超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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第031話:科学の力の理不尽さ

 世界樹直上で、爆発が起きる。その爆発は強烈な発光を伴い、世界樹……『神木蟠桃』は光の渦に包みこまれた。そして異変が起きる。

 その瞬間、弐集院や神多羅木を何処かへ転移させたあの狙撃手の、その銃に装填されていた全ての転移弾と予備弾倉の転移弾、更には弾薬ケースに収めていた予備の予備であったはずの転移弾が、全てはじけ飛んだ。転移現象は、起きていない。

 威力はさほどではない。せいぜいが、爆竹レベルかそれより弱い力で、弾頭部がはじけ飛んだのだ。ほんの僅かな火傷を負い、狙撃手は舌打ちする。そして転移弾の弾倉を銃から抜き、銃本体から排薬し、通常弾の入った弾倉に交換。瞬時に戦闘準備を整え直す。

 と、狙撃手に対し声がかかった。

 

「いや、あれで弾倉に入っていた弾丸が吹っ飛んだ、と言うことは……。その弾丸、『強制転移弾』では無く、『強制時間移動弾』とでも言うべき代物でござったか」

「楓か……。何をやった、と聞いても無駄かな?」

「いや、教えても良いでござるよ? 真名……」

 

 被っていた覆面を脱ぎ去り、狙撃手……龍宮真名は二丁拳銃を構えつつ、突如現れた甲賀中忍長瀬楓の説明を聞く姿勢を取る。

 

「あれは拙者の仕事ではなしに、学園長が呼んできた助っ人科学者の成果でござれば。あれは……。

 ……。

 …………。

 ええと、なんでござったかな?」

「……少しは勉強しろ、バカブルー」

「な!? 今言う事でござるかー!?」

「今言わずして、どうしろと」

 

 緊迫していたはずの空気が、一気に緩んだ。

 

 

 

 そして『強制時間移動弾』……いや、ここは超一味が使っている名称通り、『強制時間跳躍弾(B.C.T.L)』と呼ぼう。それの弾頭が突然の暴発を起こし、はじけ飛ぶ現象が起きたのは、真名の銃器においてだけの事では無かった。麻帆良の世界樹周辺に展開していた、多数の田中さんの特別仕様機で用いられていた、『強制時間跳躍弾(B.C.T.L)』装備のバルカン砲も、弾倉部分が一斉に破裂して使い物にならなくなっていたのである。

 そしてここ、タカミチ・T・高畑対超鈴音の戦場においても、同様の……いや、それ以上の事が起こっていた。

 

「……く、はっ! 何を……したネ!?」

「君たちが使っていた弾丸……。そしてネギ君を未来に飛ばした懐中時計……。僕たちは君が、君たちが、戦術的に時間移動技術を用いている事に危惧を抱いていた。それは単に戦術的に有効だからだけじゃない。時間移動技術そのものが、世界の基幹構造に対して害のある技術だからなんだよ。

 それで僕の友達の科学者がね? 君らの時間移動技術が、世界樹の魔力を必要としている事に気づいてね。ある装置……特殊な爆弾を組み上げた。それが爆発する際に発したエネルギー波が、世界樹の魔力そのものに影響を与え、君らの時間移動関係の装備に有害になる様に、一時的に属性を与えた、と言う事らしい」

「……!! あのミサイルっ!!」

 

 超が所持していた『強制時間跳躍弾(B.C.T.L)』弾は、その全てがはじけ飛んで、超自身にも軽度の火傷を負わせている。だがそれ以上に超に取って致命的だったのは、超の強化服の背中に装備されていた『何らかの装置』が火を噴き、破壊されていた事である。

 そして超はハッと気づくと、懐から何かしらの道具(アイテム)を取り出す。それは懐中時計の様な形状をしていた。ネギを引っ掛けた、(トラップ)に使われたソレとほぼ同型の物品である。しかしソレもまた今、煙を噴いて火花を散らし、使い物にならない残骸となり果てていた。

 高畑は超に向けて言い放つ。

 

「これで君の時間移動は封じられた。おそらく君の瞬間移動モドキも、時間移動技術の応用だったんだろう。

 それと……」

「マダだ! まだ終わらないヨ! ……呪紋回路解放、封印解除。ラスト・テイル・マイ・マジックスキル・マギステル……」

「!! 左手に『魔力』、右手に『気』、『気と魔力の合一(シュンタクシス・アンティケイメノイン)』……」

 

