超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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第003話:ファンタジーとの邂逅

 待ち合わせ場所にしていた麻帆良学園中央駅のロータリーに千雨が着いたとき、壊斗は既にやって来ていた。千雨は小走りで、壊斗のところまで急ぐ。

 

「悪い、待ったか?」

「いや、それほどでも無い。とりあえず適当な店にでも入って、座って話をするか」

 

 2人は連れ立って、手近な場所にあった41アイスクリームの店舗に入った。

 

 

 

 千雨は自分の目を疑った。と言うか、目の前で見ていても信じられない。

 

「……41アイスの、ハンドパックのクォートってか。約6人分だぞ? しかもそれを2つ注文するかよ」

「美味いぞ?」

「だろうけどさ。わたしはレギュラーダブルで充分だ。って言うか、まだ3月だぞ?見てるだけで寒くなってきた」

「うん、頭脳回路の隅々にまで冷たさが染み渡る気がするな。クロックをいくらでも上げられそうな感じだ。

 うん、美味い」

 

 本当に嬉しそうに、壊斗は6人前アイスクリーム×2を平らげて行った。アイスの山は、あっという間にその体積を減らして行く。千雨は思わず言った。

 

「実はあんた、本気でKAIT○だろ」

「K△ITOだったら業務用を丸ごと買うと思うが」

「あんた、やけに詳しいな!?」

「ははは。……さて、本題に入るか」

 

 急にシリアスになった壊斗に、千雨は一瞬面食らう。しかし彼女はすぐに気を取り直し、真顔になった。壊斗はウェストポーチから、一枚のDVD-ROMを取り出す。

 

「一応これに調査報告書が入ってる。けれど、一応口頭でも報告しておこう。ただし……。かなり荒唐無稽な話だと言うのは念頭に置いといてくれ」

「超ロボット生命体であるあんたが、荒唐無稽な話ってまで言うかよ。この地球じゃ、あんた自身がSF、それもサイエンス・ファンタジーの産物だぜ?」

「……ぶっちゃけるとだな。その『ファンタジー』なんだ」

「は?」

 

 千雨は壊斗の言葉が、何がしかの比喩では無いか、と思う。だが壊斗は続ける。その声音は大真面目だ。

 

「この麻帆良って街は、日本における『魔法使い』たちの拠点であるらしい事が判明した」

「……冗談……だろ?

 あ、いや。冗談であって欲しい……」

「それが冗談じゃないんだ」

 

 壊斗は周囲に聞こえない様、声を低めて話を続けた。海外から入って来て日本に根付き、麻帆良を拠点として関東を中心に勢力圏を持つ西洋魔術師たちの組織、関東魔法協会。そして古来より日本に根を張っていた陰陽師などの組織、関西呪術協会。

 壊斗はそれらの概要を、ざっくりとではあったが千雨に話して聞かせる。互いの組織が抗争を繰り広げている事なども。

 

「正直、話すかどうか迷ったんだが……。一般人として生きるには、余計どころか知らない方がいい知識だ。だが……。

 ハセガワは、こう言う事を知って置かねばかえって危うい、と思ったからな。あえて教える事にした。ハセガワの持つ、認識阻害などに抵抗する能力は、逆に危険だからな……」

「……」

 

 千雨は唾を飲む。壊斗は話を続けた。

 

「関東魔法協会の連中は、自分たちを善なる魔法使い、正義の魔法使い、と自認しているらしいな。まあ、行き過ぎた正義な奴も多少は居る様だが、基本的には悪い奴らじゃないみたいだ」

「ちょっとは居るんだろ? 行き過ぎた正義の連中が……」

「まあ、な。そして例のエネルギーフィールド……結界なんだが。これは魔法と言う物を一般人から秘匿するため、意識誘導や認識阻害の効果を持たされてるらしい。外部からの侵入者などを探知する役割もある様だが」

 

 その言葉に千雨は、眉を吊り上げる。

 

「……んじゃあ、何か? 魔法使いとか言う胡散臭い連中の都合で、わたしはこれまであんな思いを……」

「向こう側には悪意とかは無かったどころか、魔法関係のトラブルに一般市民を巻き込まないための、安全措置のつもりだったろうがな。善意のつもりでやってるんだから、始末が悪いな。」

「くそ、善意だからって何やってもいいわけじゃねえんだぞ」

 

 食べ終わったアイスクリームのコーンをバリバリと齧りつつ、千雨は苛立ちを吐き捨てた。まあ、それはそうだろう。『善意』で施された安全措置とやらのせいで、千雨がこれまでに被った迷惑は並大抵のものではない。彼女が腹を立てるのも、理の当然と言う奴だった。

 

 

 

 とりあえずしばらく毒づいた千雨だったが、何時までも腹を立てていても仕方がない。無理にでも気を落ち着けて、41アイスクリームの店舗を出る。ちなみに支払いは壊斗だ。ちょっと申し訳なく思った千雨だったが、壊斗が自分が支払う、と頑として譲らなかったのである。

 

「しかし……。どうしたもんだろうなあ……。魔法、かあ……。馬鹿みたいな話だと切り捨ててしまえれば良かったんだけどなあ……。現実問題として、麻帆良の異常現象とか、そう言う裏があると言う前提なら、説明がついちまうもんなあ……。

 この麻帆良学園都市の裏に潜む一大組織……。しかも自分たちを正義と認識してる奴らだし……。個人レベルだと、もうどうしようもないし……」

「……む?」

「どうした、壊斗?」

「ちょっと待っててくれ……」

 

 壊斗は突然一足飛びで、41アイスクリームの建物の角に跳躍する。そして建物の陰から、一人の少女の襟首を引っ掴んで引っ張り出した。襟首を引っ掴まれているせいで喉が締まり、声がほとんど出せないその少女を見て、千雨は驚く。

 

「ぐぇっ……。は、放、し……。げふっ」

「な!? 朝倉!?」

「知り合いか、ハセガワ?

