なかなか戦闘には入れない。一応、武偵殺し編の最後くらいが一番の見せ場かなぁ、と。
「チャオっす、今日からお前たちを教育するリボ川だぞ」
「って、リボーン!!何でここに!」
並中や並高の時と同じように変な格好をして教師に紛れ込んでいた。
「おい……沢田、リボ川先生だぞ?俺でも知ってるような有名人だからリボーンな訳ないだろ」
いや、嘘だろ?とツナは本気でそう思った。というより、何故キンジがこのリボーンもといリボ川を知っているのか。そちらの方が意味不明だった。
「まあ、確かに何となくリボーンに似てる所もあるけど……ツナ、
「あんなガキに教師が務まるかよ」
口の悪いクラスメイトの1人がボソッと小さく言った瞬間、リボーンは持っていたチョークを彼に向かって投げた。
「が……っ…………」
彼の額に直撃したチョークは粉々に砕け散り、彼は意識を失った。武偵高校の教師は、校長、緑松武尊を始め、蘭豹や綴先生などの超危険人物の巣窟と分かっていたのに。
「何か言ったか?」
(うわーーーー!!またリボーンがやっちゃったよーーー!!)
「じゃ、始めるぞ。筋がよければ、お前らを立派なマフィアにしてやるぞ」
しーんとした空気の中で授業は始まる。そもそも武偵高校でマフィアの勧誘とかおかしい。とツナは思った。
「ふぅ……リボーンの授業にしてはマシだったな……」
リボーンの授業と言えば毎度毎度とんでもないものばかりだが、今日は比較的マシだった。武偵高の生徒たちもチョーク粉砕以降は概ね真面目な態度で授業を受けていた。
「ま、今のアイツらじゃあとてもボンゴレには入れられねぇな」
相変わらず神出鬼没なリボーンが校舎の中に勝手に作った部屋から現れた。
「ボンゴレ?パスタのあれか?」
幸い、キンジはボンゴレ・ビアンゴの方を思い浮かべているようで、ボンゴレファミリーの方は知らないようだった。
「げ!! な、何でもないない!!」
「ちょ、沢田!」
少しでもリボーンから遠ざけるべく、ツナはキンジの背中をグイグイと押して教室から出て行った。
# # # # #
「ん?ツナ、どうしたんだ?」
キンジは昨日から同室のツナが何回もトイレに入っていく姿に、悪いものでも食っていたのかと思っていた。
「いや、何だかお腹痛くてさ……」
昨日、クラスの人気者、峰理子から貰った毒々しい色のクッキーを食べてからお腹が痛かった。キンジの考えは当たっていたが、ツナは彼女の為にも内緒にしておこうと本当の事を黙っていた。
「俺は先に行ってるからな」
「あー、うん」
また一つ波がきた。
便意は二十分ほどで完全に消えた。昨日から続いたのに嘘のように消えたので、遅刻にも関わらず清々しい気分でツナは学校へ行くことにした。
「あれ?メールだ」
こんな朝にメールが来るとは、滅多に無いことでツナは不思議なら思いながらも内容を見ていた。
「ば、バスジャック!?」
キンジによると、乗るはずだったバスが武偵殺しにバスジャックされたらしい。
「おい、ツナ。無事だな」
「リボーン、バスジャックって……」
「明らかにお前を狙った犯行じゃない。恐らく、お前の近くに武偵殺しがいるぞ。偶然にしちゃあ出来すぎてる」
「そんな……」
衝撃に打ちひしがれていると、電話が掛かってきた。
『10代目!!ご無事ですか!!!!』
「獄寺君!!」
「10代目のお近くでバスジャックが発生したと聞いたので、慌てて電話しました。声からして、無事なようですね」
「まあ、リボーンもいるしね」
「リボーンさんが……それではもう切ります。どうかお気をつけて」
「うん、獄寺君も」
そう言って電話を切った。獄寺君も元気そうで、少しホッとした。
「ま、こうしても仕方ねえ。というより、遅刻だってことを忘れんじゃねえぞ」
「うん、だよな」
自分が出来ることは無い。歯痒いが、任せるほかに無いのだ。
# # # # #
「キンジ、神崎さんの具合は?」
ツナは神崎さんの病室に訪れていた。すやすやと何もないように眠っているが、額にはガーゼが当ててあった。
「額を弾が掠めたが、それ以外の傷はない。でも……眠り続けてる」
神崎さんはバスジャックにキンジと介入して、解決した。その代わり、キンジを銃弾から庇った際に額に怪我を負ったそうだ。自責の念でキンジは目を閉じていた。
「武偵殺しを、捕まえる」
それから二日、神崎さんは退院した。いつものように元気そうで、キンジと2人で一安心した。日曜日で、神崎さんもキンジも何処かに出かけるようだった。目覚めると、1人だけの部屋で都内でもぶらぶら散歩しようかと思ったが、並盛の家に寄ろうとツナは思った。
「珍しくリボーンの奴もいなかったけど……アイツ、そういや愛人が4人もいるんだっけな」
初めて聞いた時は冗談だと思っていたが、アルコバレーノは呪いで赤ん坊になっていただけで、愛人が4人いる事は本当で、他にも話していた自慢話は全て本当と明らかになったのだった。愛人の1人は獄寺君の姉、ビアンキ。ポイズンクッキングという毒の料理を扱う暗殺者だ。今日は別の愛人に会いに行くと言っていたが、行方は分からない。
「あ、キン…………」
奇妙な行動をとるキンジが居た。どう見ても怪しすぎる。
「しーっ、沢田、静かに……」
口に人差し指を当て、小声で喋った。
「な、何してるの?」
「あれ、見ろ」
神崎さんが、意外に似合う白いブラウスを着て、何処かに向かっていた。
「なるほど……でも、何処に?」
