ふぇありーヤ〇ザ!   作:矢留

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 矢留です。

 五話分書くのも結構しんどいのに、何百話って書いてる人たちとは一体…

 素直に尊敬します。


 


第五話 はがねタイプ上等じゃコラ

 

 アローラから戻った僕を待ち受けていたのは、たまっていた仕事たちだった。

 

 書類整理、グッズ包装、取り立てなどなど…

 有給で休んでた分の仕事を誰かが肩代わりしてくれる、みたいな展開はなかったみたいだ。

 

 そうだよね!

 ヤクザだもんね!知ってた!

 そんな福利厚生あるわけないよね!

 

 

 しかし、一番困ったのは取り立ての仕事だった。

 

 取り立ては二人一組で行うのが原則だ。もしも取り立てる相手が暴走して僕たちに襲い掛かったとき、一人では対処できない場合がある。いくら戦闘に慣れたヤ〇ザでも、多勢に無勢ではどうしようもない場合もあるのだ。それに、もし一人がやられたとしても、もう一人が事務所に連絡を入れることができれば、応援に駆け付けることもできる。

 

 だから一人で取り立てに行くことはありえないのだけれど…

 

「ヒイラギ、お前今日の取り立て一人で行ってこい」

 

 今、なんと?

 

「どうした、サザンドラがムーンフォースぶち込まれたみたいな顔してんぞ」

「そこまで絶望的な顔はしてません」

 

 いやどういう例え?

 

「そうじゃなくて、どうして僕一人なんですか?取り立ては二人一組が原則ですよね?」

「今取り立てが立て込んでんだよ。誰かが一週間も有給とったせいでな。」

「許可したの社長じゃないですか…」

「ああ?なんか言った?」

「すいません…」

 

 

 なんだか最近無茶ぶりがひどくなってきてないか?

 社長たちが僕に信頼を置き始めたからなのかもしれないけど…

 

「ま、お前に行ってもらうところは今まできっちりみかじめ払ってくれてた優秀な店舗だから。大丈夫だろ。」

「はあ。まあそれなら良いんですけど…」

 

 

 

 この時の僕は思いもよらなかった。

 

 まさかあんなことになるなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 カナズミシティは天下のデボンコーポレーションのお膝元として栄える新しい街である。

 デボンの本社はもちろん、付属の研究所や社宅、さらにはトレーナーズスクールまで兼ね備えた職住一体のシステムは、働き盛りのサラリーマンたちに大人気であり、近年移住をする人が多いのだとか。

 

 

 僕たちがケツ持ちをしている居酒屋は、そんな街の路地裏にあった。

 

 

 

「あのー、すみません。ぽかぽかフレンドクラブですけど、今月の代金の方を…」

 

 

 そう告げて店に入る。

 けど…

 

 

 あれ、なんか空気重くない?

 

 

 

 頭に鉢巻を巻いた店主と思われるおじさんがこちらを鋭くにらんだ。

 

「いい加減にしろよ。オメエらみたいな反社の人間に払う金なんざねえよ。」

 

 ええ…!?

 聞いてた話と違うんだけど!?

 

 今までしっかり払ってた優秀な店舗なんじゃないの!?

 

「今までおとなしく払ってやっていたが…もう我慢できん!貴様らに払う金など一銭もない!帰れ!」

「そうだそうだ!」

 

 唐突に始まる帰れコール。やめて!物を投げないで!

 

 まじか…今まで優秀な店舗だったけど、今日が革命の日ってこと!?

 

 なんでこんな日に限って僕ひとりなんだよ…

 なんかおかみさんみたいな人まで参戦してきたし。

 

まずいことになったな…

 

「いや、たしかに不満があるのはわかりますけど…こっちも商売ですから。」

「だまれ!!何が商売だ!!」

「ヒエッ…」

「さんざんうちの売り上げを搾り取って行きやがって!なにが商売だ!こっちの方がまっとうな商売だろう!貴様らのような薄暗闇で暮らすはずれものなんぞジュンサーさんに突き出してやってもいいんだぞ!!」

 

 うん、ぐうの音も出ない正論だね。

 

 僕らヤ〇ザだもんね…

 

