ドラゴンクエスト9 AngelsTale2   作:彩波風衣

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セントシュタインのストクエの続きをお届けです。


07「謎の古文書」

 

 今回の依頼主であるロクサーヌの正体を知り、彼女宿六会という謎の組織を捕らえたフィリス達。 セントシュタインの宿屋に帰ってきたフィリス達はロクサーヌに改めて礼を言われた。 ちなみに今回の依頼に利用された本物の顧客リストは、この宿屋に無事に戻ってきている。

 

「フィリス様達のおかげで、無事に宿六会の面々をとらえることができました……改めて、お礼を言わせていただきますわ。 わたくしはあなた方を信じていましたこと……それは決してウソではありませんので、ご安心くださいませ。 今後も、このロクサーヌ……世界宿屋協会のエージェントとして、リッカ様のこの宿屋を繁栄させ、守り通して見せますわ」

 

 ロクサーヌからそう言葉をかけてもらい、今回のお礼として、なにかの地図と報酬金をたんまりともらったフィリス達は、自分達がもらうぶんと、今回の任務の協力者であるデュリオに渡す分を分けていた。

 

「……じゃあ、こっちがデュリオにあげる分でいいわね」

「ああ、早速カラコタ橋に……」

 

 その分け前を持って行こうと、宿屋をでたときだった。

 

「あ、フィリス殿! この国にいらっしゃったのですね!」

「へっ!?」

「あなたは、確か……セントシュタイン城の兵士、ですよね?」

「はい!」

 

 声をかけてきたのは、城の警備をしている兵士だった。 もしやまた、自分達に話があるのだろうかと問いかけると、兵士は頷き、彼女達への依頼主の話をしてきた。

 

「今回はフィオーネ姫様から、あなた方に依頼がございます」

「姫様から?」

「ええ……城のものには話は通しています故、すぐにでもフィオーネ姫様のお部屋へいらしてください。 依頼の内容は、姫様が直々にしてくださいます」

「そうなのか」

「そうなのです! では、私は確かに伝えたので……失礼します!」

 

 そう彼女達に告げた兵士はさっさと城へと帰還し、残されたフィリス達は、どうするかを話し合う。

 

「どうするもこうするも………姫様の依頼なら、断れねぇな」

「だな」

「………しょうがないわね、デュリオにはもう少し待っていてもらいましょ。 それで、今回の依頼が終わったらすぐにでも、届ければいいわ」

「そうするしかないですね」

 

 そうして彼らはまず、フィオーネ姫の依頼をきき解決するため、セントシュタイン城へ入っていくのであった。 姫の部屋は以前に行ったことがあるので迷うことなくそこへ向かうことができた。

 

「みなさま、お待ちしていましたわ」

「フィオーネ姫様!」

 

 部屋にはいると、フィオーネ姫は微笑みかけながら4人を迎え入れたのであった。

 

 

 どうぞ楽にしてください、と言われたものの、やはり一国の姫君相手では顔見知りであったとしても緊張してしまうものだ。 フィリス達はその緊張感を抱えつつも、本題に入っていく。

 

「ところで、姫様。 あたし達に依頼ってなんですか?」

「ええ……実は……」

 

 そういってフィオーネ姫が取り出したのは、厳重に鍵のかかった、少し古い本だった。

 

「本?」

「この本は、かつてこのセントシュタイン城の図書室に、保管されていたものです。 それはある日、従者によって盗まれたのですが……先日、当時の行いを反省し、自供して……この本を返却してきたのです」

「それドロボーじゃないっすか」

「ええ、そうですね。 しかし特に誰も気にとめなかったものであり、また本人も反省し返してくれたので、お咎めなしにしたんです」

「器でかっ」

 

 いくら反省していて盗んだものが対したことがないとはいえ、泥棒であることは変わらない。 盗んだものが存在していたのは王城であればなおさら、許されることであることではない。 だがその従者をすんなり許してしまうのは、この国の器は並のものではないだろう。

 

「………ただ……その方は、これと一緒にあった本のカギを、紛失してしまったようなのです」

「ダメじゃん!」

「そうなのです……。 しかし、私自身も、この本の中身が気になって………。 なので、フィリス様達への依頼は……この本のカギを探してほしいというものです……」

 

 本のカギを探してくれ、という依頼。 捜し物というジャンルでわけることはできるが、如何せん情報が少ないので、4人とも困った顔になる。

 

