとめるための紐だった。 それをみたフィリスは、自分のものであるとすぐに気付き目を丸くした。
「あれ!? これって……!」
「ポギーとシャルマナに頼んで、探してもらったんだ」
「そうだ……戦ってるときに解けたみたいで、なくしてたんだ……」
気付いたのは、集落についた後のことだった。 カズチャ村で落としただろうとは思ったが、あのままナムジンの元へ向かいそのまま寝落ちしてしまったから、探しにいけなかった。
「きっと、大事なものだったんだろう……君が旅立つ前に見つけられて、よかった」
そうナムジンがほほえむと、フィリスはすぐにその紐を受け取りそれで髪を結い、いつものポニーテールになった後で顔を上げて笑顔を浮かべる。
「……ありがとな! あなたが見つけてくれたことも含めて、この髪留めはこれからも大事にするよ!」
「そうか。 それなら嬉しい。 私もこれからも、君達の旅の無事を祈りながら、再会を心待ちにしよう」
「ああ、もちろんまたくるさ! あなたも、草原をしっかり守ってよ!」
「ああ」
そうしてカルバドの窮地を救ったフィリス達は、再び旅だったのであった。
「無事に草原も、みなさんも救えて一安心ですね」
「ああ」
草原を旅立った4人は、ヤハーン湿地を進んでいた。 先日手に入れたあの新しい地図の指し示している場所を探すためだ。 その途中で彼らはウドラーの群に襲われるもののそれを退けた。 やはり、彼らの敵ではなかったのである。
「なんでしょう、これ?」
「どうしたんだ、セルフィス?」
そんなとき、セルフィスはウドラーが消滅した場所に何かが落ちていることに気付いて、そこに歩いていく。 そこに落ちていたのは、木こりが使うようなありふれた斧だった。
「斧、ですね……おそらく、あのウドラーが持っていたのでしょう」
「ん? よくみれば、ヨサックって名前が彫ってある……武器に名前をかくなんて、その人は律儀だわ」
「ヨサック……確かエルシオンの先生に、そんな名前の人がいたはずだ」
「まじか?」
「ああ。 あの時はいたかどうかまでは覚えてねーけど……まだ現役ならエルシオン学園にいるんじゃねぇかな」
「そうなんだ。 じゃあ、これをそのヨサックて人のところに持って行こうぜ」
そうして4人の次の行動は、エルシオン学園へのお届け物に決まった。 ここのところ戦いの日々だったのでそれと比べると見劣りしがちではあるものの、そんな理由でこの道具を本人に届けることを放置したらダメだろう。 そう意気込み4人はエルマニオン雪原に足を踏み入れたが、その直後に吹雪に襲われる。
「って雪原に入ったとたんに吹雪に見舞われるって、ありかよ!!!」
「これは……き、厳しいですね! 急いで避難をしましょう!」
このままでは吹雪に飲まれてしまう。 そう思ったフィリス達は雪原を突き進みつつ避難できそうな場所を探した。 すると、視線の先に小屋のようなものを見つけてそちらへ一直線に突き進み、扉を開けて中に入る。 中には雪は進入していないようであり、フィリスは安堵しつつもあることを心配した。
「小屋を見つけてそのまま突っ込んで、入ったはいいけど……大丈夫か!?」
「あの状況じゃ仕方ないわよ。 空き家ならラッキーと思えばいいし、もしもう誰かが使っていたなら事情をはなせばいいわ」
「それもそうか……って、イアン?」
体についた雪を払いつつ、呆然としているイアンに気付いて、フィリスは声をかける。
「ここは……」
「イアン、どうしたんだ?」
その部屋全体をみていたイアンは、ここがどこなのか、その答えを口に出した。
「ここは……オレの実家だ」
「え?」
「とはいえ……おやじもお袋もオレのせいで死んだようなものだし、オレもここには2度と帰らないつもりでいたからな……。 事実上、今はここにすむ人間は誰もいないぜ」
「……」
一応家の主が目の前にいるなら、ここに他人である自分達が入っていることを許してくれるだろう。 だが、フィリス達は若干気まずい気持ちになってしまう。 なので、イアンにある提案をした。
