これがこの話の内容です。
「まぁ、今日もこの宿屋に立ち寄ってくださったんですね」
「え?」
ウォルロ村で無事に宝石を手に入れたことを、リッカに報告をしようとしていたフィリス達は、そこでロクサーヌに声をかけられた。
「あなたは確か、ロクサーヌさんですよね? 私達になにかご用ですか?」
「ええ……実はわたくし、折り入ってあなた達にお願いがありますの………」
「お願いってことは……依頼?」
ロクサーヌは頷くと、自分の依頼を口に出す。
「その……大変申し上げにくいのですが………実はリッカさまから、この宿屋の顧客リストなるものを、お借りしてほしいのです」
「え? 顧客リスト?」
「直接頼むのは無理なのか?」
「ええ……顧客リストというのは、この宿屋にとって……大事なものですから……むやみに他人に貸し借りしてはいけないものなんです……。 でもわたくしには必要で……。 ぶしつけなのは承知の上です、ですが……どうかフィリスさま、お願いします!」
関係がとくにないゆえに、顧客リストがどんなものなのか、説明されてもすべてを理解できない自分がそんなものを必要とするのは違和感がないだろうか。 そして、それほどに大事なものを、自分が借りることができなかった。
「あたしなんかで……いいのか?」
「フィリス様は……リッカ様がもっとも信頼しているお方ので、適役だとおもうのです」
それほどまでにフィリスは、リッカと信頼しあっている。 周囲はそう認知しているのだろう。 それは当人達も自覚があり、だからこそ大事なものを簡単に貸し借りできるものではないはず。 しかし、依頼とあれば断るわけにもいかないし、この人は意地でもきかせようとするはず。 そう思ったフィリスは悩みながらも………わかったよ………とだけ返事をして、ロクサーヌの依頼を受けることにした。
「え、顧客リストを……!?」
「あ、ああ……いろいろ気になることがあって…………ちょっとだけみせてくんねーか?」
「……フィリス……直球すぎ……」
そして、そのうやむやな気持ちをさっさとはらすために、フィリスはすぐにリッカの方へ向かい、顧客リストを見せてほしいと頼んだのである。
「突然そんなことを言い出すなんて……まぁ、フィリスなら悪用なんかはしないと思うけど…………」
「まじで、ごめんな?」
「いいよ。 それで、顧客リストなんだけど……それなら金庫番のレナさんが預かっているよ。 でも、顧客リストはこの宿屋の重要な情報が入ったものだから、少し見たらしっかり返してね?」
「……ああ、わかってる」
そう返事をしたフィリスはレナのところへ向かい、リッカの許可を得たから顧客リストを見せてほしいと頼んだ。 するとレナはすんなりと、その顧客リストをフィリスに貸し出した。 すぐに返すようにと言いつけて。
「これが顧客リストか……」
ごくり、と4人は緊張したように息をのむと、それをこっそりとロクサーヌのところへ持って行った。
「ロクサーヌさん」
「まぁ、フィリスさま」
「これ……」
ロクサーヌは周囲に気付かれないように、顧客リストをフィリスから受け取り内容を確認する。 その手際は、非常によい。
「まぁ、お客様ひとりひとりにたいする、もてなしの方法まっでかいてあるなんて……これはすごい資料ですわ……!」
「頼むから少しみるだけにしてくれよ……あたしだって、リッカをだましてるみたいで心苦しいんだからよ…………」
そうフィリスがお願いした、直後のことだった。
「おうおうおう! ジャマするぜー!」
「!?」
「何事でしょう!?」
突然男たちが宿屋に入り込んできたのだ。 大声で周囲をまくし立てるかのように入ってきたその男たちにたいし、リッカは眉間にしわを寄せた。
「おう、ねえちゃん! なんだその仏頂面は!? オレらは客だぞ!?」
「申し訳ありませんお客様、他のお客様のご迷惑になりますので…もう少し静かに……」
「あぁ? ここは客を差別するのかあぁ? へぇ~~~?」
「……そういうわけでは……」
「クッ! あいつら!」
リッカにたいしぶしつけな態度をとるその男達に腹を立てたフィリスが、威嚇のために剣を抜いて前にでようとしたそのときだった。
「リッカ様、申し訳ありません。 この人たちは……その……わたくしに御用があるようです」
「ろ、ロクサーヌさん?」