「でも……本のカギったって……なんの手がかりもなしは、キツイぜ」

「そのことなのですが……本を返しにきた方は、どこで無くしたのか、その記憶を伝えてくれました」

「本当に?」

「はい。 その方が言うには、花が多く咲く地に隠された洞窟の中で、一瞬この本を捨てようか……躊躇っていたそうです。 もしかしたらそこにあるかも……とおっしゃっていました」

「「「「……………………」」」」

 

 その話を聞き、4人は黙り込んでしまった。 それを手がかりにしていいものか、という迷いがでたようだ。 そんな彼らの表情から、この依頼の難しさを感じ取ったフィオーネ姫は眉を下げる。 フィリス達もフィオーネ姫の表情にきづいたのか、あわて出す。

 

「まぁ、な、なんとかしますよ! このまま本が開かないで書かれていることがわかんないままってのも、モヤモヤしちゃいますしね!」

「そうですね!」

「というわけで、今回のこの依頼、引き受けますよっ!」

「……申し訳ありません……どうか、お願いします!」

「任せてくだせぇ!」

 

 そうしてフィオーネ姫の依頼を引き受けることにしたフィリス達は、カギを探すため一旦セントシュタイン城をあとにした。 花が有名な町とその周囲という情報には心当たりがあるものの、そこに隠された洞窟があるという情報は初耳だ。

 

「……ひょっとして、例の地図……なのでしょうか?」

「そうかも……って、ちょっと待って?」

「どうしたんだ、クルーヤ?」

 

 そこでふと、クルーヤがあることに気付いて、ふくろからある地図を取り出した。 それは、今朝ロクサーヌが自分達にくれたあの地図だった。

 

「さっきロクサーヌさんからお礼の証としてもらった、この地図……」

「……まさか……」

 

 続けて、イアンが世界地図を取り出して、小さな地図と照らし合わせる。

 

「やっぱり………ほら、見てみろよ」

「確かに……サンマロウ近辺に、この地図と似た地形がありますね」

「ということは!」

「多分、この地図のポイントにある洞窟へ向かえば、なにかわかるはず……!」

 

 だが、これはハッキリ言ってカケだ。 この場所に本のカギがあるとは限らない。 だが、今はそれ以外の手がかりはない。

 

「ええい、当たって砕けろだ! いくぜやろうどもぉ!」

「ちょっと、女の子もいるんだからねー!」

 

 フィリスの掛け声に対しクルーヤがそうツッコミを入れる。 そんなやりとりをしつつも、サンマロウを目指すために天の箱船を呼んだ。

 

「ほぉ、サンマロウにな……」

「そこに、姫様の探してるカギがあるかもしれない……ってハナシなわけ?」

「そうそう」

 

 そうアギロやサンディに事情を説明し、天の箱船をサンマロウに向かって動かした。 そうして連れて行ってもらった先は、サンマロウ手前の、花が咲き乱れる道、その道中。 そこに着地した一同は、地図の場所に向かって歩き出し、そのポイントで穴を掘ってみる。

 

「うわ!」

「ホントに洞窟があったー!」

 

 あの宝の地図のポイントには、確かに洞窟が存在していた。 リッカの持っていた地図を手がかりに探していて、発見したときと同じだ。 ということはこの洞窟の中にはあの時のように、強力な魔物が多く潜んでいる可能性が高い。

 

「入ってみましょう、どんな魔物がでるかわからないから……用心しながら………」

「わかってる」

「絶対に攻略して、カギも見つけちゃいましょ」

「おう、絶対にあると……信じようぜ」

 

 そう4人は覚悟を決めたかのように、洞窟に足を踏み入れたのであった。

 

「大丈夫かなぁ?」

「あいつらなら、心配ねぇだろ」

 

 アギロとサンディは、洞窟にはいっていった4人を見送った。

 

 

 そして、約2時間後。

 

「あっちゅーまに帰ってきてやったぞ!」

「はやっ!?」

 

 すぐに地図の洞窟を攻略して戻ってきたフィリスに、サンディがツッコミをいれる。 彼らは洞窟のもっとも深い場所まで進み、隅々まで目的のカギを探していた。 そうして一番深いところにいた、ハヌマーンという魔物を倒して、戻ってきたのである。

 

「お疲れさん。 んで、例のカギってのは見つかったのか?」

「うーん……一応」

 

