超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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第011話:京都への道

 麻帆良の大停電から翌々日、放課後の事である。千雨は壊斗と共に、学園長室へ向かっていた。

 

「悪いな壊斗、付き合ってもらって。本来呼ばれたのは、わたしだけでも良いって話だったんだが」

「かまわん。ちょうどヒマだったしな」

「しかし何の用なんだろうな? わたしより先に、ネギ先生も呼ばれたみたいだけど」

 

 彼らが廊下を学園長室へ向けて歩いていると、学園長室の方から1人の子供が元気いっぱいと言う風情で歩いてくる。誰あろう、千雨の担任教師である子供先生ネギ・スプリングフィールドだった。ちなみに彼は、オコジョ……カモを肩に乗せていたりした。

 千雨は軽く頭を下げ、それでやり過ごそうとした。だがネギの方が話しかけて来る。

 

「あ、どうも長谷川さん。放課後にこんなところで、珍しいですね。どちらへ?」

「あー、学園長先生に呼ばれてるんですよ」

「お隣の方は、どちら様ですか?」

 

 壊斗はネギを見知ってはいるが、ネギの方からは面識が無い。そこで彼は、ネギの事を知らない様に装う。

 

「む。長谷川、大体予想はつくが、この少年は?」

「あー、壊斗。あんたが予想してる通り、うちの学校のうちのクラス、3-A担任の、噂の子供先生ネギ・スプリングフィールド教諭。

 先生、こっちはわたしの知人で、水谷壊斗と言います。じゃ、先生、わたし等はちょっと急ぐんで」

「あ、はい、お手数かけてごめんなさい。水谷さんもすみませんでした。じゃあまた今度」

 

 別れの挨拶を送って来るネギに、千雨と壊斗も応える。

 

「はい、では」

「ああ、これで失礼する」

 

 千雨はネギが起こすトラブルに今回は巻き込まれずに済んだため、ほっと息を吐いて歩き出す。その様子を、壊斗は生暖かい笑みを浮かべつつ見遣り、これもまた歩き出した。

 

 

 

 ここは学園長室。近右衛門が用意した茶菓子を食べ、茶を飲みながら、千雨と壊斗は近右衛門の話を聞いていた。

 

「実はのう……。東西の魔法使い組織の仲違いを解消すべく、京都への修学旅行に乗じてネギ君に西……関西呪術協会の長への親書を持たせたんじゃ」

「近衛詠春さんでしたか? たしか学園長にとって、娘婿でしたよね」

「西の組織の長と、東の組織の理事に親類関係があると言うのに、組織そのもの同士は冷戦状態か。何と言うか、業が深いな」

「壊斗殿は何時もながらキツいのう……」

 

 近右衛門は溜息を吐きつつ言う。

 

「ふう……。まあ、その親書が届いたところで、一足飛びに東西の関係が改善されるとは思えん。実際婿殿……詠春も詠春率いる東西融和派も頑張ってはおるのじゃが。しかし西の者たちはけっこうな割合で東を毛嫌いしておる者がおるからの。

 じゃが、形式だけでも親書が届けば、しかも届けたのがナギの息子であるネギ君であらば、西の者たちも表立っては文句は言えぬ。東西融和の第一歩……せめて半歩ぐらいにはなるじゃろうて。

 オマケと言っては何じゃが、ネギ君にとっても良い経験となってくれるじゃろう。たぶん。きっと。おそらく。じゃと良いんじゃが」

「「言い切れよ」」

「オホン。それで諸君ら、と言うか長谷川君を今回呼び出した理由なんじゃがの」

 

 千雨は近右衛門の言葉に、眉を顰める。近右衛門は真面目な顔で言葉を紡ぐ。

 

「西の連中の中には、麻帆良へ攻撃を仕掛けて来る様な過激な者もいる。そういう連中が、東西の手打ちの体勢が形だけとは言え整ってしまう事に危機感を抱き、何かしら妨害をしてこないとも限らんのじゃ。

 まあ過激派も、一般の生徒を巻き込む様な真似はせぬぐらいの良識はある……じゃろうな? 良識あると思うのじゃが。巻き込まれん様に注意しておくれ。そして……。

 それと矛盾してはおるし、虫のいいお願いだとは重々承知の上なんじゃが……。もし万一ネギ君や、木乃香の護衛をしておる刹那君……桜咲刹那君の手に余る様な事態が起きた際には、こっそりと露見しない程度にで良い。そこはかとなく手伝ってやってくれぬかの?」

