超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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第001話:非日常との日常的再会

 以前の、夢幻の様な出来事から二週間が経つ。千雨は、例の腕時計型通信機を常日頃身に着け、時計として使う様になっていた。

 本来千雨としてはこんな非常識の証拠物件は、本当は捨てるかどこかにしまい込んでおきたかったのだが。だが彼女の腕時計が折悪しく壊れてしまい、仕方なしに使っているうちにその多機能さと便利さに慣れてしまい、手放せなくなったのだ。

 ちなみに腕時計が壊れたのは、千雨の担任教師である子供先生ネギ・スプリングフィールドのせいである。と言うか、数えで10歳、満年齢で9歳の子供が担任教師をやっていると言うのは何なのだろうか。その事だけでも常識に拘る彼女としては、精神が(さいな)まれてやまない。

 それはともかく、千雨の腕時計が壊れてしまったのは、彼女は知らない事だがネギ少年が魔法使いであったが故である。彼女の腕時計は、彼女の趣味のコスプレ衣装ごと、ネギ少年のくしゃみで暴発した武装解除魔法(エクサルマティオー)をくらって吹き飛んだのだ。彼女の怒りは深い。

 そんなこんなで、春休み。千雨は埼玉県の麻帆良学園都市から秋葉原まで、PCパーツ等を購入するために出てきたのだった。

 

(えっと……。あと買う物は……。雷サージ対策してある電源タップを今買ったから、とりあえずはコレで終わりか?

 しかし買い過ぎたかな。けっこうな大荷物だ。コレ、麻帆良まで持ち帰るのは骨だな……)

「む? おお、ちょっと久しぶりだな、ちうたん……。!?」

「~~~~~~~~~!!」

 

 千雨は、突然現れて突然ヤバい事を口走った2m超の大男の口を慌てて押さえると、近場にあったゲームソフトの看板陰に引き摺り込む。相手は誰あろう、二週間前に彼女が出会った超ロボット生命体トランスフォーマー・サイコブラストの人間形態、水谷壊斗であった。

 彼女は怒鳴りたい気持ちを必死で抑え、小声で詰問する。

 

(な、なな、なんでアンタがそのハンドル名を知っている!?)

(な、何故小声で? と言うか、もの凄い形相だぞ?

 い、いやな? この世界の事を知るために、インターネットとか言う原始的なネットワークに直接に接続して情報を収集していたんだが……。そこで『ちうのホームページ』と言うサイトを発見して、そこのネットアイドルとやらが何処かで見た覚えがあるなと……。

 よくよくチェックしたら、骨格がお前と完全に一致したんで、ああこれはハセガワだな、と)

(~~~~~~!!

 あれは秘密! 内緒の趣味なんだ! 頼むから普段のわたしを『ちう』とか呼ぶな! 誰にも喋ってないだろうな!?)

 

 壊斗は千雨のあまりの剣幕、あまりの必死さに、たじたじとなる。一方の千雨はそれこそ本当に必死だった。万が一にも自身が『ネットアイドルちう』である事が身バレでもしたら!

 しかし壊斗はこめかみを掻いて、溜息を吐きつつ語る。

 

(……あれほど大々的にやっているから、てっきり自慢してるんだとばかり思っていたが。人間……地球人と言うのは難しい物だな。

 安心しろ、話そうにも話す相手がいない。あー、ボッチとか言うなよ? たとえ本当の事でも、さすがに傷つく)

(……そっか、あんた人間じゃなかったもんな。じゃあ他の奴にばらされる可能性は低いのか……。

 不幸中の幸いか……。はぁ~~~……)

(それより、いくら看板の陰だからってこんな人混みの真ん中で。年端も行かない娘が大の男の襟首引っ掴んでると、衆人環視の的になってるぞ?)

「げ!?」

 

 それはそうだろう。中学生が……一応まだ三月だから、終業式は終えてはいるが未だ中学二年生なのだが、その少女が身長2m超の大男の成人男性を物陰に引っ張り込んで、その首っ玉を捕まえて何やら小声ではあるが怒声を投げかけているのである。休日の秋葉原のド真ん中で。目立つ事この上ない。

 千雨は慌ててPCパーツの大荷物を引っ掴むと、駆け出す。壊斗もやれやれと言った風情で、それを追った。

 

 

 

 先程の現場から離れ、奇異な物を見る視線も無くなったあたりで、壊斗は千雨に再度声をかける。

 

「しかしけっこうな荷物だな」

「宅配便で寮まで配送する金が無かったんだよ」

「重そうだな。なんなら寮まで荷物持ちしてやるぞ?」

 

 壊斗の申し出に、千雨は一瞬ぽかんとすると、慌てて言った。

 

「え? わ、悪いよそんな」

「何、お前には借りがあるからな。それもでかいのが。こんなこと程度じゃ、返せないぐらいでかい借りが、な」

 