「じゃあ、別の場所で野宿しない? ここだと……」
「……いや、ここで大丈夫だろう。 第一、今外にでるのはムチャだろ?」
「……そう、だな……」
「なぁーに、オレなら平気だ。 心配は無用だぜ」
そうイアンに言われ、4人は暖炉に当たって食事をとり、この家の中で吹雪がやむのを待つことになった。
「今日はここでゆっくりと休んで、明日こそエルシオン学園へ向かおうぜ」
「そうだな」
話はまとまり、フィリスは自分の荷物を確認した。 そのとき、彼女のはうっかり荷物袋からぽろりと、先日見つけた宝の地図を落としてしまう。 床に落ちた地図は、ぱらりと開いた。
「あ、地図」
うっかりしてた、とフィリスがその地図を拾おうとしたそのとき。 家全体が大きく揺れた。
「きゃあ!? なになに!?」
「大きな揺れですね!」
「まさか、さっき地図を落として開いた反動で、どっかに洞窟でもでたのか!?」
「誤作動でも発動するのかよ、メンドクセーな! つーかこんなに揺れるってことは、近くに洞窟でも現れたのか!?」
そう声を掛け合っていると、奥の部屋に階段が現れていることに気付く。
「こんなところに、階段が……まさか、地下室!?」
「はぁぁ!? 地下室なんて、オレもしらねーよ!?」
とりあえず、突然現れた階段を下ってみると、そこは洞窟のようになっていた。 その洞窟の特徴に心当たりがあるフィリスが、ある仮説を口に出す。
「……まさか……この家そのものが、宝の地図の洞窟ってことだったりするの!?」
「そんな、ばかなぁぁぁ!?」
自分の実家の新事実を聞かされて、イアンは絶叫する。 そんな彼にいつからいたのかはわからないが、サンディが彼の肩に手をおいてどんまいと声をかけていた。
「……とにかく、いくぞ」
「大丈夫、イアン?」
「おうよ」
闇の過去が詰まっている自分の実家が実は宝の地図の洞窟とつながっていた。 立て続けに起きたショックにイアンは動揺を隠せていないが、仲間達を不安にさせないように振る舞っているのだろう、そう返事をして武器を手に取り、洞窟の攻略に挑もうと声をかけた。
「早々に攻略をして、イアンさんを休ませましょう」
「ああ」
「ええ」
ああなればイアンは意地になろうとも、洞窟を攻略すると聞かないだろう。 彼は戦ったり鍛えたりすることでモヤモヤを吹き飛ばしてストレスを発散する習慣があり、今も宝の地図に潜む魔物を蹴散らしボスを打ち倒すことでこの複雑な気分から脱したいのだろう。
「イアンってホントにバトるのが好きだからな、それこそが鬱憤はらしになるんだろ」
「それ、アンタがいえた義理じゃないと思うんですケド」
イアンの実家の地下に現れた宝の地図の洞窟を攻略するフィリス一行。 そこは普通に土壁でできた洞窟のようであり、特に違和感は抱かず魔物と戦いながら奥へ進む。 だいぶ深いところまできたところで、セルフィスはある気配を感じ取る。
「この先に、とてつもなく強い力を感じます」
「ボスがいるのか?」
「間違いないでしょう」
「だったらさっさと、倒しちまおうぜ」
「そうね」
ここは早急に終わらせて、洞窟をでた方がいいだろう。 なのでここの攻略はいつもより早かった。 全員覚悟を決めて最奥部へ足を踏み入れると、そこには全身が赤に染まり甲冑を身に纏い、不気味な馬にまたがった騎士のような魔物がいた。
「なんだ、てめぇは?」
「我こそは、ブラッドナイト」
「ブラッドナイト?」
「多くのものの血をすい、生きる源とするもの……そして、新たな血をもとめ、戦うもの………」
ブラッドナイトはそう語り、ここにこの洞窟がある理由も説明し始めた。
「とくにここには、業の強き血が流れたところ……闇が深く、我が根付くにはちょうどいい」
「なに……!?」
「お前達の血も、我が糧としよう!」
なぜここにブラッドナイトの住まう洞窟が存在していたのか、あの宝の地図は偶然ではなかったのか。 すべてを理解したイアンは、ぎり、とはぎしりをたて武器を握りしめつつ敵をにらみつける。
「させるかよ……させてたまるかよ!」
「イアン」