 お嬢さん、勝手に他人(ヒト)の写真を撮るのは不作法にも程があるぞ。フィルムを渡してもらおうか」

「朝倉ぁ!

 てめえ何写真撮ってやがるんだ!」

 

 朝倉と言う少女は、少し襟首を緩められた事で、必死に空気を貪る。

 

「ぜーっ、ぜーっ……。ふう、苦しかった……」

「手前、朝倉……。なんでわたしたちの写真を撮りやがった?」

「あ、ははは、ゴメン悪かったって……。謝るから、襟から手を放して、お兄さん……」

「写真のネガを渡してからだ。ハセガワ、この娘は?」

「こいつは麻帆良のパパラッチって呼ばれてる、うちのクラスメートだ。名前は朝倉和美。麻帆良学園の報道部員だよ。

 朝倉、とっとと吐け。なんでわたしたちの写真を撮りやがった?」

 

 千雨は朝倉……和美をジト目で見遣る。観念したのか、和美は溜息を吐いてカメラからフィルムを取り出しつつ言う。

 

「い、いや……。ちうちゃんに、恋人がいたなんてニュースのネタになるかなーって……。

 うわ!?」

「朝倉ーーー!! なんでてめーが、そのハンドル名を知っている!? それと恋人って何だ!?」

「あー、ハセガワ。気持ちはわかるが、あんまり大声で騒ぐと……。」

「あのー、お客様。店舗入り口前を塞いで騒がれますと、他のお客様の迷惑になりますので……」

「「あ」」

 

 千雨、和美、そして壊斗は41アイスクリームの店員に謝罪し、なんとかその場を脱したのである。ちなみに壊斗は、しばらくあの店に行けなくなったと少々落ち込んでいた。

 

 

 

 街を歩く千雨と壊斗の後ろに、腰を低くしてペコペコしながら和美が付き従っていた。千雨は時折和美にジト目の視線を送る。和美は揉み手をしながら、情けない顔で2人に話しかけた。

 

「あの~、せめて関係ない写真のフィルムは返してくれないかな~?」

 

 そう、和美はあの後で袖口や懐、靴の中等々、あちらこちらに隠していたフィルムを発見され、没収されていたのだ。ちなみにセンサーでフィルムを発見したのは壊斗であり、壊斗から教えられて和美の身体を探ったのは千雨である。

 壊斗は和美の言葉に、しれっと答えた。

 

「現像して、関係ない写真だと分かったら、ハセガワ経由で返してやる」

「返す事ねーと思うけどな、わたしは。どーせろくでもないネタ満載なんだし」

「そ、そんな~!

 頼むよちうちゃ……。いえ、千雨ちゃん様」

「ちゃん様言うな」

 

 ここで和美は、性懲りもなく千雨に問いを投げかける。

 

「で、千雨ちゃん。この千雨ちゃんの彼氏は、何て人なの?」

「なっ! かっ! 彼氏じゃねーよ!」

「あー、俺とハセガワの関係はそんなもんじゃない。ハセガワは俺にとって命の恩人なんだ。だから恩返しのために色々世話を焼かせてもらってる。

 細かい事情は、俺とハセガワのプライバシーに関わるから、教えられん」

 

 壊斗が返答した事で、和美の矛先は壊斗の方を向いた。

 

「なるほど、そうなんですか。で、お名前はなんて言うんですか? お仕事は何を? 学生さんですか?」

「おい! 朝倉、いいかげんにしろよ!」

「んー、まあいいだろ。俺は水谷壊斗だ。職業は基本的に投資家。後はディレッタント……つまり好事家とも言えるかもしれん」

「はあ~。株式トレードとかやってるんですね」

 

 感心した様に言う和美。だが壊斗はその言葉を否定した。

 

「いや、株式売買で儲けるわけじゃない。それは『投機』だ、『投資』じゃあない。

 俺のは、『上がりそうな株』を買うんじゃなく、『有望な会社』に出資するんだ。株を買うのは違いないが、意味合いが大きく違う。株を売買して差益を得るのではなく、きちんと株主として登録するんだ。

 そして株の配当を受け取り、場合によっては株主総会などで会社の運営に口を出す」

「……ずいぶんと一般社会に馴染んだな、オイ」

「くくく、まあな」

「?」

 

 千雨と壊斗のやりとりに、疑問符を頭上に浮かべる和美。だがこれ以上突っ込んで訊くのもまずい予感がひしひしとしていたため、彼女はこれ以上の追及を諦める。まあ、あまり下手に追及すると、取り上げられたフィルムが戻って来ない危険もあるし。

 そんなわけで、千雨と和美は近場にあった飲食スペース付きの洋菓子店で、シュークリームと紅茶を壊斗に奢ってもらい、そこで解散した。千雨はこの後、寮の自室に直帰。そして『ちうのホームページ』を更新したりチャットで愚痴ったりして、鬱憤を晴らす事に集中する。いくら腹が立っても、個人で麻帆良の裏に手を出すのは、流石に無茶が過ぎると言うものだ。故に彼女は、苛立ちを少しでも解消すべく趣味に没頭したのである。

 

 

 

 この時千雨は理屈では、自分がこの麻帆良学園都市でどれだけ危険な位置に立っているか、それを理解しているつもりだった。だが、それが『つもり』でしか無い事を、この時の彼女は知る由も無かったのだ。




壊斗の正体が某カロイドだと言うお話……ではないです。千雨はこの麻帆良学園都市の裏側にある関東魔法協会について知らされました。それに関するお話が、今話の本題です。某パパラッチ娘関連は、ちょっとしたにぎやかしですねー。
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