THE IDOLM@STER The Story of Admiral Lescher 作:アレクサンデル・G・ゴリアス上級大将
アメリカの統合軍の一つたる欧州軍(USEUCOM)の現在の司令官たるスカパロッティ陸軍大将には借りが一つあるらしい。
「レッシャー元帥は多くのことができた。
カードゲームもできたし、ダンスも、ギターも、トランペットも、ピアノも、ダーツも、スキーも、チェスも、囲碁も、スケートも、FPSも、釣りも、アイドルも、そして一流の楽団の指揮者までもこなした。
何をしても一流の寸前までいける男だった。だが、多芸多才に甘んじ真の一流にまで上れたのはエースパイロットとしての生きざまだけであった。逆に言えば、それ以外何一つとして一流にまでの昇華を成し遂げることはなかった。軍人としても私人としても頂点に立つことはなかった。軍人としてであればインド太平洋軍司令官止まりであった。アメリカ海軍トップの作戦部長にも、アメリカ全軍トップの統合参謀本部議長にもならなかった。私人としてもレッシャー·グループのCOO止まりでこれ以上上には上がらなかったし、346プロでもシンデレラプロジェクト担当プロデューサー以上にも以下にもならなかった。
彼は生前、私達にこう語ってくれた。
『私はベス(ローレン元大統領のこと)の下で良い。最高責任者なんて野暮なものだ。そうだな···私は、何時でも上手なアマチュアでいたいのだ。』と。
彼はアナポリス海軍兵学校を卒業した際次席だった。そして彼の前にはいつも盟友エリザベス·ローレンがいた。トップにまで昇れない自分と、常に自分の前で輝き続けたローレン元大統領を比較し、その複雑な心理をジョークに代えることで、盟友に向ける負の感情を洗い流そうとしていたのかもしれない。」
2039年出版 多田李衣菜·前川みく 共著
『レッシャー提督の物語 解説』
第4章「何でもできた万能アイドル、レッシャー元帥」 より出典
Admiral William Lesher. Ich freue mich sehr, Sie einzuladen, das Neujahrskonzert im nächsten Jahr zu dirigieren. Ursprünglich hatten wir geplant, Ozawa einzuladen, um unter seiner Leitung aufzutreten, aber aus gesundheitlichen Gründen hat er Sie als seinen Ersatz vorgeschlagen. Als letzter Schüler des geliebten Karajan und als echter Anhänger seines Stils ist es mir eine Ehre, Sie einzuladen. Ich hoffe, Sie nehmen es an.
Wiener Philharmoniker
2016年10月4日
池袋 第8艦隊司令部 庁舎5階 艦隊顧問執務室
「···何故よりによって私なのだ···。」
「ウィル?」
「チハヤ。名誉なことだがとんでもない仕事の依頼だ。ウィーン·フィルハーモニー管弦楽団が 来年の新年コンサートの指揮者に私を指名してきた。」
「!?」
「公にされていないことだが、私はお前の大好きな伝説の指揮者カラヤン先生の最後の弟子なのだ。それに何よりウィーン·フィルハーモニー管弦楽団の古参連中は当然幼い頃の私のことをよく知っている。だからこういう形で推薦してきたのだろう。そもそも小澤さんがやればよかったのになぜ私に押し付けたのか··『健康上の理由』とか絶対に嘘だろう···。」
「···指揮者は脊椎に負担がかかります。私としてはあまりやって欲しくは無いのですが···。」
「私は生涯において三つだけは最低限誇りを持って生きてこれた。一つは生涯一度たりとて虫歯にかからなかったこと。二つ目は約束を一度たりとて違えなかったこと。 三つ目は誇り高き合衆国海軍の
「···無理はしないで下さい。最近ウィルは働き詰めですから。」
「···そうだな。どうせならローマで第8艦隊の新年路上ライブでもやるか。で同時に新年休暇も入れよう。
「わかった。」
「···なるほど。年末に第8艦隊の業務の一環で欧州軍(アメリカの統合軍。ヨーロッパを担当)の紹介とサイレンサーでベーコンを焼くネタ動画の撮影。シンデレラプロジェクトの一環でローマのスペイン階段で路上ライブ。お年始は君の仕事でウィーン·フィルハーモニー管弦楽団の指揮者を新年にやる。なるほど、わかった。必要なものはこちらで手配しておくよ。」
「助かる。私のプライベートジェットでは流石に第8艦隊将兵全員を運べないからな。」
「まあ、
「ローマと欧州軍司令部には私から交渉しておく。銃とサイレンサーはキョウコに用意させる。問題は警備だな。もし戦闘が発生しても、戦えるのは私とミホ、キョウコ、765プロダクションのプリンストン少佐だけだからな。」
