ふぇありーヤ〇ザ!   作:矢留

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 矢留です。

 お気に入りめっちゃ増えててうれしいです。
 
 今後ともよろしくお願いいたします。

 


第九話 萌ゆる毒草

 

 

「報告いたします。マツブサ様。」

「うむ。」

 

 

 マツブサはアジトの最奥にて、下っ端団員の報告に耳を傾けていた。

 

 新興環境活動団体マグマ団のリーダーとはこの男。100を超える団員を束ねるその姿はまさにカリスマである。

 炎のごとき野望を持ちながら、大地のように朴訥たる人間性が支持を集め、実現不可能とも思われたプロジェクトをその圧倒的人望を用いて実行可能な段階まで持ち上げた凄腕の人物だ。

 

 

 

 そして今、ゼロから始まったプロジェクトがこの場所から動き出そうとしている。

 

 

「例のプロジェクトを開始するにあたって必要となっていた船のパーツですが、足取りが判明致しました。」

「ほう。ようやく見つかったか。」

「はい。近日中に海の科学博物館に搬入される予定であると。」

「それは確かな情報なのだろうね?」

 

 参謀であるホムラが口をはさんだ。

 彼もまた、カリスマたるマツブサの右腕として暗躍する優秀な人間である。

 

 

「はい。確かでございます。デボンの社員を脅して聞き出しました。」

「ウヒョヒョ…!なかなか手荒いことをしますねえ…」

「いえいえ。これもすべてマツブサ様のためでございます。」

 

 

 ここ最近、下っ端の団員にはプロジェクトを円滑に遂行するための情報収集をさせている。

 特にデボンコーポレーションの関係者は有益な情報を持っている可能性が高いため、集中して狙うように言ってあるのだ。

 

 

 

 ふむ。悪くない。

 

 マツブサの影が笑っていた。

 

 

 

「では、襲撃は3日後の15:00。場所はカイナシティ、海の科学博物館だ。団員各位に通達しておけ。」

「はっ。承知いたしました。」

 

 

 下っ端団員はそう言うと、音もたてずに部屋を去っていった。

 後には地底の奥底のような、不気味な静けさが残される。

 

 

「ウヒョヒョ…!プロジェクト、つつがなく進行していますねえ。」

「当然だ。私に失敗の文字はない。」

「ウヒョ…頼もしいですねえ。」

「フン。そのために彼らの手まで借りたのだからな…。頼みますよ。ブスジマ組の皆さん。」

 

 

 マツブサは、ソファーに座っていたその人に目を向ける。

 

 スーツに銀髪の青年。

 その実は若くして数多の暴力団を圧倒的な実力をもって統合し配下に収めた経歴を持つ、生粋のアウトロー。

 

 

「ああ。誰が来ようとこのブスジマ組が叩きのめしてやるよ。」

 

 

 頼もしいひと(暴力団)たちだ。本当に。

 

 敵には回したくないものだ。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「ゴンドーさん、そのカイナに新しくできたっていうアイスクリーム屋、どんなところなんでしょうね。」

「俺のインステブリム情報によるとな、31種類も味があるらしい。そんで今なら期間限定で二つアイスを頼むともう一つおまけしてくれるらしいぞ。」

「それめっちゃお得じゃないですか!」

 

 

 ヒイラギです。

 

 今日はゴンドーさんと取り立てがてらカイナに新しくできたアイスクリーム屋、『サーナイトワン』に行くところです。

 

 先日逮捕されたときのジュンサーさんの飯テロがステルスロックみたいにいつまでも残って僕の精神をゴリゴリと削ってゆくので、我慢できずにスイーツを食べに来たのだけれど…

 

 やばい。楽しみすぎる。

 

 

「ていうかお前のインステ見たけどよ、全然映えてねえな。」

「いやなにひとのインステ特定してるんですか…たしかにもっと映える写真撮りたいですけど…」

「あのな。映える写真には映えるための撮り方ってもんがあんだよ。ほらお前のスマホロトム貸してみろ。」

「あ、はい…」

 

 

 ゴンドーさんは僕のスマホロトムを借りて、マリルリちゃんを撮影しだした。

 手つきが慣れていらっしゃる…!