「……修学旅行の行き先、ハワイに投票すれば良かったですかね。まあ、今更ですけれど。桜咲って、お孫さんの護衛だったんですね。思い返すに護衛としては微妙でしたけど。言っちゃ悪いとは思いますが。

 相手が一般人を巻き込まないだろうと高を括るのは、まずく無いでしょうか? それに3-Aの連中は、自分から巻き込まれに行く様な連中ばかりですし。まあそう言う連中はともかく、近衛やその他の巻き込まれる連中を見捨てる、と言うのは流石に良心が痛むので構いませんがね」

「済まぬのう……。龍宮君にお願いした時と同額の謝礼は支払うし、それ以外にも何かしら、お礼はするとしよう」

 

 ここで壊斗が口を挟む。

 

「まあだが、可能な限りハセガワ自身での介入は控えた方がいいのも確かだな。修学旅行当日は、俺がこっそり付いて行こう。体内の通信装置を使って呼んでくれれば、すぐ助けに入るぞ。

 ハセガワはできるだけ、普通の人間のフリをしていればいい。そうもいかない場合は、バトルスーツ姿なりロボットモードなり、ハセガワだと思われない姿でネギ少年たちの手助けをするべきだな」

「むう……。申し訳無いのう、かたじけない。まっこと済まんのう、結局魔法使いのいざこざに巻き込んでしまいかねない事態になってしもうて。これが関西……京都でさえ無くば、魔法先生や魔法生徒を動員する事も、君たちに迷惑をかけぬ事もできたのじゃが」

 

 千雨は申し訳なさそうな様子の近右衛門に、笑って応える。

 

「かまいませんよ、学園長先生。それにお互い、持ちつ持たれつですからね。わたしたちの事について色々裏で手を回してくれているのは、壊斗から聞いてます」

「いや、それでも申し訳無いのう」

 

 その後2~3の雑談の後、彼らは解散する。なお千雨と壊斗はお土産に、栗羊羹と芋羊羹の詰め合わせを貰って帰った。

 

 

 

 そして修学旅行当日である。千雨が乗った新幹線の上空を、宇宙戦闘機形態のサイコブラストが低速巡航で飛翔していた。彼らは体内の通信装置を使い、連絡を取り合う。

 

『あー、サイコブラスト。魔法の類への対抗措置の1つとして組み込んでもらった『気』や魔力に反応する新型センサーだけどさ。うちのクラスはなんかソッチ系の奴らが妙に多くて、センサーが反応しっぱなしなんだが』

『あらかじめ登録した『気』や魔力のパターンは反応レベルを落とせる様にしてあるから、その機能を使えばいい。』

『なるほど……。って、ザジが反応してるよオイ。って言うか、この反応の仕方は魔法使いじゃなく、何かしらの魔法的生き物の反応だよ……。

 え゛っ……』

『どうした?』

『ザジににっこり微笑まれた。いつも無表情だから、ちょっと驚いた。どうやらこっちが気付いた事に、気付かれたっぽい』

 

 千雨は引き攣った笑顔をザジ・レイニーデイに返す。ザジの側も、頷くとまた視線を別方向に向けた。千雨はほっと息を吐く。

 

(あー、しかしなー。龍宮と桜咲が反応するのは分かってたけど、あいつらもなんか反応が微妙だよな。下手するとあいつらも、純粋な人間じゃない可能性が……。

 いや、それよりビビったのは春日の奴が魔法使いな反応を返して来た事だな、うん。奴も魔法生徒とかだったのか。いや、能力的には低そうだけど。……!?)

