超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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第025話:『まほら武道会』予選と

 色々な出し物を見た後、千雨と壊斗は夕刻に龍宮神社へとやって来た。

 

「しかし、コスプレコンテストには出なくて良かったのか?」

「うーん、まあ、な。眼鏡なしで人前に出るのは……。コスプレは見るのもやるのも好きだけど、HP(ホームページ)でなら直接人前には出ないからなあ。

 まあ、これでも少しは対人恐怖症マシになったんだが。古菲やアンタとの手合わせとか、伊達眼鏡なしでもやってるし」

「……眼鏡キャラで出て見ると言うのは無かったのか?」

「長谷川千雨だって、身バレしちまうだろ」

 

 ちなみにこの2人が龍宮神社に来たのは、ここで大掛かりな格闘大会が開かれると言う噂を耳にしたからだ。出場するつもりは無いが、千雨の修行には観戦と言うか観取り稽古と言うか、そう言う物も何かしら糧になるのでは、との事でわざわざやって来たのである。

 と、千雨を呼ぶ声が聞こえた。

 

「長谷川ー! 出場するアルか!?」

「古か。いや、観戦のみだ。知ってるだろ? 目立ちたく無えって」

「そうだったアル。少し残念アルね」

 

 そこへ別の声もかかる。鳴滝姉妹を連れた長瀬楓と、龍宮真名である。

 

「おや、長谷川殿も出場するでござるか?」

「それは面白い事になりそうだな」

「だから出ねえっつうの! てか、なんでお前らが、わたしが出るとか思うんだ!?」

 

 流石に意図して古が話したとかは思わない千雨だが、会話の中で古が気付かずにポロっと漏らしたとかはあるかも知れないとも思う。だがそうでは無かった。

 

「いや、だってなあ」

「うむ、そうでござるな。春先から徐々に、でござるか? 長谷川殿は体幹の芯が、どんどんブレが無くなって行ったでござる。今では一端(いっぱし)の達人レベルに見えるでござるな。

 見るべき者が見れば、簡単にわかる事でござれば。それに修学旅行でのシネマ村での立ち回り、そこはかとなく評判になっているでござるよ」

 

 千雨はその場に(くずお)れる。鳴滝姉妹の姉、風香がそれを棒でつんつんとつつき、妹の史伽が姉を止めようとしていたりした。壊斗は困惑し、なんとか鳴滝姉妹を千雨から引き離そうとして、果たせずにいる。

 

「これこれ風香、よすでござるよ」

「すまんな、ええと……。ハセガワから聞いた話では長瀬、だったか」

「そうでござるよ? 何故か長谷川殿の名だけ、独特のイントネーションで喋るでござるな? それと貴殿は?」

「ちょっと癖でな。俺は水谷壊斗、ハセガワの知り合いだ」

 

 壊斗は千雨を助け起こした。千雨は起き上がったものの、頭を抱えている。と、場内にアナウンスが響き渡った。

 

『ようこそ、麻帆良生徒、学生、そして御来賓の皆様方! 復活した『まほら武道会』へ!!』

「え゛。ありゃ、いいんちょ? 何でいいんちょが……」

「おや。主催者を知らんのか? この武道会の主催者は超だぞ? それで、なんでも最初は朝倉に司会を頼もうとしたらしいんだが、沈痛な面持ちで断られたらしい。なので急遽、見た目に華がある雪広に、ネギ先生情報を餌にして頼んだらしいぞ」

「詳しいな、龍宮……。そしていいんちょ……。ネギ先生情報って……。」

 

 そして超鈴音が、神社の舞台に姿を現す。彼女はあちらこちらの小規模格闘大会を買収、統合し、この『まほら武道会』を復活させた理由を語る。なんでもそれは、表の世界、裏の世界を問わず、この学園の最強の存在を見たいと言う事であった。

 そして超は、この大会のレギュレーションを発表する。1つ、飛び道具及び刃物の禁止。2つ、()()()()の禁止。この2つを守れば、いかなる技を使用してもいいらしい。

 千雨は思わず吹きそうになるのを必死に抑え、壊斗に通信を送った。

 

『超の奴……。何考えてやがるんだ?』

『分らんが……。あの娘が魔法使い連中の会合を覗こうとかしたのと、何の関係も無いとは言えんだろう』

『するってえと、この大会も……。何か思惑があるって事か。出なくて正解だったな』

 

 そこで古菲が声を上げた。

 

