超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

24 / 56
第022話:愛すべき日常

 金属製のはずの胃が痛い。血流は検査などを誤魔化すためのフェイクのはずなのに、ズキンズキンと拍動の様に頭痛が襲う。理由はただ一つ。3-Aの面々が能天気過ぎるからだ。千雨は今日も、必死の思いで我慢に我慢を重ねていた。

 麻帆良の人々が学園都市を覆う結界により、おおらか過ぎる気質になっている事は、彼女も理解している。それ故に3-A連中が馬鹿をやっても、以前程にはそれに腹を立てる事は無くなっている。だがそれにも限界と言う物があった。

 千雨はダシに使ってしまう事をその人物に内心で謝罪しながら、こう言う時に効果覿面(てきめん)の魔法の言葉を口にする。

 

「手前ら。HR(ホームルーム)そろそろ終わるし、騒いでると新田先生が来るぞ」

「「「「「「!! 皆、撤収、撤収ーーー!!」」」」」」

 

 3-A連中は、麻帆良学園都市全学園合同の学園祭にて、メイドカフェ『アルビオーニス』を出し物に選んだのだ。そしてその練習として、HR(ホームルーム)の時間にネギを客代わりにして接客をしていたのである。

 だがそれは、練習台にされたネギに取って試練の時だった。はっきり言おう。3-A連中は何か勘違いをしている。いや、ふざけてわざと間違った風を装って、騒いでいたのかも知れない。ぶっちゃけ、メイドカフェではなくボッタクリバーだった。ネギはかなり大量の現金を毟られたのである。

 

「……おい、古。いくら何でも、無理矢理に練習台にしてアレだけ毟るのは犯罪だろ」

「ははは、冗談アルよ。ネギ坊主、返金するから額を確認するアルね」

「あはは、どうも。まあ、返してもらえなかったら新田先生に泣きついてましたが」

「……ハハハ、冗談、アルよ、ね?」

「あはは。」

「ハハハ……。ハイ、お金アル」

「「「「「「ははは……」」」」」」

 

 その場は、引き攣った様な暖かい笑いに包まれる。ネギの張り付いたような笑顔(アルカイック・スマイル)と、背後に響くゴゴゴゴゴゴ……と言う擬音が、皆は余程にお気に召した様だ。千雨も思う。ネギが3-Aなんか比べ物にならないシビアで強烈であるらしい師匠に弟子入りしたのは、ある意味で良かったのだろう、と。

 なお千雨はネギの師匠(マスター)、アルビレオ・イマ……自称クウネル・サンダースの事を、まだ直接には知らない。おそらくは知らない方が幸せかも知れないが。

 

 

 

 昼休みに、焼きそばパンを齧りながら千雨は教室の片隅を見遣る。そこではクラスどころか麻帆良学園本校女子中等部、いや麻帆良全体での最強頭脳と呼ばれる留学生、超鈴音が、同じく天才的な少女科学者として知られる葉加瀬聡美と共に、何やらノートPC(パソコン)の前で唸っていた。その傍らには、珍しく(マスター)であるエヴァンジェリンから離れて、茶々丸が佇んでいる。

 千雨はふと、興味にかられて話しかけた。

 

「お前ら、何やってんだ?」

「長谷川さん、こんにちは」

「オオ、千雨サン。いや、ネ。ちょっとこの科学に喧嘩売ってる様な理不尽な変形ヲ、検証してたヨ」

「どう考えても、こんな変形でこんな性能が成立するわけが無いんですよ……」

 

 そして千雨は、ノートPC(パソコン)の画面を覗き込む。そして、危うく吹くところであった。そこには、自分のもう1つの姿であるサウザンドレインと、壊斗であるサイコブラストの姿が映し出されていたのだ。そして様々に注釈が書き込まれた、彼女らの変形(トランスフォーム)中の動画が別ウィンドウで表示されている。

 

「こ、これって……。お前らの新開発か?」

 

 必死でとぼける千雨だったが、幸い超たちは何と言うか憔悴しており、その様子に気付かない。いや、茶々丸だけは平常心を保っていた模様ではあるが。

 

「だったラ、ドレだけ良いカ……。コレは茶々丸の記憶ドライブから抜き出した動画情報ネ。修学旅行でネギ坊主たちの窮地を救ったラシイんだヨ。」

「えっ……。あ、い、いや。修学旅行でネギ先生たち何かあったのか?」

 

 修学旅行でネギたちがピンチだった事は、千雨は知らない事になっている。それを言うならば超たちもまた知らないはずなのだが、学園長曰く超たちは千雨たちとはまた違う特殊事情で、魔法使い側の事情を幾ばくかなりと知らされているらしい。

