超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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第023話:もうすぐ麻帆良祭

 この日、千雨はどんよりした様子で壊斗の家へやって来ていた。

 

「……どうした、ハセガワ」

「い、いや。壊斗は幽霊って信じるか?」

「信じるどころか、その研究をしてた事もあるぞ? スタースクリームと言う幽霊トランスフォーマーが居てな。そいつは何度殺しても、スパーク(たましい)だけで逃げのびてなあ。まさしく幽霊だ。

 新たにボディを獲得(ゲット)したり、他のトランスフォーマーに憑依したりして、デストロン軍団にもサイバトロン軍団にも迷惑をかけてたんだがな。その不滅のスパークを再現して軍事利用できないかって研究テーマを押し付けられた事がある」

「うっわー」

「で、幽霊がどうした?」

 

 溜息を吐いて、千雨は語りだす。

 

「いや、先日の話なんだがな。ウチのクラスで幽霊退治したんだ。クラス名簿に、これまで一度も出席して来なかった生徒がいてさ。相坂さよ、って言うんだが。それが心霊写真に写ったもんで……。でもって大騒ぎになったんだ。それで悪霊退治って皆盛り上がってなあ……。

 例の龍宮と桜咲が幽霊をあと一歩まで追い詰めたんだが、そこでネギ先生がやって来て。『上』の方から説明聞いて来たそうで、幽霊だけど悪霊じゃないってクラスの連中を説得したんだ」

「なるほどな。ハセガワはどうしてたんだ?」

「その他大勢やってたよ。わたしのセンサーでも、幽霊は発見できなかったからな」

「変だな? 俺たちのセンサーは、幽霊の類も発見できるはずなんだが」

 

 千雨は酢を飲んだような表情になる。一方壊斗は真剣な表情だ。

 

「言ったろ? 幽霊トランスフォーマーが両軍に多大な迷惑をかけた、って。だから対策として、幽霊を探知できる能力を俺たちは備えていたはずなんだ。だがそれで発見できない幽霊が居るとなると……。

 その幽霊が悪霊じゃないのは理解した。だがもしも他に、それほどに発見し難い悪霊が居たとしたら、それがあのトラブルメーカー(スタースクリーム)みたいに傍迷惑な性格をしていたなら……」

 

 壊斗は本気で幽霊……相坂さよのステルス性に脅威を抱いている様だった。千雨も彼のその様子に、真面目な面持(おもも)ちになる。

 

「手持ちの観測機器を持って、その幽霊さんとやらを調べに行こう。その幽霊を識別できるセンサーが完成すれば、俺たちの安全は更に高まる」

「んじゃ学園長先生に電話して、中等部校舎への入館許可取るか」

「そうしよう」

 

 そして千雨と壊斗は、本校女子中等部校舎へと向かったのである。

 

 

 

 そして千雨と壊斗は、3-Aの教室にやって来ていた。千雨の顔は、無表情のポーカーフェイスだ。何故かと言うと、ちょっとばかり関わり合いになりたくない人物がその場に居たのである。まあ、よりによって朝倉和美だった。

 

「あ……」

「ん。悪いけどこれからちょっと作業する。邪魔すんなよ?」

「あ、う、うん」

 

 ちょっと硬直している和美と最低限の会話だけ交わし、千雨は壊斗と共に幾つかの観測装置をその場に据え付ける。

 

「どうだ、壊斗?」

「ああ。確認した。凄いな、この非視認性、ステルス性は。だがその原因……タネは割れた。対策はできる」

「そか、そりゃ安心だな」

 

 目的を達した2人は、装備を回収して片付けた。そして千雨は和美に、形だけの心がこもらない挨拶をする。

 

「じゃな」

「あ、うん」

 

 教室を出てしばし後、壊斗は千雨に話しかける。

 

「あの朝倉とか言う少女……。何故あんな誰もいない教室にいるのかと思ったが。どうやら幽霊と話していた模様だな」

「あいつが? あいつ『視えて』やがんのか。」

 

 千雨は興味なさげに応えた。だが直後、彼女は眉を顰める。

 

「あいつがあのステルス性高い幽霊を手なずけて、あちこち覗き見とかさせたら、えらいこったな。こっちに飛び火しないといいんだが」

「その心配はあるな。まあ、それの対策も兼ねて、近いうちに再度センサー系をバージョンアップする」

「頼んだ、壊斗」

 

 2人はそのまま、歩き続けた。

 

 

 

