超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

46 / 56
第044話:愛の戦士たち

 そのときフェイトは、司令官役であるデュナミスの下した指示を聞き、懸念を覚えて異議を述べた。

 

「デュナミス、まだ時期尚早では? 第一、僕らは『黄昏の姫巫女』と目される、神楽坂明日菜を手に入れていない。それに本当に神楽坂明日菜がそうであるのかも、確認が取れていないんだ。

 確認に失敗した、僕の言う事でも無いかもしれないけれどね」

「確かにそうかも知れん。だがな……。各国の政治状況などから、奴の目が……忌々しいクルト・ゲーデルの目が、他所に逸れている今が、ある意味チャンスなのだ。

 各地のゲートを破壊し、唯一この地オスティアの廃棄ゲートのみを残す。それにより二世界間の魔力圧の差によって、ここオスティア周辺に莫大な魔力が集まる。その魔力により、オスティアのゲートが繋がっている麻帆良学園地下ゲートが活性化すれば……」

 

 フェイトは無表情のまま、聞き役に徹する。デュナミスは熱意を持って、夢見る様に語り続けた。

 

(あのかた)は貴様の調査によって、麻帆良の地の『神木蟠桃』をもって封印されていると結論づけられる! だがゲートが最大限に活性化する事で麻帆良学園中枢への直接経路が確保できれば! そしてその時に、『器』の肉親の魂が祭壇上にあれば! その血肉を確保できていれば!

 その三条件が揃うならば、その時まさに(あのかた)、『造物主(ライフメーカー)』は封印より解き放たれ、復活するであろう!」

「……」

「いや、我は一見格好付けて言っている様に見えるやもしれぬが、きちんと得られた情報を精査し、莫大な計算の結果、物を言っているからな?」

「それは理解しているよ」

 

 フェイトは無表情のまま、デュナミスに問う。

 

「つまり、この作戦の目的は『黄昏の姫巫女』そのものの確保は優先度が低く、どちらかと言うと(ライフメーカー)の復活が最優先、でいいのかな」

「その通りだ。貴様は麻帆良とここオスティアが繋がったら、目標確保のために麻帆良学園へ突入しろ。そして可能であれば、『黄昏の姫巫女』も確保できれば言う事は無い。しかし不可能であればそれに拘泥せず今回は諦め、『器』の肉親であるネギ・スプリングフィールドの確保に専念せよ。言うまでも無く、生きたままでな。魂も血肉も、両方必要なのだ。

 それが成れば……。我らが悲願たる(ライフメーカー)の復活だけではない! ネギ・スプリングフィールドを手に入れる事で、クルト・ゲーデルとタカミチ・T・高畑に一泡吹かせる事もできるのだ! 『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』に栄光あれえええぇぇぇ!!」

「了解。異議は撤回するよ。まず最初は何処?」

 

 フェイトの言葉に、デュナミスは頷く。その眼は、果てしなく暗い。

 

「メガロメセンブリアのゲートポート、そこが最初だ」

「わかった。従者の皆と墓所の主、月詠さんに話を通して、準備を始めるよ」

 

 こうして『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』は動き出す。だが彼等は、その目的である『造物主(ライフメーカー)』が既に存在しない事など、夢にも思っていなかった。

 

 

 

 あげくに確保しようとしたネギ、明日菜両名が、旧世界(ムンドゥス・ウェトゥス)の火星にスペースブリッジで行ってるなんて事は、更にしばらくの間は麻帆良に帰って来る予定の無い事などは、知る由も無かったりするのだ。

 

 

 

 こちらはその当の火星である。今、千雨と壊斗、そしてネギ、のどか、明日菜、小太郎、木乃香、刹那、古菲、楓、超、葉加瀬、真名と言う何時もの面々に加え、高畑が今回はくっついて来ている。

 その高畑は、ぽつりと呟く。彼の隣には、明日菜が寄り添う様に立っていた。

 

「いや、以前2回ばかり来たが、やはり火星は荒涼たる世界だね……」

「そうね、タカミチ。正直、超さんたち未来の火星人がよくこの世界で生き残れたな、と思うわ」

「いや、明日菜君。教師と生徒であまりくっつくのは。それに僕は君の保護者でも……」

「1回や2回振ったからって、それでわたしが諦めると思わないでね。それにね、タカミチ? 貴方が断った理由(ワケ)だけど。表情からわかるのよ」

 