 まあ、超は『何も知らない女生徒である千雨』に対し、ヤバい事を口走ったのに気づいたらしく、慌てて言い繕った。

 

「ア、いや、ちょっとネ。大したコトじゃ無いらしいけどネ。何かしら、自由行動だたかナ?そこでナニかあったっぽいヨ。イヤ、詳しくは知らないケド。

 ダケド……。シカも、未確認情報ダガこのロボットたちが麻帆良に出現したと……。早乙女サンの情報ダカラ、怪しいのでアルけどネ。なんと、これらは瞬間移動(テレポート)したそうなんだヨ。……麻帆良祭期間中でも無いンだが」

「超、麻帆良祭と瞬間移動(テレポート)、何の関係があるんだ?」

「世界樹の大発光ガ……。あ、イヤ、言葉の綾ヨ。気にしないで欲しいネ」

「でも、どうやればこんな嘘くさい変形が……」

 

 葉加瀬の言葉に、千雨はちょっとカチンと来る。嘘くさいと言われるのは、何となく気に入らない。第一、自分たちのボディの事であるのだし。

 

「……なあ超、葉加瀬。お前らが自分の科学力とやらに自信持ってるのは分かる。けどよ? 『目の前にある』事実を認めないのは、科学的な態度なのか?」

「「!!」」

 

 超と葉加瀬は、がびーんと衝撃を受ける。

 

「まあ流石に瞬間移動(テレポート)とかは早乙女が言ってるだけで証拠は無いんだろうが。

 でもなあ超、葉加瀬。お前らの科学力は凄えがよ? そこが科学の終着点なのか? お前らは悔しいかも知れんが、この画像のロボ? これがよ、お前らより先を行ってる科学の産物だと言う、それだけの事じゃねえのか?」

 

 超と葉加瀬は、がちょーんとショックを受ける。

 

「お前ら、科学に浸り過ぎて、科学に慣れ親しみ過ぎて、逆に『科学する心』を忘れちゃいねえか?」

 

 超と葉加瀬は、ドッギャーンとダメージを受け、床に(くずお)れた。

 

「何テ……。何テことカ……!」

「わたしは……。わたしたちは慢心していました……!!」

「ソレが……。千雨サンと言う第三者の言葉が無けれバ、大事な物ヲ忘れるところダタヨ……」

 

 そして少女科学者二人はいきなり立ち上がる。

 

「こうしてはいられないネ! 葉加瀬、早速工学部ニ向かうヨ!」

「はい! あそこの大型メインフレームで画像を解析、僅かなりとも技術情報を得ないと!」

「行くヨ!」

「はいっ!」

 

ドドドドドド……。

 

 超と葉加瀬は瞬時に消え去る。千雨は呟いた。

 

「あいつら……。昼飯と、午後の授業どうすんだ」

「超と葉加瀬は研究にかまけると、昼食を抜く事はよくある模様です。授業は……」

「絡繰も、大変だな」

「いえ、作り主ですから。ではわたしは(マスター)の所へ」

「おう、気を付けてな」

「はい」

 

 そして茶々丸は去る。残された千雨は溜息を吐いた。しかし外観からの観測した情報で、たいした技術情報を得られるとは思えないが、注意しておいた方がいいかも知れない。千雨は体内の通信装置で、超と葉加瀬について壊斗に知らせるのだった。

 

 

 

 放課後、千雨はゆっくりと、のんびりと女子寮への道を歩きながら、つらつらと考え事をしていた。

 

(どうすっかなあ……)

 

 彼女が悩んでいるのは、趣味でやっている『ちうのホームページ』の事である。何と言うか、最近は以前ほどの熱意が湧いて来ないのだ。無論、コスプレ自体には並々ならぬ思い入れがあるし、それを見て欲しい気持ちもある。だが、ネットアイドルとして持て囃される事に関しては、今の彼女はそこまで拘っていない。

 いや、ちょっと違う。拘っていないと言うより、拘りを持てないのだ。春先の事件からこの方、彼女は自身の価値観に大きな変化があるのに気付いていた。

 

「以前じゃ、考えもしなかったが……。壊斗との訓練に、古との手合わせやなんかも、けっこう楽しんでやってるしなあ……」

 

 その事実を口に出して見ると、なおさらに自分の変化が強く感じられる。だからと言って、『ちうのホームページ』を辞めたり休止するのも何か違う気がした。だが熱意がそこまで湧かないと言うか、そちらに気持ちが向かない状況で今のまま続けるのも、それはそれで……。

 

「学業を理由に、規模縮小でもするかなあ……」

 

 晩春の空に、千雨の物悲しい呟きが消えて行った。

 

 

 