 超は突然、魔法の始動キーを唱える。高畑は表情に驚きを浮かべた。今の今まで、超は魔法を使う事は無かったのだ。高畑の勘は、超は魔法を使うことができるものの、何かしらの問題点があるか、制限があると睨んだ。そして歴戦の強者である彼は驚きこそしたものの、一瞬たりとも遅れずに咸卦法の行使を開始する。高畑と超の戦いは、2ラウンド目に突入した。

 

 

 

 ここは『神木蟠桃』の直上、地上4,000mの高高度。ここに浮かんだ飛行船で、葉加瀬聡美は超の計画……全世界に対する強制認識魔法をもって、世界中の人々に魔法と魔法使いの存在を暴露すると言う計画を実施すべく、儀式を遂行していた。

 幾つ目かの呪文を唱え終えた彼女は、儀式の進行度合いをチェックすべく制御盤(コンソール)の前に立つ。そして彼女は驚愕した。

 

「えっ……。ええっ!? ま、マズいです、超さんに連絡を!

 超さん、聞こえますか超さん!!」

『ナニかネ、葉加瀬! 今、高畑先生と殺りあってて、余裕無いネ!』

「それどころじゃないんです、超さん! 世界樹と、その周辺の6つの魔力溜まりが!」

『!? どうカしたのカ、葉加瀬!? 儀式は!?』

「世界樹を見てください! それで分かります!」

 

 葉加瀬は必死で叫んだ。超ならば、これだけで全て理解するはずである。そして、それは間違いではなかった。理解したからと言って、取れる方策は多くは無いのだが。

 

 

 

 窓から世界樹の様子が見える。麻帆良学園学園長にして関東魔法協会理事、近衛近右衛門は、大きく息を吐いた。今、世界樹……『神木蟠桃』は、本来であれば盛大に発光現象を起こしているはずである。しかし実際の世界樹は、平常時と全く変わりがない、なんら光り輝いて()()()姿を衆目に晒していた。

 

「科学の力と言うのは、凄まじいものじゃのう……。世界樹とその周囲の6つの魔力溜まりのみならず、麻帆良学園都市全体に満ち満ちておった世界樹の魔力をことごとく……。その波長とやらにより、選択的に吸引吸収して、なんじゃったかの? えねるごんきゅーぶ、じゃったか。それに変換してしまうとは……」

「本当に驚きです。まあそのとばっちりで、わたしももうすぐあと数十秒で、図書館島地下から出られなくなってしまいますが。まあ、どうせ分身体でしか無いですけどねえ」

「なんじゃ、来ておったのかアル」

「ネギ君は残念でしたね。ただ、責めるつもりはありませんが。ああ、時間が無いですねえ。コノエモン、キティに伝言をお願いできますか? 色々と事情が変わりそうですので、彼女も招待しますとね。招待状を渡しておきますので、これをああもう時間が無……」

 

 突然現れたクウネル・サンダース(アルビレオ・イマ)は、エヴァンジェリンへの招待状を近右衛門に渡すと、同じく突然姿を消した。つまり彼の分身体を維持していた、世界樹の魔力が消失した、と言う事だ。

 

「……フム。これで超君が行おうとしていた儀式……。世界樹と6つの魔力溜まりで構成される魔法陣で、どんな儀式を企図していたかは不明だが、それはもはや実行不能となったわけじゃな。魔法陣自体が、もはや存在しておらぬのじゃから。

 壊斗殿によれば、あくまで時間移動技術の行使を阻止する、ダメ押し策だったそうじゃが……。これは瓢箪から駒と言って良いんじゃろうか?」

 

 近右衛門がこう呟いたとき、彼の携帯電話が呼び出し音を立てた。彼は急ぎ、電話を受ける。

 

「もしもし、ワシじゃ」

『学園長先生! 瀬流彦です! 6体の鬼神が動き始めました! 目標予測地点は、麻帆良学園本校小等部校庭です!』

「む……。わかった、生き残った魔法先生、魔法生徒を向かわせよう。なんとしてもその地を、護り抜くのじゃ」

『学園長先生、そこに何があるんですか!?』

「それはの……」

 

 

 