 

 

「ホラ、これがフツーに撮った何の変哲もない写真な。」

「ふむふむ。」

 

 すでにちょっとうまい。

 

「今光がこっちから差してるから、それをこんな画角で撮って…んで画像の加工は必須な。トーンとかいろいろアプリ内で変えられるんだよ。別アプリ使えばもっと加工の幅も広がるけどな。」

「えええすごい!!全然違う!!」

「だろ?こんなの常識だぜオメエ。」

 

 

 ゴンドーさんが撮ったマリルリちゃんの写真はプロのカメラマンが撮ったみたいに  

生き生きとしていて、前者と比べて明らかに『映えて』いた。

 

 

 おいおいこの人すごいぞ。

 もしかしてあのポスターもゴンドーさんが撮ったのかな…

 

 いや、そうに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カイナシティ。市場。

 

 さっさと取り立てを済ませた僕たちは、早速アイスクリーム屋『サーナイトワン』に並んでいた。

 

 時刻はもうすぐで13時になろうとするところ。オープンしたてということもあり、店は物珍しさに寄せられた人々でごった返している。

 

 

「やっぱ混んでますねえ。」

「そりゃ混むだろ。なんたって二つ頼むと一つおまけしてくれる『ヒヒダルマキャンペーン』の真っ最中だしな。」

「ヒヒダルマ…?」

「アイス重ねたらヒヒダルマみたいになるだろ。ガラルにはこおりタイプのヒヒダルマがいるらしいぜ。」

「へえ~。」

 

 

 ガラルかあ…いつか行ってみたいなあ。

 全国でもかなり発展した地方だと聞く。

 

 フェアリーポケモンもいっぱいいるんだろうなあ。

 

 そしてなにより、ガラル地方にはポケモンの能力を一時的に急増させる、ダイマックスというシステムがあるらしい。

 選ばれた場所で選ばれた人にしかできないものだというのだから、ロマンを感じてしまう。そういう特別なトレーナーになってみたいよ。僕も。

 

 

 

「おい。ヒイラギ。あれ見ろよ。」

「ん?あれは…」

 

 もうすぐで僕らの順番が来るというところで、ゴンドーさんがかたまって歩く集団を指さした。

 

 ここ数日で何度も見た赤い戦闘服。

 

 間違いない。

 

「マグマ団…!」

「しかも、集団でわらわら歩いてやがるな。ということは…」

「絶対何か企んでますね。ゴンドーさん行きましょう。」

「せっかくのアイスがよお…。しばいたらアイス驕らせてやる。」

 

 僕たちはしかたなく、本当にしかたなくアイス屋の列を外れて、マグマ団の後を追うこととなった。

 

 そう。僕は奴らに文句を言わなければならない。

 お前らが暴れたせいでマッポに見つかってしょっ引かれる羽目になったんだぞ!

 

 

 

 

 

 

 彼らが向かったのは、埠頭の区画にある「海の科学博物館」だった。

 

 わざわざ大勢で来てまで、ここに何の用事があるんだ?

 

 

 いや、待てよ。博物館というくらいだから、古代の超貴重な石やら何やらが保管されているのかもしれない。

 

 もしかしてそれを狙いに来たのだろうか。

 

 

 

「おいヒイラギ。わかってるよな?」

「はい。組長から言われてる通りですよね。何かあったら迷わずしばく。」

「よろしい。んじゃ、行くか。」

 

 

 そう言って中に入ろうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

「オイオイ。オメエ、ぽかぽかのゴンドーじゃねえか。」

 

 

 

 背後から、重々しい声が響いた。

 その声。威圧感。話し方。

 

 姿を見なくてもすぐにわかる。

 

 

 

 こいつ。

 

 

 こっち側の人間だ。

 

 

「テメエ…。ブスジマ組のカブトだな?」

「ブスジマ組…?」

 

 

 カブトと呼ばれたその大男は、スキンヘッドにサングラスと典型的なヤ〇ザのいでたちで、こちらにガンを飛ばしている。

 

