超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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第002話:麻帆良結界

 ちょっとしたお茶会をお開きにした後、千雨と壊斗は電車に乗り、秋葉原から麻帆良学園都市へと戻って来た。千雨たちは麻帆良学園中央駅で埼京線を降り、そこから歩きで麻帆良学園本校女子中等部の寮へと向かう。

 

「ほんとは路面電車乗ろうかとも思ったんだけどな。けど、大荷物だしなあ……」

「これだけの荷物抱えて路面電車乗ったら、邪魔になるよな」

 

 千雨と壊斗は、のんびりと道を歩く。と、千雨の眉が顰められ、表情が強張った。その視線の先では、ある意味麻帆良名物と言っても良い、ストリートファイトが行われている。ガタイの良い男子高生が、10m近い距離を吹っ飛ばされた。

 千雨は小声で毒づく。

 

(何なんだよ、何時もながらこの非常識さは……。人が10mも吹っ飛ばされて、なんで軽傷どころかかすり傷で済むんだよ。気絶はしてるみたいだけどよ)

(ほんとにな)

 

 すぐ傍から聞こえて来たこれも小声の台詞に、千雨は思わず硬直する。それは壊斗の声だった。

 

(確かに異常な身体能力だな。ああ、広域指導員とか言うのが来たな。彼等は彼等で、非常識だよなあ。

 俺の様なトランスフォーマーには流石に及ばないが、なんで生身の人間があんな狂った身体能力を……)

「!?

 あんた、この状況が……!!」

「ん?」

「あ、いや……」

 

 思わず声を上げてしまった千雨は、我に返ると左右を見回す。幸いに、周囲の人間はストリートファイトに意識を集中していた。彼女の様子に気付いたのは、壊斗だけの様である。

 千雨は壊斗だけに聞こえる様な小声で、彼に問いかける。

 

(な、なあ……。あんた、この状況が異常だって理解できるのか? そ、それじゃあ麻帆良の中心にあるあの巨大な樹、通称世界樹ってんだけどさ。あんなでかい樹、変……じゃないか? 変だと思わないか?)

(……ああ、普通なら変だと思うだろうな。普通なら、あれだけの大木があったら世界記録だろう)

 

 壊斗の返答に、千雨は力強く頷く。

 

(だよな! そうだよな! おかしいよな、あんなの!)

(……だが、何故にハセガワはこの状況を異常だって理解できてる? 俺はトランスフォーマーだから、この麻帆良を覆ってる特殊なエネルギーフィールドからの影響を排除できてるんだが。)

(え゛っ……)

 

 千雨は壊斗の言葉に、一瞬頭が真っ白になる。しかし、徐々にその言葉の意味が脳裏に染み込んで来た。彼女はオウム返しの様に、壊斗の言葉を繰り返す。

 

(エネルギー……フィー……る、ど?)

(やっぱり気付いてなかったんだよな? なのに、何故ハセガワはこの状況が異常だと理解できる? ……済まんが、ちょっとセンサーで調べさせてもらってもいいか?)

(あ、ああ。わかった)

 

 そして数十秒の間、沈黙が続く。やがて壊斗は頷いて言った。勿論周囲に聞こえない程度の小声で、だが。

 

(なるほど、ハセガワは血筋なのか突然変異なのか定かではないが、このエネルギーフィールドの力に対しての抵抗力がある様だな。フィールドの力はハセガワの頭脳にも働きかけているが、ハセガワの頭脳はその影響力を排除し無効化し、思考力を正常に働かせている)

(な、なあ。そのエネルギーフィールドって、どんな働きがあるんだ? わたしは、どんな何を無効化してるって言うんだ?)

(うん、このフィールドには、軽い、ちょっとした精神コントロールの効果がある模様だな。せいぜいが個々人の認識力をほんのちょっとコントロールして、『麻帆良のちょっとした異常を異常だと思わせなくする』程度だ)

(!!)

 

 千雨は愕然とした。壊斗はその様子を見遣りつつ、言葉を続ける。

 

(この二週間で俺がざっと調べたところでは、元々はあの世界樹と言われている樹、『神木・蟠桃』が持っていた力の様だな。あの樹の存在が騒がれない様に、あの樹が見える程度の範囲に薄く広く、認識阻害の力を持ったフィールドが発生している。

 あの樹の存在感を薄め、大きく騒がれない様にするための、あくまであの樹が自衛として張っていた物だな。まあ、あの樹にそう言う意識があるのかどうかは不明だけどな)

(自衛……)

(だがそれを何かしら利用している連中がいるみたいだぞ。あの樹が張っているフィールドに人為的な調節を加えて、麻帆良の異常を異常だと思わせない様にしている)

(!!)