 かといって、僕も僕とて引き下がるわけにもいかない。早く帰らないとゴンドーさんにぶっ飛ばされちゃうんだ。

 

 それに。

 

 申し訳ないけど、今はこれが僕の生き方なんだ。

 反社会的だろうがなんだろうが。

 

 

「じゃあ、こうしましょう。」

「なんだ」

「ポケモンバトルで勝った方が今月のみかじめ料の5万円払う。どうですか?あなたが勝てば僕から5万円もらえますよ。」

 

 これなら、バトルの賞金としてお金をもらったという大義名分ができる。

 どうですか!僕のプラン!完璧すぎて笑っちゃうね。

 

 

 

 

 「その勝負、ご主人の代わりに僕にやらせてくれないか。」

 

 

 水色の髪をした端正な顔立ちの青年が、入り口に立っていた。

 

 え、誰?

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ダイゴさん…!あなたって人は!」

「ダイゴさんだ!ダイゴさんが来てくれた!助かったぞ!」

 

 ダイゴ?なんだかどこかで聞いたことがあるような…?

 

 というか、まるで悪人に襲われているときにヒーローが現れたみたいな言い方しないでくださいよ!

 

 あ、僕ヤ〇ザ(ヴィラン)だったわ。

 

 

「デボンの膝元で恐喝とは…感心しないな。」

「恐喝とは人聞きの悪い…僕はただ賃金の請求をしに来ただけですよ。」

「だまれ悪党め!」

 

 居酒屋の店主が口を挟んでくる。

 ちょっとあなた静かにしててもらえますか!いろいろ誤解を生むので!

 

「どっちでもいい。僕はただ、君が目の前のご主人たちに迷惑をかけ、あまつさえ金品を要求していることを咎めているんだよ。どんな事情があるかは知らないけれど、見過ごすわけにはいかないな。」

 

 

 ダイゴと呼ばれた青年は、ネクタイを少し緩めながら言った。

 

 

「外に出ようか。バトルをしよう。」

 

 

 

 直感でわかった。

 

 

 この人、強い。

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ行こうか。ヤ〇ザくん。」

「なんかその言い方ムカつきますね…僕にはちゃんとヒイラギって名前があるんですよ!!おいで!キュウコン!」

「コーン!」

 

 プレミアボールから出てくるのは、リージョンフォームの白いキュウコン。アローラのすがただ。

 そのはかなげな姿は、温暖なホウエンだろうが常夏のアローラだろうが関係なく、幻想的に雪を降らせる。

 

 だが、ヒイラギはダイゴが選出したポケモンを見て戦慄した。

 

 あれは…

 

 

 メタグロス!!

 

 

 

 フェアリー/こおりタイプのアローラキュウコンにとって、鋼タイプは天敵だ。

 特に今回の相手は、ポケモンの中でも最強と謳われる600族。強敵中の強敵だ。

 

「まずい!キュウコン!オーロラベール!」

「おそい。バレットパンチ。」

 

 その巨体から放たれているとは思えない音速の一打が、キュウコンを貫く。

 

 先制の一撃。

 

 銃弾がごとし拳。

 

 

 

 しかし、4倍弱点を受けてもなおキュウコンは立っていた。

 きあいのタスキだ。

 

 目の前にはキュウコンが力を振り絞ってはなったオーロラベールが、夢のように輝いている。

 

 

 

 一目見た時からうすうすわかっていたけれど…この人超強い!

 

 そして何より!!

 

 タイプ相性が悪い!!!

 

 

 フェアリー統一で戦っている僕にとって、はがねタイプは脅威でしかない。

 立ち回りを間違えればあっという間にまくられる。

 

 

 

「きあいのタスキか…」

 

 ダイゴは端正な顔を崩すこともなく、バトルを俯瞰している。

 

「余裕そうですね…」

「フフッ…そう見えるかい…?メタグロス、もう一度バレットパンチだ。」

「くっ…キュウコン、もどれ!そして頼んだアシレーヌ!」

「ひゅおう!」

 

 

 ほぼ瀕死のキュウコンにみすみすバレットパンチを食らわるなど、仁義のかけらもない。

 ここはアシレーヌを出して受けに行く。

 

 

 メタグロスの拳がアシレーヌを襲うが、キュウコンが張ってくれたオーロラベールのおかげで、軽傷で済んだようだ。

 

 

「へえ、フェアリー統一だけどちゃんと弱点はケアしてるんだ。」

「当然ですよ。フェアリー愛なめてもらっちゃ困りますね。それにはがねタイプにはいやというほど苦しめられてるんで。」

 

 

 ギルガルドとかギルガルドとかギルガルドとか!

