超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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第028話:豪徳寺薫の栄光

 第二回戦の第一試合、犬上小太郎VS大豪院ポチの闘いは、やはり小太郎が何の『技』も使わずに対戦相手を地味に地道に追い詰めて行く展開となった。大豪院の必死の攻撃は、だが効果を発揮せずに完封されて終わる。

 この事で観衆もようやくに、実は小太郎の実力がとんでもないレベルにあると理解した。一回戦を派手な戦いで突破した人気選手たる大豪院ポチが、あっさりと手も無く下されたのである。否応なしに、皆が小太郎を認めた瞬間であった。

 そして第二回戦の第二試合は、本来は長瀬楓と古菲の好カードであったはずだった。しかし古菲は負傷欠場で病院へ向かったため、楓の不戦勝が発表された。観衆からは残念そうな声が漏れ聞こえたが、已む無い事だと理解してもいたのだろう。そこまでブーイングは大きく無かった。

 その後、第二回戦第三試合が始まる……。

 

(く……。初っ端から全力戦闘で行くしか……。けれどあのロケットパンチで捕らえられてしまったら、辻部長とか言う人の二の舞……。魔法ばかりじゃなく、近接戦闘の技術も磨くべきでした)

 

 後悔先に立たず。高音は厳しい視線で、対戦相手の田中さんを睨み付ける。一方の田中さんは、無表情で待ち構えていた。まあ、ロボットだから当然なのだが。高音は影の強化服に身を包み、田中さんに対峙した。魔法を使いたいところだが、観客の目がある。影の強化服以上は、使いたくても使えなかった。

 

 

 

 そしてここは、地下深くの秘密基地の一室。超鈴音は大きく溜息を吐いた。

 

「はぁ……。ダメだヨ、高音さん……。派手にやてくれないト、やり(づら)くなる」

「超さん! これはいったい何の真似です」

「手荒な真似してすまないネ、刹那サン。それに木乃香サンに、高畑先生。本当はもっと、穏便に時間かけてやる予定だたヨ」

 

 その場には超の他に、高畑と木乃香、刹那が居た。ただし後者3名は、何やら科学技術製の光の(オリ)に閉じ込められているのだが。

 高畑が超に問う。

 

「超君、君の目的は何だ。返答によってはいくら元教え子と言えど、見過ごす事はできない」

「別に大した事では無いネ。世界に散らばる『魔法使い』の人数……。約6千700万人。あまりに多い人数ヨ。更にココとは位相を異にする『異界』に、いくつカの国まで持っている」

「……それで?」

「心配しなくても大丈夫ネ、高畑先生。一般人に迷惑かける様な真似はしない。……つもりネ。わたしの目的ハ、この『魔法使い』の存在をこの世界全体に対し、公表する……。大したコトでは無いだロ?」

「「「!」」」

 

 高畑は一瞬、言葉を失う。刹那は何か言おうとしたが、しかし今は高畑が話をしている最中だと自分を抑え、我慢した。

 

魔法使い(われわれ)の存在を……全世界に公表する? それをやって、君に何の利益が、得がある?」

「フフフ……」

 

 超はそれには答えずに、この部屋から立ち去って行こうとした。だが自動扉を開けて出て行く時に、ちょっとだけ立ち止まる。

 

「タブン、貴方たちには理解できないネ。……食事は超包子(ウチ)の美味しいのを届けさせるヨ。期待しておいてほしいネ」

 

 そして今度こそ、超は部屋を出て行った。木乃香が少し肩を落として、刹那と高畑に謝罪する。

 

「ごめんなぁ、せっちゃん、高畑先生。ウチが足手まといになったばっかりに……」

「そ、そんな事は!」

「まあ、気にしないでいいよ。あの状況ではね。さて、これは放って置くわけにもいかないなあ」

 

 高畑ののん気な口調に、刹那は焦った様に言う。

 

「し、しかしどうすれば! この機械式拘束具は、簡単には……」

「……解放(えーみったむ)魔法の射手(さぎた・まぎか)光の一矢(うな・るーくす)

「「!?」」

 

 突然木乃香が、『魔法の射手』の魔法を発動させる。今しがた何かしようとしていた高畑、そしてどう脱出するか思い悩んでいた刹那は、唖然とした。木乃香が放った光の魔法の矢は、狙い過たず高畑を拘束している装置を射抜く。高畑を捕らえていた光の檻は、一瞬で消え去った。

 

