X世(デーチモ)と哿(エネイブル)   作:凧の糸

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 はい、前回からまあまあ期間が空きました。新生活で忙しかったりで、雑な所もあるかも知れませんが、ちょっと目を瞑ってもらえると幸いです。

 それではどうぞ


決着

 

「はっ、額に炎なんてともしちゃってさ。こんな展開、嫌いなんだけどッ!」

 

 

「銃弾は俺に効かない」

 高密度のエネルギーである死ぬ気の炎は、使い手によって敵を屠る矛にも、身を護る盾にもなる。精製度A以上であり、7^3(トゥリニセッテ)の一角を担うボンゴレリングが変化したボンゴレギアは、特に高純度の炎の扱いを可能にする。

 

 銃弾程度であれば、容易に防御が出来る。更に、金属で構成された剣は物によるが、ドロドロに溶かし切ってしまう程だ。

 

 

「くっ、マジかよ」

 しかし、彼女はまだまだ焦らない。匣兵器をこの密閉空間で使用できる彼女が有利なのだから。

 

 

「だが、匣兵器はどうかなぁ?」

 理子のリングが再び炎を匣兵器へと注いでいく。一段と炎の揺めきも大きくなった。

 

 

「ガルルルル……!」 

 その獰猛で、荒れ狂う赤い炎を纏う牙は沢田綱吉へと襲いかかる!

 

 

「沢田っ!!」

 

「ツナ!!!!」

 ツナは微動だにしない。そして、直撃寸前に額の炎が消えた。二人が駆け出そうとした時には、既に終わっていた。

 

 

「死ぬ気の零地点突破1世(ファースト)エディション」

 

 

「なーー」

 

「凍ってる……」

 ツナが触れている嵐豹(パンテーラ・テンペスタ)はみるみる氷漬けになっていく。摩訶不思議な現象が発生して、すっかり覆われた嵐豹はゴトリと鈍い音と共に転がった。

 

 

「こんな……認めてなるものかよッ!」

 理子は受け入れられない。受け入れてはいけない。再び武器らしいものを取り出そうとする。

 

 

「ーー遅い」

 一瞬で背後をとったツナは、手刀を理子に入れようとする。が、それは失敗した。

 

 

 

 壁面の小規模な爆発。キンジのチャリジャックなど、過去の一連の事件から見ても、武偵殺しの十八番は爆弾だった。容易周到で、謎の組織イ・ウーの一員である峰・理子・リュパン4世という女は強かだ。万一の事くらいは考えていたのだ。

 

 ツナは咄嗟に避けることが出来たが、理子を取り逃がしてしまった。

 

 

「キンジーーいや、ははッ、峰の名が泣くね。男相手にこんなに必死になってさ。 Au revoir (さようなら)

 理子は何かを言おうとしたが、踏みとどまり、ニヒルな笑みを作る。爆発で空いた大穴から、理子は飛び降りる。背中に仕込んでいたパラシュートが展開されて、風を掴む。

 

 闇に溶けるように、直ぐにその姿は小さくなっていった。

 

 

 

 

# # # # #

 

 

 

ーー並森町

 

 

 

「まあ、その後に飛行機を撃墜されかけたりしたけど、なんとか着陸出来たよ」

 こうして、獄寺君と山本と話しているのが一番の証拠。操縦士のいない飛行機を国が撃墜しようとしたが、キンジのテクニックにより空き地島という武偵高のあるメガフロートと同じくらいの面積の人工島にギリギリで着陸出来たのだった。

 

 

「許せませんね……10代目、撃墜させる命令を出した奴らを……」

 

「ま、待って待って!!獄寺君!!!ダメ、ダメに決まってるだろ!!」

 懐からさりげなくダイナマイトをチラつかせる獄寺君。彼なりの優しさだが、些か過激。でも、三、四年の付き合いだからかツナは多少は慣れた。

 

 

「は、はぁ……10代目がそうおっしゃるのであれば」

 

「にしても、災難だったな、ツナ。そのキンジとアリアってのもスゲーじゃん」

 山本は相変わらずの調子だった。彼は野球で有名な高校に推薦の話が沢山あったらしいが、全てを蹴って、並森高校に進学した。最近は並高の野球部も上り調子で、友人としてとても誇らしい。偶々オフなので、こうしてツナ達と行動していた。

 

 

 

「あのなぁ、野球バカ……10代目の方が何万倍も超スゲーんだよ!!!」

 

 

「はは、獄寺は相変わらずツナのことになると語彙力なくなってんのな」

 

「うるせぇ!!」

 