 そう言ってフィリス達は、洞窟の奥で発見したカギを取り出してアギロやサンディに見せた。

 

「カギらしいカギは、これしかなかったけど」

「でも、作りや色から感じ取られる年季からして、あの本のものである可能性がきわめて高いと思われます」

「そうなのか?」

「ええ……とはいえ、根拠はないですが……」

 

 セルフィスの実家には多くの古文書や歴史の資料がある。 彼も、そういうものを多く見ていたために、自然と詳しくなったのだろう。 発見したカギは、例の本のものと推測できたのも、それが理由だ。

 

「とりあえず、それで開くかどうか試してみないとはじまらねぇし……このまま姫様のところへ戻って、実際にやってみようぜ」

「そうだな」

 

 ものは試し、といわんばかりに4人はカギを手に頷きあい、アギロに呼びかける。

 

「というわけでアギロの旦那、セントシュタイン城に向かってくれ!」

「おう!」

「……つーかルーラつかいなよ……」

 

 フィリス達の言葉に応じて動き出した天の箱船の中で、再び、サンディがツッコミを入れる。 そんなサンディのツッコミを聞き流しつつ、フィリス達はセントシュタインに帰還し、城に入ってフィオーネ姫の元へ向かった。

 

「まぁ……フィリス様……そして皆様………! ご無事だったのですね!」

「えっへへ!」

 

 まずは自分達を心配していたというフィオーネ姫に、無事を伝える。 彼女達の帰還や表情から、無事であることを確認したフィオーネ姫は、安堵の笑みを浮かべた。

 

「それが、この本のカギでしょうか?」

「とりあえず、あたし達が発見できたのはそれだけです」

 

 そうしてフィリス達は、フィオーネ姫に例のカギを見せた。

 

「とりあえず、鍵穴に刺してみますね」

「うん、お願いします」

 

 カギを受け取ったフィオーネ姫は、鍵穴にカギをさして回す。 するとカチャリと音が鳴り、表紙を開いてみればあっさりとあいた。

 

「開きましたわ!」

「やった、大正解!」

「さっすが、セルフィスだぜ!」

「そ、そうでしょうか?」

 

 今回の依頼は大成功だと確信した一同は喜び、とくにこのカギが本物であると見抜いたセルフィスをほめる。 そんなフィリス達にフィオーネ姫はありがとうございます、と満面の笑顔でお礼を言う。 そして、視線を本に戻す。

 

「では、早速読んでみますね………」

 

 フィオーネ姫が真剣な表情でそう告げると、フィリス達も息をのみながら頷く。 こうなったら、カギを掛けるほど厳重に封じられているその本の中身が気になって気になって仕方ない。 ここまでやったのだったら、その中身をしっかり確認しなければ気が済まない。 フィオーネ姫は、フィリス達の気持ちを背負いながら、本を開いて内容に目を通した。

 

「こ………これは………!」

「どうなさったんですか!?」

 

 内容に目を通し黙読していたフィオーネ姫は、徐々に目を丸くさせていった。 驚きと戸惑いが混じった声を出しながら、顔を青ざめさせていった。

 

「あぁ……」

「わ! ひ、姫様ー!?」

 

 そして、彼女はそのまま倒れてしまった。 突然倒れた姫に対し慌てる一同。 そこに、この城のメイドが数名駆け込んできた。

 

「姫様!」

「フィオーネ姫様、どうなさったのです!!?」

 

 メイド達が呼びかけても、フィオーネ姫はぐったりとしていて意識が戻る気配はない。 気を失っているだけだとは思うが、それでも突然のことだったので慌ててしまう。 そんなフィリス達に気付いたのか、一人のメイドが声をかけてきた。

 

「申し訳ありません、フィリス様。 フィオーネ姫様はお疲れのようです……」

「今日は、もうお帰りくださいませ」

「わ………わかった……じゃ、あとはお願いするよ………」

「失礼します……」

 

 そう言葉を交わして、4人は早々に部屋を出ていき、そのまま城を出ていった。 今フィリス達は、フィオーネ姫の容態を気にしている。

 

「………どうしちゃったのかしら、姫様………」

「………わかんねぇ……突然のことだったからな………」

「あの古文書に、謎が隠れてるとは思うのですが………王城に入れない以上、確認はとれませんね」

「とりあえず………姫さんの調子が戻るのを、待つしかねーな」

「ああ」

 

