超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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第046話:ネギはちょっと不機嫌

 フェイトの従者である調(シラベ)(ホムラ)(シオリ)(コヨミ)(タマキ)ら5人は、フェイトが麻帆良学園から帰還してくるのをじっと廃都オスティアのゲート前で待っていた。彼女たちは、フェイトが任務に失敗するなどとは欠片も思っていない。それほどに、彼への信頼は厚かった。

 まあだが、フェイトの任務は麻帆良学園に居る『はず』の、ネギ・スプリングフィールドの拉致だ。そしてネギは今現在、麻帆良には居ない。居ない者は、(さら)い様が無いのである。

 だが彼女らはそんな事もつゆ知らず、フェイトの無事の帰還を待ち続けていた。

 

「……? 何、この音は」

「どうしたの、調(シラベ)

 

 その無線機のハム音に似た『音』に気付いたのは、自身も楽器型のアーティファクト『狂気の提琴(フィディクラ・ルナーティカ)』での攻撃をするためであろうか、調(シラベ)だけであった。だが数秒後、『音』は徐々に大きくなり、やがて非常に耳障りな騒音と化す。フェイトの従者たちは、耳を塞いでそれに耐えた。

 と、急にその騒音が消え去る。それと同時に、彼女らの眼前には1辺2mほどの正方形の『(わく)』が出現していた。『(わく)』の内側は、紫色の燐光を発していて向こう側が見えない。そしてその燐光の幕を突き破って、その『(わく)』から次々に人間が飛び出して来た。

 

「皆! 気を付けて!」

「こ、こいつらは……」

「敵!?」

「待って、こいつは!?」

 

 そしてその『(わく)』から最後の1人が飛び出して来ると、『(わく)』は消え去った。その最後の1人に、フェイトの従者たちは見覚えがある。資料で何度か見せられたその姿は、誰あろう『ネギ・スプリングフィールド』であった。

 ネギは苦笑して、(おもむろ)に言葉を紡ぐ。

 

「やれやれ。いきなり転移場所に、敵が待ち構えているとはね。木乃香さんと刹那さんは、長谷川さんと壊斗さんと一緒に、目的を達してください。僕とのどかさん、小太郎君、古菲さん長瀬さんで、この人たちの足止めを……」

「こいつら、『墓守り人の宮殿』に攻め込むつもりね!? させないわ! (コヨミ)(タマキ)!」

「りょりょりょ了解ですっ! 『時の回廊(ホーラリア・ポルティクス)』!」

「『無限抱擁(エンコンパンデンティア・インフィニータ)』!」

 

 時間を操作する(コヨミ)のアーティファクト、『時の回廊(ホーラリア・ポルティクス)』と、無限の広さを持つ結界に相手を封じ込める『無限抱擁(エンコンパンデンティア・インフィニータ)』のコンボが決まった。千雨たちはネギも含め、全員がその内部に封じ込められてしまったのだ。

 結界の中で、小太郎はぼやく。

 

「かー、やられたな。さて、どうやってこっから出るんや?」

「ちょっと待ってろ。今、壊斗が手持ちの分析装置で調べてるから」

「どうです? 壊斗さん」

 

 ネギが壊斗に訊ねる。壊斗は手に持った計器を覗き込みつつ、頷いた。いや本当は、体内のセンサーで周辺時空を探査したのであって、計器は単なるフェイクなのだが。

 そしてちょっと千雨と壊斗は困る。いや、千雨たちがトランスフォーマーとしての姿になれば、この結界空間を破るのは簡単だ。亜空間を展開して、超光速飛行を一瞬だけ行えばそれで済む。だがトランスフォーマーとしての正体をバラすのは、ちょっとどころじゃなく考え物だった。

 壊斗は困り果てた風情で言う。

 

「そうだなあ……。高重力、できればブラックホール級の奴を人工的に創り出せれば、こいつは簡単に破れるな。だがそんな大がかりな機材は……」

「あ、それなら簡単です」

『『え゛!』』

 