そのイアンの様子からなにかを察したフィリス達もまた、戦うために身構える。 まずはクルーヤがメラゾーマを放ってブラッドナイトを攻撃するが、ブラッドナイトはそれをマジックバリアで軽減した。
「弱らせられちゃった!」
「けど炎系の魔法がきたとたんに軽減させたのは、おそらく弱点だったからでしょう! 炎の属性で攻めれば、落とせるかもしれません!」
「よし、そういうことなら話ははやいな!」
そう相手の弱点に気付いたフィリスはファイアフォースを使い、仲間達に炎の属性を与えた。 力を与えられたイアンは力をためてから棍の技・黄泉送りをくりだして、ブラッドナイトに大ダメージを与えた。 直後にブラッドナイトが槍を連続で突き出す技を繰り出してきたが、それはセルフィスのスクルトにより軽減され、隙をついたセルフィスは弓矢を連続で放って見せた。
「ハァッ!」
「ムンッ」
直後、イアンがブラッドナイトに飛びかかり拳をたたき込もうとしていたが、それをブラッドナイトは槍で防いだ。
「ほう……特にお前の血、この血で流れたものと同じだな……」
「だまれっ!!」
そう吐き捨ててイアンは蹴りを入れて槍をはじきつつ棍で攻撃を入れようとしたがそれよりもはやく、ブラッドナイトは槍を振るいイアンを吹っ飛ばす。
「うわぁ!!」
「イアン!」
イアンは壁にたたきつけられ、その衝撃で上から土が降ってきて体の一部が埋まる。 そのとき、ブラッドナイトはイアンに追撃を加えようとした。
「お前の血……もらうぞ!」
「クッ!」
早く脱出しなければ、とあがくイアンだったが、ブラッドナイトの攻撃がイアンに届くことはなかった。
「ぐぁっ……!」
「フィリス!!」
イアンをフィリスがかばったのだ。 フィリスは盾を使ったのだがブラッドナイトの攻撃により盾は砕け、フィリスの腕にその槍は刺さった。
「こ……ん、にゃろぉぉぉぉぉ!!」
しかしフィリスはそれしきではくじけず、ブラッドナイトの槍をつかんでぶんまわした。 それにはブラッドナイトも、悲鳴を上げる前に振り回され、落馬させられる。 それによりフィリスの腕から槍は離れ、血を流しながらも剣を握り、そこからギガスラッシュを放つ。
「ぐぁぁ!」
「決めてやれ、イアン!」
「うぉぉぉぉーーーっ!!」
イアンは自分の力をためながらブラッドナイトに突っ込んでいく。 そのときクルーヤはイアンにバイキルトをかけ、それを受けたイアンは技をブラッドナイトに向かって繰り出した。
「秘伝・黄泉送り」
技を食らわせた直後、イアンは静かにそう言った。 そして、ブラッドナイトはそれにより徐々に塵となっていく。
「……ァァァアアァァァァ………」
そして、ブラッドナイトは完全に消滅した。 そこから敵がいなくなったことで、イアンはふぅ、と息をつく。
「勝ったな」
「ああ」
「フィリスさん、腕を見せてください。 すぐにいやします」
「ああ、頼むぜセルフィス」
そう声をかけ、セルフィスはフィリスに回復魔法をかける。 彼のその魔法のおかげでフィリスの傷口はまたたく間に塞がり、再び楽に動かせるようになった。 そして、ブラッドナイトが倒れたところになにか盾のようなものが落ちていたので、それももらっていくことにする。
「さっきのトドメは最高だったぜ」
「なに、お前の馬鹿力のおかげだぜ」
そんな掛け合いをして勝利を喜ぶ4人だったが、直後に、洞窟全体が大きく揺れた。
「って、なんかまた揺れてない!?」
「えぇ!? まさか、ここのボスを倒して攻略したからか!?」
「今までそんなことなかったのに!?」
「とりあえず、脱出をしましょう!」
なぜここが突然揺れたのかまではわからない。 だが外にはでたほうがいい。 そう判断した一同はクルーヤのリレミトで外にでたが、背後の光景に思わず絶叫した。
「「「「わーーーーっ!?」」」」
自分たちは確かに洞窟の外にでた。 それはすなわち、イアンの実家の外にでることになったのだが、そのイアンの家はつぶれていた。
「イアンさんの実家が……ぺったんこになってしまってます……!」
「ああ、派手にやったからな……」