 

 その時千雨は、そこそこに強力な反応を知覚する。クラスの連中とは、違う反応だ。千雨はそちらにちらっと視線を向けた。

 

『……サイコブラスト、もしかしたら敵じゃねえかって奴を見つけた。車内販売の売り子だ。それでもって、注意して周囲を調べて見たら、わたしらの乗ってる車両のあちこちに、弱めだから気付きにくかったが大量に……。そいつと同質の『気』だか魔力だかの反応がある』

『何?』

『わたしの座席の下にも、なんかあるな。……これは、呪符? よく漫画やなんかで、陰陽師が使う様な呪符がこっそり、おわぁ!?』

『ハセガワ!? どうしたハセガワ!』

 

 泡を食った千雨が体内の通信機で叫ぶ。

 

『カエルだ! 呪符がカエルに化けた! それだけじゃねえ! 新幹線の車内に大量にカエルが!』

『おちつけ! 陽動の可能性がある! とりあえず周囲にまぎれて普通に泡を食ってるフリをしておくんだ!』

『わ、わかった!』

 

 とりあえず偽のカエルを全て捕まえて、ひとまず新幹線車内の騒ぎは収まる。だがその時、千雨の視界を『気』だか魔力だかの反応があるツバメが飛び過ぎようとした。そのツバメは、何かしら封書を(くちばし)に銜えている。いかにも不審すぎた。

 千雨は瞬時に脳裏でツバメの軌道などを計算すると、カエル(偽)をうっかり逃がしたフリをする。

 

「うわ、カエル逃げた! このっ!」

 

ばきっ!

 

 こっそり戦闘プログラムを起動し、千雨はカエル(偽)を手刀ではじき飛ばす。飛んだ先には、例のツバメがいた。ツバメとカエル(偽)は衝突し、両者とも撃沈、新幹線車内の通路へと落下する。

 

「あ、長谷川さん!」

「ネギ先生!?」

「この辺にツバメが飛んで来ませんでしたか!?」

「なんかその辺に落っこちたみたいですけど」

「落っこち……た?」

「千雨さんが、逃げたカエルを殴り飛ばしたら、それが飛んできたツバメ……ですか? それに命中したです」

 

 傍らで見ていた綾瀬夕映が、状況をネギに教えた。ネギは慌てて床を見遣る。そこには2枚の呪符と、ツバメが持って逃げていた封書……ネギが近右衛門から預かって来た、関西呪術協会への親書が転がっている。

 

「あ、よかった! 僕の親書……。こ、これは!」

「いったい何が……。??? これは物の本で見た覚えがあるです。呪符、と言う奴でしょうか?」

「あ、夕映さん、こ、これは」

「あー、何かの玩具(オモチャ)だろ?それより先生、その手紙は何です?」

 

 千雨は夕映の注意を呪符から逸らすために、親書の方へその興味を誘導せんとした。夕映は学業成績こそ(かんば)しくないものの頭の回転は速く、なおかつ興味のある事についてはとことんまで突き詰める質である。呪符に興味を持たれでもしたら、しつこくソレについて調べ回りかねない。

 

「あ、いえ! これはちょっと京都の方の、学園長先生のお知り合いへ渡す書簡でして!」

「へえ、修学旅行中にもお使いですか。先生も大変ですね」

「そうなんですよ、あははは」

 

 千雨はちろっと横目で夕映の様子を窺う。夕映は、ネギが慌てて拾い上げた親書……ではなく、これもネギが拾い上げた呪符へと目を遣っている。千雨は内心で溜息を吐く。

 

(こりゃ、駄目か? 綾瀬の奴、そんなすぐには魔法に気付くとは思えねえけど、それでも疑念を持ったのは間違いねえ。

 なんだよ関西方の術者、過激派ってのはよ。一般人巻き込まない良識は、やっぱり無えのかよ。まあ……。過激派でも、過激な事やってこの程度なら……。でも一般人の前で魔法の類、呪術とか使うなよ。しかし綾瀬の事は、頭痛えなあ……)

 

 比喩的な意味で頭痛のする頭を抱えながら、千雨は自分の座席へと戻った。

 

 

 

 そして新幹線は京都駅に到着する。いよいよ波乱万丈の修学旅行の始まりである。

 

『……いや、波乱万丈なんていらないから。平穏無事に終わってくれねえかなあ。無理だろうなあ』

『たぶんな。注意しておくに越したことは無い』

『だよなあ……』

 

 千雨の心は、休まらない。能天気に騒ぐクラスメートを見遣りつつ、彼女は溜息を吐いた。




ちなみに、せっちゃん……桜咲刹那サンは、ツバメの式神に親書が奪われたのを察知。ツバメの飛ぶ先の車両に先回りしていましたが、何時まで経ってもツバメが来ないので待ちぼうけをくらいました(笑)。
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