「それを尾行しようってんだよ。あっ、動いた」
「ま、待ってよ」
キンジと共に神崎さんを尾行することになった。Sランク武偵の神崎さんは偶にこちらを向いたが、何とか気づかれていない……と思う。もしも並盛だったら、人もここまで多くないからバレるだろうし、群れていると雲雀さんに咬み殺されるだろう。
「アンタたち、バレバレよ。尾行なのに尻尾がニョロニョロ見えてるわ」
「なんだよ、気づいてたなら話しかければ良いじゃないか」
「ははは……たまたまキンジを見かけてね」
一方、真面目な表情で神崎さんは口を開く。
「……迷ってたのよ、言うべきか。ツナとキンジも武偵殺しと関わっているから」
「え……?俺は被害を被ってないけど」
「まあ、アンタに関しては感よ。奴は意図的にアンタという存在を犯行から避けているわ」
「はあ……」
ツナは生返事を返したが、リボーンのような事を言っているなと思った。
「もう着いちゃったし。いいわ、着いてきて」
「まあ、行くか」
神崎さんが言うままに、警察署内へ足を踏み入れていく。そのまま、俺たちは面会室に来た。神崎さんは誰に会おうとしているかは分からないが、緊張と焦りに満ちている顔にツナからは見えた。
「ママっ!!」
神崎さんに面影がある女の人が通された。柔らかい雰囲気と茶髪の人。神崎さんより落ち着きのある感じの人だ。一体何をしたのか、ツナにはさっぱり見当がつかなかった。
「まぁ、アリア。……この方々、彼氏さん?それともお友達?」
「ち、違うわよ、ママ。こっちは遠山キンジ、あっちは沢田綱吉。別に彼氏とか、そう言うんじゃないから!!!!」
真っ赤な顔の神崎さんにもうふふ、と笑いを返す。そして、俺たち2人の方にかなえさんは視線を向けた。
「初めてまして、神崎かなえと申します。娘がお世話になっているみたいですね。……沢田くんは家光さんよりも奈々ちゃんに似てますね」
「それって……」
父さんや母さんとの関わりを聞こうとしたが、神崎さんが遮った。
「ママ、それは兎に角、今は時間が無いから手短に話すけど、コイツは武偵殺しの被害者で、アイツは武偵殺しが意図的に避けてる奴よ」
神崎さんは続けた。
「奴は最近動きが活発になってる。直ぐにとっ捕まえてやるわ!待ってて!!」
しかし、かなえさんの目は節目がちで、暗い。まるで、もう諦めているかのようだった。
「武偵殺しの件だけでも無実を証明すれば、ママの懲役864年が一気に742年まで減刑されるわ。最高裁までの間に、他も絶対全部なんとかするから」
神崎さんの焦りも分かった。肉親がこのような目に遭えば誰だって焦る。未来で父さんと母さんがボンゴレ狩りの中、イタリア旅行に出たきりで行方不明になっている時も、不安感を覚えたのは記憶に残っている。
「そして、ママをスケープゴートにしたイ・ウーの連中を、全員ここにぶち込んでやるわ」
「アリア。気持ちは嬉しいけど、イ・ウーに挑むのはまだ早いわ。それより、パートナーは見つかったの?」
「……ッ、それは……」
先程とは違う、狼狽した顔を神崎さんは見せた。
「大きな敵と戦う前にいい人を見つけなきゃ。大丈夫。貴方ならきっといいパートナーを見つけられるわ」
しかし、時間は無情にも来てしまう。
「神崎、時間だ」
「ママ、待ってて。必ず公判までに真犯人を全部捕まえるから」
「焦ってはダメよ、アリア。お互いに支え合える人を探すのよ」
そうしてかなえさんは再び牢屋に戻された。アリアは顔を伏せたまま、一言も喋らず警察署の外に出た。俺もキンジも外に出た。
「あのさ、神崎さん、キンジ。俺、先に戻ってる。リボーンから呼び出し食らってさ」
気まずいタイミングでリボーンから電話が来た。明るい場違いな音はとてもツナをきまり悪くさせた。
「あ、ああ。分かった」
「……」
2人と別れ、リボーンのいる所に向かった。
「ツナ、神崎かなえに会ったのか」
「うん……でも、とても犯罪を犯したりしなさそうだし、神崎さんもそう言ってた」
かなえさんの事をリボーンは知っていたが、とても聞きたい気分では無かった。
「この件、想像以上に厄介かもしんねぇ。下手したら、今まで以上に覚悟がいるかもしれねえぞ」
リボーンの瞳がこちらを射抜く。
「……俺は神崎さんを助けたい。神崎さんは友達で、困ってるなら、少しでも手伝いたい。神崎さんとかなえさんが、一緒に笑って欲しい」
「ふっ、決まってたか。“武偵”としてなんとかしてみせろ」
「うん」
きっと、神崎さんを助けたいこの想いは強い覚悟のはずだからーー
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ーー少し前、都内のカフェ
「にしても、あの『ダメツナ君』がボンゴレ10代目とはねぇ……」
写真にはずっこけている姿や、間抜けな姿ばかりが殆どを占めていた。お世辞にも格好良くはない。だが、パンツ一丁で額に炎を灯している画像もあり、彼が普通ではないと理解できる。
「気を付けろ、あくまでもお前の狙いは神崎アリアと遠山キンジ。ボンゴレには決して手を出すな」
裏に通じる彼女は、ツナの正体をも知っていた。
「はいはい、分かってる分かってる。そっちはどうなの?」
「完璧だ、“理子”。綿密に立てたから、ミスはない」
「そっちも気を付けて、“ジャンヌ”?」
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