ブラッドナイト戦のことを思い出しイアンは苦笑しつつ、吹雪がやんでいるうちにエルシオン学園へ行こうと提案する。
「もう、帰らないから……これでいいんだよ……」
「イアン……」
と、つぶれた家にたいしイアンはそう答えたのだった。
幸いにも吹雪がやんでいたことで、フィリス達はそのままエルシオン学園に向かうことができた。 学園に入った4人は無事にヨサック先生を発見し斧を返すことができ、彼から吹雪より寒いダジャレを受けつつもお礼を言われたのだった。
「そうだ。 図書室の許可を借りて、そこで少し調べ物をしませんか?」
「調べ物?」
「ええ、以前ここを訪れた際……大きな図書室があるのに気付いたのです。 そこでなにか、宝の地図に関する手がかりを探してみたいと思ったのです」
「なるほどな……この学園にはあたし達に恩があることだし、ちょっと利用しちゃおうぜ」
ついでにヨサック先生の忘れ物のオノも届けた実績もある。 早速フィリス達はヨサック先生経由で学園長に会い、話をしたところ図書室を使う許可をもらうことができた。
「にしても、あのモザイオが生徒会長なんて……世の中なにがあるかわからねぇものだな」
「あいつは間に合ったからな」
そう、この学園で知り合った少年のことも話しつつ、4人は図書室で調べ物をしていた。
「ありました、宝の地図に関する伝承の話です」
「はやっ!?」
「だてに考古学者の義兄がいるわけではないので」
調べ初めてから数分後、セルフィスがあっさりと関係のありそうな本をみつけたので、フィリス達は一斉にツッコミをいれた。 セルフィスはにこやかに発見の報告をしていたが、すぐに真剣な面もちになる。
「とはいえ……それについての記載がされているというだけですが。 これが僕達のしていることと、どこまで深い関係があるかまではわかりません……ですがとりあえず、読んでみますね」
「まぁ、やってみないとはじまらないしな」
そう声を掛け合い、4人は席に着き本を開いて内容を読み始める。 その中には、確かに自分たちが探して集めている地図と合致している情報が書かれている文章があったが、本題はそちらではなく、ある人物とある存在の戦いの方だった。
「……古の大賢者はその地図に記されていた洞窟に、異世界から現れこの世界を壊滅させようとしていた破壊神を封印した……と、書かれていますね」
「大賢者って、お前に賢者の資格を与えた、あの本だよな?」
「ええ……一応こう、続きがあります。 ただ大賢者は、その封印を持続させるため、己の姿を本に変え……眠りについたと……」
大賢者は自分たちと会ったことがあるし、それは本の姿をしていて、話している様子なども眠そうなものだった。 この伝承が信実であるなら、あの地図には破壊神がいるということになる。 だが、今まで強力なボスにこそ遭遇しているものの、どれも破壊神と呼ぶにはピンとこないものがある。
「その破壊神の言い伝えと、オレ達が宝の地図を巡ること……なにか関係があるのかもな」
「地図を巡り、戦いの旅を続けていけば……いずれはたどり着いてしまうのでしょうか……その、破壊神に」
「………」
そして、沈黙が訪れる。 自分たちは既に、また新たな脅威に自ら、足を踏み入れてしまったのだと気付いたのだろう。
「なんか話、でっかくなってねーか?」
「うん、あたしもそう思う」
「私も右に同じよ」
「僕も異論はありません」
様々な経験をしてきた以上、こんな疑問を抱くのは今更だ。 そんな中、フィリスは一人、自分達が実際にそうなるのではないかと感じ取っていた。
「もしかしたら……本当に、あたし達で破壊神を倒すことになるんじゃないかって、思えてくる……。 それが、今あたし達が最終的にするべきことのような……そんな、気がする………」
そう、フィリスは女神の祈りが入った荷物袋に手を添えてつぶやいたのだった。
イアンの過去もちょっと出てきて、彼の心も少し変化がある話にしてみました。
そして、ちょっと今回のボスの話も出てきたり。
次回もこんな調子で話を進めます。