超ロボット生命体トランスフォーマーMAGUS   作:雑草弁士

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第048話:魔法世界にも基地を

 結局フェイトは、人形の身体に入った従者たちを投降者として麻帆良学園に預け、単身で不安定な壊れかけのゲートで、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)へと帰って行った。従者たちは必死に、フェイト1人では危険だと付いて行きたがったが、フェイトがそれを許さなかったのである。

 そして千雨たちは火星に戻り、新たに第2火星基地であるマースベースβの建設を開始した。これはジャック・ラカンが確保した魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の離島と、常設的にゲートを繋げるための基地である。

 マースベースβは、あちら側(ムンドゥス・マギクス)のその島と対になっている、現実の火星側の山の内部をくり抜く様に建設される予定だ。まあ、まだ簡易基地モジュールを置いただけの状態なのだが。だが一応、小規模なゲートは設置されている。

 小規模なゲートであっても設置を急いだ理由は、向こうの世界(ムンドゥス・マギクス)からフェイトを回収して匿う目的がある。千雨と壊斗からすれば、フェイトは今まで敵対していた相手であり、本来ならそこまでするのもなあ、と言う気持ちである。そう、『本来なら』であった。

 

「さて、(フェイト)が持っている証拠物件を手に入れたらどうするんだ?」

「現在魔法世界(ムンドゥス・マギクス)側にも物資を送り込んで、そこであっち側にも基地を建設しているからな。基本的にはそこに運び込む。本当なら、現実の火星に持って来れればいいんだが……」

「うっかりこっちに持って来ちまうと、魔力に化けて霧消しちまうからなあ。あっちの物品類は」

 

 千雨と壊斗が言っているのは、メガロメセンブリアやヘラス帝国その他の国々における権力者たちの、『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』との癒着を証明する証拠物件である。特にメガロメセンブリアの元老院などは、デュナミスに(そそのか)されてネギの村を襲わせた裏事情まで、はっきり残っているらしい。

 更に言えば、『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』とは関わりの無い多数の醜聞の証拠類も、各国の議員、貴族、その他の権力者たちとの交渉のために集められていた模様だ。それらもフェイトはこちらに提供すると言う。

 フェイトが、投降するのであればわざわざ帰る必要も無いのに、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)へ壊れかけのゲートを使うと言う危険を冒してまで帰ったのは、その証拠物件のためでもあった。彼はなんとしても、自分の従者たちに関しては、なんとか生命(いのち)や生活の保証を取り付けようとしていたのである。彼自身の事はまったく度外視して。

 

あいつ(フェイト)ら、頭固いんじゃねえの? その証拠とか上手く使えば、不正義とか不公平とか不公正とか、幾ばくかなりとも減らせたんじゃね?」

「まあ、奴ら(コズモ・エンテレケイア)は完全なる世界をもたらす事で、全てチャラにするつもりだった様だしな。その組織の中で働いてたんだ。(フェイト)自身、思考能力が制限されて硬直しても、仕方あるまい。せめて奴が、虐殺の被害者とか救って歩いてた事だけでも評価してやろう。

 それに、フェイトが隠匿した証拠類が全て手に入れば、ネギ君の報復とかもやり易くなる。フェイトを庇うわけじゃないが、あまり完璧を求めるのもな。だから無事に、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の官憲や、デュナミスとやらから逃れて欲しいと思うね。フェイトじゃ無く、その従者のためでもなく、ネギ少年のためにな」

「うん……。そうだな。だけど麻帆良の連中の極端な善良さ、なんとかならないかね。一歩間違えれば、身を滅ぼしかねない甘さにならねえか? フェイトが証拠類の話を持ち出す前に、受け入れ決めただろ」

「だが、あの甘さ、あの善良さあっての彼等だからなあ……」

 

 千雨たちは、色々と思い悩みながら作業ロボットたちを指揮して第2火星基地(マースベースβ)の建設を急いだ。もう少し居住設備などが整ったら、第1火星基地(マースベースα)から人員を呼び寄せて一気に工事を進める予定であった。

 

 

 

 目の前でガハハと豪快に笑うジャック・ラカン(きんにくバカ)に、千雨は頭痛を覚えていた。

 

