そのときフェイトは、司令官役であるデュナミスの下した指示を聞き、懸念を覚えて異議を述べた。
「デュナミス、まだ時期尚早では? 第一、僕らは『黄昏の姫巫女』と目される、神楽坂明日菜を手に入れていない。それに本当に神楽坂明日菜がそうであるのかも、確認が取れていないんだ。
確認に失敗した、僕の言う事でも無いかもしれないけれどね」
「確かにそうかも知れん。だがな……。各国の政治状況などから、奴の目が……忌々しいクルト・ゲーデルの目が、他所に逸れている今が、ある意味チャンスなのだ。
各地のゲートを破壊し、唯一この地オスティアの廃棄ゲートのみを残す。それにより二世界間の魔力圧の差によって、ここオスティア周辺に莫大な魔力が集まる。その魔力により、オスティアのゲートが繋がっている麻帆良学園地下ゲートが活性化すれば……」
フェイトは無表情のまま、聞き役に徹する。デュナミスは熱意を持って、夢見る様に語り続けた。
「
その三条件が揃うならば、その時まさに
「……」
「いや、我は一見格好付けて言っている様に見えるやもしれぬが、きちんと得られた情報を精査し、莫大な計算の結果、物を言っているからな?」
「それは理解しているよ」
フェイトは無表情のまま、デュナミスに問う。
「つまり、この作戦の目的は『黄昏の姫巫女』そのものの確保は優先度が低く、どちらかと言うと
「その通りだ。貴様は麻帆良とここオスティアが繋がったら、目標確保のために麻帆良学園へ突入しろ。そして可能であれば、『黄昏の姫巫女』も確保できれば言う事は無い。しかし不可能であればそれに拘泥せず今回は諦め、『器』の肉親であるネギ・スプリングフィールドの確保に専念せよ。言うまでも無く、生きたままでな。魂も血肉も、両方必要なのだ。
それが成れば……。我らが悲願たる
「了解。異議は撤回するよ。まず最初は何処?」
フェイトの言葉に、デュナミスは頷く。その眼は、果てしなく暗い。
「メガロメセンブリアのゲートポート、そこが最初だ」
「わかった。従者の皆と墓所の主、月詠さんに話を通して、準備を始めるよ」
こうして『
あげくに確保しようとしたネギ、明日菜両名が、
こちらはその当の火星である。今、千雨と壊斗、そしてネギ、のどか、明日菜、小太郎、木乃香、刹那、古菲、楓、超、葉加瀬、真名と言う何時もの面々に加え、高畑が今回はくっついて来ている。
その高畑は、ぽつりと呟く。彼の隣には、明日菜が寄り添う様に立っていた。
「いや、以前2回ばかり来たが、やはり火星は荒涼たる世界だね……」
「そうね、タカミチ。正直、超さんたち未来の火星人がよくこの世界で生き残れたな、と思うわ」
「いや、明日菜君。教師と生徒であまりくっつくのは。それに僕は君の保護者でも……」
「1回や2回振ったからって、それでわたしが諦めると思わないでね。それにね、タカミチ? 貴方が断った
高畑は、己の腕に強引に自身の腕を絡ませて来る明日菜に、たじたじである。明日菜は続けた。
「先生と生徒だとか、わたしを子供や妹にしか思えないとか、そんな上っ面の建前はどうでもいいのよ。貴方、自分は愛される資格が無いとか思ってるでしょう。今まで色々、心ならずも汚れ仕事とか、たくさん、たくさんやったんでしょう?」
「……!!」
「だけどね? そんな後ろ向きの理由で断るなんて、わたしに……だけじゃないだろうけど、相手に失礼よ。……それにね。汚れ仕事をしてきたって言うなら、わたしも兵器扱いされて、飛空船の魔力消して
焦る高畑は、明日菜の台詞に返す言葉も無く、だが何か言わねばならないと必死で言葉を探す。そんな高畑に、明日菜は言い放つ。
「わたしは、今けっこう幸せよ。でも、もっと幸せになりたい。人の欲に限りは無いもの。そして、タカミチも幸せになっていいのよ。と言うか、なりなさい。幸せに。貴方の幸せは、わたしの幸せの前提条件の1つだから。
難しいなら……。だからこそ、わたしが貴方を幸せにしてあげるわ」
「……」
高畑は、苦悩と安堵、苦痛と癒しの入り混じった複雑な表情で、火星基地マースベースα本部棟の窓から、火星の大地を眺める。その左腕に、明日菜がしっかりと腕を絡めていた。
そして心ならずもその様子をデバガメしていた者たちが居る。作業機の部品を取りに来て、そこに高畑と明日菜が現れて話を始めた故に、袋小路から動けなくなった千雨、壊斗、ネギ、小太郎だった。
