超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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第043話:夏休みまで、あとちょっと

 図書館島から、アルビレオ・イマ(クウネル・サンダース)の塔がある地下深くへと、千雨と壊斗は潜って行く。壊斗の手には、果物かごが下げられていた。途中で巨大な飛竜(ワイバーン)が道を塞ぐが、通行証を見せてやると大人しく脇へ避ける。やがて2人は、アルビレオ(クウネル)の塔へとたどり着いた。

 

「ようこそ、長谷川さんに壊斗さん。歓迎しますよ」

クウネル(アルビレオ)、その後は『彼』の具合はどうだ?」

「まあ、見ていただければ分るでしょう」

 

 出迎えたアルビレオ(クウネル)は、満面に胡散臭い笑みを浮かべて、2人の前に立って歩く。やがて一同はある一室にたどり着いた。その部屋の前では、茶々丸と茶々丸妹壱号から参号までが、立ち番をしている。

 そしてクウネル(アルビレオ)が2人に目配せをして、そっと音を立てずに扉を開ける。そして2人は、微笑ましい物を見て頬が緩むのを禁じ得なかった。

 

「いや、俺もう手足は動くし、自分で食えるって」

「いいや、無理をしてはいかん。そら、口を開けろ。あーん」

「くっ……。あ、あーん。はむ。……な!?」

「!? きっ、貴様ら、どこから見ていた!」

「「「いや、どこからって、この扉の陰から」」」

「意味がちがうわっ!!」

 

 真っ赤になって怒鳴るエヴァンジェリンと、ばつの悪そうな顔をするベッドに横たわったナギ・スプリングフィールドを見て、クウネル(アルビレオ)はニヤニヤと笑う。千雨と壊斗も、生暖かい笑みを2人に送った。

 

「いえね。キティは登校地獄(インフェルヌス・スコラスティクス)のせいで学校をサボれませんからね。それ以外の時間にはずっとここに入り浸って、ナギの世話をかいがいしく」

(マスター)はナギさんが救われて以降、ご自分の当座の衣類や学校の教科書にノートなどをこちらに持ち込み、ここから学校に通ってはここに帰っています」

「おまえもか茶々丸(ブルータス)! 巻いてやる、巻いてやるぞこのボケロボ!」

 

 茶々丸に飛び掛かり、その後頭部のゼンマイをこれでもかと巻くエヴァンジェリンに、千雨と壊斗、クウネル(アルビレオ)は心和む。そんな中、ナギが口を開いた。

 

「あー。アンタが壊斗ってヤツ、いや、アンタとかヤツとかはねえな。恩人なんだから」

「別にかまわんぞ」

「そっか? んじゃ遠慮なく。アンタが壊斗だな? そして隣が長谷川か。科学の力で俺を『造物主(ライフメーカー)』から救って、そして『造物主(ライフメーカー)』を消滅させたってな。ほんとに……。ありがとよ。ほんとに感謝する。

 それだけじゃねえ。ネギも世話になってるみてえだしな。俺がやり残した、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)を崩壊から救う事……。それも手掛けてるって、アルの野郎から聞いた。こんな身体じゃなかったら、そこの床に頭擦り付けて土下座したっていいぐらいだ。身体が良くなったら、この恩義は必ず返すぜ」

 

 ベッドのナギは、目を瞑って(こうべ)を垂れ、感謝の意を表す。壊斗は頷いて言った。

 

「ふ、聞いたよりも律儀なんだな。わかった、楽しみに待っているから、まずはきちんと身体を治せ」

「そうですよ、父さん」

 

 突然、ふわっと花弁(はなびら)が風に乗って舞い、それが渦を巻くとその場にネギ、のどか、小太郎、木乃香、刹那の5人が出現する。風を媒介にした転移魔法だった。

 

師匠(マスター)、ただいま戻りました」

「ええ、お帰りなさいネギ君。それに皆さん。明日菜さんはどうしたんです?」

「それがな、師匠(ますたー)。高畑せんせと大事なお話がある言うて、今日はごめんなさいやて」

「ああ、それで転移魔法で戻って来たんですか。明日菜さんがいらっしゃると、彼女はまだ記憶が戻ったばかりで自分の能力(ちから)を上手く制御(コントロール)できませんからねえ。転移魔法を使っても、彼女だけ取り残されるか、あるいは転移自体失敗しますし」

「凄えな、ネギ。転移魔法まで使えんのか」

 

 ナギが驚きの声を上げる。まあ普通、10歳やそこらで自分以外に4人連れて転移魔法を使えるとか、色々おかしい。

 