「しっかし、お互い本気(マジ)じゃなかったとは言えよ。俺と互角にやり合うたあ、大したもんだぜ。なあ壊斗の旦那よ」

「わざわざ旦那を付けなくてもいいんだぞ?」

「いや、一応雇い主だからな」

「その雇い主が強そうだったからって、腕試しに殴りかかるのはどうなんだ、オッサン……。壊斗も付き合う事ぁ無いだろに」

「いや、ハセガワ。TPOって物があるからな。相手の(たち)によって対応を変えるのは、変な事じゃないさ。

 それになあ……。デストロンとか、一部サイバトロンでも、力の信奉者ってのは多くてなあ……。そう言う奴らは、こっちが強ければ一目置くが、力を見せる事を断ったりすると、舐められたり侮られたりでなあ……」

 

 遠い目になる壊斗であった。千雨は『色々あったんだろうなあ』と、これ以上のツッコミを()める。ガハハと笑うラカンが、ちょいウザかった。

 そう、千雨と壊斗は本日、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)に来ていたのだ。ジャック・ラカンと愉快な仲間たちが確保した土地に、基地を建設するためである。とりあえず千雨たちは、作業ロボットに命じてラカンたちのキャンプに隣接した場所に、基地モジュールを置いた。

 

「ほおう、あっと言う間だな。キャンプは畳んだ方、いいか? っつうか、この基地に寝泊まりしていいんだろ?」

「ああ、それで構わねえよ。ただ、できれば中枢部分には立ち入り禁止にしてくれねえか、オッサンの名前で。あそこにゃ、下手に触るとマズいもんも多くあるからな」

「自爆装置とかか?」

「あるぞ?」

「あんのか……」

 

 くわばらくわばらと肩を竦めるラカンに、『オッサンは他人(ヒト)の事言えるほど常識人なのか』とツッコミ入れたい千雨であった。というか、しれっと自爆装置が隣にある生活に順応している時点で、自分もけっこう線の向こう側に逝ってしまっている事に、彼女は気付いていない。人とは、慣れる生き物なのだ。いや人間じゃないけど。トランスフォーマーだけど。

 

 

 

 今、サウザンドレイン(ちさめ)サイコブラスト(かいと)は宇宙戦闘機モードで、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の大空を飛翔していた。それはもう、大気圏内で出せる限界の速度で。つまりサイコブラストが出せる、マッハ5の速度で飛んでいたのである。

 ちなみにサウザンドレインはもう一寸速く、マッハ5.2まで出せるが。だがそれだとサイコブラストを置いていく事になるので、2人ともマッハ5で飛んでいた。

 

『間に合うかな、いや何とか間に合わせねえと』

『フェイトはどうでもいい……わけでもないが、さして本人の重要度は高く無いからな。何にせよフェイトもだが、奴が隠している証拠物件は今後の事もあり、何としてでも手に入れないといかん』

 

 そう、彼らがカッ飛んでいる理由は、彼らが魔法世界(ムンドゥス・マギクス)中にばら撒いた偵察ドロイドの1体が、アーウェルンクスシリーズ1体及び月詠と交戦しているフェイトを発見したからである。なんとか持ちこたえているフェイトだったが、流石に斬魔剣・弐の太刀を使う月詠と、炎を操るアーウェルンクスの新顔の2人相手では分が悪そうだった。

 

『とりあえず、斬魔剣・弐の太刀は偵察ドロイドのカメラやセンサーで徹底的に解析した』

『桜咲の奴に、いい土産になるな。っと、ヤベえ。フェイトの奴が右腕を月詠に斬られた』

『降下するぞ! 降下ーッ!!』

 

 サイコブラストが降下を開始し、サウザンドレインもそれに続く。彼等は敵2人にビームを撃ちながら、地表すれすれでロボットモードに変形(トランスフォーム)、地上に降り立った。

 

『無事じゃなさそうだが、生きてるか?』

「……君たちは」

「な、なんだこの鉄人形は!?」

「あーっ!? あのときウチにミサイル撃ってきた巨大ロボどすな!? 今度は負けまへんえ! ミサイルも、信管を切り落とせばいいって、機動○士ガ○ダム観て勉強しましたんや!