まさかの名乗りを上げた存在に、リッカは呆然とする。 ロクサーヌが男達のところに向かうと、男達は怪しげに笑い、彼女を連れてさっさと宿屋を出て行った。 抜きかけた剣を鞘に戻したフィリスは、リッカの安否が気になり彼女のところへ向かう。 リッカはフィリスに対し大丈夫、と返事をするとロクサーヌの身の安否を気にした。
「ど、どうしようフィリス!?」
「なにか怪しいわね……」
「ロクサーヌさんが心配だわ! お願い、ちょっと様子を見てきてくれる!?」
「ああ、もちろんだぜ! みんな!」
「わぁってる、とっとといくぞ!」
「ええ!」
「はい!」
「あいつらだ!」
ロクサーヌと男達を追跡するため宿屋を出たフィリス達は、すぐにその姿を発見した。 まずは物陰に隠れて、冷静にその様子をうかがう。
「オラ、さっさと出すもん出せや。 十分時間はやっただろ?」
「すいません………実はまだ……なにも……」
「なんだとぉ!? てめぇ、天下の宿六会をなめてんのか!?」
「一流の宿屋のノウハウを盗んで、そいつをオレらに流すのが、てめぇの仕事だろうが!」
男は2人でロクサーヌにつめより、なにかを求めているようだ。 最初はロクサーヌは口を割らなかったものの、男の一人が、彼女が後ろに隠しているものに気付いた。
「あっ! アニキ、この女、うしろになにか、かくしてますぜ!」
「なんだと!」
それに気付いた男は、ロクサーヌからそれを奪い取った。
「あ、それは……」
「ほーう、顧客リストか……なんだよ、仕事してんじゃねぇか」
「おっしゃ! 今日のところはこいつで許してやろうじゃねーか。 これからもさぼるんじゃねぇぞ」
「引き上げだ、いくぞオラァ!」
そう声を上げると、怪しい男達は早々に立ち去っていってしまった。 その場には、ロクサーヌだけが残されている。
「あいつら!」
「フィリスさん、今はロクサーヌさんの身の方が心配です」
「……わかってる!」
セルフィスに諭され、フィリス達はロクサーヌの方へと向かう。 フィリス達の姿を見たロクサーヌは、眉を下げながら口を開く。
「今の話………聞かれてしまったようですわね」
「ろ、ロクサーヌさん……」
「あのもの達が言っていたことはすべて真実………わたくしは、実はスパイなのです………」
「はっ?」
「いきなりぶっとんでんな……オイ……」
急激についていけない、と感じたイアンはそう呟いた。 そんなイアンよそに、ロクサーヌは事情を語り始める。
「あの宿六会という組織に……父を人質に取られ、ズルズルと仕事をさせられるハメになったのです。 これまで……あのもの達には手を貸すまいと誓っていたのですが……やはり、父のことが気がかりで………」
「んで、ついに顧客リストを出しちゃったわけか……ほぉー……」
「……その……お願いです、フィリス様……! 顧客リストを取り返してはくれませんか!? あの顧客リストが悪用されたら、リッカ様の大事なお客様に…ご迷惑がかかってしまいます!」
「そりゃあ、リッカからの大事な借り物だから取り返したいけど………ヤツらはいったいどこに………」
フィリスとしては、あの男達を野放しにするわけにもいかないので、ロクサーヌの依頼の延長戦として考えながら、宿六会をおうことにしたい。 そのためにも手がかりがほしいのだが、それにたいしロクサーヌは現実を伝えてくる。
「……宿六会はアジトを転々と移すナゾの組織で……彼らのアジトは、今はわかりません。 わたくしのような者ですら、人目のつかない地下アジトとしか聞いたことがないのです……」
「えぇ~~~!?」
「きっと、誰も寄りつかない地下洞窟や、井戸の中に彼らのアジトはあるのでしょう……」
手がかりは人目のつかない場所、ということしかわからない。 それを虱潰しに当たるだけになるだろうが、だからといってこのまま放置していいわけがない。
「……まぁ、まかせとけ! あいつらはあたし達がシバき倒してやるからよ!」
そう胸を張ってフィリスは、宿六会を追いかけることを告げた。 そこで、クルーヤはふとあることを思いつき彼女に告げた。
「そうだ、彼の手を借りてみたらどうかしら!」
「彼……そうだな、あいつの力が役に立つかも!」
そういった情報に詳しそうな人物に、心当たりがある。 フィリス達は迷わず、その人物の元へと向かった。
「…………んで、オレのところにきたっつぅわけか」
「そのとおり!」