 

 ふるふると、千雨が握りしめた両の手が震える。彼女は怒鳴り散らしたい気持ちを必死に抑え、踵を返して歩き出した。壊斗が大荷物を持って、それに付き従う。やがて周囲に人気が無くなった辺りで、千雨は口を開いた。

 

「……世界樹のエネルギーフィールドとやらに手を加えてやがる連中が、居るって言ったよな」

「ああ。何処の誰だかはまだ調べがついてないけどな。……どうした?」

「なんでも……。いや……。聞いてくれるか?」

「おう」

 

 歩きながら千雨は、壊斗に自分の幼少期の事を話す。千雨は幼い頃、麻帆良の異常を『あれはおかしい』『これは変だ』と思ったままに周囲に訴えていた。しかし周囲は麻帆良の認識阻害のエネルギーフィールドにより、異常を異常と認識できなかった。

 結果として千雨は、周囲の人々から『変な事を言う子だ』と思われるようになったのである。周囲からはじき出され孤立した千雨は、この事で非常に苦しむ事になったのだ。

 壊斗は千雨に向かって言う。

 

「……大変だったな。周囲から孤立する事のつらさは、俺にも経験がある。」

「あんたも?」

「俺は悪の軍団と周囲から認識されているデストロンの一員として生を受けた。だが俺は、残虐な恐怖政治を敷くデストロンの風潮に実は馴染めなくてなあ。純粋な兵士タイプではなく、科学者、技術者タイプの個体として造られた事が影響してたんだとは思うが。

 しかしそれでも周囲に馴染まないと、そんな状況下……デストロン軍団の中では命に関わるからな。デストロン軍団中で適応不良なんてなったら、不良品として処分されかねない。必死で周囲に合わせた演技をしたよ」

「……」

 

 そして壊斗は、遠い目をして呟く様に語る。

 

「実力はあったんで最終的には、科学参謀と言う幹部級の地位まで昇進を果たしたんだが……。結局はデストロン軍団の方針に馴染めてなかったんだよなあ。耐えきれなくなって、離反した。

 だけどそれまでデストロン軍団の一員として、サイバトロン戦士を多数殺してたからなあ。それに俺は、科学参謀だった。科学者、技術者として開発した技術が、俺が直接殺ったよりも多くのサイバトロン戦士を殺したんだ。

 だからデストロン軍団だけじゃなく、サイバトロン軍団にまで追われてさ……。宇宙のどこにも行く場所が無くなって、次元転移に全てを託したんだ。そうして、俺はこの世界に流れ着いて、お前に助けられたわけさ。」

「……命の危険があるだけ、あんたの方がキッツいかもな」

「いや、苦しみや辛さには変わりがないさ。ハセガワも、苦しかったんだろ?

 お互いの苦しみが互いに全部わかるとは言わないさ。でも、お互いに周囲から孤立した同士だ。多少なら慮る事もできるさ」

 

 ふと、千雨は自分の視界が曇るのを認識する。彼女の両目からは、ぽろぽろと涙が零れていた。壊斗は革ジャンのポケットからハンカチを取り出し、彼女に渡す。

 

「泣いてるぞ。これ使えよ。……俺で良けりゃ、愚痴ぐらいはいくらでも付き合うぞ」

「サンキュ……。嬉し涙だよコレは。

 ……そんな嬉しい言葉かけてもらったの、前がいつだったか思い出せねーよ」

「そうか……」

「……。けど、どこのどいつだ。そんな妙なエネルギーフィールドとやら、張ってる馬鹿は。ああ、いや、世界樹が張ってるフィールドに手を加えてるって言ってたな。

 その手を加えてる奴らども、何のためにやってやがるんだ。なんかすっげえムカついてきた」

 

 壊斗は千雨の肩をぽんぽんと叩く。

 

「まあ、怒る気持ちはわかるぞ。と言うか、怒っていい話だよな。そう、だな。スパイ用ドロイドでも造って、麻帆良全域に放って調査してみるか。

 結果が出たら、あの腕時計型通信機使って連絡する。ちょっとの間、時間をくれ」

「あ、でもあんまり無理しないでもいいぞ?確かに腹は立ったが……」

「いや、とりあえずやる事はあんま無いからな。暇つぶしがてら、調査進めるさ。さて、あまりのんびりしてると、日が暮れちまうな。本校中等部女子寮は、こっちだったな?」

「あ、ああ。……サンキュ」

「どういたしまして」

 

 そして千雨は、女子寮の近くで荷物を受け取って壊斗と別れた。女子寮の前まで行かなかったのは、壊斗が千雨に変な噂が立たない様に気を使ったからである。律儀なロボだ、と千雨は思った物である。

 

 

 

 その後いつもの日常生活に戻った千雨だが、麻帆良の認識阻害の事を知ったため、周囲の人間の能天気さには以前ほど腹を立てなくなった。まあその代わりに、認識阻害を利用している正体不明の連中に対する怒りはつのっていたりするが。

 そして春休み半ばのある日、ついに壊斗からの連絡が腕時計型通信機に入った。千雨は急ぎ呼び出しに応じ、勇んで麻帆良市街へと出かけて行ったのである。




この話で触れられている内容は、ほとんど全部がよくある二次設定ですねー。『ネギま!』本編の正式設定でない部分が多いので、ご注意ください。
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