フェイトの従者である
まあだが、フェイトの任務は麻帆良学園に居る『はず』の、ネギ・スプリングフィールドの拉致だ。そしてネギは今現在、麻帆良には居ない。居ない者は、
だが彼女らはそんな事もつゆ知らず、フェイトの無事の帰還を待ち続けていた。
「……? 何、この音は」
「どうしたの、
その無線機のハム音に似た『音』に気付いたのは、自身も楽器型のアーティファクト『
と、急にその騒音が消え去る。それと同時に、彼女らの眼前には1辺2mほどの正方形の『
「皆! 気を付けて!」
「こ、こいつらは……」
「敵!?」
「待って、こいつは!?」
そしてその『
ネギは苦笑して、
「やれやれ。いきなり転移場所に、敵が待ち構えているとはね。木乃香さんと刹那さんは、長谷川さんと壊斗さんと一緒に、目的を達してください。僕とのどかさん、小太郎君、古菲さん長瀬さんで、この人たちの足止めを……」
「こいつら、『墓守り人の宮殿』に攻め込むつもりね!? させないわ!
「りょりょりょ了解ですっ! 『
「『
時間を操作する
結界の中で、小太郎はぼやく。
「かー、やられたな。さて、どうやってこっから出るんや?」
「ちょっと待ってろ。今、壊斗が手持ちの分析装置で調べてるから」
「どうです? 壊斗さん」
ネギが壊斗に訊ねる。壊斗は手に持った計器を覗き込みつつ、頷いた。いや本当は、体内のセンサーで周辺時空を探査したのであって、計器は単なるフェイクなのだが。
そしてちょっと千雨と壊斗は困る。いや、千雨たちがトランスフォーマーとしての姿になれば、この結界空間を破るのは簡単だ。亜空間を展開して、超光速飛行を一瞬だけ行えばそれで済む。だがトランスフォーマーとしての正体をバラすのは、ちょっとどころじゃなく考え物だった。
壊斗は困り果てた風情で言う。
「そうだなあ……。高重力、できればブラックホール級の奴を人工的に創り出せれば、こいつは簡単に破れるな。だがそんな大がかりな機材は……」
「あ、それなら簡単です」
『『え゛!』』
その場の全員の耳に、
「ん。簡単なら、やってもらうか」
「はい。……『
ネギが魔法を無詠唱で、術の名称だけで行使して見せる。ネギの右掌にはその瞬間、凄まじい高重力の黒い球体が発生した。千雨と壊斗が観測したところによると、それを構成する疑似質量こそ大したことは無いものの、無回転のマイクロブラックホールである様だ。ぶっちゃけ千雨たち2人は、そのヤバさが理解できるのでビビる。
ガッシャアアアァァァン!!
ドギャッ!! ドギャッ!!
そしてガラスが砕ける様な音を立てて、結界空間が砕け散った。次の瞬間、
「動かないで。動いたらそちらの2人の様に、穴の中で這い
冷たく、重い声だった。彼はいざと言う時は、魔法の行使を
「長谷川さん、壊斗さん、木乃香さん、刹那さん。計画通り、お願いします」
「わかりました。でも、色んな意味で『無理』はしないでくださいよ、ネギ先生」
「ではここは頼んだネギ少年。行って来る」
「行ってくるえー」
「では行ってきます」
千雨以下4名が、『目的』を果たすべくその場を立ち去る。
「待……」
ドギャッ!!
そして
「動かないでと言ったろう? あっちに行った面々が戻ってくるまで、大人しくしていてもらう。僕は『敵』には女でも容赦しない」
「「!!」」
残る
「たいした英雄の息子ね。『悪』にはなんらの情けも無し、ですか」
「何か勘違いしてるみたいだけどね。僕が容赦しないのは、貴女たちが『悪』だからじゃない。『敵』だからだよ」
「? ……なんでもいいです。ですがわたしたちは、死んでも負けられない。貴方のような、英雄の息子として祝福されて生まれて来た、恵まれた子供などに! 貴方たちの様な、幸せに暮らして来た人たちになど! 絶対に負けられない!」
そして
ドギャッ!! パリイイイィィィン!!
これも食器が割れた様な音を立てて、ネギの重圧魔法が破られた。だが
そしてその人物が、何かしら魔力を放つ。
パリイイイィィィン!! パリイイイィィィン!! パリイイイィィィン!!