 やがて2人は、生徒指導室の前を通りかかる。その部屋の前には、刹那と小太郎が立哨の様に番をしていた。

 

「あ、長谷川さん」

「誰や?」

「こちらは長谷川千雨さん。わたしのクラスメートです。長谷川さん、こちらは犬上小太郎君、ネギ先生のお友達です」

「ライバルや! ラ・イ・バ・ル!!」

 

 千雨は小太郎の言葉にちょっと失笑するが、彼女も壊斗を紹介する。

 

「こっちはわたしの知人で水谷壊斗。ちょっとナイショの用事があって、中等部を訪問して来たんだ。壊斗、こいつは桜咲刹那、クラスメートだ。

 ……なんでお前ら、生徒指導室の前で?」

「いえ、ちょっと……。超さんが逃げない様に……。神楽坂さんと宮崎さんも、窓の外で番をしてますし、ネギ先生とお嬢様が中で超さんを見張ってます」

「……超の奴、何やったんだ」

 

 刹那は半眼になって、薄笑いを浮かべて答える。

 

「いえ……。ちょっと一部教員と一部生徒以外には明かせない話がありましてね。あ、いえ、長谷川さんは教えても大丈夫なのかな?あ、いやそちらに部外者の方が……」

「あ、壊斗は大丈夫だけど……。ま、誰が聞いてるか分からんし、(ぼか)した言い方にしとく方がいいな」

「ですね。で、それで会合を開いていたんですが、超さんがそれを不法に偵察機で覗いてまして。それで罰を与えようとした学園側の人たちに追われてたんです。で、超さんがネギ先生に助けを求めたんですよ。悪い奴に追われている、って」

「おま、それネギ先生も騙してるだろ」

 

 刹那は頷く。

 

「結局は追手の方々をネギ先生が説得しまして、超さんを引き取ったんですよ。ほんとは記憶が飛ぶほどの罰になるはずだったんですけどね……」

(なるほど、魔法による記憶消去物の罪だったってワケか)

「で、ネギ先生に感謝を述べようとする超さんを制して、ネギ先生はその場の一同の前で言い放ちました。『超さん、生徒指導室で、麻帆良の中高で使われてる英語副読本11冊全文を書き写しの上、それら全てを和訳です。当然ながら正座で。パソコン、ワープロ、電子辞書の類は一切使用禁止。普通の辞書のみ、使用を許可します。全部、手書きでやってもらいます。終わるまで、退出禁止』と」

 

 千雨は一瞬唖然とした。まあ、超鈴音ならば不可能ではない罰だ。不可能では無い罰なのだが、かなり長時間正座する羽目になるはずだ。しかも超は幾つもの部活に参加している。この学園祭間近の準備期間中に、超が長い時間抜けるのは、どのクラブでもヤバい事態のはずだ。

 

「それって、あちこちの部活、大丈夫なのか? 超が一時とは言え、抜けて」

「超さんもそう言いました。けどネギ先生は、笑顔で言いましたね。『後で徹夜でもなんでもして、部活の人達には埋め合わせしてください』って。あれ、ネギ先生ほんとに怒ってましたよ。笑顔が怖かったです」

「……でも、ネギ先生は付き合うんだな」

「ええ、まあ。良い意味での甘さは失われて無いですね。それでお嬢様、神楽坂さん、宮崎さん、小太郎君もネギ先生を手伝うと……。ネギ先生は、いいって言ってたんですけどね」

 

 笑って言う刹那に、千雨はニヤリと笑みを浮かべて言う。

 

「いや、お前も付き合ってるだろ。ご苦労さん」

「あ、いえ! お嬢様がネギ先生に付き合ってらっしゃいますし! だからそんな!」

「……いや、ホントにご苦労さん。それじゃ、わたしらはこれで」

 

 千雨と壊斗は、あたふたとしている刹那に笑顔を向けると、その場を立ち去った。

 

 

 

 屋外へ出た千雨と壊斗は、ふと目線を校舎の方へ遣る。と、そこには窓の外に立って番をしている明日菜とのどかの姿が見えた。

 

「あそこが生徒指導室だったっけ。幸いにも、世話になった事無いからなあ……」

「む? 彼女たちを見張っている奴がいるぞ? 随分と大した隠形だが、俺には通じん」

「何? ……あいつか。不審人物だな?」

 

 2人はその人物を挟み撃ちにするかの様な位置取りで、その不審人物へ近づいていく。そして充分に近づいたところで、壊斗、千雨が声をかけた。

 

