超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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第037話:何と言う事は無くも無い日常

 今日は週末の土曜日。葉加瀬は目の前にある環状の機械群に縋り付き、目をキラキラさせて調べ回っている。超は超で、目の前の景色に郷愁を感じる暇も無く、ヘルメット内のHUD(ヘッドアップディスプレイ)に投影された技術論文と自分が設計した新機材のデータを照らし合わせ、頭の中でそれらの情報を消化し昇華させていた。

 

『あんたら、元気ね……』

『明日菜サンが元気なさすぎなんだヨ』

『このスペースブリッジと言うシステムを前に、わたしは感動を禁じ得ないんです!』

 

 そう、今彼女らは壊斗のスペースブリッジで、火星へと出稼ぎにやって来ていたのだ。超一味には、壊斗は近右衛門が招聘した科学者で、高畑の友人とだけ伝えてある。だが超と葉加瀬は、あの謎の変形ロボと壊斗に、何らかの関係があると睨んではいたのだが。

 なお明日菜がここに居るのは、ネギたち一同も超と葉加瀬の監視の名目で、いっしょに火星へと出向いていたからである。なお当然ながら千雨と壊斗も、火星に来ている。本当は高畑も来る予定であったが、いつも通り急な出張にて予定が潰れたのだ。

 木乃香が苦笑混じりに語る。

 

『あー、アスナが元気ないんは、ちょっと理由あるんよ。先の日曜に、高畑せんせと学園祭の埋め合わせデートしたんはええんやけど。始まる前には絶対告白する言うとったんに、終わって帰って来たときには、結局告白できへんかったーって(しお)れててなあ……』

 

 そう、実は明日菜と高畑は本来、麻帆良祭最終日にいっしょに学園祭を回る約束をしていたのだ。だがそれは目の前にいる超一味によって、お流れになった。高畑は埋め合わせに先の日曜日、明日菜を連れて1日ドライブしてきたのである。明日菜はこのお出かけで、高畑に恋の告白をしようと決意していたのだ。

 まあ、結果は木乃香の言う通り、ヘタレた明日菜が何も言えずに、デート終了と相成ったわけであるが。それで明日菜はこの1週間、いまだにその件を引き摺っていたわけである。

 

『これが愛の悪い側面やな。しかしこの宇宙服ちゅうんは、動きにくいで』

『まあ、そう言わないで小太郎君。でも確かにこの宇宙服は動きづらいね』

 

 ネギと小太郎が、もこもこした硬式(ハードタイプ)宇宙服に閉口しながら会話する。ちなみに小太郎は、最近は愛について何やら考える様になったらしい。まあ彼の事だから、愛の力が戦いに影響すると言う実例を見せられ、あくまで戦いに関する観点から考えているのだが。だがそれでは、愛の本質を掴む事などできないんじゃないか、と周囲の皆は感じているのも確かだ。

 そこへ千雨の声が響く。

 

『おまえら、手伝えよ。土木工事、わたしたちにだけ、やらせてんじゃねーよ』

『悪かたネ、長谷川サン。今、生き残りの田中さん・改とBUCHIANA・改を起動するネ。葉加瀬! 先ずは予定の仕事を終わらすヨ!』

『あ、はい! これ(スペースブリッジ)は後からでも見られますからね!』

 

 千雨は今、大型の人型重機(パワーローダー)に半ば埋もれる様にして搭乗している。彼女は、同様に人型重機(パワーローダー)を操っている壊斗と共に、ロケット打ち上げ基地を建設している所なのだ。

 まあ建設と言っても、モジュール化された基地ユニットをスペースブリッジで火星に運び、それを建設予定地に展開して組み立てるだけなので非常にお手軽なのだが。なお人手は壊斗の造った作業用ロボットもあるが、超と葉加瀬の田中さんやBUCHIANAも用いている。基本これらは、魔力駆動からバッテリー駆動にした改造機だ。

 ちなみに本当であれば、千雨と壊斗は人型重機(パワーローダー)など使う意味は無いのだが、そこはそれ。一緒に来ている連中には、この2人がトランスフォーマーである事は未だ秘密なのだ。特に超と葉加瀬にはバレたくない、と千雨は思っている。

 

『けど、あの人型重機(ぱわーろーだー)っちゅう奴か?なんとなくワクワクするな!』

『うん、動かしてみたいよね』

『……予備機がありますから、先生たちも乗って見ますか? 代わりに重労働してもらいますけど』

『いいんですか!?』

『ええんか!?』

 

 千雨は笑って言う。

 

『ネギ先生たちは、それでイタズラする様な馬鹿ガキじゃないでしょう? 道理を(わきま)えてれば、構いません。と言うか、猫の手でも借りたいところですからね。こんな事なら、古や龍宮も連れて来て、作業員にするんでしたね。長瀬にも声かければ良かったですかね。

