双月の少年達のサマーバケーション   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
今回で後日談編は最後になります。
楽しんでいただけると幸いです。

それではどうぞ。


第8話 みんなに感謝を

「あっ、このスカート可愛い……ねえねえ千聖ちゃん、どうかな?」

「涼しげな色ね。デザインも柔らかい雰囲気があるし、花音(かのん)によく似合うと思うわ」

 

ショッピングモールにて。

千聖は学校のクラスメイトで、親友である松原花音(まつばらかのん)と一緒に洋服屋に来ていた。

 

「本当? どうしようかな……先月たくさんバイトしたから、まだ余裕はあるんだけど……」

「夏休みだし、出かけたり遊びに行く予定を考えるとなるべく出費は抑えたいわよね」

 

気になってる洋服を買おうかどうか迷ってる花音に、ブランドとか商品情報をメモするだけにしたらと提案する千聖。

 

「そうすれば、後で探す事もできるし。ブランドが分かれば、ホームページとかで同じような雰囲気のものとも出会えるかも知れないわよ」

「なるほど、さすが千聖ちゃんだね! え、えーっと……メモ、メモ……と……」

 

早速、メモ帳に書き留める花音。

 

「えへへ、ありがとう千聖ちゃん。私1人だったら、ここでずっと悩んじゃってたよ」

「お役に立てたのなら嬉しいわ。さて、次はどうする、花音?」

 

何処か行きたい場所はあるかと花音に訊く千聖。

 

「そうだなぁ……あっ、水着のコーナー……そういえば、この前パスパレのみんなやティアちゃんと海に行くって言ってたけど、どうだった?」

 

近くにあった水着のコーナーを見て、思い出したのか、海に行った時の事を訊ねる花音。

 

「とっても楽しかったわよ。たった1日しかなかったから、少し物足りないくらい」

 

と言っても、何か特別な事をしたという訳じゃないのだけどと付け足しながら、千聖は言った。

 

「ふふっ、特別な事なんてなくても、仲のいいお友達と、ただ海で遊んでるだけで、楽しくなっちゃうもんね」

 

花音の答えに、パスパレのみんなって個性的な子ばかりだから。一緒に居ると時間があっという間だったと答える千聖。

 

そんな千聖の話を聞いて、本当に楽しかったんだなと感じた花音。

 

「実はね、千聖ちゃんから海に行くって聞いた時、あまり乗り気じゃなさそうだったから……ちょっとだけ心配してたんだ」

「それは……確かに乗り気じゃなかったわね」

 

今思えば、つい仕事の事を考えてしまうのは悪い癖なんじゃないかと思えてきた。

 

「でも、みんなのお陰で、最後はとっても海を満喫できたと思うわ。……まあ、悠里が海に遊びに来てたのは予想外だったけど」

「え? そうなの?」

「ええ。悠里と月灯くん、それに悠里の双子の弟の汐里くんの3人。初めて見たけど、雰囲気が悠里にそっくり」

「あー、それは私もなんとなく分かるかも……」

 

花音も悠里とは幼馴染みなので、千聖が言いたい事はなんとなく理解できた。

 

「月灯くんで思い出したんだけど……千聖ちゃんは、その、もしかして、聞いた?」

「? 聞いたって……何を?」

「その……悠里くんが月灯くんを呼ぶ時の……渾名」

「えっと、まあ……正直……まだ慣れないわね。悠里が同年代の男の子に渾名っていうのが」

 

未だに千聖と花音は慣れない。悠里が月灯を呼ぶ時の渾名。

何せ、その渾名が『つっきー』である。

 

「……? ねぇ、千聖ちゃん? あそこにいるのって、悠里くんと月灯くんじゃないかな?」

「ほんとだわ。それにしても、ここから視ても、あの2人って女の子にしか見えないわね……」

「そ、そうだね……」

 

悠里と月灯を見つけた花音。

前々から思ってたが、悠里と月灯は遠くから見ると、ボーイッシュな格好をした女子高生にしか見えないのだ。

 