 高畑は、己の腕に強引に自身の腕を絡ませて来る明日菜に、たじたじである。明日菜は続けた。

 

「先生と生徒だとか、わたしを子供や妹にしか思えないとか、そんな上っ面の建前はどうでもいいのよ。貴方、自分は愛される資格が無いとか思ってるでしょう。今まで色々、心ならずも汚れ仕事とか、たくさん、たくさんやったんでしょう?」

「……!!」

「だけどね? そんな後ろ向きの理由で断るなんて、わたしに……だけじゃないだろうけど、相手に失礼よ。……それにね。汚れ仕事をしてきたって言うなら、わたしも兵器扱いされて、飛空船の魔力消して()としたりとか、直接間接で何人殺したと思ってるの?」

 

 焦る高畑は、明日菜の台詞に返す言葉も無く、だが何か言わねばならないと必死で言葉を探す。そんな高畑に、明日菜は言い放つ。

 

「わたしは、今けっこう幸せよ。でも、もっと幸せになりたい。人の欲に限りは無いもの。そして、タカミチも幸せになっていいのよ。と言うか、なりなさい。幸せに。貴方の幸せは、わたしの幸せの前提条件の1つだから。

 難しいなら……。だからこそ、わたしが貴方を幸せにしてあげるわ」

「……」

 

 高畑は、苦悩と安堵、苦痛と癒しの入り混じった複雑な表情で、火星基地マースベースα本部棟の窓から、火星の大地を眺める。その左腕に、明日菜がしっかりと腕を絡めていた。

 

 

 

 そして心ならずもその様子をデバガメしていた者たちが居る。作業機の部品を取りに来て、そこに高畑と明日菜が現れて話を始めた故に、袋小路から動けなくなった千雨、壊斗、ネギ、小太郎だった。

 千雨と壊斗だけならば、人間形態では多少手間でエネルギーも多く使うのだが、瞬間移動(テレポート)で逃げ出す事も可能だ。しかしネギと小太郎が居ては、ちょっとまずい。

 一方でそのネギと小太郎も、困ったように小声で言葉を交わしている。

 

「おいネギ。転移魔法とか使えや」

「火星は周辺魔力が薄すぎて、数mならともかく……。大地もほとんど死んでるし、地脈に乗って逃げ出すのも無理」

 

 どうやら彼らは、この場での助けにはならない模様だ。千雨は明日菜たちに聞こえない様に、小さく溜息を吐く。

 

「ふぅ。……けれど、自分できっちりやれてるじゃねえか、神楽坂。今回はポンコツっぷりも表に出て無えし。やればやれるんじゃねえかよ」

「何にせよ、不幸な結果にならないでくれると良いんだが」

 

 壊斗もウンウンと頷く。そして小太郎が、感慨深げに呟いた。ネギもそれに答える。

 

「しかし、なるほどなあ。あの明日菜姉ちゃんみたいな愛なら、戦いのマイナスにはならんと、プラスになるんやろなあ」

「愛は土台だよ。戦いだけじゃ無く、全ての行いのね。根幹に愛があってこそ、正しく物事が動くってもんだと思うよ。まあ、愛を勘違いして変な方向に暴走する人もいるし、『間違えた愛』のおかげで大惨事になる事もあるけど」

「ま、言うわな。ネギは根幹にどんな愛があるんや?」

「父さんへの家族愛や尊敬と言う形の親愛。師匠(マスター)との師弟愛。皆への友愛や親愛。あと、一時期見失いかけてた事もあったけど、自分への自己愛もあるね。自分を愛するのは大切だって、師匠(マスター)やのどかさんが教えてくれた。

 ……そして。いや、これは僕の心に秘めておくよ」

「かー。さっすが俺のライバルや。愛だらけやないかい」

 

 小太郎、愛の戦士としてはまだまだ未熟であった。(ラブ)マスターへの道は遠い。そして声も大きすぎた模様だ。

 

