千雨と壊斗、そしてネギとのどかと小太郎、更に超は、火星の軌道ステーション、未だ未稼働の反物質炉発電ステーション2号基にて、客人を迎えていた。誰あろう、ザジ・レイニーデイ姉妹である。
なんでこんな場所に、と思うだろうが、これはうっかり麻帆良にザジ姉を招くと麻帆良結界に引っ掛かるかもしれない事から麻帆良以外の場所で、そして万が一ザジと同等以上の魔力を持つと想定されるその姉が暴れた場合を考えて、ひたすらに頑丈に建設されている反物質炉ステーションで、会合が行われたのだ。
「いや、わたしも破滅願望は無いポヨ。これだけの科学力を持つ相手と敵対するなんて事しないポヨね。それにわたしは妹と双子ポヨ。魔力的にも戦闘力的にも、妹と互角ポヨね。その上でもし万一そちらと敵対したとしてもポヨ。妹がクラスメートに味方してしまったら、わたしの勝ち目は無いポヨね。
当然ながら、わたしはそんなバカでは無いつもりポヨ。安全に会見、安全に交渉して、安全に友好的に帰途に着きたいポヨ。だから暴れたりしないポヨね。第一、今回したい相談は、そんな物騒な代物ではないポヨ」
「愉快な姉ですが、嘘は苦手です。信用してくださって、構わないかと」
「ポヨッ!?」
魔族姉妹の漫才を聞きつつ、千雨は溜息まじりに言葉を紡ぐ。
「いや、そんならそれでいい。お前らが今回の会見を申し込んだ理由は何なんだ?」
「それは、墓所の主の事ポヨ」
「「「「「「……誰、それ?」」」」」」
「ポヨッ!?」
ここで壊斗と千雨が、その呼び名について思い出す。
「ああ、そう言えば。高畑先生がフェイトからの事情聴取後、なにやらそんな人物の事を口に上らせた事があったな」
「あ、そう言えば。だけどわたしら、『
「ポヨッ!? それではここの面々は、墓所の主の事を何も知らないポヨか!? ネギ先生、貴方の母方のご先祖ポヨよ!?」
「いえ、僕は生母の事はほとんど知らなかったんですよ。先日に、ようやくの事で母がどういう事をした
そしてそれが故に、僕の生村の人達が……。僕と言う、その
台詞にドロリとした物を含ませて低く笑うネギに、ちょっと周囲の面々は引く。だが唯一のどかが、その背中をそっと抱きしめる。ネギの周囲の嫌な空気は、たちどころに引いて行った。
「ありがとうございます、のどかさん……。まあ、そんなわけでして、僕は未だ生母であるアリカ女王……アリカ王女の事は、通り一遍の事しか知らないんです。その先祖とか、そのかつて女王であった国の事とか、詳細な話は何も」
「そ、そうポヨか。墓所の主とは、わたしたち魔族とは旧知の仲で、深い関わりがある人物ポヨ。旧オスティアを首都とするウェスペルタティア王国で、大昔から歳を取らずに生きている人物ポヨ。
けれど
「いや、頑張ったけどよ。結構無理も重ねたし」
「姉が失礼をば」
ちなみに高畑が墓所の主を知っていたのは、『
千雨は
「あー、枕にしちゃ長えぞ。お前さんは、その墓所の主をどうしたいんだ?」
「昔馴染みだし、救出したいポヨ。フェイトが『
「いや、実際テロリストであった事は間違い無えだろ」
千雨の思ったより冷たい言葉に、ザジ姉は片方の眉をぴくりと動かす。千雨は続けた。
「具体的にどうしろって? わたしらに可能なのは、せいぜいが『
テロリスト一味のうち1人が離反したがってるから、そいつの過去の行いには目を瞑って救出してやれってか? しかも申し出て来たのは、少なくとも先日までその
「……」
「わたしらは、今の状況を作った立場の一員だ。その立場には、立場なりの仁義ってもんがある。ほぼ丸投げして任せた以上、そうそう簡単にスタンスを曲げて、
「……たしかに、正論ポヨ」
ザジ姉は、息を吐いて言葉を紡ぐ。
「たしかに正論ポヨ。なれど我らにも昔馴染みへの『情』があるポヨ。なんとかして、助けてやりたい。そう願う事は、間違いポヨか? 直接にクルト氏に談判する事も考えたが、それよりも彼に影響力がある人物に願うのは、間違いであったポヨ?」
「あんな? 『情』って言うんならよ? 血が繋がってんだろうに、その墓所の主ってのは、ネギ先生の母親が貶められ刑に処されようとしてた時によ? なんとかしようとしたのか?