ティアが言ってたが、遊び半分で悠里と月灯に女装をさせた場合、世の中の女の子は絶望するんだとか。

 

「あっ! 千聖ちゃんに花音ちゃんじゃないっすか!」

 

千聖がそんな事を考えてると、自分達に気付いたのか、月灯が声をかけてきた。

 

「こんにちは。月灯くん。あら? 悠里は?」

「悠里ならそこに……って、居ないっすね。でも多分、気になった服を見つけて試着室に行ったんだと思うっす」

 

千聖の言葉に悠里が居ない事に気付いた月灯は、試着室に行ったと思うと答える。

 

「千聖ちゃんと花音ちゃんはお出かけっすか?」

「うん。さっき、そこのお店で気になった服があったから、買おうか迷ったんだけど、千聖ちゃんがメモしておけば、ホームページでも似た雰囲気がある服があるって教えてくれたんだ」

「あー、あそこのブランドっすか。あそこは品揃えも豊富ですし、ティアの知り合いの人が経営してるって、聞いた事があるっす」

「そ、そうなんだ……」

 

月灯の言葉を聞いて、驚いた表情をする花音。

そういえば、ティアがパスパレのマネージャーになって間もない頃、先程の洋服店のブランドを教えてくれた事を千聖は思い出した。

 

「悠里くんと月灯くんは?」

「ジブン達っすか? 悠里が新しいブルーライトカットメガネを買いたいって言ってたんで、ジブンはその付き添いっす。最初に買ったのが2年前なもんで」

「「…………((メガネをかけてる悠里(くん)……良い、かも……))」」

 

それはそれでアリかもと想像する千聖と花音。実際にかけてる姿を自分達は見た事ないが……

 

「ま、まぁ、2人が何を想像してるかは分かるっすけど、その内見れると思うっす。それでその事をティアに言ったら、この店に行けって言われたんす」

「そうなの?」

「そうなんす。珍しくティアが買いに行くんだったら、その帰りに絶対行ってって念押しされたんす。主に悠里が」

 

それにティアがお店に悠里が行くんでと電話を入れられたら、行かざるを得ないじゃないっすかと付け加える月灯。

 

「ティアちゃん、珍しく強引ね……」

「そ、そうだね……」

 

これには苦笑いするしかない千聖と花音。

 

「あの、お連れのお客様ですか?」

 

そんな話をしてると、店員が月灯に声をかけてきた。

 

「あ、はい。そうっす」

「試着し終わったと、先程のお客様が仰ってました」

「分かりましたっす」

 

どうやら悠里が試着が終わったので、月灯を呼ぶように頼んだらしい。

せっかくなので、千聖と花音も見に行く事に。

 

「悠里。着替え終わったんすか?」

 

試着室に着いた3人。

悠里が履いてきたブーツを見つけたので、月灯は声をかける。

 

「…うん。終わった」

「ちなみに千聖ちゃんと花音ちゃんも居るんで、その辺よろしくっす」

「……嘘でしょ?」

 

月灯の言葉を聞いて、試着室から悠里が嘘でしょと言う。

 

「その、月灯くんに誘われて……気になった服を試着した悠里が見たかったというか……」

「わ、私も……悠里くんが選んだ洋服、どうしても見たくて……」

 

千聖と花音の声を聞いた悠里は、あんまり期待しないでと2人に言った後、試着室のドアを開ける。

 

「「……!!!」」

 

試着した悠里を見て、驚きの表情をする千聖と花音。

 

一方で……

 

「ぷっ、くっ、ははは」

 

月灯はお腹を抱えながら、大笑い。

 

「つっきー、あのさぁ……そこまで笑い堪えるのがアレなら、はっきり似合わないって言ったらどうなのさ?」

「「……((そんな事ない! そんな事ない! 寧ろ、カッコいい……))」」

 

ジト目で月灯に訴える悠里。

一方で、見惚れてる千聖と花音には気付いてない。

 

「なるほど、ティアが絶対に行けって、そういう事っすか。にしても、ぷっ、くっ、ははは」

「ほんとだよ、全く……」

 