「間に合うて、よかったわぁ。危なく、遅延呪文(デイレイ・スペル)の限界時間が来てまうところやったわ」

「お、お嬢様!?」

「このちゃんて言うてなあ、せっちゃん」

「あ、え、いえ」

遅延呪文(デイレイ・スペル)をこんな長時間……」

 

 高畑は驚きの声を上げる。だが、すぐに我に返ると急ぎ刹那と木乃香の拘束を外した。木乃香はえへへーと締まりのない笑みを浮かべる。

 

師匠(マスター)クウネル(アルビレオ)はん、厳しゅうてなあ。ニコニコしとおのに、課される訓練はガクブル物やったわぁ」

「アルが学園に居る事や、ネギ君木乃香君宮崎君の魔法の師になった事は学園長から打ち明けられたが……。短期間で木乃香君がここまで……」

「それよか、装備品取り戻して地上へ逃げんとあかん。せっちゃんの夕凪とか、大事やろ?」

「「た、確かに」」

 

 3人は、急ぎその場を立ち去った。その後彼らは、彼等を助けに来ていた明日菜、ネギ、のどかたちと合流したり、ネギたちと一緒に連れて来られていた春日美空……本人は謎のシスターであると必死に主張していたが、彼女と彼女の(マスター)であるココネ・ファティマ・ロザと言う少女が追い詰められていたのを助けたりする。その上で、全員なんとか地上へと戻る事ができたのであった。

 

 

 

 地上では、『まほら武道会』が、順調に進められていた。第二回戦第三試合、高音と田中さんの対決は、高音がなんとか脱げずに勝利をもぎ取る結果に終わる。彼女が脱げずに勝利できたのは、何と言うかまるで綱渡りの様な厳しい状況を潜り抜けた結果である。と言うか、何故か因果律か何かが彼女を脱がそうとしているかの如く、アブナいシーンは結構な数あったのだが。

 無事に勝利を飾った高音に、観客からの温かい拍手と、野郎どもからの残念そうな祝福の声が送られた。高音は思わず涙したものである。

 第二回戦第四試合、豪徳寺薫と山下慶一の闘いは、双方の実力が伯仲していたため、一進一退のかなり見ごたえのある試合となった。ぎりぎりの闘いが続き、この試合を制したのは喧嘩殺法の豪徳寺薫である。柔術家である相手の間合い、ゼロ距離で放った『超必殺(ちょうひっさつ)漢魂(おとこだま)』が功を奏し、それにより山下慶一は闘場の床に沈んだのだ。

 そしてまた休憩を挟んで行われた、準決勝第一試合……。犬上小太郎と、長瀬楓の決戦である。小太郎は、以前京都での対戦で、楓に手も足も出ずに倒されていた。その雪辱を果たすべく、彼は必勝の気概で闘場へと上がった。

 一方の楓も、先達としてはそうそう乗り越えられるわけにはいかぬと、かなり気合が入っていた。両者は、闘場の中央で向かい合う。そして戦いが、始まった。

 

 

 

 そして今、その戦いに決着が着こうとしていた。

 

「ぐあ……う……」

「……強くなったでござるな、小太郎。この短い間に、信じられぬでござるよ」

 

 楓が笑顔で小太郎に語り掛ける。しかしその笑顔は、血が滴り凄惨さがにじみ出ていた。小太郎も楓もこの試合、今まで隠していた瞬動も分身も、気弾も忍法も遠慮なしに繰り出し、観衆を驚愕の渦に巻き込んでいたのである。

 しかしながら、小太郎はまだ楓に一歩及ばなかった様だ。今、彼は闘場になっている舞台の中央で、最後の一撃を彼に叩き込んだ楓にもたれかかる様に、動きを止めている。そして彼は、何かしら呟いた。

 

「……ま……なや」

「……小太郎?」

「……甘く……見んな、や? 楓姉……ちゃん」

「っ! しまっ……」

「……アデア…ット」

 

 懐に入れた小太郎の手が……仮契約(パクティオー)カードの複製が輝きを放つ。そして次の瞬間小太郎の両手には、ナックルダスター状の拳武器が嵌っていた。その名を、『皇帝の拳』と言う。小太郎がネギとの仮契約(パクティオー)で手に入れた、アーティファクトであった。

 楓は必死で離脱しようとする。今の彼女は『気』も使い果たし、忍術も分身も出せる状態では無い。そして小太郎が最後の力を振り絞る。

 

 ドボォ……!

