超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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第010話:訓練、訓練!!

 麻帆良の山中に、2つの声が唱和して響き渡る。

 

「「スーツオン!……プリテンダー!」」

 

 声を発したのは勿論の事、千雨と壊斗だ。2人はバトルスーツ姿へ、そして2体の巨大ロボット、サウザンドレインとサイコブラストへと変身した。ちなみにサウザンドレインは全高10mほどで黒、青、銀のカラーリングの女性型、サイコブラストは全高14mほどで黒、赤、金のカラーリングの男性型と言う違いはあれど、何とはなしに受けるイメージは近い物がある。

 何故いきなりこの2人が変身したかと言うと、千雨の……サウザンドレインの訓練のためだ。2人は休日を使い、超ロボット生命体になって短いサウザンドレインが、その能力を自在に使える様に訓練しようと言う事にしたのである。

 まあサウザンドレインからすれば、無理にその能力を訓練しなくても普通に千雨として生きていければ良かったのだが。だがしかし、先日に麻帆良学園の学園長である近右衛門から聞かされた話では、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の大国家であり麻帆良学園から見ても主筋であるメガロメセンブリア、略称MMと言う国家が、麻帆良学園都市に出現した謎のロボットに興味を持ったとの事である。

 話によれば、MMは偉大なる魔法使い(マギステル・マギ)の認定をしている国家であり、西洋魔法使いにとっては本山的な位置づけであるとの事だった。しかし近右衛門がこっそり教えてくれたところによると、MMの元老院とか言う連中は悪く言ってしまえば老害の面もあり、行き過ぎた正義の側面もあるらしい。近右衛門は、充分注意するようにと言ってくれた。

 

『やれやれ、だよなあ。権力者ってのは……』

『ま、仕方ないさ。それより今は、万が一に備えて能力をしっかり使える様になっておくべきだ』

『了解だ。はぁ……』

『じゃ、訓練開始と行くか。トランスフォーム!』

『トランスフォーム!』

 

 2人は宇宙戦闘機モードにトランスフォームし、大空へと飛び立った。今日の訓練は、空中機動と空戦の訓練である。まずは逃げ回るだけのサイコブラストをサウザンドレインが追いかけ回すだけの、空中での追いかけっこからだ。

 

『は、速え!』

『いや、まだこんなもんじゃないぞ? 最初だから、手加減してるんだ』

『まだ速くなんのかよ……』

 

 サウザンドレインは、必死にサイコブラストに追いすがり、ロックオンする。しかしトリガーを引いて、訓練用低出力レーザーを撃つ前に、サイトからその機影は精妙な空中機動で消え去ってしまうのだ。

 

『火力、破壊力はガタイがデカい俺の方が強いが、機動力では軽量なそっちの方が高い。そっちの有利な点を活かして、俺を追い詰めてみろ』

『そう言っても、こっちゃ素人なんだよ……』

『それは分かるがな。だが緊急事態はいつ発生するか分からん。備えて置くに越した事は無い。俺が造ったそのボディの能力的に、無理な事は言ってないんだ。気合い入れろ』

『……そう、だな。緊急事態がいつ何時襲って来るか、わからないんだもんな。』

 

 サウザンドレインの脳裏に、かつて普通の人間であった頃、突然襲いかかって来た(イタチ)妖怪の姿が()ぎる。その時感じた恐怖もまた。サウザンドレインは、その恐れを振り切るかの様に、エンジン出力を上げた。

 

 

 

 しばらく模擬空戦を繰り広げ、ようやくの事で多少はサウザンドレインの空中機動も様になって来た頃に、サイコブラストは言った。

 

『ううむ、地上に人間を見つけた。こんな山奥までは、滅多に人が来ないと思ったんだがな。見つかるとまずいから、訓練を中断するしか無いか』

『え、こんな山ん中に?』

『常にセンサーには気を払って置く方がいいぞ』

 

 言われてサウザンドレインは、少々慌ててセンサー感度を上げる。すると彼女の感覚に、地上で行われている戦闘……魔法を併用したらしい模擬戦の様子が捉えられた。

 

『な!? ありゃネギ先生に神楽坂、それと長瀬じゃねえか! あ、オマケのオコジョもいやがる』

『何か、模擬戦をしているみたいだな。平然と魔法使ってるって事は、あれは全部魔法関係者か? あのネギ少年は当然として、それと赤髪のツインテール少女も、黒髪のニンジャ少女も』

 

 サウザンドレイン……千雨は、明日菜にネギの魔法がバレてしまい明日菜が巻き込まれている事は既に、学園長である近右衛門から聞いて知っている。近右衛門の諜報能力は、けっこう高いのだ。ネギは知られている事を知らないが。

 と言うか近右衛門は、ネギが明日菜とそして同室の近衛木乃香に魔法をバラしてしまう事を願っていたフシがある、とサウザンドレインは見ていた。まあ木乃香には、未だ魔法バレはしていない模様だが。

 