フィリス達が助っ人として頼ったのは、カラコタ橋を拠点に活動をする盗賊団の頭・デュリオだった。 裏社会に生きる彼であれば、宿六会という怪しい連中のアジトの場所を知っているか、あるいは心当たりがあるか。 とにかく、なにか情報を持っているかもしれないと思ったのだ。
「まぁいいぜ、ちょうどお宝情報にいいモンがあるからよ。 手を貸してやる」
「ホントか!」
事情を聞いたデュリオは、フィリス達の協力要請を受けることにした。 タダではないものの、それは想定済みである。
「ただし、今回はこっちも生活がきついからな……報酬を山分けする場合、こっちが多めにもらわせていただくぜ」
「かまわねぇ。 オレ達はあいつに奪われたブツを取り戻すことさえできれば、それでいい」
そうして交渉は成立し、フィリス達はデュリオを加えて5人で行動をすることになった。 そして彼らはデュリオの案内の元、キメラのつばさを使いある場所へ向かった。
「ここって、グビアナ!?」
「ああ、この国の地下水道へつながる道の近辺で、宿六会のメンバーが出入りしてる……って情報があるんだ」
「……地下水道……」
そういえば、そんな場所があったし、自分達も足を踏み入れたな…と思いつつ、フィリス達はデュリオのいうとおり、その地下水道へ再び入っていった。
地下水道を進む一同。 そんなとき、フィリスはデュリオがこの情報を持っていたことを幸運に思っていたことを打ち明けた。
「それにしても……割とダメモトだったんだけど、まさかホントにあんたが宿六会の情報を持ってたなんて……ビックリしたぜ」
「偶然だけど、ラッキーだったな」
「…………怪しい組織の話は、特に多く聞いてるんだよ………集めているしな…………」
「……デュリオ……?」
曰くありげにそうつぶやいたデュリオが気になるクルーヤだったが、そこであのときの宿六会のメンバーの姿を発見した。 やはり奴らはここを根城にしていたようだ。
「あいつらっ……」
「……お前達がみたのは、あいつらで間違いないか?」
「ええ、顔はハッキリと覚えていますから……間違いありません……!」
まずは物陰に隠れて、様子をうかがう。 男達はなにかの紙の束をみて、腹を立てたようであり地面にそれをたたきつけていた。
「なんだよこの顧客リスト、デタラメだらけのニセモノじゃねぇか!」
「クソッあの女、なめたまねをしやがって……!」
「どうする、ボスに報告するか?」
「ああ……こうなりゃあ……あの宿屋を直接、ぶったたくしかねぇ……!」
そんな男達の話を聞いたフィリスは、ますます目つきを鋭くさせた。
「させるかよ……!」
「いくか!?」
「もちっ!」
そう声を掛け合いながら、フィリス達は一斉に姿を現した。
「うぉらぁぁーっ!!」
「ジャマすんぜぇ!」
「!?」
そうして姿を現した5人にたいし、男達は驚く。
「げ、こいつら……あの宿屋の、用心棒のようなやつらじゃ!?」
「御託はいらねぇんだよ……悪党が」
「悪いことはやめて、反省してください! そうしなければ、その身を滅ぼすことになります!」
イアンが低い声でにらみつけながらそう言うのに続いて、セルフィスが真剣な表情でそう訴えかける。
「ッケ、そんなちゃっちぃ説教で更正したら、宿六会なんてやってらんねぇぜ!」
「このまま捕まってたまるかよ!」
そう言い残し、彼らは立ち去っていった。 逃がしてたまるか、といわんばかりに彼らは追跡を開始するが、そこでデュリオが彼らの逃げていった道とは別の場所へ向かおうとする。
「あれ、こっちじゃねぇのか!?」
「ああ……いうやつの逃走パターンは、想定済みなんだよっ!」
そういってデュリオは走り出し、そんな彼の姿を見たフィリス達は顔を見合わせて頷き、彼の後に付いていく。
「ぼ、ボス……やばいッスよぉ……! アジトに足が着いちまいやした!」
「ば、バカ野郎……なんで、てめぇらこっちに逃げてくるんだ!」
宿六会は、逃げた先でボスと合流し自分達の居場所を知られたと報告していた。 ボスと呼ばれた男は、この場から今すぐにでも立ち去るべきだと判断して彼らを抜け道に誘導しようとする。
「イオナズンッ!」
「うぎゃぁ!?」
だがそこで、クルーヤが攻撃魔法を放ち彼らを驚かせる。 フィリス達が宿六会に追いついたのだ。
「降伏しなさい、さもないと吹っ飛ばすわよ!」
「クッ……誰がするかっ!!」
「おっと、やっぱ逃げるかぁ? 悪人ってホントにビビリだな……」