 独特な空気を身にまとった人物だった。

 身体が、こいつは危険だと警告している。

 

 

「ゴンドーさん、ブスジマ組って…」

「ブスジマ組はな、トクサネ・ルネ方面の海一帯をシマにしてるヤ〇ザだ。特に残忍で冷酷なやり口で知られてる。数年前、10あった暴力団のうち8の暴力団がこいつらブスジマ組につぶされた。残ったのはうちだけだ。」

「エッ…やばい人たちじゃないですか…」

 

 

 8個の暴力団壊滅とかパワーバランスどうなってるんですかね…

 というか逆になんでうちの組残れたの??

 

 

「そんなブスジマ組がなんでここ(カイナ)にいやがる。まさかテメエみてえなクセえ男がアイスを食いに来たってわけじゃあねえよな。」

「オイオイ。(自主規制)の中までピンク色のオメエじゃあるめえしよオ。さっきここに入っていった奴らに誰も入れんなって言われてるんだよな。」

 

 

 さっきここに入っていった奴ら。

 マグマ団のことだ。

 

 つまりこのカブトという男…

 

 

「マグマ団のケツ持ちだな?テメエ。」

「ま、そういうこったな。マグマ団はうちのブスジマ組でケツ持ちやってんだわ。だからオメエ、中に入ったら…そういうことだからな?わかってるよな?ああ?」

 

 

 まじかよ…

 マグマ団、ヤ〇ザとつながってたの!?

 

 なんかやばいことになってきてませんか…

 

 

 

「悪いけどよお。俺らもうちの組長に言われてんだわ。ケツ持ちだろうがマラカッチだろうが、マグマ団に関係してるやつは全員しばいてこいってな。」

「ふーん。じゃ、どうなっても知らねえからな?オメエ。」

「ひとのシマででけえ声でしゃべんなって保健室のセンセーに言われなかったか?」

 

 

 大変なことになったぞ…

 ヤ〇ザVSヤ〇ザのバトル。

 

 抗争が始まる…!!

 

 

 

 

「ゴンドーさん、僕も…」

「お前は先に行け。」

「え、でも…」

「こいつは、俺がやる。というか、お前じゃ話にならない強さだぜ。こいつ。」

 

 

 ゴンドーさんはいつになく余裕のない表情をしていた。

 ゴンドーさんでも互角かそれ以上の相手なのだろう。

 

 つまり、僕がいても足手まといということだ。

 

 またしても、弱い自分に腹が立つ。

 

 

 

 

 

「何やってんだヒイラギテメエ。テメエにはテメエのやることあんだろ!早く中に入って別のやつしばいてこい!!」

 

 

 

 ゴンドーさんが、僕の背中をぶったたいた。

 その手のひらが大きくて、叩かれた跡から親密な暖かさが身体を駆け巡る。

 

 

 

 その瞬間に目が覚めた。

 

 

「…すみません!行かせてもらいます!」

 

 

 後ろを振り返らずに、まっすぐ博物館に駆け出す。

 

 今この状況で、自分が強いか弱いかなんて関係ない。

 僕は僕にできることをやらなくちゃ。

 それが、子である僕が家族のために今できることなんだ。

 

 

 そっちは頼みます。ゴンドーさん!

 

 

 

「オイオイ!中に入れねえっつったろ!!グレッグル!どくづき!!」

「グエ!!」

 

 いつの間にかボールから出していたグレッグルが、僕に向かって襲い掛かってくる。

 

 

 ぐっ…それは予想外!!

 よけられない!!

 人間に向かって技撃つなよ!!死んじゃうでしょ!!

 

 

 しかし、その一閃は僕に届くことはなかった。

 しぶきを上げて突進する音速の影が、グレッグルを弾き飛ばしたからだ。

 

 

「おいおい。テメエの相手は」

 

 

 見慣れたヒールボールのエフェクト。

 

 聞き慣れたかわいい鳴き声。

 

 

「俺たちだろうが。」

「きゅぴん!!」

 

 

 




 いよいよマグマ団が本格的に動き出しましたね。

 ホムラの見た目結構好きです。
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