「オオ、ネギ坊主アルね」

「あ、古菲さん、長瀬さん、鳴滝さんたち、長谷川さんに……確か長谷川さんのお知り合いの、水谷壊斗さんでしたか? お久しぶりです。

 それと龍宮隊長、先程の見回りではお世話になりました」

「隊長はよすんだ、ネギ君。お姉さんとの約束だ」

 

 ネギの後ろには、明日菜、のどか、小太郎のネギの従者連中を始め、木乃香と刹那、一歩引いて夕映がついて来ている。夕映は、千雨に向かい小さく礼を送って来た。昼にお節介を焼いた事の、礼であるのだろう。

 ふと、楓がネギに問いかける。

 

「ネギ坊主は出場するでござるか?」

「いえ、僕は小太郎君の応援です」

 

 ここで小声で小太郎が、ネギに耳打ちした。ネギも小声で答える。彼等は千雨と壊斗の恐るべき地獄耳を知らない。

 

「出ればええやん。じゅもんえーしょー、しなけりゃええんやろ? おまえ、俺と模擬戦やっても、まあまあやんか。ま、修行の方針からして白兵戦、格闘戦やと、良くてまあまあ止まりやけどな。長距離やと逆に俺が完封されてまうけど。

 ソレにあの超とか言う奴、カメラの類は封じる言うとったやんか」

「駄目だよ。詠唱しなくたって、カメラを封じてあったって、人の目と記憶には残るよ。魔法を使って戦うわけには行かないよ」

「ちぇ、残念やな。ヤバい相手のときは、アーティファクト使うても、ええか?」

「目立たないようにね」

 

 ふと、千雨は目をシバシバさせる。壊斗も目頭を手で押さえた。

 

『壊斗、なんか目に一瞬霞がかかったんだが』

『これが超の言ってた、電子的手段でカメラの類を無効化する措置らしいな。なにやらナノマシンをバラ撒いて、電子的映像機器を麻痺させる様だ。俺たちはその手のナノマシンやウィルスに対抗処置をしてあるから、すぐに回復するけどな』

『……これだと、フィルム式カメラとかは麻痺させられないんじゃね? 『写ル○です』みたいな電子機器部分が全く無い、レンズ付きフィルムみたいな原始的カメラは、どうやって無効化するんだか、それともその手の奴には単なるハッタリだとか』

 

 体内の通信装置で千雨と壊斗が話していると、舞台から去り際の超が、何がしか思い出した様に言葉を紡いだ。

 

『ああ、ひとつ言い忘れている事があったネ。この大会が形骸化する前、実質上最後の大会となった25年前の優勝者は……。『ナギ・スプリングフィールド』と名乗る、当時10歳の少年だった』

「!!」

 

 ネギの顔色が変わった。彼は必死で、内面で荒れ狂う嵐を抑え込んでいるかの様子だ。だがしかし、しばしの後、ネギは大きく息を吐いた。

 

『この名前に聞き覚えのある者は……。がんばるとイイネ♪』

「……超さんは、何か企んでるのかな。何を企んでるんだろうね。行方不明の父さんの名前なんか出して。どうしても僕をつり出したい様だけど」

「お。出るんか? ネギ。虎穴に入らずんばなんちゃら、って言うしな」

「いや、ここはあえて出ないよ小太郎君。とりあえず君子危うきに近寄らずに、様子を見させてもらう。それに……。

 僕は先頃までは、父さんの辿った道を必死で追いかけて来た。それが父さんに一歩でも近づく道だと思ってね。でも、色々師匠(マスター)から話を聞くと、けっこう父さんの道からはズレてたみたいだし」

 

 そしてネギは決然と言う。

 

「そして、後を追って走るだけじゃ、先をもっと速く走ってる(とうさん)には追い付くどころか引き離されるだけだと思う。だったら一か八か、父さんの道を外れてショートカットなりなんなりして、1mでも距離を縮める。そのために、父さんと違うスタイルである今の修行方針を決めたんだ。

 まあでも、『先生』としての仕事を修行や父さん探しの犠牲にするつもりは無いけどね。それは生徒の皆、他の先生方、何より僕自身に対して失礼だよ」

「……」

「この大会も、僕が出ても、仮に優勝できたとしても、父さんの劣化コピーになるだけだよ。第一、格闘戦では『まだ』小太郎君には及ばないし、優勝できそうにも無いからね、あはは」

「おー、『まだ』とは言うじゃんか。この先も『絶対に』追いつかせたりせえへんからな?

