超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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第017話:色々と、後始末

 今、麻帆良学園本校女子中等部の学園長室には、重苦しい雰囲気が漂っていた。学園長の机の前にはネギが項垂れ気味に立っており、そして机の上ではケージに入れられたカモがガクブル状態であった。

 何があったかと言うと、ネギが学園長にカモの行動について、定期報告をした結果である。カモが修学旅行中に、3-A女生徒を(たぶら)かして騙し討ち同然に仮契約(パクティオー)させた事は、大きな問題であった。しかもカモは、ネギにもまったく伝えずにネギをも騙す様な形で計画を遂行していたのだ。

 

「ふうむ、アルベール・カモミール……。お主の罪状は明らかじゃ。されど、この件に於いてはネギ君も、監督不行き届きの(そし)りは免れんぞい?」

「は、はい……」

「いいかの、ネギ君。君はアルベール・カモミールを保護観察と言う形で引き取った。これは決して、無罪放免と言う意味ではないぞ? 理解しておるね?」

「はい……」

 

 実はカモは、ネギに土下座して、この件を報告しないでくれる様に頼んでいたりする。だが仲間内にダダ甘のネギがこれを学園長に報告したのは、刹那の助言によるものだ。どうせ刹那や龍宮は、学園長に修学旅行での全ての事件について報告せざるを得ないから、ネギが報告しないと矛盾が生じる、と。

 そして更に、この件でネギが報告しないとしたら、それはネギが学園長の信頼を裏切る事になる、と。そう刹那はネギを、懇々と言い諭したのだ。そしてネギは、断腸の思いでカモの所業について学園長に報告したのである。

 近右衛門は語る。

 

「ネギ君、君はアルベール・カモミールの素行をチェックし、悪さをしない様に見張る義務があった。その義務を負ったからこそ、君はアルベール・カモミールを引き取る事ができたんじゃ。だが、君はその義務を放棄した」

「……はい」

「フム……。反省はしておるようじゃの。ではネギ君は、減俸じゃ。ただし魔法使いとしての事件で、通常の教員としての給与を減らすのは、それこそ魔法の秘匿義務に引っ掛かる。それ故に、関東魔法協会所属見習い魔法使いとしての手当を、30%減俸3ヶ月じゃ。」

「え、ええっ!? そんな手当、あったんですか!?」

「今までも支払われておったぞ。ただし直接では無しに、英国(イギリス)の従姉殿じゃったかの。そのネカネ殿が、ネギ君の将来に向けて積み立てておるがの」

 

 そして近右衛門は、カモの入ったケージに顔を向けて、椅子から立ち上がる。右手にはいつの間にか、魔法使いの杖を構えていた。

 

「アルベール・カモミール……。お主に対する罰は……これじゃ」

「ひ……!!」

「か、カモ君!」

「ムラクモ・ルラクモ・ヤクモタツ……」

 

 近右衛門は、精神を集中して延々長ったらしい呪文を唱える。そして呪文を唱え終わった瞬間、杖から雷光の様な輝きが迸り、カモを直撃した。

 

「ぎゃぴいいい……いいい……い、あ、あれ?」

「アルベール・カモミール。お主には、『オコジョ刑』が相応しかろうて」

「へ?」

「え?」

 

 カモは一瞬呆気に取られる。ネギもまた、呆然とした。

 

「な、なーんでぇ! 学園長、冗談が過ぎるぜ! ありがてえ! 最初っから赦してくれるつも……り……い?」

「わしがふざけて『オコジョ刑』を選んだとでも思うのかの?」

 

 近右衛門は、冷たい目でカモを見遣る。カモは冷や汗が流れて仕方がない。ネギはわけがわからない様子であったが、突然何がしかに気付いた。

 

「あ!」

「ネギ君は気付いたかの。そうじゃ、お主は『オコジョ妖精』ではなく、『オコジョ』になっておるのじゃ。当然ながら、『オコジョ妖精』特有の魔法も何も使えん。ただの『オコジョ』じゃ。ただし、人語は解するがのう。

 それだけではない。『オコジョ妖精』はビールなど人の飲食物を飲み食いもできる。お主もこれまで、人間の食文化を随分と楽しんだじゃろ? なれど、お主の消化器官は今は既に、ただの『オコジョ』の物じゃて。これからは生肉かペットフードで我慢するんじゃの」