「……あんたたち、そこでナニやってるのかしら?」

「あ、明日菜姉ちゃん! いやな? これはな?」

「問答無用! そこになおりなさい!」

「タカミチの咸卦法も凄いけれど、明日菜さんの咸卦法も見事な物ですね」

「くらいなさい! ってネギ、幻像(イリュージョン)!?」

「待て、待たんか神楽坂! 落ち着け! わたしたちの方が先に物資取りに来てて、そこへお前らが現れたんで出るに出らんなくなったんだ!」

「そんな事はどうでもいいーーーっ!! 問題はあんたらがデバガメしてたって事ーーーっ!!」

 

 結局大騒ぎになった。何か攻撃対象から外れてた壊斗は、唖然とする高畑の肩に、ポンと手を置いた。

 

 

 

 そして三日後、千雨と壊斗のところに魔法世界(ムンドゥス・マギクス)ジャック・ラカン(きんにくバカ)から連絡が入る。曰く『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』の手によると思われるテロで、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)を繋ぐゲートポートが、次々に破壊されているらしい。

 

「長谷川さん、壊斗さん。奴ら(コズモ・エンテレケイア)はまだ明日菜さん(たそがれのひめみこ)を手に入れていないのに、動き出しましたね……。何の目的で、世界間のゲートを……」

「ネギ先生、どちらにせよ麻帆良に神楽坂を帰すのは危険ですね。予定よりも、長期間の火星滞在になるかも知れません」

「作業のために外に出たりする以外は、筋力低下を防ぐ目的で人工重力発生装置が稼働している1G区画に居る様にしてくれ。まあ、古菲や長瀬、桜咲、犬上などの様に高重力3G区画で鍛錬しててもいいんだが」

 

 ここでネギがふと何がしかに気付き、千雨に訊ねる。内容は、夏休みの宿題についてだ。

 

「長谷川さん。そう言えば夏休みの宿題は?」

「ちゃんと持って来て、やってますよ? 古と長瀬もきっちり勉強させてます」

「ありがたいです。頭が上がりませんね。刹那さんは木乃香さんが、小太郎君は僕とのどかさんが、明日菜さんはタカミチが、それそれ宿題を見てあげてるんですが。明日菜さんはほとんど手伝いが要らないそうなんですよ。

 小太郎君が一番苦労してますね。絵日記の提出があるんですが、まさか火星に行ったなんて書くわけにもいかないので……。嘘を小等部に提出させる事に、内心忸怩たる想いはあるんですけど、可能な限り嘘を減らす様にしてます。旅行先でも修行頑張った、とか書いてますね。旅行先名が嘘になりますが」

 

 何はともあれ、火星の面々は順調に作業をこなしている。一方で『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』もいよいよ動き出した。神楽坂明日菜を火星に(かくま)い、ネギもまた火星に居る事で、期せずして『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』の思惑を外している千雨たちであったが、だからと言って油断はできないのだ。

 一見のん気にしている様だったが、千雨と壊斗、ネギなどの、一行の頭脳である面々は、今も頭の中を猛スピードで回転させている。次にどちらの陣営がどの様に動くか、それまでにどれだけ準備を整えておけるか、どの様に対処するべきなのか。彼等は表には出していなくとも、必死で考え込んでいたのである。




完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』連中、空回りしてます。まあ人数足りないですし、現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)に行ける人材は更に少ないですからね。事前調査もままならないでしょう。ちょっと調べれば、ネギ君が表向き、長期出張したって情報ぐらいは簡単につかめたでしょうに。神楽坂明日菜が保護者タカミチ・T・高畑と旅行に出た、って情報も。どっちも偽装で、火星に行ったんですけどね。

そして明日菜。頑張りました。まあ今までに2回振られてますが、それでも諦めてません。そして今回、高畑の急所を抉る言葉を。どう転がりますかねえ。

愛の戦士見習いの小太郎。原作と違い、愛を手に入れて更に戦士として完成に近づこうと色々考えてます。まあ原作と同じに、戦いのためが前提なんですけどね。それでは愛はわからない。たぶん。
でも彼の大好きなライダーも、いろんな愛のために戦ってますがね。一号とかは人類愛ですし。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。