 そう話をするなかで、イアンはあの状況で内心思っていたことを口にする。

 

「………にしても、オレ達に疑いの目がかからなかったのが、不幸中の幸いだよな………」

「そういえば、そうですね」

「あたし達、なんとかあの国の信頼を得ている……ということで、いいんだよな?」

「ええ、それでいいと思うわよ」

 

 とりあえず今はフィオーネ姫の体調が戻ることを祈りながら待つしかないだろう。 慌てず冷静に状況を見て、今できることをやるべきだ。 そう決めたときフィリスは、あることを思い出した。

 

「あ、そうだ」

 

 このあと、フィリス達はカラコタ橋へルーラで向かい、デュリオに依頼の報酬金の山分け分を渡したのであった。 デュリオは報酬金を受け取ると、またなにかあったら力を貸してくれとだけ伝えてきた。

 

 

 そして、翌日。 セントシュタインの宿屋で休んでいたフィリス達の元に、フィオーネ姫が目を覚ましたという話が舞い込んできたので、彼女達は迷わず城へ向かいフィオーネ姫と謁見した。

 

「フィオーネ姫様!」

「フィリス様」

 

 そこには、昨日と変わらない姿の姫がいた。 ただ、その顔はフィリス達に心配をかけたことによる、申し訳なさに染まっていた。

 

「皆様も……昨日は申し訳ありませんでした……突然倒れたりなんかして………」

「あ……ああ………ビックリしましたよ。 今は、平気ですか?」

「はい、もう大丈夫です」

 

 本当はまだ本調子ではないだろうと、フィリス達は思っていた。 今日こうして目を覚ましたと聞いて会いに来たのも、お見舞いのような感覚である。 だが今そこにいるフィオーネ姫は、いつもの姿であった。

 

「ところで、姫様。 昨日のあの本は……いったい……」

 

 そこでフィリス達が気になったのは、フィオーネ姫が失神をするほどのものが書かれているであろうあの本のことであった。 いったいなにが書かれていたのだろうか。 そのことを問いかけようとしたとき、フィオーネ姫は首を横に振った。

 

「…………申し訳ありません、フィリス様。 あの古文書の内容のことは……今はなにもいわないでくださいまし………」

「ひ、姫様?」

「カギを見つけてくださったお礼と、昨日心配かけたお詫びとして……物足りないかもしれませんが……これを差し上げますわ」

 

 そう言ってフィオーネ姫は、あの宝石のカケラを取り出した。 それをみたフィリス達は、驚く。

 

「ほ、宝石のカケラ!?」

「まさか、姫様もこれを持っていただなんて………!」

 

 そしてフィオーネ姫も、この宝石を知っているらしい彼らのリアクションが意外だったようだ。 首を傾げている。

 

「どうかなさったんですか?」

「あ、いや………ちょうどあたし達もこういうの集めてたから……偶然が重なってたことに、ビックリしたってだけです」

「まぁ、そうでしたの」

 

 とりあえず、これで3個目の宝石のカケラということになる。 この宝石のカケラも、地道に集まっているのだ。 今回はこれで話をいったん切り上げた方がいいだろうと思い、フィリスが彼女に持ちかける。

 

「……あなたのこと。 大丈夫なら、いいんです。 だけどまたなにかあったら、あたしらに迷わずいってくださいよ?」

「はい」

「というわけで、今回の依頼は、達成したことだし……あたし達は失礼しますねっ」

 

 そうして、フィオーネ姫の依頼は完遂したことにし、彼女から受け取った例の宝石のかけらを手にして城をあとにしたのであった。 もしまた異変が生じたり、話す気になったら正直に話すことを約束させて。

 

「……ごめんなさい……フィリス様……私も、あの本の内容について……頭の整理がまだ追いついていないのです………。 真実がわかれば……そして、その証拠が見つかれば………必ず、打ち明けると約束しますわ………」

 

 自室で一人になったフィオーネ姫は、例の本を手に、呟いた。 そこに、彼女達に対する謝罪を口にしながら。

 

「それまで、隠し事をしてしまうことを……そして、巻き込んでしまうことを……どうか、お許しくださいまし…………」

 

 そして、その先にあるものにたいし、また彼女らの力が必要になるであろうことを、姫は予測していた。 その渦にたいする個人の思いを胸に秘め、フィオーネ姫は表情を曇らせたのであった。

 

 




このストクエの真相が明らかになるのは、もう少し先です。
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