『神楽坂は、厳密な意味じゃ魔法関係者じゃないけどな。準魔法関係者って言って良いくらいではあるだろな。忍者……長瀬の方は、あいつが魔法関係者だって話は学園長から聞いてない』

『ふむ?』

 

 実は地上でこの模擬戦が行われているのには、訳があった。

 ネギは明日菜と仮契約を結んで、エヴァンジェリンに立ち向かう事を選択したのだ。そして本日が休日である事を利用し、麻帆良の山中深くやって来て、実際に魔法を用いた模擬戦闘訓練を行っていたのである。

 だがそれを、同じく山中に忍術の修行にやって来ていた3-Aのクラスメート、甲賀中忍長瀬楓に見られてしまう。勿論のこと、本来なら楓はネギたちに発見される様な下手は打たない。そしてネギたちが魔法について隠したいと思っている事も、だいたい理解している。

 それ故に楓はこっそり隠形したまま、その場を立ち去ろうとしたのだが……。折悪しく、ネギが範囲攻撃魔法の練習を始めたのだ。結果、楓は練習撃ちされた魔法の攻撃範囲に取り込まれ、吹き飛ばされる。なんとかダメージは、『気』の障壁を張って耐えきったが……。彼女は無様にも、ネギたちの前に姿を晒してしまったのである。

 それからはまあ、お約束の展開と言っていいだろう。必死で謝罪し、魔法についてはどうか秘密にして欲しいと土下座するネギ。こちらこそ覗き見して悪かった、と謝る楓。そしてネギが何やら思いつめているのを見て取った楓からの提案で、彼女が対戦相手としてネギたちと実戦形式の模擬戦を行う事になったのだ。

 まあしかし、そんな事はサウザンドレインもサイコブラストも、知る由も無い。とりあえず普通の飛行機のフリをして、上空を通り過ぎる事にした。

 

『やれやれ。サウザンドレイン、また近いうちに時間を取る。次回は、そうだな……。宇宙戦闘の訓練にでもするか。ちょっと月まで行って来よう』

『つ、月!?』

『ああ。大気圏内ではせいぜい俺がマッハ5、おまえがマッハ5.2ぐらいが精一杯だろうが、大気圏外ならばとんでもないスピードが出せる。宇宙空間での航法についても、訓練やっておく必要があるだろう。

 あと月まで行ったら、俺たちのもう1つのビークルモード、宇宙戦車モードでの訓練もしておきたい。』

『そんなのもあったっけな……』

 

 話しがそこまで進む頃には、サウザンドレインとサイコブラストはとっくにネギたちから遥か離れた位置へ来ていた。もう彼らの姿は、影も形も見えなかった。

 

 

 

 なお、楓の戦闘能力を目の当たりにしたカモが、彼女とも仮契約を結んではと考えた様だったが、ネギ当人の強い反対にあってソレを楓に言い出す事も叶わなかったらしい。

 

 

 

 そして数日後の事である。この日は学園都市全体のメンテナンスの日で、20:00から深夜24:00までの間、麻帆良全体が停電になるのだ。そんなわけで何もできない日であるから、どうせであればこの日に宇宙戦闘の訓練をしようと言う事になった。

 朝のうちに千雨は寮監に、親類のところに宿泊すると外泊届を出した。そして放課後、彼女は学校から直接に壊斗の家へと向かう。

 

「こんちはー」

「よお、来たな。じゃあ早速月へ向かうか」

「月旅行かぁ……」

 

 2人は壊斗の家の裏庭に出ると、トランスフォーマーの姿に変身する。

 

「「スーツオン!……プリテンダー!トランスフォーム!」」

 

 そして2機の宇宙戦闘機に姿を変えた2人は、マッハ5まで加速して天空を目指す。いや、千雨であるサウザンドレインは、その気になればもうちょっと速く、マッハ5.2まで出せるのだが。そして大気圏離脱。

 

『うっわ……。地球って本当に青い……』

『ま、美しい星だな。ただ大昔のセイバートロン星とかも、メカニックが煌く美しい機械惑星だったがな』

『大昔の?』

『ああ……。馬鹿な戦争で荒れ果てて、せっかく復興したと思ったらまた戦争で吹っ飛んだ。……まあ、もう帰る事もない並行異世界の惑星だ』

『……』

 

 2人はしばし黙って飛び続けた。月がぐんぐん近づいて来る。

 

『……ええと。光速の0.1%まで速度が出てやがるな……』

『ウラシマ効果とかあるからな。厳密には少し感覚が狂って来るんだがな。もっと限界まで全力出せば、亜空間フィールドとか展開する必要があるけど、光速超えるスピード出せるぞ。所謂ワープだな。

 ああ、だけど宇宙戦艦ヤ○トのワープじゃなく、スタートレ○クのワープドライブ的な奴だな。エネルギー食うから、そんなに長い時間はワープできんが』

『うわぁ……。何だよ、そのトンデモ性能』

『地球の科学者とかに見せたら、卒倒するかもな』

『超や葉加瀬には見せらんねえな……』

 