 その場の全員の耳に、(コヨミ)(タマキ)の声が聞こえる。どうやら彼女たちも、この結界空間の何処かにいるか、あるいは何らかの手段で監視しているらしい。まあ、結界空間に共に入っている方が、簡単ではあるし術としても難易度は低いだろう。

 

「ん。簡単なら、やってもらうか」

「はい。……『小さく重く黒い洞(スペーライオン・ミクロン・バリュ・メラン)』」

 

 ネギが魔法を無詠唱で、術の名称だけで行使して見せる。ネギの右掌にはその瞬間、凄まじい高重力の黒い球体が発生した。千雨と壊斗が観測したところによると、それを構成する疑似質量こそ大したことは無いものの、無回転のマイクロブラックホールである様だ。ぶっちゃけ千雨たち2人は、そのヤバさが理解できるのでビビる。

 

ガッシャアアアァァァン!!

 

ドギャッ!! ドギャッ!!

 

 そしてガラスが砕ける様な音を立てて、結界空間が砕け散った。次の瞬間、(コヨミ)(タマキ)が凄まじい重力を受けて、足元に出来たクレーターの中に叩き伏せられる。これもネギの無詠唱重圧魔法だった。

 (タマキ)のアーティファクトによる無限結界が破れた事に、残る調(シラベ)(ホムラ)(シオリ)は驚愕して動きが止まる。そこへネギの声が響いた。

 

「動かないで。動いたらそちらの2人の様に、穴の中で這い(つくば)ってもらう」

 

 冷たく、重い声だった。彼はいざと言う時は、魔法の行使を躊躇(ためら)わない。そう確信できる声であった。ネギは更に続ける。

 

「長谷川さん、壊斗さん、木乃香さん、刹那さん。計画通り、お願いします」

「わかりました。でも、色んな意味で『無理』はしないでくださいよ、ネギ先生」

「ではここは頼んだネギ少年。行って来る」

「行ってくるえー」

「では行ってきます」

 

 千雨以下4名が、『目的』を果たすべくその場を立ち去る。(ホムラ)は思わずそれを制止せんと、声を上げた。

 

「待……」

 

ドギャッ!!

 

 そして(ホムラ)は、(コヨミ)(タマキ)と同じく、重圧魔法で叩き伏せられた。意識があるかどうかも怪しい。

 

「動かないでと言ったろう? あっちに行った面々が戻ってくるまで、大人しくしていてもらう。僕は『敵』には女でも容赦しない」

「「!!」」

 

 残る調(シラベ)(シオリ)は、息を飲んだ。だが調(シラベ)は苛立った様に言葉を発する。

 

「たいした英雄の息子ね。『悪』にはなんらの情けも無し、ですか」

「何か勘違いしてるみたいだけどね。僕が容赦しないのは、貴女たちが『悪』だからじゃない。『敵』だからだよ」

「? ……なんでもいいです。ですがわたしたちは、死んでも負けられない。貴方のような、英雄の息子として祝福されて生まれて来た、恵まれた子供などに! 貴方たちの様な、幸せに暮らして来た人たちになど! 絶対に負けられない!」

 

 そして(シオリ)がその言葉と共に、何かしら動きを見せる。そしてネギの重圧魔法が彼女を叩き伏せんとした。だがその瞬間、何かがそこに割って入り、(シオリ)を突き飛ばして入れ替わりに自分が重圧魔法を浴びる。

 

ドギャッ!! パリイイイィィィン!!

 

 これも食器が割れた様な音を立てて、ネギの重圧魔法が破られた。だが抵抗(レジスト)に要する一瞬だけでも重圧は威力を発揮し、その飛び込んで来た人物の周囲にはクレーターが出来ている。しかしその人物は、その一瞬の重圧に耐えた。

 そしてその人物が、何かしら魔力を放つ。

 

パリイイイィィィン!! パリイイイィィィン!! パリイイイィィィン!!