 土曜日のうちに打ち上げ基地を最低限設備整えて、明日の日曜日には試験用の真空発電衛星打ち上げてテストしたいんです。超が作った奴。それが上手く動けば……』

『……火星の衛星軌道上に48基の真空発電衛星。12基のブラックホール炉衛星。6基の反物質炉発電ステーション。更にそれらからエネルギーを得て稼働し、エネルギーを地上に送電する事にも使われる軌道エレベーター……。』

『そしてそのエネルギーを、えねるごんきゅーぶ? に変換して、それを介して最終的に魔力にして、火星の大地に注ぎ込むわけやな? かー、壮大過ぎて、なんや実感湧かへんわ。

 ま、ええわ。長谷川の姉ちゃん、人型重機(ぱわーろーだー)貸してくれや』

 

 と言うわけで、ネギと小太郎はあっと言う間に人型重機(パワーローダー)に慣れて、作業を手伝った。ちなみに木乃香の従者である刹那は、人型重機(パワーローダー)を上手く操れずに戦力外通告を受けてしまった模様。

 明日菜は明日菜で、落ち込んでいたせいもあるが、今一つ気が乗らない。そのため彼女は木乃香と共に、素直に超たちの監視をしていた様だ。まあ超たちは今更何か企む意味も無いため、監視も必要性は薄いのだが。

 

 

 

 昼間の作業に疲れた一同が、タンクベッドで眠りに着いた後、千雨は壊斗と共に火星基地の中枢コンピューターで、重要な計算をしていた。

 

「壊斗、この計算結果……」

「ああ、やはり間違いない。ただ単に火星に魔力を注ぎ込むだけでは、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の崩壊は止められん可能性が高い。何かしら、あちらの世界の中で世界を調律し、支えるに足る何かが必要……らしい」

「外部からの計測じゃ、限界があるな……」

 

 壊斗は溜息を吐きつつ、言葉を続ける。

 

「それと、もっと発電システムを増やした方が良さそうだ。第一次計画分ではなんとか魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の維持ができるぐらいは、(まかな)えるが。だが事故や破壊工作でエネルギー量が減ってしまえば、たちまち維持できなくなる」

「前に言ってた、並行宇宙間のエネルギー準位差を利用して、見た目無尽蔵にエネルギーを取り出すシステムは? あれなら打ち上げなくても、地上でやれるんじゃないか?」

「それも今、検討中だが……。あれは複数の、こちらよりエネルギー準位の高い宇宙と、エネルギー準位の低い宇宙の両方に繋いで、双方からエネルギー差を利用してエネルギーを引き出すんだ。

 双方のバランスを取らないで片方からばかりエネルギーを引き出すと、この宇宙の物理法則が変わっちまう恐れがあるからなあ」

 

 千雨と壊斗は、その後も色々と検討を続けた。基本方針である、現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)で得られたエネルギーを魔力に変換し、火星の大地へ送り込むと言う手段は、ほぼ確立されている。しかし細かい問題点は、後から後から出て来るものだ。

 そして彼らは、近い内……学校の夏休み前に、とりあえず魔法世界(ムンドゥス・マギクス)へ多数のドロイドを潜入させる事を決定する。目的は、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の詳細な調査だ。

 その調査結果により、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の崩壊阻止のための最後の一手、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)を調律するための何がしかを用意できるか、検討するつもりなのである。この事は、なるべく急ぐ必要があった。

 

 

 

 週明けから数日後の水曜日、壊斗と千雨は学園長近右衛門と高畑へ色々と報告し、自宅や女子寮へ帰宅途中であった。と、壊斗が何かに気付く。

 

「む?」

「どうした、壊斗?……って、『気』の反応だな、コレは」

「ああ。だが、こんなところで『気』が?」

「行って見よう」

 

 2人は街はずれの林の中へと入って行く。と、そこに居たのは地面に倒れ伏した、学ランを着用したリーゼントの若い男であった。千雨も壊斗も、この人物には見覚えがあった。

 

「おい、大丈夫か?」

「う、うう……。い、いや大丈夫だ。かたじけない」

「あんた、確か『まほら武道会』優勝者の、豪徳寺薫、だったよな?」

「ふっ、よしてくれ。大会後のインタビューでも言った通り、あれを俺は優勝だとは思っちゃいない」

 

 豪徳寺薫ちゃんは、よろよろと立ち上がると、学ランについた汚れを手で払った。壊斗は、彼が倒れていた事情を訊ねる。

 

「あんた、何故倒れていたんだ? ストリートファイトでもやったにしては、周囲がそこまで荒れていないし、相手もいない」

「ああ、いや……。新技を鍛錬していただけだ。恥ずかしながら失敗してな、立ち木にぶつかってひっくり返ったんだ」

「へえ……。正直に言うんだな」

「ああ、流石だと思う」

 

 千雨と壊斗の賛辞に、少々笑みを浮かべた豪徳寺だった。壊斗は言う。

 

「……どんな技を練習していたんだ? 俺も、『気』に関しては若干知識がある。助言できるやも知れん」

「……そう、だな。はっきり言えば、行き詰っていたんだ。あのとき準決勝第一試合で見た技なんだが……」

 