 ……って言うか、接近戦で追いつかれたら俺の立場あらへんやん。遠距離戦で勝てへんのに」

 

 ちなみに小太郎は、クウネル・サンダース(アルビレオ・イマ)に魔法抜きの格闘戦でコテンパンにされ、既に鼻っ柱を折られている。ただし鼻っ柱は折れても、気持ちは折れていない。ネギ共々、なんとしてもクウネルに一泡吹かすと修行を頑張っているのだ。

 閑話休題、千雨と壊斗はそんなネギたちの様子を、ほぉーっと感嘆の溜息を洩らしつつ眺めていた。ふと千雨の視界の片隅に、真名の様子が映る。真名は何時もながらのポーカーフェイスであったが、ほんの僅かに隙ができているかの如く、かすかに苦笑している様にも見えた。

 

(……? 龍宮の奴……。あいつも何かしら、あんのか?)

 

 そして『まほら武道会』予選が始まる。古菲、龍宮真名、長瀬楓、犬上小太郎の4名は、さっくりと本選出場を決めた。他に目立つ参加者としては、千雨も何処かで見た覚えのある女子高生、高音・D・グッドマンが居たりする。

 ただ、何かしら彼女としては出場は本意では無さそうで、背中が煤けてしょんぼりしているのが気になるが。妹分にして『魔法使いの従者(ミニストラ・マギ)』である佐倉愛衣が、彼女を慰めていた。

 

 

 

 そして同時刻。この『まほら武道会』を主催した超鈴音は、大会本部で落ち込んでいた。スクリーンには、本選に出場する選手とその応援の面々が映し出されている。超の一味である葉加瀬聡美が、超を慰めようと頑張っていた。

 

「超さん、一応なんとか魔法使いは1人、参加したじゃないですか。高音・D・グッドマンさんが」

『わたしが優勝いたしましたら、賞金の1千万円は全額寄付させていただきますわ!』

 

 スクリーンの中で、半ばヤケになった風体の高音が、参戦の抱負を高らかに語っている。それを眺めつつ、超は言った。

 

「はぁ……。ナントカ、彼女にはいい所まで勝ち進んで、魔法使いラシイ戦いぶりを披露シテ欲しいネ。他に魔法使いラシイ魔法使いが選手に居ないヨ。しかしネギ坊主……」

「ここしばらくで、随分性格に変化が見られます」

「アレだけ煽れバ、ちょと前だたら確実に大会参加してたハズだヨ。ヤハリ、学園長が伝手でダイオラマ魔法球を入手、何処カへ流しタと言う情報を、軽視すべきではナカたネ」

 

 葉加瀬もまた、視線を強める。その視線の先には、選手である犬上小太郎の応援と言う事で一緒にいる、ネギ・スプリングフィールドの姿があった。スクリーンの中で、彼はほにゃーっとした締まりのない笑顔を浮かべている。ただし見るべき者が見れば、その眼がギラリと輝いているのは理解できた。

 ネギ・スプリングフィールドは、まだ修行不足なのである。特に演技的な面は、あまり上手く無い。

 

「ネギ坊主……。ヤハり、要注意カ?」

「では……」

「多分ネ。ダイオラマ魔法球は、オソラくはネギ坊主の師匠……名前もワカランけど、存在だけはようやく掴ンだネ。多分そいつへ流されタんだヨ」

「微妙にネギ先生の背が伸びたと思ったら……」

「……どう出ル? ネギ・スプリングフィールド(ごせんぞさま)……」

 

 超は小太郎の後ろに映っているネギの姿を、鋭い視線で見つめ続けた。

 

 

 

 ちなみにその頃、クウネル・サンダース(アルビレオ・イマ)は閉店間際のメイドカフェ『アルビオーニス』でぎりぎりまで粘り、スパゲティ・ペペロンチーノとブレンドコーヒー、食後のミルフィーユのセット料理を堪能していたらしい。




いよいよ『まほら武道会』です。なんとネギ、出ませんでした! そしてその煽りで高畑先生も、明日菜も刹那も出ません。エヴァンジェリンは言うまでもなく出ません。そして佐倉愛衣も出ないです。

魔法使いらしい魔法使いは、高音サンのみ。超鈴音、涙目。

そしてただ1人、学園祭を思い切り堪能してるのは、我らが師匠(マスター)クウネル・サンダース(アルビレオ・イマ)。どうなることやら。
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