超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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注)本話中に、並行世界(パラレルワールド)論や時間移動(タイムトラベル)について、甚だしいオリジナル設定があります。どうかご容赦ください。


第029話:時の罠

 ネギは今、龍宮神社の渡り廊下で超と向かい合い、互いに威迫し合っていた。簡単な言い方をすれば、ガンを付け合っていた、と言う事である。だがいい加減このままでは話が進まないと見たネギが、話を振る。

 

「超さん。ちょうど手に入れた、英語の副読本に使えそうなブ厚い本が3冊ほどあるんですけれど。1つが以前の奴の10冊ぐらいに匹敵するのが。正座して筆写と和訳をするのは、1、2、3冊目のうちでどれが良いですか?」

「え゛。流石にその切り込みは、予想外……でもないのカ? と言うか、何に対する罰であるかネ?」

「そりゃあ、タカミチたちを攻撃、拉致して監禁したんです。これでも軽い罰だと思いますけど?」

「確かニ……」

 

 不敵に笑う超は、ネギに対し問いを投げかける。

 

「……ネギ坊主。現実が一つの物語だとして、君は自分を正義の味方だと思うかネ? 自分のことを……。悪者ではないかと思たことは?」

「ありますよ? と言いますか、僕は常にソレを自身に問いかける様にしてます。まあ、()()()()()()ここ3ヶ月程度ですけどね。」

「……ヤハリ、学園長が手配したダイオラマ魔法球は、ネギ坊主の師匠(マスター)に渡ていたカ」

 

 ネギは肩を竦める。そして視線を超に向け、言葉を紡ぐ。

 

「……そして、自分が正義だと完全に自信を持てた経験は、残念ながら1回もありません。でも、それで良いとも()()思います。第一『正義の腐敗は自らを正義だと思った瞬間に始まる』って言葉もありますからね」

「なるホド。そう言う考え方カ。……ネギ坊主、わたしの仲間にならないカ?」

「断ります」

「即断ネ……。何故(ナニユエ)?」

 

 超の言葉に、ネギは顔から笑みを消し、真正面から答えた。

 

「超さんが何を思い、何を想って、こんな事をしているのかは知りません。それは超さんにたっぷり書いてもらう反省文で、教えてもらいますから」

「ちょ」

「ですが、超さんが企図している計画……。魔法使いの存在を、全世界にバラすと言うのは、あくまで手段、または計画そのものの一部、あるいはその両方なのでしょう。超さんの最終目的は、いまだもって分かりません。教えてもらってないから当然ですね。

 ですがその一事だけで充分です。貴女の計画が実施されれば、まず最初に被害に遭うのも、最大の被害に遭うのも、僕の周囲です。僕は、『僕の愛する世界』を護るために、貴女と戦う。

 愛する物や愛する者のために戦うんです。それってまあ、正義ですよね? まあ同時に、愛する物や愛する者のために、もしかしたら正しいかもしれない貴女と戦うんです。酷い悪とも言えますね」

 

 そしてネギは一拍置いて、最後通牒を叩きつける。

 

「決めました。3冊全部、筆写して和訳してもらいましょう。時間は今から。場所は生徒指導室。勿論のこと、正座で。前回と同じ様に、僕が見張りますから。分量的には、前回と同じか少しだけ多くなるかな? 本が厚いですから」

「くっ! 今は忙しいヨ! そんなの、やってられないネ!」

「逃がしませんよ!」

 

 一瞬超の周囲に爆発的な霧が発生する。ネギが『眠りの霧(ネブラ・ヒュプノーテエイカ)』の魔法を、無詠唱で行使したのだ。

 

「カァッ!? く、このぐ、らい、抵抗(レジスト)……ぐうっ!! し、しまったネ!?」

 

 必死で精神を集中して『眠りの霧(ネブラ・ヒュプノーテエイカ)』を抵抗(レジスト)した超であったが、懐から取り出しかけた何某(なにがし)かの道具(アイテム)を取り落とす。

 すかさずネギは、転がって来たそれを拾い上げた。

 

「……懐中時計?」

「そ、ソレに触るナッ!!」

 