「そこに設置されタ、何らかのシステムが、地脈を通じて世界樹の魔力をネコババしてるネ。何としてもソレを破壊して、世界樹の魔力による魔法陣を復活、儀式をやりなおすンだヨ!」

 

 今、超鈴音は彼女らの本部とも言える飛行船で、全ての戦力をかき集めて全体指揮を執っていた。その姿は、着用している強化服のあちこちが砕け、引き裂けて、凄惨の一言である。

 彼女は高畑との命を削るような戦いの最中、葉加瀬からの報告を受けて緊急事態を悟った。そして一瞬の機会を捉え、炎の『(ゲート)』での転移魔法を用いて戦いを離脱。飛行船まで戻って来たのだ。

 そしてその天才的とも言える頭脳と飛行船に搭載されていた量子コンピューターを用い、世界樹の魔力消失パターンをシミュレート。結果、地脈を介して魔力が流れた先が、麻帆良学園本校小等部校庭である事を突き止めたのである。

 だが稼働に世界樹の魔力を必要とする田中さんやBUCHIANAは、一部が緊急用無線給電で活動しているものの、大半が行動不能である。残された戦力は、その未だ動いている田中さん22体、BUCHIANA2体、独自の動力で動いている茶々丸妹が4体、そして……。

 

「超さん、龍宮さんは長瀬さんと千日手状態で、動けないとの報告が。茶々丸は学園結界の復旧を阻止するためにこれも動けません」

「そうカ……。葉加瀬、6体の鬼神はどうネ?」

「今、全力で目標地点へ向かわせてます。……!? これは!?」

「どうしたネ!?」

 

 何が起こったかは、制御盤(コンソール)の付属ディスプレイの表示を見れば、明らかだった。鬼神が1体、活動を停止したのだ。これは超の計画にとって、大き過ぎる痛手である。

 科学装置で制御(コントロール)された鬼神は、単に戦力と言うだけではない。超の計画、世界12ヶ所の聖地と共鳴し、全世界に対して魔法の存在を強制的に認識させる魔法を行使するためには、この鬼神を6つの魔力溜まりに配置して増幅装置代わりに使う必要がある。しかし今、1体の鬼神が倒されたか、あるいは封印されてしまっている。

 

「やったのは誰カ!? 高畑先生カ!?」

「いえ、高畑先生は残存田中さんとBUCHIANA、それに茶々丸妹による飽和攻撃で、足止めを図っています!田中さんとBUCHIANAは見敵必殺(サーチ・アンド・デストロイ)されてますが、やられる度にそちらへの無線給電をカット、別個体を再起動して投入していますので、多少は……」

「じゃあ誰ネ!」

「古さんです!」

「!!」

 

 超は、その名を聞いて一瞬呆ける。彼女はすぐに我を取り戻したが、何故に古がそんな能力(ちから)をと言う感情は抑えられない。超は、思わず歯を食いしばった。

 

 

 

「お見事です!」

「やりましたね、古さん!」

「まだアルよ! 次行くアル! ……っと! その前に……」

 

 古は高音・D・グッドマンと佐倉愛衣の声に叫び返すと、足に履いた装甲ブーツと、手に着用した小手(ガントレット)を交換する。そして爆薬カートリッジで、脱ぎ捨てた古いそれらを爆破処理した。

 

「使い捨てってのは玉に瑕アルね。機密保持のため、使い終わったら爆破しないとイケナイのも面倒アル。だけど、恐るべし、科学の力アル……。」

「目には目、歯には歯、科学の力には科学の力ですか……。でも、自信を持つべきですわ。わたしや愛衣では、それらを使いこなせないのですから」

「さ、行きましょう! まだ敵はいます!」

 

 3人の女生徒は、次の敵を求めてその場を走り去った。




超さん、いつもなら科学の力で理不尽を敵に強いる立場だったのですが、本作では自らが超科学(『ちょうかがく』で、『ちゃおかがく』ではありません)の理不尽さに振り回されてます。そして彼女が多分、友としてならばともかく戦力的には軽視していたであろう古菲が、彼女の計画の一角を砕いたのも、ショックだったでしょうね。それもまた、副主人公壊斗の科学の力なのですが。

そして作者であるわたしの最大の誤算。ちょっと長くなり過ぎたので、全文を分割したのですが、前半部たる今話に主人公千雨が出てない。

(吐血)

土下座案件でしたな。
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