それどころか、その原因を作った『
「!!」
苛立った口調で、千雨はとどめの一撃を放った。
「それとフェイトの奴は、従者の女ども助けるために、自分は度外視してその対価として、山の様なあちこちの国の汚職や醜聞、そして『
「……」
ザジ姉が言葉に詰まり、そしてザジが口を開く。
「姉さん。だから言ったでしょう。その理屈で説得しようものなら、相手を怒らせるだけでは、と」
「妹よ、お前は誰の味方だポヨ」
「ネギ先生たちですよ?」
「そうだったポヨ」
そしてザジは言った。
「こんな考えの足りない姉ですが、それでもわたしの双子の姉です」
「待つポヨ」
「待ちません。それでもわたしの姉なのです。なんとか願いをかなえてやりたい気持ちもあります。虫のいいお願いですが、どうにか妥協点を見いだせないでしょうか。
たとえば、墓所の主が死刑になるところを終身刑ですませられる条件とか」
「待つポヨ」
「待ちません。わたしたち魔族にできる条件なら、姉が飲みます。ですのでクルト氏に繋ぎと口利きをお願いできないでしょうか」
千雨たちは、こちらを怒らせたザジ姉の台詞であれば一蹴するつもりであった。だがザジの真摯な願いとなると、特に担任教師であるネギ辺りは少々弱い。そこで口を挟んだのは、超である。
「フム、
その場の全員が、ビミョーな気分になった。
時は流れて2ヶ月後。イギリスはメルディアナ魔法学校の地下室で、1つの奇跡とも言える現象が起きていた。
「スタンお爺さん……!!」
「ね、ネギ? ネギなのか? 大きくなったのう……」
その場にいる大半が涙ぐみ、あるいは本当に落涙する。今ここでは、かつてネギの生村で爵位級の上位悪魔に石化された村人たちの、石化解除が行われていたのだ。
「お母さん! お父さん!」
「アーニャ!? アーニャ……」
「大きくなったね、アーニャ……」
「ひぃ、ふう……ポヨ」
「姉さん、石化された人はまだまだ多いです。頑張ってください」
いや、石化解除と言うのは厳密には間違いだ。正確には、石化『破棄』もしくは石化『破却』だろうか。村人たちを石化させた悪魔たちよりも、更なる上位の力を行使して、石化状態そのものを『破棄』しているのだ。
まあ、そんな事ができるのは、魔族としてけっこう偉い立場にあるザジ姉だからこそだ。そしてそれほどの力を行使するのはザジ姉ですら、とてつもなく疲労する。
「妹よ、少しは手伝ってくれてもいいのではポヨ」
「手伝いましたよ? 姉さんがここに来る時間を作るため、一時魔界に帰郷してまで仕事を手伝ったじゃないですか。
おかげで麻帆良に戻ってから、勉強遅れを取り戻すのにどれだけ頑張った事か。ネギ先生にも色々ご迷惑を。それに魔界に帰っていたため、楽しみにしていた体育祭ですが欠席でした。『教師突撃☆スーパー借り物競争』には参加したかったのですが……」
「ごめんポヨ」
ちなみに『教師突撃☆スーパー借り物競争』の言葉を聞いて、ネギが顔を引き攣らせて遠い目になり、スタン老人が慌てて衛生兵を呼ぶなどしていた。ネギは体育祭のその競技で、高畑ともども色々
まあ、
超が満面の笑みを浮かべて言う。
「鍵はメガロメセンブリア旧政権の負の遺産、ネギ先生暗殺未遂により巻き込まれて石化した人々ヨ。ソレを救い、その手柄をメガロ新政権に譲るコトで、メガロ新政権に対する
「かゆ……うま……ポヨ」
「ム、限界来たカ!? 葉加瀬!」
「はいっ! エネルゴンキューブ変換型の魔力供給装置・対人用ーーー!!
対人とは言っても、魔族相手でも使えますけどねー。あのとき火星で、軌道上のステーションに行ってたはずの超さんがいきなり通信してきて、対人仕様のこの装置を設計組み立てしろと言われた時は驚きましたが……」
「喋ってないで、早くやるネ」
「あ、はい」
葉加瀬は魂抜けかけのザジ姉の口に、その装置のノズルを突っ込む。
「ぶばっ!? うごごごごっ!?」
「姉さん、元気でたら再開しましょうか」
「ぶはっ! ちょ、殺す気ポヨか!? いくらなんでも、無理矢理すぎポヨ!」
「姉さんを殺す気なんて……。ぎりぎりを見計らってますから」
「ヒイイイィィィ!? ポヨ」
どうやらザジは、体育祭に参加できなかった事がよほど腹に据えかねている模様である。そしてまた1人の人が、石化から解き放たれた。
それと時を同じくして、魔法世界では『
仕事をしつつ火星で報せを聞いた千雨と壊斗は、やれやれと肩を竦めたそうである。
ザジ姉に、石化解除できると言うのは本作の二次設定であり、決して原作からの出展ではありません。原作の設定だと、多分無理です。
でもって、そろそろ前回の使用から時間経ったので、ほとぼりも冷めたろうと、某司令官のフラグ台詞また使いました。