 必死な様相でそれを奪い返そうとした超だったがその瞬間、周囲の灌木や何やらの陰から、一斉に人影が立ち上がる。麻帆良の魔法先生たちだった。超は叫ぶ。

 

「くっ!! まだ終わらんヨ! ネギ坊主! ソレは預けておくネ! ダガ、必ず返してもらいに行くヨ!」

「「「「「「!!」」」」」」

「!! ラス・テル・マ・スキル……な!?」

 

 そして超は、すっと姿を薄れさせて空中に消えてしまう。ネギは唇を噛み、右手で杖を握りしめた。彼は魔法先生たちを率いている、ガンドルフィーニに頭を下げる。

 

「ガンドルフィーニ先生。今回は、任せていただいたのに、申し訳ありません」

「いや……。今のは仕方ないだろう。まさか魔法使いでも無い超鈴音が、転移するとは……。

 ところで、それは?」

「遺留品です」

 

 ネギの手にあるそれは、大ぶりな懐中時計に見えた。

 

 

 

 学園長室の隣室で、千雨と壊斗は近右衛門や高畑と茶を飲みながら話をしていた。学園長室を使わないのは、あちらは突然魔法先生や魔法生徒などが飛び込んで来る可能性があるからだ。

 千雨は表向きは、特殊事情により若干ばかり魔法関係について知らされているだけの、一般の女生徒である。それが学園長たちと頻繁に話をしているのは、バレたら勘ぐってくれと言う様な物だ。

 

「……で、結局超の奴は逃げちまったわけですか」

「うむ。まさかあの重囲を突破されるとはのう。しかも見た目は転移魔法の類じゃが、明石教授によれば直接転移による『歪み』は検出されなんだとの事じゃよ。

 あとは『(ゲート)』による転移じゃが、それも媒介になる物は『影』ぐらいで、そして『影の(ゲート)』でない事は、その場の状況でわかっておるのじゃ」

「ネギ先生は?」

「今、遺留品の懐中時計をガンドルフィーニ先生と共に調べておる。とは言っても、分解したりするわけにもいかんでのう。難航中じゃ」

 

 お茶を啜りつつ、近右衛門は眉を顰める。まるでお茶が不味かった様に見えた。ここで高畑が、話を変える。

 

「で、アルはナギのために君たちに力を貸せ、って言ってたんだね?」

「はい、高畑先生。ナギ氏はどうやら、何かしらヤバい状況下に置かれているらしいんです。それを解決するため、壊斗の科学技術が役に立たないかと考えた様です。特に、心霊工学について聞かれました」

「心霊工学……」

「それとこれは、ナギ氏を救うためには二義的な話になるらしいんだがな。魔力を人工的に合成できないかと言う話もあったぞ」

「「!!」」

 

 動揺する近右衛門と高畑を横目に、千雨と壊斗は饅頭をぱくつく。そして高畑が口を開いた。

 

「アルが言っている、ナギにとって二義的な救いの話と言うのは、もしかしたらだけど……。魔法世界(ムンドゥス・マギクス)を崩壊から救う事ではないかと思う」

「ほう? と言う事は、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)とか言う異世界は、崩壊の危機にある、と言う事か? 高畑先生」

 

 壊斗の言葉に、高畑はしばし逡巡した後、頷いた。そして彼が口を開きかけた、その時である。

 

「実は……」

「待て! なんだこの反応は!? ハセガワ!」

「この反応……。ごく近場で、時空間に穴が開いた、でいいのか? この反応は?」

「うむ、間違いない! 何があった!?」

 

 千雨と壊斗は近右衛門に目を遣る。近右衛門は一瞬目を見開くが、首を左右に振った。

 

「ちょっと待ってくれい。時空間に穴って、なんじゃね? 何かしら、物騒な話題の様な気がするのじゃが」

「丁寧にやれば、そこまで危険じゃない。まあ未来へ行くだけならな。ただ、乱暴にやれば危険すぎる行為だ。それに過去に跳んだりすれば、なおさらにヤバい。つまりこれは……時間移動、だな」

「ちょ、ちょっと待てい! 待たんか! 時間移動は最先端の魔法研究でも実現できておらぬ……って、お前さんはそれどころじゃない超科学の存在じゃったな」

 