 

 鈍い音がした。楓の胴体、みぞおちに深々と、『皇帝の拳』を装備した小太郎の拳がめり込む。楓は言った。

 

「はは、お見事でござる。某の、油断、で、ござったな……」

「いや……。俺も、もう……。ハハ、無理や、アカン……」

 

 そして2人は、同時に倒れ伏す。審判の雪広あやかがカウント10を取り、ダブルノックダウンが宣言された。

 

 

 

 今、『まほら武道会』会場では表彰式が行われていた。準決勝第一試合が両者ノックダウンの双方病院送りと言う結果になったため、準決勝第二試合が事実上の決勝戦となり、それを制したのはなんと言うか、喧嘩殺法の豪徳寺薫氏であった。

 当初彼は、いくら殴ってもこたえない防御力を誇る、高音・D・グッドマンの影の強化服を攻めあぐねていた。一方で高音の側も、本来魔法に頼り切りで格闘技の技量は無きに等しかったため、豪徳寺に攻撃をあてる事ができないでいたのだ。

 しかして豪徳寺は自らの手に『超必殺(ちょうひっさつ)漢魂(おとこだま)』を被せて殴ると言う秘技を土壇場で編み出し、それが影の強化服の守りを()いたのである。と言うか、『遠当て』よりも普通は『気』を通常攻撃に込めて殴るのは、低位の技術であるはずなのだが。大ダメージを受けた高音はギブアップを宣言。そして小太郎と楓は両者病院送りであったため、豪徳寺薫氏の優勝が決定した。

 表彰式で、大会主催者である超鈴音の手から、賞金1千万円の小切手が豪徳寺に手渡される。そこに取材陣が、一斉に押し掛けて来た。

 

「豪徳寺選手! 優勝のご感想は!?」

「1千万円の使い道は!!」

 

 だが豪徳寺は、沈痛な表情で言う。

 

「俺は、本当の意味で俺が優勝したとは思っちゃいない。準決勝第一試合の長瀬選手、犬上のボーズ……。あのどちらかと対決していたら、俺には勝ち目は無かった。組み合わせの運で、なんとかギリギリ勝ち上がったに過ぎない。

 俺はチャンピオンじゃない。俺は未だ、挑戦者(チャレンジャー)だ。次の機会までには、なんとしても鍛え直して、今度こそ本当の意味でチャンピオンになってみせる。

 そんなわけだ。せっかくの優勝賞金だが、これは俺がもらっていい物じゃない。これは麻帆良の孤児院に、全額寄付するぜ!!」

 

 会場が湧く。準決勝第一試合の小太郎と楓の戦いぶりには、見劣りがしたのは確かだ。しかしその漢っぷりは、本物だった。ちなみにその漢っぷりに、そこはかとなく高音が頬を染めていたりする。更にそれを、何かしら羨ましそうに佐倉愛衣が見つめていたりもした。

 

 

 

 表彰式と閉会式が終了した後、超鈴音は龍宮神社の渡り廊下を、1人歩いていた。

 

「やれやれ……。せっかく『まほら武道会』を開催したのニ、魔法使てくれる人少なすぎたヨ。オマケに、その高音サンも、バレづらい強化服系の魔法のみネ……。仕方ないネ。ネットでの情報操作に力入れて、その分を取り戻すヨ。色々忙しイんだけど、お陰で余計忙しくなるヨ

 ……それでネギ先生、何の御用カナ?」

「……こんにちは、超さん」

 

 渡り廊下の曲がり角から、超の行く手を塞ぐ様に現れたのは、麻帆良学園本校女子中等部教諭、ネギ・スプリングフィールドであった。彼の視線は一見涼やかであったが、その奥にある鋭い光は隠しおおせていない。

 彼は徐に、超に向き合った。

 

 

 

 千雨と壊斗は、武道会の会場を後にしつつ、クウネル・サンダース(アルビレオ・イマ)から貰った招待状を手に取り眺めていた。

 

「もっと詳しい話をしたいので、学園祭終了後、どうか来ていただきたい……ってか」

「あいつが俺たちの事をどうやって知ったかは知らんが、知られている以上行かねばならんだろうな」

「やれやれ、面倒くさい。出向く時に、あのオコジョは外しておいて欲しいもんだな」

 

 とりあえず彼らは、女子中等部にある学園長室へと向かう。アルビレオ・イマ(クウネル・サンダース)について、もっと良く話を聞いておく必要があるからだ。

 

「超の奴も、何かしらやってるみてえだし……」

 

 溜息を吐く千雨と、それを苦笑いで見守る壊斗だった。




今話を書き終わって、恐ろしい事に気付きました。
……主人公と副主人公の出番、少なッ!?
い、いや。彼等は全体としての主人公で、今話の主役は豪徳寺サンだから(滝汗)。
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