「ネギ君は短距離で自分だけであれば、媒介を使わない転移もできますよ。色々と英才教育の限りを尽くしましたからねえ、フフフ。のどかさん、木乃香さんには、流石にそこまで無茶はしてませんけれど」

「……」

 

 ネギ、のどか、木乃香が一瞬、遠い目になる。ナギ、エヴァンジェリン、そして千雨と壊斗の目がアルビレオ(クウネル)に集中した。その視線は、明瞭に物語っている。『コイツ、何やったんだ』と。

 そしてネギはナギに向かい合う。

 

「父さん、具合は良さそうですね。でも、今はまだまだ安静が必要な時期ですし。無理しないで、ちゃんと休んでくださいね」

「お、おう……」

「きちんとエヴァンジェリンさんの言う事を聞くんですよ? 僕はこれから師匠(マスター)の授業を受けないといけないので。エヴァンジェリンさん、父さんをお任せしますので、よろしくお願いしますね」

 

 ネギの言葉を聞いたエヴァンジェリンは、満面の笑みを浮かべる。

 

「まかせておけ、坊や! 必要とあらば、『眠りの霧(ネブラ・ヒュプノーテエイカ)』を使ってでも眠らせてやる!」

「ちょ」

「冗談だ、ナギ。下手に抵抗(レジスト)しようとして体力消耗しては逆効果だからな」

「冗談とか言ってて、手に魔法薬持ってんじゃねえか!」

「冗談が本当になるのが嫌なら、とりあえず今は眠っておけ」

 

 父親と押し掛け女房志願者の様子を見遣り、ネギは微笑んだ。ネギはネギで、アルビレオ(クウネル)から父親の逸話を幾つも聞き、ナギには誰か重しになる者が必要だと考えていたのだ。奇しくもそれは、師匠(マスター)であるアルビレオ(クウネル)の考えと一致していたのである。

 

「さて、あまり長居しても病人の負担になるな」

「見舞いは済んだし、そろそろ帰るか。ああ、忘れる所だった。絡繰、これ見舞いの果物な」

「ありがとうございます、水谷さん長谷川さん。またおいでください」

 

 助けを求めるようなナギに背を向けて、千雨と壊斗はその場を立ち去る。それと共に、アルビレオ(クウネル)とネギ一同もその部屋を辞去する。茶々丸と妹たちが、(マスター)の邪魔をするわけがない。

 こっそり使い魔で部屋の様子をデバガメしていたクウネル(アルビレオ)によれば、結局は渋々眠ったナギの顔を、飽きもせずに延々ニコニコ見つめ続けるエヴァンジェリンと言う、ニヤニヤ物の姿が見られたそうである。

 

 

 

 古菲が伸びをする。楓が首をコキコキと鳴らす。千雨はそれを見て笑みを浮かべながら、息を吐いた。3-Aの教室は、開放感が漂っている。それもそのはず、採点と発表こそまだだが、つい先ほど一学期末の期末試験が終了したばかりなのだ。

 

「いやー、今回は厳しかったでござるな」

「そうアルか? いつもより簡単だたアル」

「「「「「「ええっ!?」」」」」」

「???」

 

 周囲の様子に、古は変顔で頭の上に疑問符を浮かべ、何が何だかわからないよ的な反応を示す。千雨は内心ウンウンと頷いていた。いや、彼女と古はこの1週間、苦労したのだ。連日身体が(なま)らない程度の組手をした後で、みっちりと試験勉強を頑張ったのだ。正確に言えば、古を教えていたと言う方が正しいが。

 そして千雨が前々から思っていた事だが、古は実際頭は悪く無い事がはっきりした。ただポテンシャルと時間の大半を鍛錬に充てているだけなのである。なので千雨のノートと、教科書への書き込みを元にして、みっちり試験範囲の授業内容を復習したら、手ごたえはしっかりとあった模様だ。

 

「え~!? じゃあ古ちゃん、この問題わかる?」

「どれアルか? コレは確か……」

「う、嘘!?」

「え。何か間違えたアルか?」

「い、いえ、正解ッポイけど」

 

 周辺のクラスメートが、古に今日のテスト問題から次々に問いを投げかけて行くが、古はよほど難しい物以外はきっちり答えてみせる。明石祐奈などはテストの点数で負けが確定した様で、灰になっていた。

 ちなみに超鈴音も、『古に勉強教えるのは、ワタシも断念したんだガ……。何ガ起こたネ……』と、がっくり膝をついていた。千雨はまあ、天才は基本的に、他人に物事を教えるのは向かないもんだ、と肩を竦めていたが。