 壊斗は近右衛門に向かい、頷きつつ眉を顰めて見せる。

 

「下手な過去への移動をすれば、色々危険だぞ。その危険だけで論文が幾つも書けるぐらいに」

「たとえばどんなのじゃね?」

「過去で何かタイムパラドックスを起こせば、それだけで世界が2つのパラレルワールドに分岐する。元の世界と、変わってしまった世界と。そうなると、まあ色々あってややこしいんだが……。

 分岐後の2つの世界は、存在そのものの密度が、単純計算で半分になるのさ。いや、ホントはもっと複雑で面倒くさい計算式があるんだが。で、ある程度までなら減っても存在は続くし、減った分が何かしら別の要素で補完される事も充分にあり得る。

 だが補完されない可能性も高いし、そしてその『系』の存在密度が減れば、『系』自体が持つ耐久力も減る。まあ、その世界の内部からでは、どれだけ存在密度が減ってるかは観測できないんだが」

「「「……」」」

 

 何やら物凄くヤバそうだ、と言うのはその場の全員が理解した様である。と、近右衛門の携帯電話が呼び出し音をがなり立てた。

 

「もしもし、ワシじゃ。……なんじゃと!? わかった、すぐに行くわい」

 

 電話を切った近右衛門は、沈痛な声で語る。

 

「……超君の遺留品を調べておった、ネギ君とガンドルフィーニ先生が、消えた。時間は2分前。ちょうど世界樹の大発光が極大化したのと時を同じくして、じゃ。壊斗殿、お前さんの言う事が正しければ……」

「やられました、ね。超の奴、ネギ先生を何故か最大の危険要因と見なしてる様子がありました」

「おそらくは……。いや、間違いなく超の遺留品の懐中時計は、トラップだったんだ。そして超は、ネギ少年にトラップの懐中時計を拾わせるために、わざと……」

「壊斗君、ネギ君は何処、いや何時に……!?」

 

 高畑は、顔色を蒼白にして壊斗に訊ねる。壊斗は首を横に振る。

 

「何時に送られたかは、現場を調べる必要がある。だが俺とハセガワが、魔法先生や魔法生徒がうじゃうじゃ居るだろう現場に赴くのは、言い訳に苦労するだろう……」

「確かに……」

「過去に送られたんじゃ無いといいんだが。過去に行ったら、もう二度と会えない可能性が高い。

 過去に行くと、過去に行ったと言うだけで原子レベルのタイムパラドックスが発生し、世界が分岐する。そして過去に行った奴らは、その時点から変化した世界線の方に存在が移ってしまい、こちらの元の世界からは絶対にその存在を観測できなくなってしまう」

「く……。なんて事だ」

「……現場に行けば、調べられるんじゃな?」

 

 ここで近右衛門が目を光らせた。その場の一同は、近右衛門に注目する。

 

ワシに、いい考えがある(I have a plan.)

 

 なんか微妙な雰囲気になった。

 

 

 

 近右衛門は現場になった小部屋へ、高畑たちを引き連れて現れた。

 

「学園長! ……え?」

「明石教授、高畑先生の後ろの2人は、ワシの伝手で連れて来た応援じゃ。心配せんでいい」

「は、はあ」

「では調査開始しておくれ。()()()()()()()君に、()()()()()()()()君や」

『『了解』』

 

 そう、千雨(サウザンドレイン)壊斗(サイコブラスト)は正体を隠すために、バトルスーツ姿でこの場に現れたのだ。これが近右衛門の『いい考え』であった。やはりちょっと微妙である。とりあえずサイコブラストとサウザンドレインは、体内のセンサー全開で周辺の時空の歪みを調査開始した。

 

『……推定跳躍時点、今現在より191時間38分22秒後。最悪の事態は避けられたな。送られたのは、過去ではなく未来だ』

「は!? 未来!?」

「明石君、サイコブラスト君は素晴らしい科学者での。と言うか、事実上世界最高峰の科学者じゃ。タイムマシンも、時間移動そのものが危険だから作っていないだけで、理論は完璧に構築済みなのじゃよ」

「またご冗談を……。え? ほ、本気でしょうか?」

 