「あははっ、何だか懐かしいな」

 武偵高とは違う空気感も心地の良いものだ、そうツナは思った。

 

 

「10代目……アレ、武偵高校の制服ですか?」

 獄寺君は、休日にも関わらず着ている変わった制服と携帯している拳銃で予測し、ツナに聞いた。

 

「うん、女子のだね。あんなのでも銃弾を防げるらしいよ」

 

「へぇー、頑丈だなぁ」

 山本は首を傾げている。不思議な事だが、あの薄そうな生地でも実はまあまあの重さがある。仕組みは説明されたが、なんやかんやで銃弾を防ぐそうだ。ツナ自身も半信半疑だったが、教師が実演をしているのを目で見たので、その防弾性能はよく理解していた。

 

 

 

「キミたち、何群れてるの」

 

「ひ、雲雀さん!」

 げ!とツナは震え上がる。彼の名は雲雀恭弥。並森の支配者にして、風紀委員長。群れを嫌う孤高の人だ。その強さは折り紙付きで、経歴も謎の人物だが、並森への愛は人一倍。本物である。

 

 

「雲雀……テメー、いちいち10代目にガン飛ばしてんじゃねぇぞ」

 

 

「ハハッ、何だか久しぶりだな」

 

 

『なあ、銀行強盗があっちの銀行に出たってホントか?』

 

『ああ、おっかねぇな。ここらはないと思ってたんだけどなあ……』

 物騒な話題が通行人たちから漏れる。全世界から見ても犯罪件数が上昇するこの世界、珍しく犯罪が増えてない地域こそがこの並森だった。それは無論、雲雀さんが率いる風紀委員たちの尽力だ。

 

 

 

「!」

 並森をだれよりも愛する雲雀さんが真っ先に走る。最も、彼の場合は人間を助けようという気持ちよりは、並森の治安を乱す者を咬み殺そうとしての行動だろうが。

 

 

 

「10代目、どうされますか?」

 

「うん、俺たちも行こう……なんだか嫌な予感もする」

 正直、休みなのだから、二人と何か遊びにでも興じる手もあった。だが、ぼんやりとした、形容し難い不安感が胸に燻り、ツナたちは現場へと向かった。

 

 

 

「流石に警察を無視しないはず……いや、雲雀さんだしなぁ」

 その通りで、雲雀さんは無視してずかずかと、堂々とした様子で入口から入る。

 

 

「お、おい!!テメェ、どういうつもりだ!人質がわからねえのかよ!」

 二人組の犯人。一方は金を詰め、もう一方はナイフを人質の首に突きつけている。周囲の客はロープで縛られて、一箇所に固められている。不気味な雲雀さんの行動に、犯人はゴクリと喉が鳴り、僅かに拳が震えていた。

 

 

「おい、動くなよ」

 金を詰め終えた片割れは、拳銃を懐から取り出し、人質に向ける。

 

 

「どうやら武偵のようだが、これでどうだ?」

 彼らは並森の住人ではないようだった。風紀委員の存在を知る者なら、こんな真似をするはずがない。例外なく雲雀恭弥にぶちのめされるからだ。おまけに雲雀さんを武偵と勘違いしているようだ。

 

 

「風紀委員への侮辱、および並森への敵対行為。あと、君たち群れすぎだ」

 

「「は?」」

 強盗犯たちは、「侮辱と敵対行為」「群れすぎ」という言葉に理解が及ばす、意識が固まるが、段々と馬鹿にされているような、腹立たしい気分になっていった。

 

 

「一発解らせないとーー」

 額に青筋を浮かべた男は、そう言って、引き金に指をかける。

 

 

「待ちなさーー」

 ツナとは別の武偵たちもタイミング良く駆けつける。

 

『!!!?』

 犯人、そしてちょうど駆けつけた武偵すらも困惑した。だが、この街の住人である人質たちは並森の風紀委員長(雲雀恭弥)がやって来た時点で、既に犯人たちの末路は分かっていた。

 

 

 水の一滴が地面に落ちるよりも短く、あっという間の事だった。

 

 

 拳銃を握る男は、顎に来た未曾有の衝撃に意識を消し飛ばし、もう一人は相方が吹き飛んだのを理解する前に、接近した雲雀の仕込みトンファーによってナイフの刃はポッキリと折れた。

 

 

「あが……っ……」

 ステンレスの刃が破壊された衝撃は腕を伝わり、ナイフは床に落下いく。そして、人質が引き剥がされると、彼の右頬へと鋭い一撃が加わる。彼が気絶したのとナイフの(つか)が落ちるのは全くの同時であった。

