超自然エネルギーである魔力、それも世界樹に根源を持つ魔力のみを選択的に吸引、吸収してエネルゴンキューブに変換する特殊エネルギープラント、『マジカルパワー・マグネット』が、低い音を立てて稼働している。その傍らには、それから吐き出されたエネルゴンキューブが大量に積み重なって行く。
それを前にして
何故小等部児童たちが居るのかと言うと、地理的かつ地脈の影響なども考慮に入れ、『マジカルパワー・マグネット』は麻帆良学園本校小等部の校庭に設置されているのだ。
児童たちは口々に、『すっげー、すっげー!』とか『巨大ロボだ!』とか騒ぐ。それを耳にしながら、サウザンドレインは『マジカルパワー・マグネット』とそれが次々に吐き出すエネルゴンキューブを眺めつつ、感嘆の声を漏らす。
『こいつは凄えなあ……。こんな代物が、ぽんと建造できるなんて』
『いや、原型は大昔から存在したんだ。俺はそれをマイナーチェンジしただけだ』
『原型?』
『地球各地からエネルギーを強奪するために建設された、『エネルギー・マグネット』って装置がかつてデストロン軍団で開発された事があったのさ。地球全土のエネルギーをまるで磁石が鉄を引き付けるみたいに吸着して、デストロン軍団で地球の全エネルギーを独占しようって作戦があったんだ。
もろに悪の組織っぽい作戦だろ?俺はその頃は宇宙で活動してて、地球のデストロンには居なかったけどな』
その話を聞きサウザンドレインは、この人の良いサイコブラストがデストロン軍団に馴染めなかった理由、その一端を再認識した。
『……それって、下手すると『ジ○イアントロボ・THE ANIMATI○N 地○が静止する日』みてえな話にならないか?』
『なるぞ。その時は幸いにもあまり大きな被害は出なかったが……。普通なら、飛行機は墜ちる、病院の生命維持装置は止まる、流通はマヒ、他にも色々。デストロン軍団が、地球人たちの事を何も考えて無かったって事だろうな。酷い話さ。ま、悪業のツケが回って、地球のデストロン軍団は酷い目に遭ったけどな』
『何があったんだ?』
『サイバトロン軍団の目を引き付けておく陽動のために、デストロン軍団は超ロボット生命体の天敵、電気エネルギー生命体を創り出して、サイバトロン軍団を襲わせたんだがな。
そいつは電気エネルギーの塊だから、サイバトロン軍団の働きもあったが、『エネルギーマグネット』に引き寄せられた。低知能だったから、主人の事なんか覚えてない。『エネルギーマグネット』実験施設を破壊して大暴れさ』
『自業自得に思えるんだが』
サイコブラストは苦笑しつつ続ける。
『この『マジカルパワー・マグネット』は、その『エネルギー・マグネット』の流れをくむ装置なんだがな。無差別に遠隔で魔力を集めるんじゃなく、この地面の中を流れている地脈を媒介にして、魔力波動の周波数を検出して『神木蟠桃』の魔力だけを収奪。そしてエネルゴンキューブに変換している』
『そう言や、わたしが撃ったあのミサイル。あっちはどんな仕掛けで超たちの時間移動技術の装置類をブチ壊したんだ?』
『本当は、最小威力で時空振動弾を使おうかとも思ってたんだがな。あれならば、精密でデリケートな
『ちょ』
慌てるサウザンドレイン。だがサイコブラストは、笑って言った。
『使ってないから安心しろ。超がどれだけ時間移動でこの世界線の『系』にダメージを与えてるか、計測する方法が無かったんでな。本来の強度が世界線にあるならばまったく問題ないんだが、この場合最小威力とは言えど時空振動弾を使うのは
だもんで、『神木蟠桃』の魔力に干渉して、その魔力に次元振動属性を噛ませてやったんだ。これならば、世界線の『系』には無干渉で、しかも『神木蟠桃』の魔力を必要とする時間移動系機器類に致命傷を負わせられる。その手の機器類は暴走して、時間軸方向ではなく、縦横高さの3次元空間にエネルギーをばら撒いて自壊するのさ』
『ふう、安心したよ。さて、無粋なお客が来たな』
『俺は装置の制御で、手が離せない。あとはここの児童らに、バリアを張ってやらんといけないしな』
『了解。なんとかわたし1人でやってみるさ』
