壊斗と千雨が火星に持って来た装置を見て、超と葉加瀬は唖然としていた。千雨は笑って言う。
「おまえら、さっさと田中さんたち指揮して、宇宙港の拡張工事と隣接した工場施設の建設やってくれよ。外じゃあもう、ネギ先生や高畑先生たち働いてるぞ」
「あ、ああ、いや大丈夫ネ。そちらは茶々丸妹の
「この小鳥型や野ネズミ型他のドロイド群も凄いです……。この外観の偽装技術を茶々丸のボディに応用できれば……」
「葉加瀬、それもだけれド、物凄いのはこちらネ。今続々と、この偵察ドロイド群を
超は信じられない物を見ているかの様な表情で、壊斗謹製の転送ゲート装置を見遣る。
「けれド、この装置はベルトコンベアに積載した物資……偵察ドロイド群を、持続的に次々『あちら』へ送り込んでるヨ! しかも、『あちら』側『こちら』側の空気や魔力他は全く影響してナイ! かけらも漏れてないネ!」
「原理が違うからな。それに従来のゲートは地球各地から、火星の異界である
壊斗の言葉に、超と葉加瀬は再度呆然とするが、それも一瞬の事。彼女らは急ぎ、壊斗から公開された学術論文や技術論文を漁り始めた。どうやらこのゲートに関し、その原理や構造を理解しておかないと落ち着かないらしい。
「ああモウ! 公開されてる分だけじゃ、まだまだ足りないネ!」
「水谷さん、お願いします! もう少し公開範囲、緩めていただけませんか?」
「もう少し、君らが信用できるところを見せてもらってから、だな」
「だからお前ら、将来のそれを期待して、きちんと働きやがれ」
肩を落とす超と葉加瀬を見て、千雨と壊斗は笑った。
そして火星基地中枢コンピューターの大型ディスプレイに、偵察ドロイドからの映像が映し出される。田中さん他のロボットたちを遠隔指示していた超が、感慨深げに言った。
「コレが崩壊前の
「だな……」
千雨もまた、それに頷く。だがその眼が
「だけど、綺麗なだけの世界じゃなさそうだな」
「どうしたネ? 長谷川サン?」
「中枢コンピューター、ドロイドC-132-366TAの画像に切り替えろ」
画面の画像が切り替わる。その場の一同、特に『そう言った』場面に全く慣れが無い葉加瀬は、息を飲んだ。ちなみに千雨は、例の
だがそれでも、彼等は破壊を好んでいるわけでは無い。その場の全員が、唇を噛んだり、息を吐いたり、顔をしかめたり、なんらかの不快感を示す。大型ディスプレイに映し出されたのは、虐殺だった。小さな亜人の村が、装備もばらばらな兵士らしき人間……おそらくは賊の類に襲われて殲滅の憂き目に遭っていたのだ。
「……まあ、同じ人間である以上は。割り切れはしないが、こう言う場面も、あるんだよ、な」
「こ……これって……。うっ」
「葉加瀬、大丈夫カ? 気分が悪いなら、見ない方いいネ」
「記録は取って置くが、見たくないなら別画像に切り替える……。む?」
「どうした、壊斗?」
千雨の問いに、小さな頷きで応えた壊斗は、画像の一部をアップにする。そしてそこに映っていた物は、今まで虐殺側であった賊どもが、次々に消滅して行く場面であった。賊どもは、『その人物』が何かしらすると、一瞬で花びらの様な物に化けて爆発的に散らばり、文字通り消滅して行く。
そして『その人物』は、村の中で売られる目的で生き残った、わずかな少女たちを保護する。『その人物』の配下と思しき中高生程度の少女たちもまた、その村の生き残りたちをかいがいしく世話していた。千雨と壊斗は異口同音に、『その人物』の名前を呼ぶ。
「「フェイト・アーウェルンクス……」」
「これがカ!?」
「そうだ。テロ組織『
「
と、フェイトがカメラ目線になる。と言うか、要は偵察ドロイドに気付いた様だ。そしてフェイトは魔法を放った。映像がぷっつりと切れる。
「あー、バレたか? 壊された分、他のドロイドを現地近くに送って、予備のドロイドを
「頼む、ハセガワ」
「あー、目的はアレとか調べるわけじゃなしに、ドロイドを
「その通りだ、超。だけどとりあえず、お前は葉加瀬の面倒みててやってくれ」
そして千雨と壊斗は、ドロイド群を制御して
ドロイド群を使って魔法世界《ムンドゥス・マギクス》のデータ収集をしていた時、壊斗がまた声を上げた。