 

 

 

 そしてあっと言う間に、テスト結果発表の日である。幸いなことに、テスト用紙の名前を書き忘れるなどのお約束をした者は存在せず、3-Aは危惧していた最下位どころか、なんとか学年二位を奪取した。

 この快挙に、お祭り好きなクラスの面々はお祝いだとばかりに騒ぎまくる。ネギもまあご褒美だとばかりに、その騒ぎに目を瞑った。新田先生ですらも、3-Aの扉を開ける前にいったん立ち止まり、()()()見つかってくれたりした物だ。おかげで3-A一同は、怒鳴られて正座の罰を受けるところを、首の皮一枚で回避した。

 

「しかし……。バカレンジャーの面々、頑張ったわねえ……」

「と言うか、明日菜と古ちゃん、バカレンジャー扱いはもう無理でしょ」

「い、いや。まだ次回のテストで落ちるかも」

「祐奈、負けを認めないのは見苦しい」

 

 クラスの面々が(ささや)いている様に、古の躍進以外にもダークホースが居たりする。過去の記憶と共に、その高いはずだった知性を取り戻した明日菜である。まあ、だからと言って知性はともかく知識は足りない。そんなわけで、彼女は同室の木乃香に頼った。

 まあ頼ったとは言っても、以前の自分が取ったノートが単なる板書の写しで、あまり使い物にならない出来だったので、木乃香のノートを借りたと言うだけの話である。きちんと要点を逃さずに整理して書かれている木乃香のノートは、彼女に取って救い以外の何物でも無かった。

 かくして明日菜は今回、ノートを貸した木乃香すらも超え、いいんちょである雪広あやかと互角の点数を叩きだしたのだ。恐るべし、アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア。

 ちなみに千雨であるが……。彼女は理数系と、暗記問題の多い社会科系科目で、満点もしくはそれに近い異様な高得点を取り、国語や英語でも以前が問題にならない良好な成績を収めた。

 千雨は、返却された解答用紙をそそくさと学生カバンにしまい込む。もう遅いかもしれないが、出来る限り目立ちたくは無かった。

 そして遅かった。

 

「は、長谷川殿~!」

「……なんだ長瀬」

 

 情け無さそうな顔で泣き付いて来たのは、ニンジャだった。今回のバカレンジャーのドベはこいつか、と千雨は思う。

 

「なんとか他の教科が比較的(それがし)としては良い方でござったので、平均点ではどうにか言い訳が立つでござるが……。理科がマズいんでござる」

「おい忍者。忍者の術ってのは一般に資料として知られてる分だけでも、理数系の知識が重要だぞ?秘伝とかは知らんが、火薬や毒の調合とか他にもあるだろ。

 忍者が理科苦手ってのは、はっきり言って致命傷じゃねえか」

「せ、拙者は忍者じゃないでござるよ? それより、どうにか夏休み中の補習を逃れたいんでござる。理科だけのために休み中に登校するのは嫌すぎるでござれば。

 ちなみに古を教えたのは長谷川殿だと言う噂が。拙者どうにか終業式前の放課後の補修授業で、事を収めたいでござる」

 

 千雨は古を見遣る。古は首を左右にぶんぶん振る。どうやら漏らしたのは、古ではない模様。

 

「……で?」

「理科、教えてくだされ。おねがいでござる」

「超にでも教わりゃ、いいじゃねえか」

「超殿や葉加瀬殿に教わると、頭がパンクするんでござる」

 

 やはり天才連中は、教えるのには向いていないらしい。それは置いといて、クラスが二位だったと言うのにこの(ざま)と言うのは、千雨は理解に苦しむ。楓も他の教科のおかげで平均はそこそこだった様だし、逆に言えば理科がどれだけ悲惨だったのか。

 

「手前、そう言うのは期末試験の前に言えよ。教えてもいいけどよ」

「ありがとうでござる。そして面目ない……」

 

 放課後の補習授業は最終日に試験があり、それに合格すれば夏休み中の補習は免れる。とりあえず、火星での仕事ができない平日に、(コイツ)を徹底的に絞ろう。そう千雨は考えたのだった。




今回は、「ナギ、エヴァにせまられる」「千雨、楓にせまられる」の二本立てでした。まあ、同じせまられるのでも、中身はまるで違うのですが。

ちなみに楓が理科でヤバい点を取ったと言うのは、あくまで本作内部でのつじつま合わせの独自設定です。ご容赦ください。
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