3度ガラス器が砕ける様な音がして、
「「フェイト様!!」」
そう、それは全身がズタボロ状態だが、それでも一応は無事なフェイト・アーウェルンクスであった。
「無事かい?」
「は、はい! フェイト様、その御姿は……」
「ああ、麻帆良学園では罠を張っていてね。なんとか逃げのびて来た。それよりも……」
そしてフェイトはネギに向き直る。
「ネギ君、久しぶりだね。京都以来か。小太郎君も、久しぶり。随分と、短い間に強くなったみたいだね。君を仲間に引き入れられなかったのは、失敗だったかな」
「褒めても、なんも出えへんで?」
「やあフェイト。よくあの罠を抜け出して来たね?」
「やっぱり君たちの仕込みだったのか。君は僕が予想していた方向とは、まったく別方向に成長したみたいだね。
ただ……。単純に魔法使いとしても、進歩どころか、進化と言って良いほどの成長を見せているね。今、なんとか君の術を破ったけれど、ぎりぎりだったよ。あれで本気じゃないんだろう?」
フェイトの問いに、ネギは笑う事で答えとした。そしてフェイトは言葉を続ける。
「ネギ君、小太郎君、彼女たちが失礼した。謝罪するよ。彼女たちの無知は、彼女たちに教えておかなかった僕の……。彼女たち従者の面倒を、しっかり見られていなかった、
「「ふぇ、フェイト様!?」」
「……うん、わかったよ。僕はいいけど、小太郎君の事だけはきっちり彼女たちに教えておいて」
「いやいやいや、俺よりもネギやろ。フェイト、ネギの事しっかり従者? の奴らに教えといてくれや」
フェイトはネギと小太郎に頷く。そして彼は従者の少女たちに向けて口を開いた。
「まず、どっちからが良いかな。小太郎君はさ、幸せな子供なんかじゃないよ。本人は気丈に生きてるけれどね。物心つく前から両親が居なくてね。狗族とのハーフだった事もあって、社会から弾かれたんだ。それで幼少期から傭兵まがいの事をして、生きて来たんだよ」
「「!!」」
「次にネギ君だ。確かに彼は、英雄の息子だ。だけどその英雄ナギ自体、栄光に満ちた人生と言うよりは、けっこう大変だったんだけどね。それでネギ君は、彼も物心つく頃合いには両親とも居なくてね。彼の父親、ナギの事は君らも何があったか知っているだろう?
それで3歳まではかなり寂しい思いをして育ったはずだ。故郷の村人にも親切にはされたけれど、ちょっと腫れ物を触る様な扱いだったらしいし。その故郷の村も、彼が3歳の頃に彼を狙うメガロメセンブリアの老害たちの派遣した殺し屋、それが召喚した悪魔の群れによって、全員永久石化レベルの石化状態にされた。彼自身殺されかけたけど、奇跡的に助かってね」
「「!!」」
フェイトは淡々と語る。
「これで分かる様に、ネギ君は祝福されて生まれてきた『かも知れない』けれど、幸せに生きて来たわけじゃない。戦災孤児だったり色々な君たちと、大差ない不幸を抱えているんだよ。
あげくにその不幸を彼に負わせたのは、大半が僕ら『
「「……!!」」
「……まあ、でも僕も小太郎君も、周囲の暖かい力添えのおかげで、それまでのマイナス分をけっこうな割合で取り戻せたけれどね。そちらの彼女たちが、フェイトに助けられて新しいお仲間たちと出会った様に、ね。まあ、その辺は、君らの様子からの想像と言うか予測だけどさ」
ネギは肩を竦めて語る。そして彼は、フェイトに向かい合う。ネギの後方からは、千雨たちが戻って来たのが見えた。
「ネギ先生、終わりました。撤収しますよ」
「はい、長谷川さん。フェイト、今日は僕らは去るよ」
「そうか。今回は僕らの負けだ。見事だったよ。ただ、君らはこれで
フェイトの言葉に、
「フェイト様! 我々の敗北とは……」
「ここであのネギ・スプリングフィールドを確保してしまえば……」
「え? 『黄昏の姫巫女』だけじゃなしに、僕にも何かあるの?」
ネギの疑問には答えず、フェイトは続けた。
「
もうすぐここのゲート自体が、世界間扉を繋ぎとめていた魔力が暴走して、吹っ飛ぶ。そうなれば、ここ廃都オスティアの魔力溜まりはあっという間に雲散霧消する。……
「「ええっ!?」」
「ネギ君。僕らの儀式が出来なければ、
ここでネギは、フェイトの言葉を遮って言い放つ。
「ああ、その件なら僕らも別計画を……って言うか、僕が主導してるわけじゃなく、そちらの壊斗さんの計画に協力してる立場なんだ。簡単に言えば、火星に魔力を注ぎ足そうって話なんだ」
「え」
「もう時間が無いからね。僕らは行くよ。ただ……。少なくとも僕は、君らの計画に否定的だから邪魔をさせてもらったのは覚えておいて欲しい。眠らせて都合のいい夢を見せるだけってのも、いい気持ちはしないけどさ。
……僕の村に、悪魔の大群を送り込んで来たメガロメセンブリアの元老院とか、そう言った僕の『敵』連中まで、楽しい夢を見つつ、のん気に幸せに寝こける未来だなんて、赦せない」
そのドロリとした物を含んだ言葉に、フェイトの従者で未だ意識がある
ネギたちは急ぎその中へと姿を消す。そして転移ゲートは再度消滅した。フェイトも、気絶している
僅かな時間の後、廃都オスティアのゲートポートは、完膚なきまでに吹き飛んで消えたのである。
こんな感じで、廃都オスティアのゲートは完全破壊されました。そんなわけで、『
でも、裏事情色々
ちなみにネギ君、今回