「ふうーーー……」
シンジは肺の中の酸素を一気にはき出すかのように息をついき、そしてヴンダーの数100m下、44Aと戦っている弐号機と八号機の方を見やる。相変わらず二機は大量の44Aを殲滅していたが、いかんせん数が多すぎて、徐々に押され始めている。
「アスカ……!クソ!」
シンジは歯噛みする。ここからでは見ていることしかできない。悔しさに顔を歪ませるシンジ。そんな彼の視界にある物が飛び込んできた。
「あれは……」
それは、一筋の赤い光。いや、彗星だった。
彗星は尾を引きながら間違いなくこちらへと向かってきている。その時、シンジの脳裏に男のような声が響いた。
『助けたかったら飛び降りな』
その言葉を聞いた瞬間、シンジはためらうことなく甲板から飛びおりた。
重力に従い落下していくシンジ。それを受け止めたのは、天彗龍バルファルクだった。
「貴方がルーツさんの言っていた援軍ですか?」
「おうよ!天彗龍バルファルクだ!積もる話は後にして、今は姫君達を助けに行くぞ!」
「はい!」
・・・
「うひゃー!パリの時より多いんじゃないのこれえ?」
「くぅっ……次から次へと!」
アスカとマリが戦い始めてからすでに30分が経過していた。弾薬はすでに底をつき、肉弾戦での応戦となっている。しかし、44Aの数は一向に減る気配がない。二人の集中力はすでに切れかけていた。
「ぐあっ!」
アスカの弐号機に44Aが突撃し、額から生えていたロンギヌスの槍のような物が弐号機の右肩に突き刺さる。
「こんのおお!!」
無理矢理44Aを引きはがしたアスカ。しかしその隙にもう一機の44Aが弐号機目掛けて突進してきた。最早躱せる距離ではない。
「姫!」
「くっ……!」
アスカは覚悟を決めたかのように目を瞑る。しかし、その衝撃はいつまでも訪れず、目を開けたアスカが見たのは、自らの命を奪おうとしていた44Aに白き巨大な牙を突き立てる、シンジの姿であった。
「シンジ……」
アスカのつぶやきはLCLの中に溶け込んでいった。
・・・
シンジはバルファルクから飛び降り、アスカに突撃しようとしていた44Aにミラアンセスフォリアを突き立てる。44Aは弐号機に触れることなく地上へと落下していき、シンジは再びバルファルクへと飛び乗った。
「やるなシンジ!」
「は、はい」
「さて、ほんじゃお次は俺の番だ!しっかり捕まってろよ!」
バルファルクはシンジを背に乗せたまま、一気に加速した。44AのATフィールドを物ともせず、アクロバット飛行を繰り返しながら、龍気弾などで44Aを叩き落としていく。そして、そんなバルファルクに残っていた44Aは認識を改めたのか、全てバルファルクへと向かってきていた。
「はん!俺に追いつきたかったら、せめて音速でも出せるようにしてきやがれ!」
「で、でもどうするんですか?このままじゃ埒があきませんよ!」
必死にバルファルクに捕まりながら言うシンジ。それに対し、余裕の笑みでバルファルクはこう答えた。
「大丈夫だ。もう一人の援軍が到着したからな。」
バルファルクの見据える先には、赤い大地から不自然に砂煙が立っていた。そこへ高速でダイブするバルファルク。地面との距離は1mもない。そして、砂煙の発生している位置をバルファルクが通過した瞬間、地面から巨大な飛竜が姿を現した。
それは、シンジがルーツとの修業時代に何度も戦った角竜ディアブロスの姿に酷似していたが、それよりもさらに禍々しい姿をしていた。顔からは歪な角が三本生えており、顔や翼は濃紺に染まっている。
驚きを隠せないシンジにバルファルクはこう言った。
「紹介するぜ。俺のダチ、逢魔ディアブロスだ。」
「ギィアアアアアアアア!!!!!!」
耳を劈くような轟音が響き渡る。そして次の瞬間、逢魔ディアブロスの突進により、バルファルクに引きつけられ、地上スレスレを飛行していた44Aは全滅した。