超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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第024話:覚悟の話は、まだ続く

 麻帆良学園都市全学園合同の学園祭『麻帆良祭』において、麻帆良学園本校女子中等部3年A組は、出し物としてメイドカフェ『アルビオーニス』を選んでいた。千雨はとりあえず初日の午前中に、ウェイトレスの当番をしていたりする。

 

「「「「「「お帰りなさいませ、ご主人様♪」」」」」」

 

 釘宮円、椎名桜子、柿崎美砂、和泉亜子、いいんちょ雪広あやかと共に、千雨は何人目かの客を迎える。と言うか、一瞬驚きで伊達眼鏡の奥の目が丸くなった。その客が、壊斗だったからである。

 千雨は少々慌てて、体内の通信装置で壊斗に語り掛ける。

 

『ちょ、確かに半ば冗談でウチの店に金落としに来てくれって言ったけどよ! わたしの当番の時に来るなんて聞いてねえぞ!』

『いや、どうせだったらハセガワの当番の時に来るのが普通だろう? 案内を頼むぞ』

『わ、わかった』

 

 にこやかな笑顔を作り、千雨は壊斗を自分の担当テーブルへ案内する。

 

「どうぞこちらへ、ご主人様」

「ありがとう」

 

 笑顔が引き攣っていないと良い、と千雨は思う。注文を取り、簡易キッチンへ注文伝票を届ける。と、周囲を円、桜子、美砂らに囲まれた。

 

「ちょ、なんだよお前ら」

「ちょっと、長谷川! あの人誰よ。隅に置けないわね」

「駄目駄目、しらばっくれても。あの人見た時、顔が引き攣ったからねー」

「あんたら、無粋な真似はよしときなさいよ……」

「2mを軽く超える細マッチョ。長谷川の好みは、ああ言うタイプかー」

「顔立ちや肌の色は、ちょっと日本人離れしてたねー。外人とのハーフかな?」

退()け、手前ら! 注文の品が出来たから、持ってかねえとなんねえだろ!?」

 

 千雨はチア部の3人を振り切ると、ブレンドコーヒーとレアチーズケーキのセットを持って壊斗の席へと向かった。壊斗の超絶的な五感、ことに聴覚により、先程の話は全部聞かれていた模様である。壊斗の表情は、苦笑気味だった。

 

『……愉快な友人たちだな』

『すまねえな。わたしと噂になるなんて、あんたも……』

『いや、光栄だが?』

『なっ! じょ、冗談は……』

『いや、だから光栄だと言ってるだろう。信じろ』

 

 そして壊斗はブレンドコーヒーを一口飲み、チーズケーキを口に運ぶ。

 

『……いい友人たちだな。大事にするといい』

『そうか?』

『ああ』

 

 そこで千雨は思い出した。壊斗……サイコブラストは、科学者/技術者タイプのトランスフォーマーとして生を受け、それが故に残虐な恐怖政治を敷くデストロン軍団に馴染めなかった。だが馴染まなければ、不良品として殺されてしまいかねない。

 それ故に彼は馴染んだ演技をし、デストロン軍団の一員として多数のサイバトロン戦士を殺し、そして彼の開発した科学技術がその数倍のサイバトロン戦士を殺した。当然ながら、彼には本当の意味で友人など存在しなかったはずなのだ。

 彼がかつて自虐的に冗談交じりで言った『あー、ボッチとか言うなよ? たとえ本当の事でも、さすがに傷つく』と言う言葉は、冗談でも何でもなく、彼の本心だったのかも知れない。

 

『そう、だな。まあ、その行いが限度を超えるような奴はそうそう居ねえから、な。きっと、いい友人なんだろう』

 

 限度ぎりぎりで怪しい奴は何人か居るが。千雨は、自分は壊斗よりも恵まれているのだろう、との思いを胸の中にしまい込む。こう言う思いは、外に出してしまって良い事など、あんまり無さそうであるし。

 

『ふふふ』

『ははは』

 

 2人は無線通信で笑い合う。傍目(はため)には、お茶と菓子を楽しむ男性の脇に、じっとトレイを持ってメイドさんが控えている様に見えただろう。

 やがて壊斗は、ケーキセットを食べ終わり、支払いをして3-A教室のメイドカフェ『アルビオーニス』を出て行く。千雨は周囲の面々と共に、心を込めて言ってやった。

 

「「「「「「いってらっしゃいませ、ご主人様♪」」」」」」

 

 その後千雨は、休憩時間などに他の面々に、壊斗について問い詰められたり、冷やかされたりした。彼女は『やっぱりこいつら、良い友人じゃないかも』とか思ったらしい。

 

 

 

 午後になって千雨は当番から外れた。彼女は体内の通信装置で壊斗と連絡を取り、待ち合わせる。

 

「よぉ」

「おお、来たな」

「待ったか?」

「いや、俺も今来たところだ」

 

 千雨はとりあえず、麻帆良祭の公式マップを取り出す。まあ本当はマップはカメラアイでスキャンして取り込み済みなのだが、こう言うのは様式美みたいな物だ。

 

「んじゃ、案内してやるよ。どこか行きたいところあるか?」

「そうだな……。む?」

「ありゃ?」

 

 その時である。千雨たちの眼前を、泣き顔の綾瀬夕映が必死で走り抜けて行った。

 

「……確か、以前に関西呪術協会で不明な人員を探した時に、そのリストにあった娘だな。最終的には見つかったんだったよな。名前は……綾瀬、だったか」

「……見ちまった以上、放っておくのもな。悪ぃ、壊斗」

「いや、構わん。と言うか、お前がそう言う(たち)である事は喜ばしいと思う」

「な!? そ、そうか。んじゃ、追うとすっか」

 

