超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

1 / 56
プロローグ1:煌く球体

 その日、寮の自室へ帰宅途中の中学2年生、長谷川千雨は道端でとある拾い物をした。

 

(……なんだ、こりゃ? ビー玉……にしちゃ、でかいな)

 

 それはキラキラ輝く電子回路状の立体的紋様を内側に封じ込めた、直系4cm程度の透明な硬質の球体である。最初千雨はガラス玉かと思ったのだが、それは硬質ではあってもガラスではなさそうだ。ガラス玉にしては、妙に軽い。しかしだからと言って、アクリルやプラスチックの類でも無さそうである。

 

(……地面に転がってたのに、傷ひとつ無え。少なくとも、普通のプラスチックじゃなさそうだ。

 けど、何にせよ綺麗だよなコレ。値打ちものかどうかはわからんけど、宝飾品の類だろ。今日はもう遅いし、明日にでも交番に持ってくとすっか)

 

 千雨はそう考えると、その球体を手に女子寮へと入っていった。

 

 

 

 その夜、千雨は自分のサイト『ちうのホームページ』の編集作業を終え、チャットでしばし常連と駄弁(だべ)った後、就寝前の暇つぶしとして少々ネットサーフィンしていた。しかし彼女はその途中、ついうっかりPC(パソコン)に向かったまま、うたた寝してしまう。

 

 そして千雨は夢を見た……。

 

 

 

 千雨は闇の中に浮いていた。

 

(……なんだこりゃ。こりゃ、夢だな。夢ん中で、夢だって分かるんだから、明晰夢ってやつか。

 うーん、ほっぺた(つね)っても、痛くねえ。本気で夢だな。早く目が覚めねえかな)

 

 しばしの間、彼女は闇の中でぼんやりと浮かんでいた。だが、一向に自分の目が覚める気配は無い。と、そこへ突然声が響いた。

 

『……頼む、助けてくれ。頼む……。どうか助けてくれ』

「えっ……。誰だ!」

 

 千雨は首を左右に振り、声の主を探す。はたして、それはすぐに見つかった。その声を発していたのは、千雨の斜め後ろの空間に浮かんでいた、内部に電子回路の様な立体的紋様を封入した直系4cmほどの透明な球体である。

 そう、それは千雨が下校途中で拾った、あの球体であった。ただし今、その球体の中の電子回路状の紋様は、それ自体が光を発し、輝き煌いている。

 

(……宝飾品が喋ってる。いや、マテ。これは夢だ。だからこんな事態が起きたって、おかしかねえ。

 けど、こんな妙な夢を見るなんて……。わたし、自分じゃ現実的な方だと思ってたんだが……。それとも何か? 欲求不満でもあんのか、わたし?)

 

 千雨がそんな事をつらつらと考えている間も、球体は喋り続ける。その声音には、必死の想いがこめられていた。

 

『頼む。俺のエネルギーは尽きかけている。死にかけてるんだ。圧縮空間にはまだ封印状態のエネルギーはあるんだが、解凍しないとそれは使えない。けれど、解凍して点火(イグニッション)するためのエネルギーが全く足りない状態なんだ』

「え……っと。つまり、自動車で言えばガソリンはまだ余裕あるけど、バッテリーが弱っててエンジンがかからない……。そんな感じか?」

『ああ、その認識で大方は間違ってない。ただ、それが俺の生命に直接関わるって事が違うだけだ……。』

 

 球体が発する声は、徐々に弱って行く。それと共に、球体の発する輝きは徐々に消えて行った。千雨は慌てる。

 

「お、おい!」

『駄目だ、力が……。頼む、エネルギーを……』

「え、エネルギーって言っても、どうすりゃ!」

『AC100Vコンセントの電力程度でかまわない……。エネルギーを……』

 

 そして球体の光は、ホタルの光程度にまで落ち込む。千雨は叫んだ。

 

「おい! ちょっと待て! 待てって!!」

 

 

 

「待て!! ……あ、ありゃ?」

 

 千雨は自分の叫び声で目覚めた。慌てて跳び起きた彼女が見たのは、自分が今しがたまで顔を伏せていたPC(パソコン)のキーボードである。それにはべっとりと、自分がたらしたヨダレがかかっていた。

 

「あっちゃあああぁぁぁ……。せめて水洗いOKのキーボードでよかった……!? まさか!!」

 

 慌てて千雨は、洗面所に走る。そして鏡を覗き込むと凍り付き、そして肩を落とした。千雨の左頬には、くっきりとキーボードの跡が残されていたのだ。ご丁寧に、自分がたらしたヨダレ付きで。

 顔を洗った千雨は、よろよろとPC(パソコン)前まで戻るとPC(パソコン)の電源を落とす。そしてキーボードを外すと、再度洗面所に行ってザバザバとそれを洗った。そのキーボードを立てかけて干すと、彼女はシャワーを浴びる事にした。こう言う時は、さっさと本格的に寝るに限るのだ。

 シャワーから出て、千雨はベッドに向かう。と、パソコンデスクの上に置いてあった、あの拾い物の球体が目に入る。

 

「……バカバカしい。ありゃ夢だ。」

 

 そう言って、千雨は蛍光灯を消してベッドに入る。そして数分。彼女は再び起き上がると、蛍光灯を灯した。

 

(……バカバカしい。あの苦し気な声が、頭に焼き付いちまってる。ちくしょう)

 

 千雨は電気ポットの電源コードを、電気ポットから引っこ抜くと、その球体に押し当ててみた。

 

「……見ろ。なんも起こらねえ……」

 

 バグン!!

 

 次の瞬間、透明な球体は電気ポットのコードの端子部分に食いついた。まるで大昔のTVゲームの自キャラ、パ○クマンの様に口を開けて、電気コードの先端部を飲み込んだのである。

 

「うぇっ!?」

 

 球体の内部の電子回路状紋様が、煌々と光り輝く。千雨は泡を食って、その場にへたり込んだ。輝く球体は次の瞬間、ばらばらに(ほぐ)れてソフトボール大の光球になる。

 次の瞬間、光球を中心にコードやパイプ、金属フレームや電子部品群がウネウネと波打ちながら出現。そしてそれは、植物が成長する様子をコマ落とし画像で再生するかの様に急速に成長して、人間そっくりの機械の身体を創り上げていった。

 千雨の前にはいつの間にか、細マッチョのワイルドな感じの身長2m超の青年――中身おそらく機械――が、まるで跪く様な姿勢で存在していた。ちなみに身体の再生中に、衣類まで再構成したため、裸ではない。なお衣装は黒の革ジャンに黒の革ズボン、黒の指ぬき革手袋、黒のブーツと言った、ライダーっぽいスタイルだ。

 彼は胸元から、電気コードの端子を引っこ抜く。端子が刺さっていた穴も、彼が右手で一撫ですると消え去った。千雨は唖然として声も出ない。と、その男性が口を開く。

 

「ありがとう、感謝する。おかげで命拾いした」

「あ、ああ。そりゃ良かった……」

 

 千雨は、そう言うのが精一杯だった。




千雨が拾った球体は、なんかトンデモない代物でした。そしてその球体から発生(!)した機械仕掛け(!!)の青年。いったい何がどうなっているのか!半ばパニックになっている千雨は、どう始末をつけるのか!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。