 超包子の名物である電車屋台は、学園祭準備期間中の名物である。この期間だけ、路面電車の車両を改造した屋台を使い、点心を中心とした中華料理を提供しているのだ。値段も安価でお手頃である。

 千雨と壊斗はせっかく期間中なのだからと、ここで夕飯を食べに来た。壊斗などは麻帆良中心部からかなり離れた山中に住んでいるのだが、まあ彼の場合は色々と移動方法はあるので、美味い物を食べるためならばちょっと出て来るくらいは簡単である。

 

「本当に美味いな。これを学生が作っているとは……」

「信じらんねー技量だよな。ちゃんと商売になるレベルを超えて、本物の中華料理店と張り合えるクラスの料理を良くもまあ……」

「ああ。それだけじゃない。個々の料理を単品で作るのなら、そこまで驚かん。恐るべきは、屋台とは言え店が成り立っている事だ。店の料理人と言うのは、少数の料理を極上にするよりも、圧倒的な多数の料理を一定の出来に保って提供する技術が求められる。

 そしてその一定の出来という範囲を、どれだけ狭く、どれだけ高いレベルにできるか……。料理の出来に、波があってはいかんのだ。全ての客の、全ての注文に、均質な、しかも高いレベルの料理を出す。本当に素晴らしい」

「あとは超が協力っつーか参画してるから大丈夫とは思うけどよ。経理とか帳簿とかの方も大事だろ。そっちもしっかりしてるハズだぜ」

 

 2人は感嘆し感服しつつ、食べ続ける。そこに追加の蒸籠(セイロ)を持って、ウェイトレスの古がやって来た。

 

「長谷川、壊斗殿、お待たせアル」

「よお古、楽しませてもらってる。流石美味いな」

「見事だ。料理人にもそう伝えて欲しいが、これだけの量を調理してるんだ、忙しくてかえって邪魔だろうな」

「なら、終わった後で伝えて置くアル。五月も喜ぶアルよ」

 

 ここで壊斗が、思い出した様に手荷物を千雨に差し出す。けっこうな体積がある。

 

「そう言えば、忘れない内にこれを渡して置こう」

「ああ、何時も助かるよ、壊斗。大体、1週間分くらいか?」

「普通に暮らせばな」

「??? 何アルか? あ、いや聞いて悪いアルかね?」

 

 そんな古に、千雨は笑って言う。

 

「いや、お前はわたしたちの事知ってるだろ? わたしらは普通の物を食べるだけじゃ、ちょっとな。だもんで、壊斗から時々こうして、その手の食い物を分けてもらってるんだ」

「ああ、了解アルよ」

 

 荷物の中身は、エネルゴンキューブである。千雨はときどきこうして壊斗から、彼が造ったエネルゴンキューブを貰っているのだ。

 

「ふうむ、だが……。今の所は困っちゃいないが、万が一と言う事もあるしなあ。どこかで安価に大量にエネルギー手に入れられると良いんだが」

「今はアレだっけ? 地下深くマグマ層までボーリングして、そこのエネルギーを貰ってるとか言ってたよな」

「ナ!? ソレ大丈夫アルか!?」

 

 果たしてデバスターは地球を救えるか、と言う気分になった古だった。ちなみに彼女はエネルギーの用途は、壊斗の秘密基地で使うのだと思っている。まあ、いくらなんでも千雨と壊斗の活動用エネルギー、エネルゴンキューブを造るのに使われるとは思ってもみないだろう。

 

「ちゃんと安全性には留意してるって言ってたよな?」

「ああ。それに第一、そこのマグマ層からはエネルギーを根こそぎ奪ってるからな。惨事になんかなる様なエネルギーは残っちゃおらんよ」

「脅かさないで欲しいアルね。じゃあ、ワタシは行くアルよ。まだ追加注文あるなら、呼んでくれアル」

「おう。んじゃ頑張れ」

 

 古は電車屋台の方へ去って行く。千雨と壊斗は、古が運んできた点心が冷めない内に、がっつく様にして食べたのだった。




千雨と壊斗は、普通の食事も摂取できますが、ソレはあくまで補助的なエネルギー補給にしかなりません。と言うか、マッハで飛んだりビームを撃ったりバリア張ったり、そんな事したらあっという間に食事分のエネルギーなんぞ吹っ飛びます。
なので千雨は食事の他に、寝る前にエネルゴンキューブ食べてます。千雨は元人間なので、その習慣もあって毎日3食朝昼晩食べてますが、壊斗はどちらかと言うと食事は趣味として、不定期に食べてます。

そして超さんたち。ちょっと感想で彼女らの精神状態を心配していらっしゃる方がおられたので、その件について触れてみました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。