ティアの意図を笑いながらも理解した月灯。

溜息を吐きながら、してやられたという表情をする悠里。

 

悠里が試着した洋服は、黒いシャツの外に蒼い外套。そしてシンプルな黒いズボンを着用していた。

 

「いやー、笑ったっす。悠里、実は自覚してるんじゃないんすか?」

「……」

「「自覚?」」

 

月灯の言葉を聞いて、首を傾げる千聖と花音。

 

「実は悠里が試着した服、1()0()()()に悠里が着てたやつを、今のサイズに合わせただけなんすよ」

「「えっ!?」」

 

それを聞いて驚く千聖と花音。

それが本当だとしたら、どうしてそれがこの店にあるのだろうか?

 

「10年前に家の行事で、ヨーロッパにある『ハピネール』って国に滞在してた時期があったんす。そんで悠里が()()()()()()の護衛をやる事になったんす。ジブンやティアも一緒にやったんすけど」

「……寧ろ、つっきーは料理を作るのに忙しいって言ってた癖に」

「しょうがないじゃないっすか。寧ろ、()()()は悠里と一緒に居ると安心するって言ってたんすから。あー、リーナっていうのは、ジブン達が呼んでる渾名っす」

 

流石に本名は言えないっすけどと千聖と花音に説明する月灯。

 

「リーナにとっては、その服……というか、私服兼護衛服を着てた頃の悠里が忘れられないから、今のサイズに仕立て直してもらって、このお店に厳重に置いてもらったってところっすね」

「……このお店に入った途端、店長さんらしき人に、何度も見られたよ」

「あ、それで悠里だって解って、試着室まで拉致られたんすね……」

 

それを聞いて、道理ですぐに居なくなった訳だと納得した月灯。

 

「千聖ちゃんと花音ちゃん的には、悠里の試着した服どうっすか?」

「「えっ!? えっと……」」

 

突然、話を振られ戸惑う千聖と花音。

 

「上手く言えないけど……私の知ってる悠里らしさが詰まってて……えっと、す、凄く似合ってるわ」

「私も上手く言えないけど、悠里くんらしさがあって、凄くカッコいいと思う……」

「えっと……ありがと? ……で、いいのかな?」

 

正直に言うと、いつも以上にカッコよすぎて悠里の顔が見れないというのが2人の正直な感想だが。

 

「ちなみにジブンは、妙に悠里が気に入ってる感じだったから、率直な感想を言うのもどうかなって思ったんす」

「…あのね、そう言う訳じゃないよ。ただちょっと驚いただけっていうか……」

「ジブンはまた悠里が、何も言わずに1人で抱え込んで突っ走っちゃうのかと思ったっす」

「……そんな事はもうしないよ。リーナに怒られちゃうし」

 

それに僕がこの服を試着した時点で、つっきーは分かってるでしょ?と付け足す悠里。

 

「気紛れでも?」

「万が一でもそんな気紛れはないと思うよ。流石に天文的確率ならあり得るかもだけど」

「なんだ、残念っす♪」

「……あのさ。全然、残念そうじゃないよ?」

「そうっすか?」

 

そんな2人のやり取りを見てた千聖と花音はこう思った。

 

「(何かしら……まるで、初めて花音と友達になった時の感じに似てるような……)」

「(なんだろう……千聖ちゃんと初めて会った時の感じみたい……)」

 

そう。例えるなら、自分達が初めて親友になったばかりの時に話してる感じに見えるのだ。

 

「全く、顔が笑ってるってば。つっきーはそうやって人の事をからかって……」

「ジブンだって親友にしか、こんな事やんないっすよ♪」

「ふふっ、あんなに楽しそうに話す悠里を見たの、いつ振りかしら?」

「えへへ、そうだね。私もそう思う」

 

千聖と花音が微笑みながらそう言った。

何故なら悠里は気付いてないが、千聖と花音が特に好きだった楽しそうな表情を悠里はしていたのだから。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここまで出来たのも、読者の皆様のお陰です。
気が向いたら、また何か息抜きに書くかもしれません。

それではまたいつかどこかでお会いしましょう。
ありがとうございました。
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