 夕映は、物陰や路地裏などを無意識に伝って人目につかない様に逃走する。その夕映を、千雨と壊斗は容易に捕捉し、5分後には追い詰めていた。

 

「待てよ綾瀬……綾瀬!」

「ひぐっ……。う、え、ええっ? あ、え、えっと。なんで長谷川さんが追ってきてるですか」

「あー、泣き顔で目の前を疾走されちゃな。気にするなって方が無理だ」

「小鳥型ドロイド……偵察ロボの報告だと、お前さんを追っかけてると思われる、ネギ少年や宮崎のどか、神楽坂明日菜、近衛木乃香、桜咲刹那、犬上小太郎などは、何を見誤ったのか関係ないところを必死で走ってるぞ。

 ……お前さんの名を呼びながら、な」

「あ……」

 

 小鳥型ドロイドの1体を手指にとまらせた壊斗の言葉に、夕映の表情が曇る。千雨は溜息を吐きつつ、夕映に語り掛ける。

 

「あいつらに会うのが気まずいってんなら、まだしばらくはこっちに来ねえっポイぞ」

「は、はいです……」

「んで、どうした? ……言えねえ事か?」

「はい、いえ、あの……」

「……とりあえず、その辺で飲み物でも買って、落ち着かねえか?」

 

 夕映は、しばし黙っていたが、やがて頷いた。

 

 

 

 なんだったか具体名が思い出せないイロモノ飲料を飲みつつ項垂れている夕映を見て、

千雨は『コイツの味覚、どうなってんだ』と小さく溜息を吐く。自分が飲んでいるスポーツドリンクすら、何か不味く感じられそうである。

 やがて夕映が口を開いた。

 

「あの……。長谷川さん、少し……。聞いてもらえるですか?」

「いいぜ?」

「ありがとうございます。実は……。ネギ先生が習得し、のどかと木乃香さんが習得すべく修行している、とある特殊技術を、覚えたいと思ったのです。

 そして、のどかと木乃香さんがそれに反対するのを振り切って、ネギ先生にお願いしてしまったです」

「……」

 

 千雨は返事をせずに、ただ聞いていた。夕映が返事など求めていないと感じた事もある。今はただ、内心を吐露させた方が良い、そう思ったのだ。ちなみに壊斗は、少し離れたところで彼女らが居る物陰に、近寄る者がいない様に目を光らせている。

 

「ネギ先生は、『覚悟はありますか』と問うたのです。わたしは言いました。『どんなつらい修行でも耐える覚悟はあるです!』と……。でも、ネギ先生が語っていた覚悟は、そんな物では……。そんな薄っぺらい覚悟では無かったです……。

 その技術は、例えて言えば銃を撃つ技術の様な物だと思えばいいのです。ネギ先生が語っていた覚悟は、誰かを『撃つ覚悟』、誰かに『撃たれる覚悟』、そしていざと言う時には『殺してでも生きる覚悟』だったです……。ネギ先生は、こんな覚悟は幸せに生きたいなら、必要無い物だと……」

「……」

「馬鹿でした。賢いつもりでいた、愚か者でした。その技術を、幻想的(ファンタジック)な夢の力の様に考えていたです。このつまらない世界から、連れ出して羽ばたかせてくれる様な夢への扉の鍵だと……。

 違いました。ネギ先生が語った事には、その技術はそんな夢の力では無く、極めて現実的な、他者を害せる力、殺せる力……。単なる暴力装置だ、と言うのです。馬鹿でした。そんな物のために……。制止()めるのどかを振り切って……」

 

 夕映はボロボロと涙を零す。

 

「きっと、軽蔑されたです。ネギ先生にも、木乃香さんにも、そして、そして、のどかにも……」

「……」

 

ごすぅっ!

 

「いだぁっ!?」

 

 千雨は、夕映の脳天に頭突きをかました。

 

「な、何するですか!?」

「手前の友達ってのは、軽蔑したような奴を必死で探し回る様な阿呆か?」

「え」

「今、小鳥型の偵察ロボで調べたけどよ。今もあいつら、必死で手前を探してやがるぜ。場所、教えてやるから行ってこい。そして、きっちり謝って、しっかり礼を言ってこい。迷惑かけたのと、後はあいつらのした覚悟を軽視してた事を謝って、あとはそんな手前を見捨てずに探し回ってくれた礼を……。言ってこい。

 なあ、手遅れになりたか無えだろ?」

 

 夕映は、息を飲む。千雨が言っている『手遅れ』が、朝倉和美の事だと理解したが故だ。千雨と和美が修学旅行以来、事実上の絶交状態である事はクラスでも薄々わかっている者は多い。

 何があったのか、夕映は知らない。しかし、のどかとあんな風な状態にはなりたくなど無い。絶対に嫌だった。

 千雨は手持ちの麻帆良祭マップに赤ペンで丸を描き入れると、夕映に投げる。

 

「オラ。奴らはこの辺を探し回ってる。急げ」

「……! ありがとうございます!」

「それと……」

「はい! 例の技術については、二度と学びたいなんて言わないです!」

「分かりゃ、いい。行け!」

 

 夕映は、バタバタと走り出す。そして壊斗が千雨に歩み寄って来た。

 

「ご苦労さん」

「ははは。しかし……綾瀬にわたしらが魔法関係について知ってる事、バレたかもなあ。あいつの事だから、他言はしねえだろが」

 

 千雨と壊斗は柔らかな笑みを浮かべて、走り去る夕映の後姿を見送った。




本作品での夕映は、魔法からは一歩引いた立場になりました。戦力的にはアレですが、ぶっちゃけこの方が良いと思うのですよ。思ったのですよ(必死)。
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