サウザンドレインは、建物の向こうから姿を現した2体の巨大な影……鬼神へ対処すべく、両手にライフルを装備した。そして彼女は、小等部の児童たちへと声をかける。
『おい、ガキども! ちょーっとヤバくなるんでな! しばらく隠れてるか、そっちの黒、赤、金の大きめのロボットの周りに行ってろよ!』
小等部の児童たちは、隠れるつもりが全く無いらしく、全員が『わーーー!』と歓声を上げてサイコブラストの周囲に集まる。保護者や教員も、已む無くおそるおそるサイコブラストに近寄った。サイコブラストは苦笑して、フォース・バリアーを張る。
『フォース・バリアー!! ……じゃあ頼むぞ、サウザンドレイン』
『わかった!』
サウザンドレインは、2体の鬼神に左右の手のライフルで、各々狙いをつけ、発砲した。
超のもとへ、次々と彼女にとっての悲報が届く。葉加瀬の悲鳴のような声が響いた。
「駄目です! 6体の鬼神のうち2体が古さんに、2体は目標地点までたどり着きましたけど、そこであの小さい方の変形ロボに撃破されました!1体は瀬流彦先生の支援を受けた葛葉先生に倒されて……。今、最後の1体を小さい方の変形ロボが、今まで未確認だった戦車形態で追い回してます!」
「く……。戦闘機、戦車、ロボットにマルチ変形するトハ……。科学でのアドバンテージは、こちらが圧倒的ダト思ていたネ……。それが……」
「学園長の呼び寄せたらしき科学者、そして高畑先生の友人であるらしい科学者、更にはあの変形ロボ……。これらには何か関係があるんでしょうね」
「少なくとも、前者2人の科学者は同一人物ではナイかと思うヨ」
そして超は、訥々と語る。その声音は、いつになく真剣であり、儚く聞こえた。
「……済まないネ、葉加瀬。付き合わせてしまテ……。龍宮さんにも苦労をかけた割に、報いてあげられたカは……。いや報酬を支払いはしたけどネ。フフフ。
五月も、万が一に備え匿ったケレド……。ソレと茶々丸は、アレはネギ坊主と敵対するのに苦悩していた形跡があるネ。成長途上の
「超さん……」
古菲は、超包子の面々の中では唯一、超の企みについて一切知らされていない。この事について超の側にも、色々な理由や葛藤があったのは確かだ。
古の気質などから超の仲間として悪事に分類される行為を断行するとは考えづらいとか、古の場合性格的に秘密の保持に向かないなどの否定的要因。だがそれでも協力してもらうべきでは、協力してもらえるのでは、との願望に近い願い。
その古が敵として、超の企みの一角を切り崩したと言う事実は、超にとって想像以上にダメージであったらしい。超は目を伏せる。と、ここで葉加瀬が叫んだ。
「侵入者です!」
「!! 敵ハ!? そして現在地!」
「3名! もうこの部屋の前まで……!!」
そして部屋の扉が、破らなくても開くのに強引に破られた。超は侵入者の名を呟く。
「……犬上小太郎、宮崎のどかサン。そして……高畑先生」
「終わりや、超とか言うたな。今日のオレは、ネギの代理や。ネギ・スプリングフィールドの
「ネギ
「超君。君の最終目的、
「!? どうヤッてソレを知ったネ!?」
「「「秘密」」や」
超は驚きで目を白黒させる。高畑がそれを知ったのは、のどかのアーティファクト『いどのえにっき』に依る情報だ。実はしばし前、高畑、明日菜、木乃香、刹那の4人が超と戦っていた際に、その場にはもう2人存在していたのである。当然ながら小太郎と、そしてのどかだ。
小太郎とのどかは、超が高畑たちに攻撃を仕掛けた際、幸いにもと言ってはなんだが、他の魔法先生、魔法生徒を救援するためにチームを離れていたのだ。そして戻って来た時には、超が高畑たちに戦いを挑んでいた。
小太郎は即座に攻撃を仕掛けようとする。しかしのどかはそれを制止した。彼女は明日菜、木乃香、刹那が倒されて行くのに苦悩しつつも、『いどのえにっき』を用いて超の心を読む事を優先したのだ。『いどのえにっき』は相手の名さえ知っていれば、その相手の精神を絵日記の形で読み取れる、恐るべきアーティファクトなのである。
「……超さん。最後の鬼神が、例の小さい方のロボットに倒されました。田中さんやBUCHIANAも、ほとんどが撃破され、茶々丸妹も前線に戻って来た神楽坂さん、桜咲さん、木乃香さんと……。そして古さんのチームに……」