 

 3度ガラス器が砕ける様な音がして、(ホムラ)(コヨミ)(タマキ)にかかっていた重圧魔法が砕けた。調(シラベ)(シオリ)は叫ぶ。

 

「「フェイト様!!」」

 

 そう、それは全身がズタボロ状態だが、それでも一応は無事なフェイト・アーウェルンクスであった。

 

「無事かい?」

「は、はい! フェイト様、その御姿は……」

「ああ、麻帆良学園では罠を張っていてね。なんとか逃げのびて来た。それよりも……」

 

 そしてフェイトはネギに向き直る。

 

「ネギ君、久しぶりだね。京都以来か。小太郎君も、久しぶり。随分と、短い間に強くなったみたいだね。君を仲間に引き入れられなかったのは、失敗だったかな」

「褒めても、なんも出えへんで?」

「やあフェイト。よくあの罠を抜け出して来たね?」

「やっぱり君たちの仕込みだったのか。君は僕が予想していた方向とは、まったく別方向に成長したみたいだね。

 ただ……。単純に魔法使いとしても、進歩どころか、進化と言って良いほどの成長を見せているね。今、なんとか君の術を破ったけれど、ぎりぎりだったよ。あれで本気じゃないんだろう?」

 

 フェイトの問いに、ネギは笑う事で答えとした。そしてフェイトは言葉を続ける。

 

「ネギ君、小太郎君、彼女たちが失礼した。謝罪するよ。彼女たちの無知は、彼女たちに教えておかなかった僕の……。彼女たち従者の面倒を、しっかり見られていなかった、(マスター)としての僕の責だ。怨むなら、僕を怨んで欲しい」

「「ふぇ、フェイト様!?」」

「……うん、わかったよ。僕はいいけど、小太郎君の事だけはきっちり彼女たちに教えておいて」

「いやいやいや、俺よりもネギやろ。フェイト、ネギの事しっかり従者? の奴らに教えといてくれや」

 

 フェイトはネギと小太郎に頷く。そして彼は従者の少女たちに向けて口を開いた。

 

「まず、どっちからが良いかな。小太郎君はさ、幸せな子供なんかじゃないよ。本人は気丈に生きてるけれどね。物心つく前から両親が居なくてね。狗族とのハーフだった事もあって、社会から弾かれたんだ。それで幼少期から傭兵まがいの事をして、生きて来たんだよ」

「「!!」」

「次にネギ君だ。確かに彼は、英雄の息子だ。だけどその英雄ナギ自体、栄光に満ちた人生と言うよりは、けっこう大変だったんだけどね。それでネギ君は、彼も物心つく頃合いには両親とも居なくてね。彼の父親、ナギの事は君らも何があったか知っているだろう?

 それで3歳まではかなり寂しい思いをして育ったはずだ。故郷の村人にも親切にはされたけれど、ちょっと腫れ物を触る様な扱いだったらしいし。その故郷の村も、彼が3歳の頃に彼を狙うメガロメセンブリアの老害たちの派遣した殺し屋、それが召喚した悪魔の群れによって、全員永久石化レベルの石化状態にされた。彼自身殺されかけたけど、奇跡的に助かってね」

「「!!」」

 

 フェイトは淡々と語る。

 

「これで分かる様に、ネギ君は祝福されて生まれてきた『かも知れない』けれど、幸せに生きて来たわけじゃない。戦災孤児だったり色々な君たちと、大差ない不幸を抱えているんだよ。

 あげくにその不幸を彼に負わせたのは、大半が僕ら『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』の所業だ。その組織に所属する、僕や君らが言って良い事では無かったんだ」

「「……!!」」

「……まあ、でも僕も小太郎君も、周囲の暖かい力添えのおかげで、それまでのマイナス分をけっこうな割合で取り戻せたけれどね。そちらの彼女たちが、フェイトに助けられて新しいお仲間たちと出会った様に、ね。まあ、その辺は、君らの様子からの想像と言うか予測だけどさ」

 

 ネギは肩を竦めて語る。そして彼は、フェイトに向かい合う。ネギの後方からは、千雨たちが戻って来たのが見えた。

 