 ぎょっとする明石教授に、小さな子に言い聞かせるがごとく、近右衛門は語る。

 

「……ワシが本気かと言うよりも、ワシが正気かと聞きたそうじゃの? よく考えて見よ。単に未来に行くだけであらば、光速近くの速度で飛べる方法を見つければ良い。さすればウラシマ効果で未来にいけるぞい?」

「……なるほど」

 

 いや、光速で明日へダッシュするのも、けっこうな難事なのだが。だがとりあえず明石教授は納得した模様だ。

 

「学園長! ネギの奴は未来へ飛ばされたんか!? そうなんやな!?」

「む? 犬上小太郎君じゃったの」

 

 見れば小太郎は、昼間の怪我のために胴や頭、腕など包帯でぐるぐる巻きになっている。見るからに痛々しい姿だ。しかしそれでも必死に近右衛門に食い下がる。

 

「アイツ……。俺やのどかの姉ちゃんが部屋に入ろうとしたら、思いっきり魔力の塊をぶつけてきよったんや。それで2人とも部屋の外まで吹っ飛ばされて……。アイツ、最後に言っとった。『(トラップ)にかかった、僕はリタイアだ。超さんの事、頼んだ』って……。

 阿呆め。アイツは『砲台型魔法使い』や。何があっても、最後まで生き残らにゃならん。俺やのどか姉ちゃんを犠牲にしても、や。アイツの悪い癖や。クウネル(アルビレオ)師匠(マスター)に、思いっきり絞られればええんや……。クソ、ちくしょう」

小太郎(こたろー)君。それ、多分少しだけ違うですー」

「のどか姉ちゃん?」

 

 のどかは、小太郎に決然とした表情で語り掛ける。目に、炎が燃えていた。

 

「ネギせんせーは、自分が逃れる術が無い事を悟って、わたしたちを信じて後を任せてくれたんですー。わたしたち、その信頼に応えないと……」

「……そう、かもしれん」

「かもしれない、じゃないよ!『そう』なんです!」

「……!」

 

 僅かに弱りかけた小太郎の瞳にも、火が灯る。サウザンドレインは、それを見ながら思う。

 

(宮崎の奴も、随分と……頑張ってんだ、なあ。)

「ちょっと! ネギがやられたってホント!?」

(うげ、神楽坂)

 

 更にその場に、神楽坂明日菜、古菲、長瀬楓が現れる。なお、古と楓は包帯でぐるぐる巻きだ。明日菜はのどかと小太郎に、半ば食って掛かる様な様子で事情を聞き始めた。

 

「これは大変でござるなあ……。拙者も、何か手伝える事があらば、お手伝いするでござるよ」

「……超は、ワタシの友アルね。その友が道を誤ろうとしているならバ、止めるのもまた友情アル」

 

 楓と古はそう言って、皆に協力を表明した。サウザンドレインは思う。

 

(古がやる気になっちまってる……。わたしも、仕方ないから手伝ってやるか。それに……。超の計画が万一成功しちまったら、せっかく築いた麻帆良のコネが全部オコジョ化でブッ潰れるからな。学園長先生や高畑先生。正直それは、わたしとサイコブラストどっちにとってもヤバい。

 それに世界に魔法が周知されちまったら、どんな混乱が世界を覆う事か。まあたとえどうなっても、わたしと壊斗は生き延びて見せるが……。最悪、宇宙の基地に本拠地を移せばいいし。ただ、他の連中を見捨てるのは後味が悪すぎる。……なんとかしねえと、な)

 

 こうして千雨(サウザンドレイン)は、超と戦う覚悟を決めた。超の計画は具体的にどんな物なのか、それは未だわからない。だが超(サイド)でも、麻帆良学園に謎のロボット勢力として知られる千雨(サウザンドレイン)壊斗(サイコブラスト)の力のほどは、知り得ないのだ。

 この戦いの行く手は、混沌としていた。




ネギ君、超さんのトラップに引っ掛かってしまいました。オマケでガンドルフィーニ先生も。
で、学園側と超陣営の対決の行方は混沌としてきましたと書きましたが……。どっちに取って混沌としているのやら。

-追記-

前書きに書いた情報を入れるのを忘れておりました。申し訳ありません。
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