千雨と壊斗だけならば、人間形態では多少手間でエネルギーも多く使うのだが、
一方でそのネギと小太郎も、困ったように小声で言葉を交わしている。
「おいネギ。転移魔法とか使えや」
「火星は周辺魔力が薄すぎて、数mならともかく……。大地もほとんど死んでるし、地脈に乗って逃げ出すのも無理」
どうやら彼らは、この場での助けにはならない模様だ。千雨は明日菜たちに聞こえない様に、小さく溜息を吐く。
「ふぅ。……けれど、自分できっちりやれてるじゃねえか、神楽坂。今回はポンコツっぷりも表に出て無えし。やればやれるんじゃねえかよ」
「何にせよ、不幸な結果にならないでくれると良いんだが」
壊斗もウンウンと頷く。そして小太郎が、感慨深げに呟いた。ネギもそれに答える。
「しかし、なるほどなあ。あの明日菜姉ちゃんみたいな愛なら、戦いのマイナスにはならんと、プラスになるんやろなあ」
「愛は土台だよ。戦いだけじゃ無く、全ての行いのね。根幹に愛があってこそ、正しく物事が動くってもんだと思うよ。まあ、愛を勘違いして変な方向に暴走する人もいるし、『間違えた愛』のおかげで大惨事になる事もあるけど」
「ま、言うわな。ネギは根幹にどんな愛があるんや?」
「父さんへの家族愛や尊敬と言う形の親愛。
……そして。いや、これは僕の心に秘めておくよ」
「かー。さっすが俺のライバルや。愛だらけやないかい」
小太郎、愛の戦士としてはまだまだ未熟であった。
「……あんたたち、そこでナニやってるのかしら?」
「あ、明日菜姉ちゃん! いやな? これはな?」
「問答無用! そこになおりなさい!」
「タカミチの咸卦法も凄いけれど、明日菜さんの咸卦法も見事な物ですね」
「くらいなさい! ってネギ、
「待て、待たんか神楽坂! 落ち着け! わたしたちの方が先に物資取りに来てて、そこへお前らが現れたんで出るに出らんなくなったんだ!」
「そんな事はどうでもいいーーーっ!! 問題はあんたらがデバガメしてたって事ーーーっ!!」
結局大騒ぎになった。何か攻撃対象から外れてた壊斗は、唖然とする高畑の肩に、ポンと手を置いた。
そして三日後、千雨と壊斗のところに
「長谷川さん、壊斗さん。
「ネギ先生、どちらにせよ麻帆良に神楽坂を帰すのは危険ですね。予定よりも、長期間の火星滞在になるかも知れません」
「作業のために外に出たりする以外は、筋力低下を防ぐ目的で人工重力発生装置が稼働している1G区画に居る様にしてくれ。まあ、古菲や長瀬、桜咲、犬上などの様に高重力3G区画で鍛錬しててもいいんだが」
ここでネギがふと何がしかに気付き、千雨に訊ねる。内容は、夏休みの宿題についてだ。
「長谷川さん。そう言えば夏休みの宿題は?」
「ちゃんと持って来て、やってますよ? 古と長瀬もきっちり勉強させてます」
「ありがたいです。頭が上がりませんね。刹那さんは木乃香さんが、小太郎君は僕とのどかさんが、明日菜さんはタカミチが、それそれ宿題を見てあげてるんですが。明日菜さんはほとんど手伝いが要らないそうなんですよ。
小太郎君が一番苦労してますね。絵日記の提出があるんですが、まさか火星に行ったなんて書くわけにもいかないので……。嘘を小等部に提出させる事に、内心忸怩たる想いはあるんですけど、可能な限り嘘を減らす様にしてます。旅行先でも修行頑張った、とか書いてますね。旅行先名が嘘になりますが」
何はともあれ、火星の面々は順調に作業をこなしている。一方で『
一見のん気にしている様だったが、千雨と壊斗、ネギなどの、一行の頭脳である面々は、今も頭の中を猛スピードで回転させている。次にどちらの陣営がどの様に動くか、それまでにどれだけ準備を整えておけるか、どの様に対処するべきなのか。彼等は表には出していなくとも、必死で考え込んでいたのである。
『
そして明日菜。頑張りました。まあ今までに2回振られてますが、それでも諦めてません。そして今回、高畑の急所を抉る言葉を。どう転がりますかねえ。
愛の戦士見習いの小太郎。原作と違い、愛を手に入れて更に戦士として完成に近づこうと色々考えてます。まあ原作と同じに、戦いのためが前提なんですけどね。それでは愛はわからない。たぶん。
でも彼の大好きなライダーも、いろんな愛のために戦ってますがね。一号とかは人類愛ですし。