「あ」
「どうした、壊斗?」
「またドロイドが1体、行動不能になった」
「また壊されたのか? 誰に?」
「いや、壊れたわけじゃ無く鹵獲された様だ。映像に出す」
そして画面を見ていた千雨と壊斗は、思わずのけ反る。画面にはどアップで、男臭い表情の、赤銅色の肌をした、白髪に近い金髪の大男が映っていた。体高は人間形態の壊斗といい勝負か若干下だが、ボリュームと言う面では壊斗が細マッチョな事もあり、逆三角形の肉体をした相手の方が大きく勝っている。
壊斗と千雨は、この人物をあくまで情報だけで知っていた。
「これ……。ジャック・ラカン……だよな?」
「おそらくは……。
『……こりゃあ、作りもんだな? この鳥はよ。せっかく狩って食おうかと思ったが……。期待させやがって、どこのどいつだ? この鳥の目を通して、見てやがんだろ?』
「と言うか、ログ見てみたら、普通に飛んでたのを普通にジャンプして普通に捕まえたぞ、コイツ。そう言う場合は普通に回避命令出してたんだが、普通に意に介さずに普通に回避行動を無視して、普通に捕まえた」
「改良型ドロイドの回避行動を無視? そんな無茶が、フツーにできやがんのか、このバグキャラは」
映像の中の
『おい。聞いてんだろ? せっかく食おうと思ってた鳥がニセモノだったんで、俺の心は深く傷ついた。だもんで、慰謝料500万ドラクマ。きっちり耳揃えて払ってもらおうか』
「そして前情報通り、金に汚い」
『へっぷしぃ!! おお!? 手前ら、何か悪口言いやがったな? 俺の超絶スーパーウルトラワンダフリャ四次元ワイド大画面なくしゃみが反応しやがった! 更に1,000万ドラクマ追加だ!』
「無駄に無意味に無茶に勘もいいな。って言うか、わたしらが複数だってのまで、どうやって気付いたんだ」
千雨のぼやきに苦笑を漏らした壊斗は、スイッチを切り替える。こちら側の音声回線が、あちら側のドロイドに繋がった。
「あんた、ジャック・ラカンだな? その慰謝料とやら、払ってもいいぞ?」
『おうっち!? いきなり喋りやがった。ほんとにいいのか!? いいんだな!? 言質取ったぞ!!』
「ただし俺たちの本体は、今
『おお、じゃあ換金の手間賃合わせて2,000万ドラクマ分な』
壊斗は笑って、言葉を続ける。
「それに加えて、俺たちからの仕事を引き受けてくれるなら、更に1,000万ドラクマ分の貴金属を追加しよう。更に他にも追加報酬が現物である。どうだ? 傭兵剣士、ジャック・ラカン殿」
『ほほう、仕事の話か。いいぜ、と言いたいところだが……。手前ら、何者だ?』
「あんた、近衛近右衛門って知ってるか? それと
俺の名は、水谷壊斗。水谷がファミリーネームだ」
「わたしは長谷川千雨。長谷川がファミリーネーム」
それを聞いたラカンは、少し考え込む。
『ほう……。コノエモンとかはともかく、アルの奴の依頼受けてんのか……。何か裏があるんじゃねえだろうな?』
「あるぞ?」
『あんのかよ!』
「だが、まあ悪い裏じゃない。少なくとも、お前さんにとってはな。さっき言った追加報酬……。それなんだがな? ……お前さん含む、
一瞬目を見開くラカン。しかし彼は、すぐに呵々大笑した。
『!! ハハハハハハ! なるほどな。奴らが動いてるって言うから何事かと思ったが、その件かよ! いいだろ、引き受けた! ただしビタ一文まからんからな!
……おお!?』
「あ、そろそろ
『早えよ!』
「早い方がいいだろう? お前さんが金寄越せと言い出した時に、無線通信で部下のロボットに用意させて、即座に出発させたんだ」
映像内のラカンは、一瞬唖然としたがニヤリと笑う。
『誠実な雇い主か、珍しい生き物だな。さあて、俺は何をすればいい?』
「それはな……」
壊斗はラカンと、細かい話を詰めに入る。それを眺めつつ、千雨は
こうして瓢箪から駒的に、千雨と壊斗は
いや、ホントは今話のタイトルを『守銭奴怪獣ジャアック・ラーカーン登場』とかにしようかと思ってたんですけどね。ウ○トラマンのサブタイトル風に。
でもジャック・ラカンも大事だけれど、フェイトも大事。『