「欧州軍司令部に護衛を供出して貰えないか聞いてみたらどうかな?」
「···欧州軍司令部にあまり借りを作りたくないが···やむを得ん。その線でいくか。」
スカパロッティは元気にしているかな···アイツは私の"家族"の中では飛び抜けてお転婆な奴だったからな。心配になる···
第8艦隊司令部 庁舎3階 大会議室
「諸君、私にとんでもない仕事が入ってきた。」
「具体的にはどのようなお仕事が?」
「次の仕事はオーストリアの首都ウィーンだ。ウィーン·フィルハーモニー管弦楽団の来年の新年コンサート指揮者の打診が来た。」
「提督さんは指揮者もできるのかしら?」
「カナデさん。私はかの"楽壇の帝王"ヘルベルト·フォン·カラヤンの最後の弟子でした。小澤さんには及ぶべくもないが、それなりに指揮はできます。"万能なアイドル"を名乗っているのですから、それくらいのことはできませんと。」
「いや万能過ぎて草。」
「本題はここからだ。先ほど
「「「「?」」」」
「君たちの昨今の活躍と私に対する貢献、そしてクラシックを嗜んでいることを鑑みて、君たちに尋ねる。私に何を指揮させたい?」
「私達が言えば
「そうだ···とは言えんがなるべく要望には応える。」
「私は相棒の『ボレロ』を聞いてみたいな。」
「『ボレロ』?相棒、私を試すつもりだな?よかろう。試されてやる。」リストに記入する
「···ウィルは『運命』は指揮できますか?」
「当然だ。カラヤン先生から散々しごかれたからな。」記入
「まゆはレッシャーさんの『新世界より』第4楽章を聞いてみたいです。」
「···私の大好物だ。マユ、任せておけ。」記入
「私は『さまよえるオランダ人』序曲を聞いてみたいですね。」
「また変なものを指定してきたなミナミ。よかろう。あまり得意ではないが、やってみせよう。」記入
「相棒。」
「どうしたの?」
「明後日愛知の衣浦に出かけるんだが、暇だっただろう?一緒に来ないか?」
「他の皆は?」
「珍しく君以外は何かしら仕事がある。
「なるほどね。愛知に何しに行くの?」
「魚を仕入れてくる。皆に私が目利きした新鮮な魚で美味しい料理を作ってやろうと思ってな。衣浦は地味だが美しい港町だ。些か雅さに欠ける上日帰りになるが新婚旅行代わりにと思ってな。」
「···時間があれば相棒の故郷に行きたかったな。」
「遅かれ早かれ連れていく。安心しろ。」
「楽しみにしてるよ···そういえば相棒。」
「?」
「悠貴と美波が···まあ私もだけど疑問に思ったことがあってさ。」
「なんだ?」
「何で奏さん、川島さん、楓さんだけには敬語な上にずっとさん付けなの?」
「あぁそのことか···理由は簡単だ。あの3人が亡き母にそっくりだからだ。」
「どこか似てるの?あまり共通点はなさそうだけど···?」
「性格や趣味の話ではない。あの3人には貫禄がある。覇気と言うべきかな。独特な何かがある。それがあまりに亡き母タヤにそっくりだ。我が家では私は母に絶対服従だった。逆らうことは許されない。母の恐怖は今も身体が覚えている。だから私はあの3人には逆らえない。逆らうことを身体が拒否しているのだ。」
「···その事は3人には言わない方が良いよ?川島さんはともかく残りの二人はそれ知ったら調子に乗る可能性あるから。」
「···そうだな···相棒。」
「?」
「ありがとう。」頬にキス
「···ふふ。どういたしまして。」
ベスや他の相棒とはついぞ育めなかった愛をやっと手に入れた。
「本日付けでレッシャー准将の副官を仰せつかりましたフレデリカ·"マーリン"·マテウス大尉であります!よろしくお願い致します閣下!」敬礼
「ご苦労。よろしく頼む。」答礼
「はい!」
「···あまりこのようなことは聞きたくないが、君のアナポリスでの卒業席次は何番であったか?」
「いや···その···小官は···下から数えた方が明らかに早い席次でして···その···。」
「···そうだろうな。マテウス大尉。率直に言おう、君は捨て駒にされた。君も知っての通り私は隷下の部隊を何度か壊滅させ、相棒を二人失っている。将官の副官というのはその将官の業務を一部代行する以上、優秀な者でなければならない。だが君も自覚していると思うが君は優秀ではない。私は隷下部隊と副官をよく死なせる"死神"だ。どうせ死ぬのなら、捨て駒にしても全く困らない者を私の副官に···という話で私のところに君が来た。おそらくそういうことなのだろうな。」
「···」絶望
「···安心しろ···とは言わん。だが私を信じて欲しい。立場が逆だが、君を守って見せよう。私とて、部下と副官を失うのはもうまっぴら御免だからな。」
聞いてくれマーリン。私は君と出会った時に宣言したな?君を護ると。それを果たせず、あまつさえ私を狙った爆弾テロに巻き込んでしまった。そんな私だが···君に姿形がそっくりで、君に似て頭の回らぬ馬鹿で、君に似て陽気な超能力者(笑)の日本の娘を懲りずに副官にすえてしまった。もはや君を馬鹿と罵倒する資格は無いな。こんな脆い馬鹿を通り越して愚かな私を···どうか、赦してくれ···