 サウザンドレインとサイコブラストは、そのまま月面までカッ飛んでいった。ちなみに地上各国のレーダーに引っ掛かる様なヤボはしない。彼らはサイコブラスト謹製の強力なステルスシステムを、自身のボディに組み込んでいるのだ。視覚的にはともかく電波的には、彼らは透明に等しい。

 もっともソレを超える超強力なセンサーシステムも積んでいるので、彼ら同士は互いの位置をしっかり感知できているが。2人はロボットモードにトランスフォームし、月面に降り立つ。場所は地球から見て裏側に当たる位置だ。

 そこには大規模な鉱山を兼ねた、サイコブラストの秘密基地であるムーンベースαが存在していた。なおこのムーンベースαも未だ建設途中であり、小型ロボットが作業のために右往左往している。

 

『時々居なくなると思ってたら、こんなもん建設してたのか。ムーンベースαって……。スペース19○9かよ』

『核廃棄物の集積場とかは無いから、大爆発で月が軌道を外れて宇宙を彷徨う羽目にはならんから安心していいぞ』

『……見たのか、スペース○999。そう言や、さっきもスタ○トレックとか宇宙戦艦○マトとか話題に出してたな』

『サンダ○バードも借りて来て視聴したぞ。キ○プテン・フ○ーチャーのアニメ版も。どれも初期のSFだけあって、色々と突っ込みどころは多いが、なかなか面白かった』

 

 2人はムーンベースαでエネルギーを補給すると、訓練を開始する。月近傍の宇宙空間で、空間戦闘の訓練。月面に降りて、宇宙戦車モードでの地上戦訓練。更にはロボットモードでの射撃戦、格闘戦などの訓練と、内容は多岐に渡った。彼等は再度、ムーンベースαでエネルギー補給する。

 

『はっ、へっ、はっ……。つ、疲れた……』

『ほら、エネルゴンキューブ。あっと言う間だったが、随分と技量が向上したな』

『そうか? あんたに比べれば、まだまだ全然だと思うんだが』

『年季の入り方が違う。そんなに簡単に追いつかれちゃあ、たまらんよ。ははは。さて、じゃあ後はのんびりと宇宙空間眺めながら、地球へ帰るか。

 次回は小惑星帯で、適当な小さな小惑星相手にして、必殺技の練習しよう』

『必殺技あるのか、このボディ……。あ、ほんとだ。戦闘プログラムの項目に、必殺技がありやがる(滝汗)』

 

 彼らは連れ立って、月面を離れて地球へと向かう。月が徐々に遠くなり、青い水の惑星(ほし)が段々と大きく見える。

 

『ほんとに綺麗だな……。宇宙飛行士とかが宇宙に出て、その後の人生が変わったとか言うのが分かる気がする』

『地球人的な感覚だと、そうだろうなあ。俺たちトランスフォーマーは特殊事情無い限り、宇宙空間には慣れ親しんでるからな、基本』

 

 そして彼らは、地球の夜の側で大気圏に突入。そのまま日本上空の麻帆良へと飛んだ。

 

『……ほんとに、あっという間だな。月~地球間を、こんな気軽に往復していいんだろうか』

『別にいいさ。……む? 麻帆良湖の麻帆良大橋に、先日のネギ少年が居るな?』

『え?』

 

 煌々とライトアップされた麻帆良大橋のたもとを、ギャーギャー喚き散らしながらネギ、明日菜、カモ、そしてエヴァンジェリンと茶々丸が歩いている。いや、ギャーギャー騒いでいるのはエヴァンジェリンだが。

 

『あー、何やら全員ボロけちまってんなあ。っつうか、何か険悪って雰囲気じゃねえな。決着がついて、仲直りでもしたか?』

『かも知れんな。ネギ少年が元気だって事は、血を限界まで吸われたりしたわけでも無いんだろう。と言う事は、ネギ少年が勝ったのか?』

『みたいだな。はぁ……』

 

 サウザンドレインは、思わず安堵の溜息を吐く。先日千雨としてちょっと肩入れした事もあり、彼女はネギの事を少し心配していたのだ。その様子を、サイコブラストは微笑みつつ見ていた。……いや、宇宙戦闘機モードだから顔は無いし、微笑んだとか言っても内心での話なのだが。

 2人はそのまま上空をフライパスし、壊斗の家がある山中へと向かった。ちなみに彼らが知る由も無いが、エヴァンジェリンの命を受けた茶々丸が麻帆良結界を落としたせいで、妖怪やら何やらがこれを機会にと大発生したらしい。そのため、それを退治するために魔法関係者が大勢、麻帆良中をうろつき回っている。

 そのせいでサウザンドレインとサイコブラストは、魔法関係者に見つからずに着陸して千雨と壊斗に変身する場所を探すため、少々苦労した。




と言うわけで、ネギとエヴァの戦いそのものには千雨たちは介入しませんでした。学園長とも約束してましたからね、ネギに任せるって。前話での介入は、微妙なラインでしたけど。
そして千雨のトランスフォーマーとしてのボディは、トンデモ性能です。超と葉加瀬には見せられませんねー。
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