 千雨は目を丸くする。彼女は自分がやった事が、それほどの大事だとは思っていなかったのだ。

 

「と言ってもわたしは電気ポットのコードを、きまぐれで差し出しただけなんだが」

「だが俺はそれで命が助かった。お前がやってくれたのは、そうだな……。砂漠で渇いてぶっ倒れた人間に、コップ一杯の水を差し出した様なもんだ。それがきまぐれではあっても、な。

 お前が俺にやってくれた事は、それだけ大きな事だったのさ」

「そんなもんか……」

「そんなもんだ。だから気にせずに借りを返させろ」

「あー、わかったよ」

 

 壊斗は千雨の荷物を受け取り、軽々と持ち上げる。千雨はそれを見遣りつつ、肩を回した。グキグキと肩関節が鳴る。

 

「……。あー、でもやっぱり助かったよ。思ったより肩が凝ってる。やっぱり重かったからな」

「疲れてるんなら、どっか喫茶店ででも休んでいくか? 奢るぞ? あー、遠慮はするな」

「そう、だな。んじゃご馳走になるか」

 

 千雨は壊斗に連れられて、喫茶店に入って行った。

 

 

 

 喫茶店のボックス席に陣取り、千雨たちはブレンドコーヒーとケーキのセットを頼んだ。やがて注文の品が運ばれて来る。

 

「あ。ここのケーキ、けっこういけるな」

「ふむ、確かに。美味い。このコーヒーも悪く無い」

 

 千雨は『ロボットでも物、食えるんだな』と妙な感慨を抱く。

 

「……そう言や、あんたこの二週間ばかり、何やってたんだ?」

「む?

 ああ、まず先立つものが無いとどうしようも無いからな。宇宙へ行って、小惑星帯で希少金属の鉱床を探して大量に採掘して、それをブラックマーケットに売り払った。純プラチナのインゴットとか、高く売れたなあ」

「ぷ、プラチナのインゴット!?」

 

 まあ、確かに高く売れるだろう。なんか自分の経済規模とは桁が違い過ぎる、と千雨は思う。

 

「あとは人間たちの技術じゃ作れない大粒の人工ダイヤモンドとか、造って売った。200カラット(オーバー)のやつ。元が二束三文なのに、馬鹿みたいに高く売れたなあ」

「200カラット(オーバー)……」

 

 唖然とするしか無い千雨だった。

 

「それと戸籍とか住民票とか作ったっけな。いや、日本はそう言った面の書類がきっちりしてて、作るのは大変だったけど、一度作ったら逆に後は楽だったな。いやはや、金の力は偉大だ。

 それが済んだ後は、麻帆良の山中に家買って、その地下に秘密基地造ったくらいか。って言うか、まだ造ってる最中なんだけどな。

 他にはこっそりあちこちからエネルギー資源をかき集めて、エネルゴンキューブにして備蓄してるくらいかな」

「二週間でそんだけやったのかよ……。って言うか、エネルゴンキューブって何だ?」

「様々なエネルギー資源を圧縮精製して作る、高密度エネルギー体だな。ほんのわずかな体積で、莫大なエネルギー量を持ってる。美味いぞ。

 と言っても人間の味覚には合わないか、ははは」

 

 コーヒーを啜りつつ、千雨は思う。やっぱりロボットなんだなあ、と。一方の壊斗は、美味そうにケーキをつついている。

 

「……そうだよなあ、あんたロボットなんだよな。つい忘れちまう。超ロボット生命体、とか言ってたっけ。ロボットと一緒にお茶してるわたしって……。わたしの中の常識と言う物が崩れて行く……。

 あー、でも今ケーキセットとか普通に食ってるな。普通の食い物も食えるんだな。それとも偽装(フェイク)か?」

「ああ、俺はトランスフォーマーの中でも特殊な部類でな。普通のトランスフォーマー、超ロボット生命体は飛行機とか車とか兵器とかにトランスフォームする能力を持ってる。

 だが俺はその中でも『プリテンダー』と言って、メカに変形する以外にも、人間やら何やらに変身できるんだ。その中でも俺は、人間に変身できるタイプでな。

 人間形態の時は、人間の食物を摂取して活動エネルギーに変換できる。まあ、効率はエネルゴンを摂取するよりも、ずいぶんと悪いんだがな。ただ、嗜好品としては悪くない。美味い物を食うと、いい気分になるしなあ」

「便利なもんだな」

 

 そんな感じで、しばらく千雨と壊斗は会話しつつお茶を楽しんだ。お互いボッチ気味、もしくは完全なボッチであったため、幾分とは言えど気が合うのかも知れなかった。




と、言う訳で千雨と異世界からの漂着者、再会です。千雨もボッチ気味、壊斗は完全なボッチなので、同病相憐れむ的に意気投合してます。
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