 そう言って豪徳寺は、立ち上がると精神を集中させ、右足を後ろに蹴り出す。次の瞬間、彼の姿はその場から消えて、数m先の立ち木に全身を強くぶつけていた。彼は再度、ひっくり返る。そして彼はよろよろと立ち上がった。

 

「なるほど、瞬動の鍛錬をしていたのか。あとちょっとだな」

「何!? し、知っているのか!?」

「ああ。わたしも壊斗も、苦労はしたけど今じゃそのちょっと上のレベルの技まで使えるかな」

「何っ!?」

 

 がびーん、とショックを受ける豪徳寺。実はそうなのだ。壊斗も千雨も、超ロボット()()()である。生きているのだ。それ故に、普通の人間が『気』を使うよりはかなり……本当にかなり相性は悪いものの、『気』は頑張れば使えなくも無い。

 そして壊斗の科学技術や、多数の格闘家の技を解析した事で、今ではそこそこに『気』の技を行使できる様になっていたのだ。無論、練習の成果もあるが。豪徳寺は必死で2人に頼み込む。

 

「た、頼む! もう一度、もう一度あの技を見られさえすれば! 必ずや何か掴んでみせる! お願いだ、あの『瞬動』って技をモノに出来れば、俺はもう一段階上へ行ける気がするんだ!」

「フ、お前の様な男は……。お前の様な『漢』は、嫌いじゃない。いいだろう、良く見ていろ」

 

 そして壊斗は、瞬動を実演して見せる。

 

「そうだ、これだ! これを見たかったんだ!」

「ちなみにわたしも出来るぞ」

 

 千雨も瞬動を連続で披露して見せる。豪徳寺は凝視し、それを目に焼き付けた。そして彼は、再度瞬動の訓練を始める。やがて数回の失敗の後、彼は何とか瞬動を成功させた。

 

「や、やった! ありがとう、あんたらのお陰だ!」

「この技は、移動中に向きを変えられないし、急停止もできないのが弱点だからな? それは気を付けるんだぜ?」

「ああ、わかった! ありがとうよ、お嬢さん!」

「そうだな、あとはその上位技と言うか、応用も見せて置こう。足の裏に『気』で足場を作ってやる事で……」

 

 そして壊斗は、虚空瞬動を豪徳寺に見せてやる。連続で周囲の空中を跳び回る2m超の大男に、豪徳寺は驚愕した。

 

「こ、これは……!!」

「わたしも出来るけど、今はスカートだしな。宙を跳び回るのは勘弁してくれ」

「あとは、こんなのも出来るぞ?」

「おお!! 跳ばずに宙に浮かんだ!? 『気』を極めれば空を飛べるとかは、聞いてないぞ!?」

「いや、極めなくても飛べるぞ。理屈上は、上の下級か、上の中級技だ。壊斗が飛んでる間に、気配を探って『気』がどんな働きをして飛べてるのか、『感じて』おけよ。

 ちなみに理論上は極めれば、『気』によって動きをマッハのレベルまで加速もできるみたいなんだけどな。流石にわたしたちも、そこまでは行ってない」

 

 千雨の言葉に、豪徳寺はもう言葉も無い。彼はしばし、宙に浮かぶ壊斗の気配を探る事に集中する。そしてそれが終わると彼は、バッと地に伏せると頭を地面に叩きつけた。

 

「ありがとう! 秘伝とも言える技を隠しもせずに教えてくれた、この恩義は決して忘れない! 何かあったなら、必ずやこの恩はお返しする! お師匠がた! どうかお名前を!」

「い、いや……」

「俺たちは師匠なんてガラじゃないんだが」

「いや、俺に取ってあんたたち、いえ、あなたたちは既に師だ! 礼には礼を、義には義をもって返さなければ、俺の漢が廃ると言う物!」

 

 千雨と壊斗は苦笑して顔を見合わせる。どこかの自称『漢』のオコジョとはえらい違いだ。そして2人は、順々に名乗った。

 

「俺は水谷壊斗。職業は投資家だが、趣味で市井の科学者も気取ってる」

「わたしは長谷川千雨。本校の女子中等部の学生だけど、壊斗の研究助手の真似事もやってる。

 わたしたちは、基本的に自分の技量隠してるからさ。あんまり人前で、師匠とか呼ばないでくれよ?」

「わかったぜ、水谷師匠に長谷川師匠!」

「では俺たちは行くが……。修行、頑張れよ」

「押忍!!」

 

 暑苦しく挨拶をする豪徳寺に手を振り、2人はその場を立ち去る。なんとなく2人は、この後も何時か、豪徳寺に出会いそうな気がしていたが、それが的中するかどうかは定かではなかった。




火星での活動開始。でもあっさり風味で。せっちゃんは、何となく機械類と相性悪そうな気が。携帯電話レベルならともかく、人型重機(パワーローダー)とか無理そう(笑)。

そして本番?豪徳寺薫ちゃん再登場。頑張れ豪徳寺、行け行け豪徳寺。個人的に好きなキャラなので、大贔屓(笑)。
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