「な!?」

 

 がびーん、とショックを受ける元オコジョ妖精にして現オコジョ。近右衛門は重々しく続ける。

 

「もしお主が反省し、真摯に己の罪と向き合い、必死に償ったその時は、わしはお主のオコジョ化を解く『かもしれない』。良いか? あくまで『かもしれない』じゃぞ? わしは……わしらは、お主を信用せん。お主が反省したフリでこちらを騙そうとするやも知れぬからのう。

 けれども、お主がいつかオコジョ妖精に戻りたくば、必死の思いで償いに全てを賭けるのじゃ。さなくば……。お主はただの一介のオコジョとして、何処ぞで屍を晒す事になろうよ……」

「ひ、ひでぇ、ひでぇよ……」

「何が酷いものか」

 

 そして再度椅子に腰かけた近右衛門は、もはやカモを一瞥(いちべつ)もせずに書類の束を捲る。そして彼はネギに問いかけた。

 

「ネギ君や。君の報告書では、此度の事件に巻き込まれ、已む無く魔法についてバレてしまったのは、木乃香、宮崎君、綾瀬君、古君となっておるの。そして君が車に轢かれかけた猫を魔法で救ったのを見られた、朝倉君か。まあ、この娘らに関しては、事情が事情じゃ。情状酌量の余地は大いにある。

 じゃが、刹那君や龍宮君……この娘たちは元より魔法関係者じゃったが、君はまだ見習いであるからの。時が来るまでは、と思い教えていなかったのじゃ。まあ、その刹那君や龍宮君じゃが、彼女らからの報告書では、他に前線で共に戦った人物として……」

「……学園長先生!!」

「む?」

 

 ネギは、目を瞑って勢いよく、頭を深々と下げる。近右衛門はそれをただ見つめていた。ネギは必死で叫ぶ様に言う。

 

「明日菜さんと長瀬さん、神楽坂明日菜さんと長瀬楓さんは、僕が僕のミスで、修学旅行よりもずっと以前に魔法をバラしてしまっていたんです! 僕は、卑怯者です! 露見するのが恐ろしくて、彼女らが魔法について黙っていてくれると約束してくれたのを良い事に、その事実を今の今まで黙っていたんです……!!」

「……どのようにして魔法をバラしてしまったのか、説明してくれるかね?」

「は、はい……」

 

 そしてネギは、石段から落下する宮崎のどかを救助するために魔法を使ったところを明日菜に目撃された事、エヴァンジェリンとの戦いに備えて山奥で魔法戦闘の訓練をしていたら隠形していた楓に目撃された事を近右衛門に話す。近右衛門は、再度椅子から立ち上がると執務机を回り込み、ネギに近寄った。

 そして彼は、右手をネギに向けて伸ばす。

 

「……え?」

「よく話してくれたの、ネギ君。わしはのう、ネギ君が話してくれるのを、ずっと待っておったんじゃ」

 

 近衛門の手は、ネギの頭を優しく撫でていた。ネギは驚き、身動きが取れずにそのまま撫でられ続けたままになっている。

 

「誰にでも、失敗はある。わざとやったんじゃ、ないんじゃろう? ことに、明日菜君の事は人命救助のため魔法を使ったんじゃ。まあ、一応罰は下さねばならんが、だからと言って情状酌量の余地は充分にあるわい。反省もしておろう?」

「は、はい」

「どっかの誰かと違って、悪い事を悪いとも思わずに意図的に罪のラインを踏み越えたわけでは無いんじゃ。罰も、そんなに重くするつもりは無いぞい?