 そう、神鳴流に飛び道具は効かしまへんのんや!」

 

 そう騒ぐ月詠に、サウザンドレイン(ちさめ)は右手の多機能ライフルを単射で撃つ。月詠はその人間からすれば砲弾とも言える弾丸を、なんとか刀で斬った。左右に分かれた弾体は、月詠の左右を通り越して消える。

 

「ど、どうですのん!? そないな大砲かて……。あ、れ……?」

『いや、弾頭に催眠ガス仕込んだガス弾だから。殺し用の毒ガスでなかっただけ感謝してくれ』

「そ、そんなあ……」

 

 月詠はその場に倒れ伏す。やはり神鳴流に、飛び道具は効くのであった。

 

『さて、これで戦力差は逆転したわけだが。どうするね?』

「く、貴様らごときが味方したところで! ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト! 契約に従い(ト・シュンボライオン)我に従え(ディアーコネート・モイ・ホ)炎の覇王(テユラネ・フロゴス)……」

『……』

 

 サイコブラスト(かいと)はとりあえず、これも多機能ライフルで狙いを付けて、撃つ。アーウェルンクスシリーズの新顔は、戦闘経験の不足が(あだ)になったのか、曼陀羅の障壁でその銃撃を受けた。そしてアーウェルンクスは、下半身を吹き飛ばされる。今のは例の魔力を喰らう弾丸ではなかったが、それでも曼陀羅障壁でさえ受けきれる威力では無かった模様だ。

 

「ぐ、はぁっ……。く、お、おのれ! 覚えておれよ!」

 

 そしてアーウェルンクスの残った上半身は、炎に巻かれたかと思うと姿を消す。炎を媒介にした、転移魔法だった。サイコブラストは、フェイトに声をかけた。

 

『今のうちに斬られた腕を拾え。とりあえず安全なところまで、乗せていってやる』

「助かるよ。もしかしたら、だけど。そのロボットは無線による遠隔操縦かい? それとも、そのロボットに精神を転移させて乗り移ってる? 何にせよ、凄い技術だね。

 身ごなしで分かったけど、たぶん君は壊斗氏と、こっちは確信は無いが長谷川さんだろう? 黙っていようかとも思ったけど、気付いた以上は気付いた事を言っておいた方が、いいかとも思ってね」

 

 その言葉に、サウザンドレイン(ちさめ)サイコブラスト(かいと)は顔を見合わせる。そして彼らは言った。

 

『『何の事かな?』』

「了解。誰にも言わない。僕もこの場で忘れた事にするよ」

『『……』まあ、操縦席に乗せてやるから、下手に触るなよ?』

「わかった。お願いするよ」

 

 そして彼らはフェイトを乗せて、飛び立った。後にはぐーすか眠り込んだ、月詠さんが残されたのである。

 

 

 

 かくしてフェイトは、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)基地のある島の浜辺に降ろされ、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)基地に自力で到着した風を装う。彼はそこで治療を受けた後、現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)の火星へと移動し、しばらくはそこで(かくま)われる事になった。

 フェイトが魔法世界(ムンドゥス・マギクス)のあちらこちらに隠匿した証拠物件は、今後徐々に集めて回る事になった。だがフェイトが持ち歩いていた書面だけでも、メガロメセンブリアの元老院を叩く材料には充分なりそうである。

 千雨と壊斗は、ラカンやその右腕として働いていたカゲタロウ氏、それに肝心かなめのネギに意見を聞き、ネギの報復としてメガロメセンブリアの指導者層を追い詰める方策を考える事にしたのである。




フェイト救出です。でもって『(クゥァルトゥム)』君。彼はデュナミスが無理に無理を重ねて目覚めさせました。それも酷い無理を重ねて。原作ではグランドマスターキーだったかな? とかの能力があったから、『(クゥァルトゥム)』『(クゥイントゥム)』『(セクストゥム)』を目覚めさせるのが間に合った的な事言ってた覚えが。
でもって、『(クゥァルトゥム)』を戦列に追加して、これでどうにか……と思っていたところで『造物主(ライフメーカー)』成仏のお知らせ。しかも『(テルティウム)』の戦線離脱。しかも今回いきなり『(クゥァルトゥム)』は半身不随。デュナミス踏んだり蹴ったり。
これから先、どう動くにせよ、デュナミスの未来は暗いですね。と言うか、どうにもこうにも動きようも無い。おそらくは『造物主(ライフメーカー)』の遺した計画(プラン)に拘泥して、どこかのゲートの復旧を狙うのでしょうが……。ああ、ちなみに主人公(ちうたん)たちのゲートは、原理がまったく違うので使えません。

そして、ゆっくりお休みください月詠さん。
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