「ネギ先生、終わりました。撤収しますよ」

「はい、長谷川さん。フェイト、今日は僕らは去るよ」

「そうか。今回は僕らの負けだ。見事だったよ。ただ、君らはこれで魔法世界(ムンドゥス・マギクス)人12億の処刑執行書類にサインをした様な物だと言う事を、分かっているのかな?」

 

 フェイトの言葉に、調(シラベ)(シオリ)が色めき立つ。

 

「フェイト様! 我々の敗北とは……」

「ここであのネギ・スプリングフィールドを確保してしまえば……」

「え? 『黄昏の姫巫女』だけじゃなしに、僕にも何かあるの?」

 

 ネギの疑問には答えず、フェイトは続けた。

 

調(シラベ)(シオリ)。駄目なんだよ。僕が麻帆良からゲートを使って転移した直後、ゲートの要石が破壊されたのを目撃した。そうだよね、僕らにゲート破壊ができるなら、ネギ君たちに出来ないわけが無い。

 もうすぐここのゲート自体が、世界間扉を繋ぎとめていた魔力が暴走して、吹っ飛ぶ。そうなれば、ここ廃都オスティアの魔力溜まりはあっという間に雲散霧消する。……魔法世界(ムンドゥス・マギクス)を完全なる世界へ『書き換え(リライト)』する儀式なんて、出来ないよ」

「「ええっ!?」」

「ネギ君。僕らの儀式が出来なければ、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の滅びは避けられない。君が知っていたか、知らずして邪魔をしたのかは知らないけれど……」

 

 ここでネギは、フェイトの言葉を遮って言い放つ。

 

「ああ、その件なら僕らも別計画を……って言うか、僕が主導してるわけじゃなく、そちらの壊斗さんの計画に協力してる立場なんだ。簡単に言えば、火星に魔力を注ぎ足そうって話なんだ」

「え」

「もう時間が無いからね。僕らは行くよ。ただ……。少なくとも僕は、君らの計画に否定的だから邪魔をさせてもらったのは覚えておいて欲しい。眠らせて都合のいい夢を見せるだけってのも、いい気持ちはしないけどさ。

 ……僕の村に、悪魔の大群を送り込んで来たメガロメセンブリアの元老院とか、そう言った僕の『敵』連中まで、楽しい夢を見つつ、のん気に幸せに寝こける未来だなんて、赦せない」

 

 そのドロリとした物を含んだ言葉に、フェイトの従者で未だ意識がある調(シラベ)(シオリ)は、目を見開いた。そして苦笑を隠さない千雨と壊斗が、手荷物にしていたゲート発生器を稼働させる。再度煩いハム音が響き、虚空に1辺2mほどの正方形の『(わく)』が出現した。

 ネギたちは急ぎその中へと姿を消す。そして転移ゲートは再度消滅した。フェイトも、気絶している(ホムラ)を担ぐ。調(シラベ)(シオリ)もまた、(コヨミ)(タマキ)を担ぎ上げた。そして彼らは急ぎその場を逃げ出す。

 僅かな時間の後、廃都オスティアのゲートポートは、完膚なきまでに吹き飛んで消えたのである。




こんな感じで、廃都オスティアのゲートは完全破壊されました。そんなわけで、『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』の計画は風前の灯火です。

でも、裏事情色々アルビレオ(クウネル)から知らされたネギ君だったら、メガロメセンブリアの元老院連中に対し怒りますよねえ。あと本来であれば、『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』連中にも。でも『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』は親玉が消滅してますし、残りは従犯ですから。まあ従犯でも『敵』認定外すほど甘いネギ君じゃないですけどね。生徒の一員だったら、話はまた変わって来るんですが、生徒じゃないですし。

ちなみにネギ君、今回アルビレオ(クウネル)直伝魔法をずんどこ使ってます。アルビレオ(クウネル)が、どれだけ無茶な修行を課したか、ちょっと想像が付きそうな活躍ぶりですね……。いや、想像付かないか、やっぱり(笑)。
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