アスカがヴンダーに戻ってきて1週間が経過した。
その間にニア・フォースの際に大きく損傷した弐号機と八号機はパリのユーロNERVで回収したパーツによる修復が完了していた。
また、アスカの回収したNERVのパイロット、アヤナミタイプの初期ロットはNERV側の情報を引き出すためという名目でシンジと同じく隔離室に入れられていた。
そして、碇シンジは未だに目を覚ましてはいなかった。
・・・
「あ、式波大尉、お疲れ様です!」
「ん……アイツの様子はどう?」
シンジの監視役であるサクラが隔離室に入ってきたアスカに言う。そんなサクラに対し、アスカはぶっきらぼうにシンジの容態を聞いた。
「リツコさんの話によると、もう生命活動に支障は無いようで、怪我もほぼ完治しているそうです。ただ、血が足りないせいで目が覚めるのに時間がかかっているのだろうとのことでした。」
「そう……」
サクラの話を聞いたアスカは、そのまま隔離室のロックを解除し、シンジの眠る隔離室へと入っていく。そして、ベッドの横にある椅子に座ると、シンジの手を握る。
ここ一週間、アスカは暇さえあればこうしてシンジの所へと来ていた。この行動にヴンダーのクルー達はいい顔をしなかったが、艦長であるミサトと副長であるリツコが碇シンジの監視のためと言う名目でこれを許可したため、クルー達は何も言わなくなった。
「シンジ……早く目を覚まして。私アンタに……」
アスカが何かを言いかけたその時、突如警報が艦内に鳴り響き、オペレーターの声がスピーカーから聞こえてきた。
『総員第一種戦闘配置!繰り返す、総員第一種戦闘配置!』
それを聞いた瞬間アスカは隔離室から飛び出した。握っていたシンジの手がピクリと動いたことに気づかぬまま。
・・・
真っ白な空間
上下左右の方向感覚が分からなくなりそうな空間にシンジはいた。
「ここは……」
見覚えのある空間にシンジは当たりを見渡す。すると、目の前に真っ白な少女、ルーツが現れた。
「やあやあシンジ君、お疲れだったねえ。」
人懐っこい笑みでシンジをねぎらうルーツ。そんなルーツにシンジは少々喰い気味でこう言った。
「あ、あの、アスカ達はどうなったんですか?」
「ああ、彼女たちはシンジ君が44Aを倒したから大した怪我もなく無事だよ。それにしても、お姫様を守りながら6機相手に良くやったね。」
そう言いながら頭を撫でるルーツ。シンジは多少顔を赤くしつつも、いやがったりはしなかった。
「さて、沢山話をしたいところだけどそうもいかない。なんせ前回と違って時間が無いからね。」
そう言ってルーツがフィンガースナップを鳴らすと、シンジの前に映像が現れた。そこには海に着水しているAAAヴンダーに羽虫のように群がる無数の44Aが
「この艦が沈んだら終わりだ。2機のエヴァも出てるみたいだけど、この数じゃ勝てるかどうかは怪しいところだ。そこで、私が援軍を送ることにしたのさ。」
「援軍……ですか?」
「そう、私の信用しているエヴァにも負けない援軍。そのことを伝えたかったのさ。まあ、少し前から送り込んでいて、万が一の時に助けるようには言ってたんだけどね」
ルーツがそう言うや否や、ルーツの姿が透け始めた。
「ありゃりゃ?もう時間か」
「僕はどうすれば?」
「君はもう大人なんだ。君の思うようにすれば良いよ。私が伝えたかったのは、援軍を送るって事だけだ。ほんじゃ最後にシンジ君にお土産!」
そういってルーツは丸い丸薬のような物を、指を使って弾き、シンジの口へと放り込んだ。その瞬間、シンジの顔が歪む。
「うえ…苦い……」
「古の秘薬さ。苦いけど、元気になるにはこれが一番!それじゃ、私が送った彼等とも仲良くするんだよ-!」
そう言い残してルーツの姿は消え、シンジの目の前も段々と暗くなっていった。