「そうカ……」
超は天を仰ぐ。そして彼女は言った。
「葉加瀬、龍宮サンと茶々丸に連絡ヲ。我々の敗北だヨ。これ以上の抵抗は無意味ネ」
「……了解です」
そして超に、小太郎がゆっくりと歩み寄る。
「超。ネギは『今日』にはおらん。そやさかい、俺がネギの代わりや」
「……どうするネ? ぶん殴るなり、なんなりするカ?」
「ちゃう。ネギは万が一、自分が行動不能にされる場合も予期っちゅうか、数多くの予測の中に入れとったんや。そしてその場合の対処を書き記したメモが、ネギが居なくなって3時間後に携帯メールで送信されて来た。
ちゅうても、事態の対処に関する事はメモの内容に無かったな。それに関してはネギの奴、俺らを信用するってだけ書いてあったわ。メモの内容は……」
小太郎は一拍置いて、再度口を開いた。
「ええとやな、超は確実に正犯やから、ネギのコレクションの『キャプ○ン・フュ○チャー』原語版、全巻を生徒指導室にて正座で筆写と和訳。資料はフツーの紙の辞書のみ使用可。
他に従犯は葉加瀬とか確実におるやろうから、これもネギのコレクションの『宇○大作戦・T○S』の小説シリーズ原語版全巻、同一条件で筆写と和訳や。
ただし茶々丸とか言うのは単純作業では罰にならんから、ネギのコレクションから『地底世界ペル○ダー』全7巻原語版の読書感想文提出だそうや」
「「ええーーーっ!?」」
「ああ、ネギの奴はお前らがそう言う反応をしたり、不満を言うようなら、こう言ってやれと書いとったな。意味はわからんが。『マルペ全巻の筆写と和訳を正座でやるのでも、いいんですよ?』だそうや」
超と葉加瀬は消沈して黙った。小太郎は思う。
(ほんま、ネギの奴は命が直接かからん事には甘いわ。『超さんは今まで
ほんまネギは、命が直接危険にならん限りは、甘いわ。その『覚悟を決めた甘さ』が無かったら、ネギやないけどな)
そして高畑が超と葉加瀬をとりあえず拘束する。彼等の乗る飛行船は、ゆっくりと降下して発着場へと向かった。
そして千雨と壊斗は、今日もまた学園長室でお茶と茶菓子を食べていた。その
「……そんで今、超一味は全員ネギ先生の残した指示通りに、米国SF作品を筆写と和訳してるわけですか。直接悪事をしてなかった、四葉を除いて」
「ネギ君とガンドルフィーニ先生があと6日後に帰還したら、改めて提出物の出来具合をチェックしてもらうらしいのう」
「大丈夫なんでしょうね、ネギ先生たち。時空間で迷子にならずに、ちゃんとこの時空、この世界線に到着してくれるといいんですが」
「大丈夫だろう。超謹製の
千雨の心配を、壊斗が無用だと微笑み混じりに否定した。千雨は安堵の様子を見せる。
「そう言えば、超は退学届けを出してたそうですが」
「超君は、作戦が成功したならしたで学園から姿を消して、魔法の存在を認識した世界を相手に、経済力と技術力である意味での戦いを挑むつもりじゃったらしいからのう。で、作戦失敗したなら、本来であれば
「俺たちが、
「それも、世界樹の魔力が無くば使えぬからの。まあ、そんなわけで超君の退学届けは、ワシが握りつぶす事にした。超君一味には、魔法世界の問題解決のため、馬車馬のごとく働いてもらうわい。監視もつけるし、それが彼女らに対する『裏』からの罰じゃの」
近右衛門は、美味そうに茶を啜る。その監視とやらも、おそらくはネギたちになりそうである。千雨と壊斗は、やれやれと肩を竦めた。
そして、学園祭終了と共に麻帆良学園を離脱した、1つの影があった。
「……黄昏の姫巫女候補は6人まで絞れた、か。そして『
白髪の少年……フェイト・アーウェルンクスは、そう呟くと麻帆良学園を一瞬だけ振り向き、そしてその場を立ち去って行ったのである。
どこで見た台詞だったかなあ……。マルペは1冊見つけたら、千冊いると思わなきゃ、って言うの。当時はまだ、千冊だったんですよね、マルペ。
そして『パニック・ザ・クレムジーク』……。あの回で、トランスフォーマーたちが日本にやって来るんですよね。その日本の表現が、物凄く凄い。今も思い出せますねえ。
でもってネギ君ですが、なんとかして『覚悟のある甘さ』を表現したいんですが、上手く行かないなあ……。
最後に再登場の某『