 ただし、この失敗をしっかりと心に刻んで、必ずや今後に活かすんじゃ。それに、打ち明けるのが遅くなった事も、しっかりと反省を心に刻むんじゃぞ?」

「う、うぐ……。ひくっ……。はっ、はいっ!!」

 

 そして近右衛門は言う。

 

「ネギ君の失敗は、うかつに魔法に頼り過ぎた事にある。よって罰は、1週間の魔法封印じゃ。この1週間、魔法無しで暮らしてみるがええ。不便に思ったら、そこがネギ君が不必要に魔法に頼っていた部分じゃと思いなさい。良いな?」

「はいっ!」

 

 そしてネギは近右衛門の手により、1週間の魔法封印をかけられる。その後ネギは、オコジョになった元オコジョ妖精の入ったケージを持って、学園長室を退出して行った。

 

 

 

 そして近右衛門は、隣部屋に向けて声を上げる。

 

「……こんなもんで、どうじゃったかのう?」

「良いと思いますよ」

「流石の狸だな、近衛学園長」

「壊斗殿はキッツいのう……」

 

 隣の部屋との間にある扉を開け、入って来たのは言わずと知れた千雨と壊斗であった。

 

「しかし、あからさまに贔屓(ひいき)が明白だったな」

「そうじゃよ? 贔屓(ひいき)しとったよ? 第一、目先の欲望のためなら恩義のある兄貴分を利用する事すらも辞さない愚か者と、何処か危ういが将来有望で素直で優しく真面目な少年。比べるべくもないわい。ふふふ」

「確かにその通りだな、くくく」

 

 笑い合う古狸と鋼鉄超人を横目に、千雨はネギが出て行った扉を見遣る。

 

「やれやれ。ネギ先生個人の問題は、何とかなったな……」

「お主らが此度のシナリオの原案を持って来た時は、何かと思ったがのう」

「ネギ少年には、まあ自覚と反省が必要だからな。ただし今のままでは下手すると、こぢんまりと小さく纏まってしまう可能性もあるなあ。彼には教え導く師が必要だな。

 近衛学園長、あんたなら能力的にもネギ少年を教導できるんじゃないか?」

「そうも行かぬて。わしは他に仕事が多過ぎるわい。ネギ君の師か、誰が良いかのう?」

 

 溜息を吐いて、千雨が愚痴る。

 

「他にも問題がありますよ、学園長先生。他の面々はともかく、綾瀬は性格的にまずいかも知れません」

「うむ……。魔法使いの秘密を知りたいとか、魔法使いになりたいと言いそうじゃのう。いや、どうしてもなりたいと言うならば、迎え入れても良いのじゃが」

「いえ……。綾瀬の場合、覚悟も無しに突っ走ってしまう可能性が。自分では覚悟しているつもりになって……」

「覚悟が無くて、興味本位だけで入り込まれるとまずいのう……」

 

 千雨は更なる問題点についても語る。

 

「それと、綾瀬と宮崎が同時に魔法関係について知ったのもまずいかと。あいつらの場合、何時まで早乙女の奴に秘密にしていられるか……」

「そう言えば、朝倉和美君についてはどうなのかのう? やりたくは無いが、あまり騒いだり嗅ぎまわったりするならば、彼女の記憶をいじらねばならんかもと危惧しておるのじゃが」

「……それについては、お任せしますよ。正直、あいつとは合わない事を思い知らされまして。関わり合いになりたく無いんですよ。本当なら、あのオコジョとも関わりたく無いんですが、ネギ先生はちょっと色々裏事情を知らされて憐れになったんで……」

 

 近右衛門が、溜息を吐く。彼は首を左右に振りつつ、残念そうに言う。

 

「朝倉君が何をやって何を言ったかは、刹那君から報告を受けておるよ。長谷川君の気持ちも分からんでも無い。やれやれ、愛情とか親愛とかの反対は、憎しみではなく無関心だとは良く言ったもんじゃ。

 わかった。朝倉君については、まずは監視に留めてその行いを判断するとしよう」

「まあ、この問題についてはこのぐらい、か? では別件だが。流石に今回の旅行では俺たちが働き過ぎた。そうせざるを得なかったんだがな」

「うむ……。それに関しては申し訳なく思っておるよ。君らへの報酬増額は、間違いなくさせてもらうでのう」

 

 深々と千雨、壊斗に頭を下げる近右衛門だった。




ちなみにカモは、ただのオコジョになった今も、ネギによる保護観察は解かれていません。ネギもこれからはしっかりと、細大漏らさずカモの行動を報告してくれるでしょう。

ちなみに描写を削りましたが、朝倉さんは見た目少し大人しくなってます。更に内面の精神的には、何やらけっこうこたえた物があった模様。成長して一皮むけてくれるといいんですがね。
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