宿六会はさらに逃げようとしていた。 それも予想していたといわんばかりにデュリオが動きだそうとした、そのときだった。
「アナタがたの行動……わたくし、お見通しでございますわ…………」
「!?」
突然、女性の声がしたと思いきや、彼らの逃げ道をふさぐようにして、ロクサーヌが姿を現した。
「て…………てめぇは、ロ、ロクサーヌ!?」
「へ!?」
「まぁ……とても驚かれているご様子……。 わたくし、この光景を前々から……夢に見ておりましたのよ……」
「ろ、ロクサーヌさん……?」
「どういうことだ…………お前はワシらが雇ったスパイだろ! そこをどけい!」
「スパイ…………? うふふふふっ…………」
スパイと聞いて怪しげに笑うロクサーヌ。 そんな彼女に対しボスは、なにが可笑しいんだと怒鳴ると、ロクサーヌは怪しげな笑みを浮かべつつ自分の正体を打ち明ける。
「スパイというのは、仮初めの姿。 わたくし、本当は世界宿屋協会から匿名を受けた……エージェントですの。 ドン・ヤドロク様……アナタを捕まえるための……ね……!」
「「「「えぇぇっ!?」」」」
「な……な……!」
「チキショウ! 顧客リストがデタラメだったのも……そういうわけかっ!」
自分達の下で働いていたものが、実は自分達と敵対する組織の人間だった。 それを知った宿六会の面々は、悔しさで顔をゆがめている。 そんな彼らの前でロクサーヌは、フィリス達に笑いかけた。
「皆様、感謝しますわ。 アナタ方ならば、きっとたどり着けると信じておりました。 あなた方のおかげでこうして、ドン・ヤドロクを追いつめることができたのです」
「え、えぇ……?」
「さぁ、ドン・ヤドロク! ムダな抵抗はおやめになって、お縄におつきになってくださいなっ!」
今の状況に追いつけていないフィリス達が戸惑っていることを横目に、ロクサーヌはドン・ヤドロクをとらえようとしていた。
「ククク……そういわれて素直に従う悪党がいると思うか?」
「!?」
「さぁでてこい、宿六会の番犬! ギャングアニマルっ!」
そうドン・ヤドロクが声を上げると、洞窟の奥の方から巨大な、ヘルジャッカルのような魔物が現れた。 ギャングアニマル、と呼ばれたその魔物はフィリス達を敵だと認識すると、大きく吠えながら牙をむいた。
「今のうちに……」
「そうはさせませんわよっ!」
「うげ!?」
「彼らはわたくしが押さえつけておきます、あなたはあの魔物をぶっとばしてあげてくださいな!」
ドン・ヤドロクの逃げ道をふさぐために素早く動きながら、そう告げてくるロクサーヌ。 そんな彼女に対しフィリスは、覚悟を決めたように剣を抜き、構える。 目の前の魔物……ギャングアニマルと対峙をするために。
「ああもう! やるっきゃねーよっ!」
「デュリオ、お前はロクサーヌさんを援護してくれ! このバケモンはオレ達がやる!」
「え? あ、ああ! わかったぜ!」
今のロクサーヌの俊敏な動きをみたデュリオは、自分の援護が果たして必要なのかという疑問を抱きつつも、宿六会を逃がさないように立ち回ることにしたのであった。
「さて、さっさとケリをつけちまおうぜ!」
「ああ!」
そういってフィリスは相手の弱点属性のフォースを仲間達にわけあたえ、自分とイアンにバイキルトをかける。 イアンは自分のテンションをあげるために力をため、セルフィスが全員にスクルトをかけた。
「いっくわよ……マヒャデドス!」
クルーヤも、魔力を覚醒させてからのマヒャデドスを放ち、ギャングアニマルに大ダメージを与える。
「グガァァ!」
「おっとと!」
ギャングアニマルはイアンにとっしんを仕掛けてきたが、イアンはそれを楽々と回避した。 すると今度はフィリスに攻撃を仕掛けてきたので、フィリスはそれを盾で受け止めつつ、ギャングアニマルの足を切り裂く。
「ドルマドンッ!」
そこでセルフィスはドルマドンを放ち、ギャングアニマルの体制を崩す。
「……ぐげぇ」
「たあいもねぇな」
「貴様、なにもんだ………!?」
「なに、ただの盗賊さ」
縄で宿六会の下っ端を縛り付けるデュリオ。 その一方でフィリス達は、一斉にギャングアニマルにたたみかける体制に入っていた。
「みんな……一気にやるぞ」
「おう」
そして、4人は一斉に力を解き放つ。
「ギガスラッシュ!」
「氷結らんげき!」
「ドルマドン!」
「マヒャデドス!」