 

「なるほど。そんなにやわなトレーナーじゃなさそうだね。でも…結局一番強くてすごいのは僕なんだけどさ。」

 

 

 

 …は?

 この人何言ってんの?

 

 

 ダイゴはスーツのネクタイをキュッと結びなおしながら、不敵に笑っている。

 

 なんかイラついてきたな…

 

 

 

 だいたいこのダイゴとかいう男。人を若干見下し気味なのが気に入らない。

 反社のガキのくせにまあまあやるじゃん。そう言いたげな顔が鼻につく。

 

 フェアリータイプとかメタグロス一体で瞬殺っしょwと思っているのだろうその頭も。

 

 

 

「あー、めんどくせ。」

「何がだい?もう勝負を放棄するのかな?」

 

 

 ちげーよ。花粉団子ぶつけんぞ。

 

「ダイゴさん…でしたっけ。5万円、すぐ払えるように財布準備しといてくださいね。」

「なに…?」

 

 

 ほんとはね、僕もこういうことしたくないんですよ。

 ホウエンの皆さんにはできない「アレ」を、不公平を承知でやるのは。

 

 でもね、ダイゴさん。僕にも僕なりの戦い方ってもんが、立場ってもんがあるんですよ。

 

 そして何よりね、フェアリーをなめた態度がムカつくんすよ!!!

 

 

「行くぞ!アシレーヌ!」

「ひゅおう!」

 

 僕の腕にはめられたZリングが輝きを放つ!

 

 

 さあ震えろ!

 

 ハートマークは大きく!妖精の羽ばたきのようにきゃぴっと!!

 

「これが任侠のパワーじゃ!!ラブリースターインパクト!!!」

「ひゅおう!!!!!」

 

 

 アシレーヌの身体を全力の仁義(かわいい)が包み込む!!

 

「これは…!フッ…そういうことか。」

 

 ダイゴは何かを察したようだが、もう遅い。

 

 精霊たちの力が込められた全力の一打は、星々の輝きとなってメタグロスを襲う。

 

 

 

 が。

 

 

 

 耐えられた。

 

 

 

 

 

「かってえ…」

 

 知ってた。メタグロスが特殊にそこまで強くないとはいえ、半減技を確定で耐えることくらい。

 

 でもねえ。漢たるもの、かっこつけなきゃいけないときってあるんです。

 

 

 

 だが、ダイゴの口から出てきたのは、思いもよらぬ言葉だった。

 

「負けたよ。」

 

 え?今なんと?

 

「正直、バトルを始めた時はフェアリータイプなんかメタグロスで瞬殺だと思っていたけど…」

「いやほんとに思ってたんかい」

 

 

 思わず口に出ちゃったじゃないですか。

 

 

「でも、君とアシレーヌのZ技を見て思ったよ。ああ、このヤ〇ザくんは、本当にフェアリータイプのポケモンが好きで、バトルが大好きなんだなって。きっと人生でうまくいかないことがあって、こんな反社会的な汚れ仕事をすることになってしまったんだなって。薄暗いじめじめとした場所にも、きれいな花は咲くんだね。そんなことを知らなかった僕の負けだよ。」

 

 ポエムモードになったダイゴさんが、遠い目で語り始める。

 

「ダイゴさん…」

 

 

 

 あんたって人は…

 

 本当に…

 

 

「早く5万払わんかい!!!」

 

 

 ほんとにどこまでもイラつくヤツだな!!!

 

 

 

 

 みかじめ料の5万円は小切手でお支払いいただきました。

 




 わだつみのシンフォニア打ってれば勝てただろって?

 フェアリーヤ〇ザですから。

 仁義通しましょうよ。


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