「年端もいかない少女を物陰からストーキングすると言う事は、通報されても捕縛されてもいいと言う事だよな?」

「あんたが何者かは知らないけど、クラスメートを……あれ?」

「……!! 君は!」

 

 不審人物は、千雨には見覚えのある人物であった。彼女はその人物に、改めて問いかける。

 

「なんで他校の先生が、ウチの中学の敷地内に? あ、いえ。学園長室が何故かウチの中学にあるんでしたね……。でも、あそこは生徒指導室で、学園長室じゃないですよ。ガンドルフィーニ先生」

「い、いや……。確かに不審な行動をしていた事は、詫びよう。だが決して、やましい目的でここにこうして居たわけではない」

「……なるほど。超、ですか? 逃げない様に見張っていた、と」

「!!」

 

 ガンドルフィーニは、一瞬表情を強張らせる。

 

「何故……」

「そりゃ、今あそこで罰を受けてるのが超だからですよ。魔法関係の話を、盗み聞きしようとしたんでしたか?」

「!! き、君! そちらに関係ない人物が」

「壊斗は大丈夫です。わたしと似たような体質でして。ただ学校関係者じゃ無いので、そちらに話は通って無かったかもですが」

「……脅かさないでくれたまえ」

 

 ガンドルフィーニは、大きく息を吐く。そして彼は平静を取り戻し、口を開く。

 

「まあ君も一応程度の事情は知らされているとは言え、部外者だ。だからあまり教えるわけにはいかない」

「分かってます。無理に聞くつもりもありませんよ」

「ならばいい。ところで……」

 

 そしてガンドルフィーニは一瞬、直立不動の姿勢になる。そしてビシっと綺麗な姿勢で千雨に対し、頭を下げた。

 

「が、ガンドルフィーニ先生?」

「長谷川千雨君、だったね。君には本当に申し訳無かった。君が(イタチ)妖怪に襲われた時の、現場責任者は私だったのだ。詫びて済む事では無いが、詫びる事だけは許して欲しい」

「……瀬流彦先生にも言いましたが、まったく気にされないのも腹が立ちますが、あまり気にされても返って気が重いです。謝罪は受け取りますから、そちらもあまり気にしないでください。見ての通り、なんとか五体満足に復帰しましたから。

 まあ、あれだけの大怪我がなんで治ったのかは、わからないんですけどね」

 

 最後に付け加えた嘘は、千雨の記憶が一部消されていると言う前提で、カバーストーリーを作ったためである。それはともかく、ガンドルフィーニは千雨の言葉に頭を上げた。

 

「済まな……。いや、『ありがとう』……」

「じゃあわたしたちは行きますが……。あそこはネギ先生に任せておいても大丈夫では?」

「そうは思ったのだがね……。ついつい心配になってしまったのだよ」

 

 実はガンドルフィーニがここまで心配性になったのは、千雨が妖怪に襲われた件が根底にある。あれ以来、彼は幾重にも念には念を入れ、動く様になっていた。今回の事も、超に魔法使いの掟ではなく、あくまで生徒としての罰を与えたネギに同意はしたものの、つい超が逃げないか心配になってやって来てしまったのだ。

 千雨と壊斗は笑って言う。

 

「わかりました。無理しないで、でも頑張ってくださいね。では失礼します」

「貴方は良い教師だな。貴方の教えを受ける生徒は、きっと幸せ者だ。では失礼する」

「ありがとう。では……」

 

 2人はガンドルフィーニと別れ、歩き出した。

 

 

 

 そして、麻帆良祭が始まる……。




超が何をやろうとしているのか、ネギも千雨たちも誰も今の段階では気付いていません。ですが超の側でも、色々とワケわからない事が発生しており、不安要素は原作時よりも大きくなっております。最大がトランスフォーマー勢力の存在(笑)。
そしてネギ君も、悪い意味での甘さが完全とは言えないけれど抜けて来ております。更に言えば、超はネギ君にカシオペアを渡し損ねました。今後どうにかして渡さねばならんと、知恵を絞っているでしょうねえ。

ちなみに、メイドカフェの設営は既に終わっております。原作本編と違って、何時まで経っても3-Aの出し物が決まらなかった状態と違って、さっさとメイドカフェになったので。それと大掛かりな設営の必要なお化け屋敷とは違い、基本テーブルとか並べて簡易キッチン設置して、壁を幕などで覆うぐらいですからね。
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