4人が全員で同時に、大技を放つと、その力に飲まれたギャングアニマルは断末魔をあげて崩れ落ち、息絶えた。
「な……ば………かな……ギャング、アニマルが…………!」
「これで終わりですわよ、ドン・ヤドロク」
そういってロクサーヌは素早くドン・ヤドロクの首を打ち、気絶させ、彼を縄で縛り付ける。 そして、戦いが終わったのを確認したデュリオが、フィリス達に声をかけてきた。
「………おわったみてぇだな」
「ああ。 あれくらいなら、あたしらの敵じゃねぇしな」
「お見事ですわ、フィリス様!」
デュリオに返事をするフィリスの後ろで、ロクサーヌが満面の笑顔で賞賛の言葉をかけてきた。 それにたいしフィリス達は苦笑していたものの、すぐにあることを思い出しそのことをロクサーヌに問いかける。
「そうだ、ロクサーヌさん……顧客リストは!?」
「それならば心配はいりません。 彼らに渡したのは偽物……本物はちゃんと、わたくしが保管しています。 こうしてドン・ヤドロクを無事にとらえたことで、漏洩する心配がなくなった……だから、これからリッカ様にお返ししますわ」
「そ、それならよかった」
今回フィリス達が宿六会を追っていたのは、リッカから預かった顧客リストを取り戻すためだ。 それが無事だとわかり、まずは安心する。 その後、駆けつけた世界宿屋協会の手により、宿六会は連行されていった。 彼らは今後は、グビアナの地下牢で囚人として、過ごすようだ。
「……何度も身分を偽り、また嘘をついていたことは、謝りますわ。 でもこうでもしないと、宿六会のアジトは見つけられませんでしたから……。 これは、フィリス様達が相応の力を持っていると確信したから、あなた方を頼ることにしたんですのよ」
「じゃあ、宿六会にいたのは父親のことがあったからじゃないということか?」
「ええ、すべてはあのドン・ヤドロクを捕まえるための、真っ赤なウソですわ」
「あたし達に……顧客リストを持ってきてほしいといったことは……」
「あなた方を、その気にさせるための作戦の一つですわ」
今回の依頼について、ロクサーヌはそう冷静に説明をする。
「わたくし一人だけのチカラではドン・ヤドロクを捕まえるのは不可能に近い……そう判断したわたくしは、世界を旅する優秀な冒険家であり、腕も立つフィリス様達にどうしても、協力をあおぎたかったのです」
「………」
「今までの非礼をわびると同時に、協力に感謝いたしますわ。 これで、わたくしの肩の荷もおり……宿屋グランプリも無事に開催されることでしょう!」
そういってロクサーヌはフィリス達に満面の笑顔を向けると、先に帰っていますわとだけ言い残して立ち去っていってしまった。 残されたフィリス達は、ただ呆然としていた。
「……なんだ、コレ……?」
「……さぁ……」
「……事件解決、でいいのかな……」
「……多分……」
そんな4人の心中を察したデュリオは、苦笑した。
「……なんつーか、お前達も……あの依頼人のねーちゃんの手の上で転がされてた、ということだな……」
「……そんな率直に言わないでくれ……」
「………ま、どんまい……」
そこで、フィリスはふとロクサーヌが別れ際に自分達にお礼として報酬金がでると言っていたことを思いだし、それをデュリオにあげることにする。
「そうだ。 あとでロクサーヌさんから謝礼金がでるみたいだけど……それの大半をデュリオにやるよ」
「え、約束とはいえ……ホントにいいのか?」
「ああ、問題ねーぜ。 カネだったら、あたしらはそこそこあれば大丈夫だしな。 むしろ、今回の件に巻き込んじゃったわびも入ってるし……」
「そこは気にするな、オレにとっても衝撃のオチだし」
「オチとか言わないでよ」
そう報酬の山分けについて話し合ったフィリス達は地下水道をでて、そこでデュリオと別れることになった。
「……もしもまた、そっちで困ったことがあったら、今度はあたし達が力になるからな」
「………そうか、まぁそんときは世話になるぜ。 じゃ、謝礼金を待ってるからな」
「ああ!」
そうしてデュリオはカラコタ橋に向かってキメラの翼を投げて帰って行き、フィリス達もルーラの魔法でセントシュタインに帰って行ったのであった。
DQ9はメイン4人でしっかりとメンバーが固定されちゃって、ほかのキャラをパーティーに入れる発想がないんですよね。
そんなことを作者はおもいつつ、更新を続けるのでした。