 

 

 

 

「君たち、いつまでそうしているつもり? 僕の前で群れるなら、君らも纏めて咬み殺すよ」

 蜘蛛の子を散らすように出て行った人質は外で警察の保護を受けた。警察の方も雲雀さん達、風紀委員会の事はよく知っているので「ああ、雲雀恭弥か」といつもの事と流した。

 

 

 

「かっ、母さん!!」

 

「あら、ツッ君に獄寺君に山本君じゃない〜!」

 ツナが抱いた不安感は正しかった。偶然銀行を訪れていた沢田奈々は人質となっていた。彼女の生来の性格からか、へっちゃらなようだったが、ツナはしばらくギョッと目を見開いていた。

 

 

 

「え……これ何……?」

 彼らはただ奇妙なこの街に困惑したままだった。

 

 

 

 

 

# # # # #

 

 

 

「ツナ、話しなさい!!」

 

「俺も気になるな」

 自室にて、ついに説明をする事になったツナ。一体何処から話せばいいのやら、思案して、拙いながらにも語り始める。

 

 

「まあ、最初は中学生の頃に……」

 

「代わりに俺が説明してやるぞ」

 相変わらず神出鬼没なリボーンはひょいとツナの横に跳んできた。

 

「って、リボーン!」

 

「俺はツナをボンゴレ10代目にするべく家庭教師(かてきょー)として送り込まれたんだ」

 あーだこーだと上手い具合にリボーンは話をしている。ツナは聞いていて、「リボーンに任せて良かったのかも……」と少しだけ項垂れた。

 

 

「なあ、それっておかしくないか? ツナは日本人で、一般人だったんだろ?」

 

「そうね。ボンゴレはイタリアにある最大規模のマフィア。日本のツナと関係があるとは思えないし、第一に他にも候補者がいるはずよ」

 アリアは至極真っ当なことを言う。キンジもうん、と頷いた。

 

 

「いたにはいたんだ。でも、10代目最有力候補のエンリコは抗争中に撃たれ、若手No..2のマッシーモは沈められ、秘蔵っ子のフェデリコはいつの間にか骨になっちまってな」

 丁寧に写真まで用意してある。コミカルな調子でリボーンは言うが、中々にえげつない絵だ。うわ……とキンジはドン引きしていたが、多少は慣れているアリアはそうでもない様子だった。

 

 

「それでも、ツナにお鉢が回ってくる理由が分からないわ」

 

「実は、ボンゴレファミリーの創始者、ボンゴレ1世(プリーモ)は後のボンゴレの元になる自警団を作った後、日本に移住して沢田家康と改名している。ツナの曽曽曽祖父なんだぞ」

 

「なるほど、だから綱吉……」

 二人はマフィアにあるよく分からない細かなルールの為にツナがボスへと指名されたと思った。実際にはかなり深く、重要な理由があるのだが、それを話す必要性は今は無い。キンジはそれよりもツナの名前の由来になるほど!と疑問が解けたような顔をしていた。

 

 

「そういや、ツナのあの赤いガントレットみたいなのは?」

 今度はキンジが質問した。そもそも、武偵の基本的な装備は銃だ。素手で戦う者もいるが、ガントレットのようなゴテゴテしていて、手首まですっほり覆い、指などを分厚いものでガードするタイプの武器を扱うのは非常に稀と言えた。

 

 

 

「詳しくは話せないが、ボス候補となったツナは色々な敵と戦う中で手に入れた力だぞ。俺が家庭教師をしたからな、やる時にはそこらの奴には負けねぇ」

 初めは骸の時。リング争奪戦も、未来でも、シモンとのいざこざの時も、バトルロワイヤルの時も、ずっと使ってきた。ツナにとっては相棒も同然だ。

 

「ふーん、一応の納得は行ったわ。ま、でもアンタがツナだって事に変わりはないもの。これからもよろしく」

 

「俺も同感。でも、流石に驚くけどな、ツナがマフィアのボス候補なんて」

 かなりグレーラインにいるツナに対し、二人は特に気にする素振りは無かった。それは武偵がタフなだけでなく、二人の生来の性格によるものだろう。

 

「うん、今後とも宜しく」

 ツナは僅かな嬉しさを隠しながらも、はにかみで返した。

 

「なんかムカつくな」

 

「ぐえ」

 リボーンに蹴られた。

 

 

 

 

 

 




次回からは魔剣編になります。

守護者いる?

  • いる
  • いらない
  • 偶に出すくらい
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